M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2024年9月29日更新会社・事業を売る
M&A仲介とは?仲介会社とFAの違いや依頼のメリットと注意点・選び方など解説!
M&A仲介とは、売り手と買い手の間に入り、M&Aを成功に導くために中立的な立場で交渉や助言などのサポートを行うことです。多くのプロセスで専門的な知識や経験が必要となるM&Aを進めるためには、仲介会社のサポートが不可欠です。この記事では、中小企業初めてのM&Aでも安心して実施できるよう、M&A仲介会社に関する情報やM&A仲介会社の見極め方などを解説します。
目次
M&A仲介とは
M&A仲介とは、会社を売りたい「売り手企業」と会社を買いたい「買い手企業」の間に入り、M&Aを成功に導くために、中立的な立場で交渉や助言などのサポートを行うことを指します。
中堅・中小企業のM&Aでは、相手企業を探すためにM&A仲介会社へ依頼するケースが一般的です。理由としては、友好的なM&Aを求める経営者が多く、M&A成約しやすいという点が挙げられます。
M&A仲介会社ごとにサポート範囲は異なる
M&A仲介会社の中でも、各社ごとにM&Aをサポートする体制は異なります。
一人の担当者が買い手企業と売り手企業の双方とやり取りして初期検討、成約、PMIまで担当する場合や、買い手企業と売り手企業とで担当者を分ける場合もあります。
会社ごとに対応内容は異なりますが、売り手・買い手の双方が満足のいく交渉・調整を行う働きがあります。
M&A仲介の役割
M&A仲介には以下の役割があります。
・M&Aに関しての全般的なアドバイス・サポート
・M&Aの相手先候補の提案・選定
・企業価値の算定
・相手先との交渉・アドバイス・戦略構築
・デューデリジェンスのサポート
・契約書類の作成サポート
M&Aは成立するまでに数ヶ月以上かかり、さらに会計や税務・法務など多くの経験や知識が必要となります。M&A仲介を活用しないことも可能ですが、M&Aの相手先を見つけるだけでなく企業価値の算定や企業概要書、基本合意書の締結など全てのサポートを行うM&A仲介を活用することが一般的です。
M&A仲介会社とFAの違い
ここでは、M&A仲介会社とFAの違いを比べます。特徴・役割、業務内容、手数料の違いについて見ていきましょう。
FAとは
FAはM&A仲介会社同様、M&Aのサポート役を担う専門家の1つです。
FAとはファイナンシャル・アドバイザーを指し、買い手企業または売り手企業のどちらか一方と契約を行い、M&Aの助言・交渉先の引き合わせ・クロージングなどを行います。単純にFAと呼んでいる場合は、助言業務・FA会社の両方をさすケースもあります。
以下ではM&A仲介会社とFA会社の違いを解説します。
役割
M&A仲介会社
M&Aの仲介を行う特徴・役割があります。中立的な立場で、買収側と売却側の双方に利益があるようM&Aを進めます。
FA
買収側か売却側の利益が最大限になる役割を担います。ただし、契約した側の期待に応えることに努めすぎて、交渉がうまくいかなくなる可能性や時間がかかってしまうケースもあります。
中小企業はM&A仲介会社を利用し、上場企業などの大手企業はFAを利用するのが一般的です。
業務内容
M&A仲介会社
売却側と買収側が決まっていない段階からサポートし、マッチングを行います。つまり、相手探しからM&A成立までの業務内容を担うのです。
FA
すでに売却側と買収側が決定して交渉を行う段階で、サポートします。契約した側の利益が最大限になるよう、M&Aのアドバイスを行うのです。アドバイスの内容は、M&A手続きの正当性や法律的に違反していないかなどになります。
手数料
M&A仲介会社
買収側と売却側の双方から手数料を受け取ります。
FA
契約した側からのみ手数料を受け取ります。
M&A仲介会社に依頼するメリット
M&A仲介会社にサポートを依頼すると、M&Aの成功率は高くなります。
適正価格で売却できる
企業価値算定後、最終的に買い手と売り手の交渉で売買価格が決まります。売り手企業はできるだけ高く売却したいと考え、買い手企業はできるだけ安く買いたいと考えるのが常です。したがって、場合によっては交渉が難航します。
M&A仲介会社が交渉の間に入れば、第三者的観点から釣り合いの取れた適正価格を導き出すことが可能です。多くの場合、当事者が直接交渉するよりもスムーズに話がまとまります。
最適なM&Aの相手先の発掘や見極めができる
