2021年4月30日更新節税

法人税と消費税の違いとは?計算方法・納付期限

法人税と消費税は同じ国税ですが、直接税と間接税という違いがあります。また、法人税、消費税のいずれも納付期限を過ぎて納税すると加算税や延滞税が課されることがあるのは共通です。そのような法人税と消費税の違い、計算方法と注意点、中間申告と納付期限について解説します。

目次
  1. 法人税や消費税など法人に課される税金
  2. 法人税と消費税の違い
  3. 法人税の計算方法と注意点
  4. 消費税の計算方法と注意点
  5. 法人税と消費税の中間申告と納付期限(支払時期)
  6. 法人税と消費税の相殺
  7. まとめ

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法人税や消費税など法人に課される税金

会社経営と切っても切れない関係にあるのが税金です。会社に課される税金をざっと挙げてみると、以下のようなものがあります。

  • 法人税
  • 特別法人事業税
  • 法人事業税
  • 法人住民税(東京都以外は道府県民税と市町村民税と2種類あり)
  • 消費税
  • 固定資産税
  • 償却資産税
  • 印紙税
  • 不動産取得税
  • 登録免許税
  • 自動車税
  • 所得税
  • 事業所税

業種によっては、上記以外にも課税される名目があります。そして、これら税金の中でも金額が断トツに高いのが法人税と消費税です。それは、キャッシュフローにも多大なる影響を及ぼします。

したがって、法人税と消費税に関しては納税予定額をできるだけ正確に見積もり、また、納付時期も正確に把握しておくことが必要です。この機会に法人税と消費税の違いや計算方法の注意点も含め、あらためてつかんでおきましょう。

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法人税と消費税の違い

直接税である法人税と、間接税である消費税は、その役割や性質が全く違う種類のものです。場合によっては、そのせいでなおさら頭の中の税金の理解が、こんがらがってしまっている場合があるかもしれません。

そこで、まずは法人税と消費税の違いについて、言及することにします。

⑴法人税とは

法人税とは、法人が稼いだ利益に対して、その金額にダイレクトに課税される税金です。個人の場合と比較するなら所得税と同じ概念になります。法人税が課税される対象は株式会社だけではなく、医療法人や社団法人、協同組合も含まれます。

なお、PTAや同窓会などの人格のない社団と公益法人は、原則的に法人税は非課税です。しかし、それらの社団や法人でも、収益事業を実施して利益を得れば、納税義務が生じ法人税が課税されます。

このように、国税である法人税は、実際に税を負担する担税者と、税金を納める納税者が同一となる直接税です。また、法人税は、納税者が自ら納税額を計算した上で、税務署に確定申告する形で納税する必要があります。

その他に特殊な法人税の措置として挙げられるのが、連結納税制度が用いられるケースです。これは、グループ企業が存在する場合に親会社が連結納税を採用した場合、グループ企業の連結所得に対して法人税が課税されます。

業績状態に応じて高額となる場合もある法人税は、M&Aにおいても最終的な判断を左右する重要なファクターの1つです。

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⑵消費税とは

消費税とは、商品やサービスを消費(購入)した際に支払う税金です。消費者が支払った消費税は、それを預かった各事業者が税務署に納付します。この仕組みが消費税と法人税との違う点であり、消費税が間接税と呼ばれるゆえんです。

念のため例示すると、コンビニエンスストアなどで商品を購入する際、購入者は消費税も合わせて支払います。事業者側であるコンビニエンスストアは、消費者から支払われた消費税を後日、確定申告により納税します。

このように、どのようなビジネスであっても消費者から消費税を預かれば、納税義務が発生します。しかし、免税事業者と呼ばれる例外措置が設けられているのも消費税の特徴です。消費税の免税事業者の条件は、以下のようになります。

  • 個人事業者の場合、2年前の売上高が1,000万円以下の場合
  • 法人の場合、2事業年度前の売上高が1,000万円以下の場合
  • 新規設立法人の場合、設立から2期目まで(ただし資本金1,000万円未満の法人に限る)