M&A仲介会社に依頼することで、買い手企業が見つかりやすくなります。M&A仲介会社は買い手情報を常に持っているからです。したがって、スピーディーにM&Aが成立するでしょう。
売却側が自力で買い手企業を見つけるには、かなりの時間と労力がかかります。M&A仲介会社に依頼すれば、条件に合致した買い手企業候補を探してくれます。時間効率を考えると買い手企業探しでは専門家が強い味方です。
円滑にM&Aを行える
M&A仲介会社は買い手・売り手双方の考えや希望を汲み取り、そのうえで双方の折り合えるところをみつけ交渉をまとめていくため、当事者間で直接交渉を行うよりも円滑なM&A実現に期待できます。
また、M&Aが成立するまでには条件交渉以外にも、必要書類を作成したり、行政への届け出をしたりする場面も多いです。これらの工程を通常業務を行いながら進めていく必要があるあため、経営者として負担が大きなものとなります。
交渉や書類作成などM&Aに必要な工程をサポートしてもらえるため、自社の事業への影響を最小限にとどめて、円滑に進めていくことが可能です。
契約やデューデリジェンスなど専門的な対応を任せられる
M&A仲介会社であれば、契約やデューデリジェンスなどM&A特有の対応を任せられます。
デューデリジェンスでは、法務・税務・会計・労務など幅広い専門知識が必要です。M&A仲介会社は、M&Aにかかわる一連の対応を万全の体制で引き受けてくれます。
経営者は本業に集中できる
M&A仲介会社にサポートを頼めば、経営者は本業に集中できます。M&Aが完了するまでに要する期間は、約10カ月〜1年程度です。その間、経営者が独力で対応すれば、非常に膨大な作業をこなさなければなりません。
経営がおろそかになり業績に悪影響が出ると、買い手からの評価低下の恐れもあるので、M&Aの実務は仲介会社に任せ、経営者は本業に専念する環境が望ましいでしょう。
M&Aをご検討の際は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。M&A総合研究所では、M&Aの知識や経験の豊富なM&Aアドバイザーが、親身になって案件をフルサポートいたします。
料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です。(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります。)無料相談を受け付けておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
中堅・中小企業がM&A仲介会社を選ぶ理由
なぜ中堅・中小企業のM&Aに仲介会社が選ばれているのでしょうか。
コミュニケーションがとりやすい
中堅・中小企業はM&Aを頻繁に行うケースはありませんので、仲介会社を利用してコミュニケーションを取る必要があります。
また法律面やその他手続きをスムーズに進めるためにも仲介会社の利用は欠かせません。お互い主張すべきところは主張し、客観的に判断すべきところは判断し妥協点を見つけやすくなることが仲介会社を利用するメリットの1つです。
最適な相手先候補を探せる
中堅・中小企業のリソース的に難しい相手先候補を探すことも仲介会社が行ってくれます。M&A仲介会社は幅広いネットワークを活用し、依頼企業の希望する条件にマッチする相手先を探します。特に成功事例を多く持っていたり、業界の強みを持つM&A仲介会社でる場合、自社単独で行うよりも、希望条件に合う企業が見つかる可能性が高くなります。
M&A手続き全般をサポート
最適な相手先候補探し以外にもM&A手続きのサポートも行ってくれます。M&Aでは企業価値の算出や必要書類の作成、相手先企業との交渉などといった手続きを経験豊富なM&A仲介会社に依頼することで自社に不都合な条件をさけM&Aを行うことができます。
M&A仲介に関わる相談先
M&A仲介会社
M&A仲介会社は、M&A業務自体を事業として手掛けている会社です。知見や実績などを豊富に備えているため、相談をスムーズに進められます。漠然とした相談だけでなく、実行からアフターフォローまで幅広い相談に対応可能です。
売り手・買い手企業、双方の希望をすり合わせながら成約まで進めるため、すべての条件を満たせるわけではありません。目的をしっかり持って相談するのが良いでしょう。
FA
買い手企業または売り手企業のどちらか一方と契約を行い、M&Aの助言を行います。利益の最大化を目的としており、一般的に大手企業や大規模案件で利用されます。M&A仲介会社よりも費用が高い傾向にあります。
公認会計士・税理士
公認会計士に対しては財務状態、税理士に対しては税務に関する相談が可能です。これら2つの相談先はともに国家資格を持つ専門家であり、相談・依頼すれば会社の決算関連業務を手掛けてもらえます。
しかし、M&Aに精通しているとは限らないためマッチングや交渉支援のサポートが難しい場合があります。
弁護士
弁護士の中には、M&A支援や仲介を積極的に手掛けている専門家も存在します。そもそもM&Aはさまざまな法律が絡む行為でもあるため、法律の専門家である弁護士に相談・依頼すると非常に心強いです。
公認会計士・税理士と同様にM&Aへ精通しているとは限らないためネットワークが限定的な可能性があります。
金融機関のM&A相談窓口
M&Aを行う際は、普段から取引している銀行や証券会社などの金融機関に相談する選択肢もあります。財務面の資金繰りや資金調達方法など資金面の相談は、お金のスペシャリストである金融機関に持ちかけると良いでしょう。
金融機関は幅広いネットワークを持っていますが、スモールM&Aの相談には対応していないこともあります。また、手数料が高額な点もデメリットです。
商工会・商工会議所
商工会議所や自治体などの公的機関も、M&Aの相談相手として活用できます。地元企業とのネットワークを有しており、特に地方部でのM&Aを検討している場合に有効的な相談先です。
中小企業支援の助成金や補助金制度を運営する機関もあるため、資金面に悩んでいる際は相談してみると良いでしょう。ただし、助成金や補助金の制度には細かなルールがありますのでしっかり確認する必要があります。
事業承継・引継ぎ支援センター
各県に設置された後継者不足による事業承継を専門的にサポートする公的機関が事業承継・引継ぎ支援センターです。公的機関のため、法制度や公的支援制度の情報を多く有しています。利用料がかからず気軽に利用できる一方、取り扱い件数が少ないことや複雑なスキームに対応していません。
M&A仲介会社の選び方のポイント8つ
近年、M&Aが活発であることを受け、M&A仲介会社も急増しました。初めてM&Aをする場合などは、どのM&A仲介会社を選ぶか迷うかもしれません。以下では、自社に適したM&A仲介会社を探すポイントを紹介します。
①得意な業種
どのような業種を得意としているM&A仲介会社なのか、確認しましょう。多くの会社は「非特化型」といって、得意業種を決めずにどのような会社でも対応します。しかし、実績を見てみれば、自然とどの業種が得意かわかるはずです。
M&Aを実施するうえで、仲介会社がそれぞれの業種に対して知識や理解があることは重要になります。M&A自体の実績がある仲介会社でも、未経験である業種への対応では不安感が拭えません。業務を正式依頼する前の相談時に、過去に対応した業種を確認しましょう。
非特化型とは逆に、特定業種に絞って対応しているM&A仲介会社もあります。そういった仲介会社の選択は1つの選択肢です。
②得意なM&Aの規模
M&A仲介会社がどのような規模のM&Aを得意としているのかも確認しましょう。対応しているM&Aの規模によって、必要なスキルや持っている企業の情報が異なるからです。
たとえば、銀行や証券会社もM&A仲介を行っていますが、数十億円以上の大規模なM&Aしか取り扱っていません。大企業を得意としているM&A仲介は、報酬額も高く設定していることが多いです。
中小企業・中堅企業であれば「スモールM&A」「マイクロM&A」を全面に押し出しているM&A仲介会社を選ぶとよいでしょう。最近は、中小企業専門に業務を行うM&A仲介会社が増えているので、探しやすいです。小規模な企業でも報酬が支払える料金に設定してあるので、利用しやすいでしょう。
③専門家の有無
M&A仲介会社に専門家が在籍しているか確認しましょう。M&Aを実施する際、法務・会計・税務などの専門的な知識が必要不可欠です。M&Aでは契約書の作成やデューデリジェンスでの対応など、わからないことが多く出てくることが予想されます。
社内に専門家が在籍していれば、気軽に質問ができ、早く回答を得ることが可能です。ホームページを見たり、相談時に専門家が社内にいるのかを確認したりしましょう。仮に社内に所属していない場合は、士業事務所と提携しているか尋ねてください。
④ネットワークの広さ
M&A仲介会社におけるネットワークの広さも大切です。M&Aでは、買い手企業探しに一番時間がかかるともいわれます。したがって、M&A仲介会社が、どれほど豊富に買い手企業候補とのネットワークを持っているかが重要です。
ネットワークの広さに自信のあるM&A仲介会社は、ホームページに記載しています。相談時に、買い手企業候補を何社ほど紹介してもらえるのか確認するのもおすすめです。
⑤わかりやすい報酬体系
報酬体系のわかりやすさをチェックしましょう。M&A仲介会社の報酬体系は、着手金・中間報酬・成功報酬など複数回にわたる支払いが一般的でしたが、近年は、支払いが1回のみのわかりやすい報酬体系として、完全成功報酬制を用いる仲介会社も増えています。完全成功報酬制のM&A仲介会社であれば、M&Aが成立する時点まで支払いがありません。売り手は、M&Aの対価を獲得してからの報酬支払いなので、資金繰りに苦労することもないのです。
チェックするポイントとしては、以下の点を見ることをおすすめします。
- 相談料や着手金の有無
- 月額報酬の有無
- 成功報酬の費用
ほとんどのM&A仲介会社は、ホームページ上に報酬体系の説明を掲載しているので確認できます。わかりづらい点があれば、事前相談の段階で質問し明らかにしてから依頼するか決めましょう。
⑥情報管理が徹底している
M&A成約の前に情報の漏えいした場合、取引先や従業員の混乱を招いたり、M&Aが破談になることがあります。そのため当事者だけでなく案件を進めるM&A仲介会社もM&Aに関する情報の取り扱い、情報管理は徹底する必要があります。
M&A仲介会社は情報管理を行なっていますが、徹底した情報管理を行う会社を選ぶことが安心につながります。
⑦PMIに対応しているか
PMIとは、M&A後の経営統合を実行するプロセスをさし、M&Aで重要なプロセスの1つです。契約が完了したら終わりではなくその後の統合でうまくいくことがM&Aの成功なのです。
M&A仲介会社では、PMIのサポートを行なっていない場合もあります。そのような場合には、専門家を別途探すか自社で対応することとなります。
PMIが必要なのかどうか検討し、必要な場合はPMIサポートを行うM&A仲介会社を選択することがM&Aを効率的に進めるポイントになります。
⑧経験の豊富さ
M&A仲介会社にはM&Aをスムーズに進める役割もあります。そのため、これまで経験してきた業界知識やどれだけの実績があるかなども重要になります。
また、問題に直面した際も円滑に対応することができる安心感があります。どのような業界で実績がどれほどあるのか確認しましょう。
M&A仲介会社に依頼する際の報酬・費用
M&A仲介会社の報酬体系や発生する費用は、会社によってさまざまです。一般的に、以下の報酬が発生すると考えておきましょう。
相談時に数千円の相談料がかかったり、専門家への問い合わせで費用が発生したりすることもありますが、一番大きな費用は上記の着手金・中間報酬・成功報酬です。これらの内容を確認していきましょう。
手数料名 | 内容 | 相場 |
相談料 | 仲介業務を依頼する前段階の相談料 | 0~1万円程度 |
着手金 | 業務委託契約の締結時に発生する手数料 | 50〜300万円程度 |
月額報酬 | 契約期間中は毎月発生する顧問料 | 20〜200万円/月程度 |
中間報酬 | M&Aが一定段階に到達した時点で発生する手数料 | 成功報酬の5〜20%程度または30〜200万円程度 ※成約後に成功報酬から差引かれるケースが多い |
デューデリジェンス | デューデリジェンス時にかかる費用 | 実費(調査範囲により異なる) ※買収側負担が一般的 |
成功報酬 | M&Aが成約した時点で発生する手数料 | 算出基準額の1~5%程度(レーマン方式の場合) ※最低報酬額が設定されている会社もある |
業務時に生じた実費 | 交通費・出張費など | 実費 |
相談料(事前相談)
相談料とは、M&A仲介を依頼する前の初期相談時の手数料のことです。M&Aの具体的な相談だけでなく、「M&Aに興味があるが実際どのような取引なのか?」、「そもそもM&Aをすべきなのか?」などの初歩的な相談ももここに含まれます。
近年はほとんどのM&A仲介会社では相談料無料です。有料の場合は、1回につき数千円〜1万円程度が相場となっています。初回相談時は無料であっても、2回目以降は有料であったり、時間制料金の場合もありますので事前に確認することが大切です。
着手金
着手金とは、M&A仲介会社に業務依頼をするときに支払う費用です。着手金を支払うことでM&A仲介会社は買い手企業を紹介したり、企業価値算定を行ったりします。したがって、着手金の発生タイミングは、アドバイザリー契約締結時です。
会社によって設定金額は異なりますが、無料〜200万円が相場となっています。近年は、着手金を無料とするM&A仲介会社も増えてきました。
中間報酬
中間報酬とは、当事者間でM&Aの基本合意書を締結したときに支払う費用です。基本合意書締結後のデューデリジェンスで問題が出なければ最終契約締結となることから、成功報酬の一部といった位置づけで支払います。
中間報酬は成功報酬額の10%〜30%で設定している会社が多いですが、完全成功報酬制の会社では中間報酬が発生しません。一度支払うと戻ってこない費用であるため、金銭的リスクを軽減させたい場合は中間報酬のないM&A仲介会社を選ぶとよいでしょう。
デューデリジェンス(買収監査)費用
デューデリジェンスとは、基本合意書締結後に売り手企業の調査を行うことです。士業などの専門家を起用し、財務・法務・税務・労務・IT・ビジネスなどの各分野について細かく調査を行います。
買い手が実施するものなので、費用負担者は買い手であることが一般的です。節約のためにとデューデリジェンスをおろそかにすると、成約後に売り手側の問題が発覚し、大きな損失を被ることがあります。
デューデリジェンス費用の相場は会社の規模や調査範囲により大きく変動しますが、大まかな相場観としては、数十万〜200万円程度です。
成功報酬
成功報酬とは、M&Aが成立した時点で支払う費用です。ほとんどのM&A仲介会社では、成功報酬額の算定をレーマン方式で行います。レーマン方式とは、基準金額に対し、定められた料率を掛け合わせて金額を算出する方式です。
多くのM&A仲介会社で以下の料率が採用されていますが、違うケースもあるので事前によく確認しましょう。
基準額 | 手数料率 |
---|---|
5億円以下の部分 | 5% |
5億円超〜10億円以下の部分 | 4% |
10億円超〜50億円以下の部分 | 3% |
50億円超〜100億円以下の部分 | 2% |
100億円超の部分 | 1% |
基準額の設定は、会社によって違うので注意しましょう。基準額を大別すると以下の3パターンです。
- 譲渡対価レーマン方式:M&Aの成約金額≒株式価額
- 企業価値レーマン方式:株式価額+有利子負債
- 移動総資産レーマン方式:株式価額+負債総額
譲渡対価レーマン方式がコストを抑えやすい方式といえます。ただし、借入金などが多い企業は個人保証が解除されるなどのメリットが大きくなるため自社の負債に合わせてどの方式を取り入れている機関を選定することが重要です。
月額報酬(リテイナーフィー)
月額報酬とは、M&A仲介会社と契約している期間中に顧問料のような形で毎月発生する手数料のことです。仲介業務に必要な人件費などをまかなうためにあります。
M&Aは成約までの期間が不確定です。M&A仲介会社としては、長引くほど月額報酬の負担が大きくなる点がデメリットとなります。月額報酬を成功報酬の前払いとして扱う仲介会社もあり、その場合は成約すれば損失を被ることはありません。
月額報酬は、成約せずに終わった場合でも返金されないため注意が必要です。近年は月額報酬を無料に設定しているM&A仲介会社が圧倒的に多いため、まずは無料の機関から相談先探しを行うとよいでしょう。
業務遂行時に生じた実費
M&A仲介会社の中には、手数料とは別計算で委託業務の中で生じた実費を求める会社もあります。実費の具体例としては、企業価値評価の一環で、売り手企業が遠方に持つ工場などに赴いた際の交通費・出張費などです。
実費などの請求は行わず、全て成功報酬に含めるとしているM&A仲介会社も多いので、事前に確認しておきましょう。
M&A仲介を利用する際の注意点
相談相手の見極め
得意分野は相談相手によって異なります。仲介会社であればマッチング、金融機関であれば資金調達などを得意としています。また、取り扱う案件の規模感も違います。
自社の規模感を知り相談内容を決めたうえで、それぞれの得意分野の相談先を利用しましょう。
さまざまな機関に安易に相談しない
M&Aに関しての相談先は慎重に選びましょう。同じ相談をしても相談相手によって回答が異なる可能性があります。そのため、M&Aに関する決断が難しくなる可能性があります。
様々な機関に安易に相談した結果、混乱しないようにしましょう。
情報漏洩に注意
M&Aの際には会社の機密情報を開示することがあります。しかし、その情報が漏れてしまうと会社へ悪影響が及ぶことがあります。そのためM&Aのサポートを依頼する際は秘密保持契約を締結の上、重要な情報の開示を行いましょう。
M&A仲介会社の利益相反とは
利益相反とは
利益相反とは、一方にとって利益となる行為がもう一方からは不利益となる状況のことを指します。
利益相反と言われる理由
M&A仲介会社は売り手と買い手双方と契約を交わし、M&Aのアドバイスやサポートをし、M&Aを成約させることで利益を得ます。
一般的に売り手は高値で売却したいと考え、買い手は少しでも安く買収したいと考えています。そのため双方に有利になるアドバイスが論理的にできないという理由から、利益相反と言われています。
利益相反が問題視される理由
行政改革担当大臣であった河野氏のブログの中で指摘がありM&A仲介業者にとって、基本的には一度きりの付き合いとなる売り手側の企業より、リピートが期待できる買い手側企業の利益を優先した方がメリットとなると解説しています。
また、中小企業庁の「中小M&Aガイドライン」の中でも利益相反のリスクがあると指摘しています。しかしそのうえで、現状では中小M&Aのおいては仲介形態がFAよりも多く用いられており、仲介者という業態が不適切であると断ずるのは現実的ではないとも述べています。
利益相反のリスクを最小限にとどめるよう仲介会社に対して「仲介であること」「利益相反になりうる項目を明示する」「両当事者から手数料を得ること」を説明するよう求めています。M&A仲介会社は公平性を保つ取引をすることが求められています。
M&A仲介に関する環境整備とは
昨今、政府や業界団体によってM&A仲介に関する環境整備が進められています。
中小企業庁が中小M&Aガイドラインを策定
2020年3月、中小企業庁が「中小M&Aガイドライン」を策定しました。随時、更新されており直近のバージョンは、2023年9月に公開された「第2版」となります。
中小M&Aガイドラインには、中小企業のM&Aにおける当事者や支援機関が適切な行動をとるための基準が記載されています。M&Aを検討されている経営者の方は、事前にガイドラインを見ておくといいでしょう。
中小M&Aガイドライン(第2版)| 中小企業庁
M&A支援機関登録制度のスタート
2021年9月、M&A支援機関登録制度がスタートしました。中小企業が円滑にM&Aに取り組める基盤を構築するために設けられたものです。登録された事業者にM&A仲介を依頼することで未然にリスクを低減できるでしょう。
また、登録機関を活用することで事業承継・引継ぎ補助金の補助対象となるメリットがあります。
一般社団法人M&A仲介協会設立
2021年10月、業界団体「一般社団法人M&A仲介協会」が設立されました。
「中小M&A推進計画」に基づいてM&A取引を推進し、M&A仲介業界の健全な発展に取り組むことを目的としたものです。苦情相談窓口があるため、会員の場合は、M&A仲介に関するトラブルが発生した場合に相談ができます。
M&A仲介の動向
中小企業の経営者の間で、M&Aに関する知識がまだ十分でないことを踏まえ、2020年3月には中小企業向けの「中小M&Aガイドライン」が策定されました。このガイドラインは、M&Aをサポートする事業者(仲介者やファイナンシャルアドバイザー)向けの手引書としても機能し、状況に応じて随時更新されています。
2021年9月には、中小企業が安心してM&Aに取り組めるようM&A支援機関登録制度が設けられました。2022年度の公募では、この制度に登録されたファイナンシャルアドバイザーや仲介業者の数が2,887件に増加し、前年度の2,823件を上回りました。登録業者には、M&A専門業者、税理士、公認会計士、地方銀行、信用金庫・信用組合などが含まれています。
さらに、2021年10月にはM&A業界の健全な発展を目指し、「M&A仲介協会」という一般社団法人が設立されました。この協会は、M&Aに関連する法令や制度の啓発、人材育成、事業承継に関する相談窓口の運営などを行っており、日本M&Aセンター、ストライク、M&Aキャピタルパートナーズ、オンデックなどのM&A仲介会社が理事として参加しています。
M&A仲介会社の比較まとめ
M&A仲介会社は、M&A実施の際に不可欠といえる存在です。M&A仲介会社なしにM&Aを進めると、時間や労力の負担は計り知れないでしょう。
M&A仲介会社は、それぞれ特徴や強みが異なるため、M&Aの成功を目指すためには自社に適した信頼できる仲介会社を選ぶ必要があります。報酬体系も、M&A仲介会社を選ぶうえで大切なポイントになるので、事前相談時によく確認し納得のできるM&A仲介会社を選びましょう。
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