なお、M&Aにおいて消費税は事業譲渡を行った際に発生します。消費税への対処を怠ると大きな負担になってしまうことも少なくありません。

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法人税の計算方法と注意点

法人税の税率や具体的な計算方法と、その際に注意すべき事項について概要を記します。法人税の場合、全法人への一律税率ではなく、また特例としての控除などの細則があり、複雑です。

実際の確定申告にあたっては税理士や公認会計士への相談や、税務署への確認を行うようにしましょう。

⑴法人税計算における注意点

法人税は税法上の所得に課税されます。税法上の所得とは、税法で規定されている益金から損金を差し引いて計算し求めます。実は、この税法上の所得は、損益計算書に示される会計上の所得と同じ金額ではありません

税法上の所得は、会計上の所得に対して税法での規定に則り、一定の調整を施すことで計算できます。一例として挙げると、税法上の所得を計算する際には、会計時とは違い費用(損金)に組み入れる減価償却費に制限があるのです。

上記は、ほんの一例にすぎません。他にもさまざまな調整項目があるので、詳細は税理士、公認会計士に確認して進めるに限ります。

⑵法人税計算で用いる税率

法人税の計算では、法人の規模や売上高、種類によって適用される税率が異なる点も特徴です。2019(令和元)年12月現在の法人税率は、だいたい以下のような適用になっています。

法人税率15%のケース

  • 資本金1億円以下の普通法人で年800万円以下の部分の所得に対して
  • 協同組合等の年800万円以下の部分の所得に対して
  • 全ての公益法人等が収益事業をした場合の年800万円以下の部分の所得に対して
  • 人格のない社団等が収益事業をした場合の年800万円以下の部分の所得に対して
  • 特定の医療法人の年800万円以下の部分の所得に対して
法人税率19%のケース
  • 資本金1億円以下の普通法人で控除適用除外事業者の年800万円以下の部分の所得に対して
  • 協同組合等の年800万円を超えた部分の所得に対して
  • 公益法人のうち公益社団法人、公益財団法人、非営利型法人、または公益法人等とみなされているもの以外の公益法人が収益事業をした場合の年800万円を超えた部分の部分の所得に対して
  • 特定の医療法人で控除適用除外事業者の年800万円以下の部分の所得に対して
  • 特定の医療法人の年800万円を超えた部分の所得に対して
法人税率23.2%のケース
  • 資本金1億円以下の普通法人の年800万円を超えた部分の所得に対して
  • 資本金1億円を超える普通法人の所得に対して
  • 公益社団法人、公益財団法人、非営利型法人、または公益法人等とみなされているものが収益事業をした場合の年800万円を超えた部分の所得に対して
  • 人格のない社団等が収益事業をした場合の年800万円を超えた部分の所得に対して

控除適用除外事業者の規定や、他にもさらなる細則などもあるため、自社の条件の確認には国税庁発表資料を閲覧するか、税理士や公認会計士に尋ねることをおすすめします。

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消費税の計算方法と注意点

2019(令和元)年12月現在、消費税は標準税率10%の品目と軽減税率8%の品目が混在している状況となっています。さらに、消費税が非課税となる15種類の取引も存在し、経理担当者にとっては、悩ましく面倒な事態でしょう。

また、それ以外にも事業者として消費税を計算する際の注意点もありますので、その概要を記載します。

消費税の場合も法人税と同様に、実際の確定申告にあたっては税理士や公認会計士への相談や、税務署への確認を行ってください。

⑴消費税計算の注意点

消費税の場合、免税事業者となれるケースがあることを前述しました。しかし、その免税事業者の条件を満たしていたとしても、例外的に消費税が課税されるケースがあります。

まず、免税事業者の条件は、2年前の売上高が1,000万円以下であることです。しかし、個人事業者、法人共に、下記の期間において売上高が1,000万円を超えていた場合には、納税事業者と見なされます。

  • 個人事業者→前年の1月1日から6月30日までの期間
  • 法人→前事業年度開始日から数えて6ヶ月の期間

つまり、前年度の上半期6ヶ月間に1,000万円超の売上を得た場合は、消費税の免税事業者である資格は剥奪されるということです。

⑵消費税率と計算式

事業運営では消費者から消費税を預かる一方で、事業者自身も仕入等の際に消費税を支払っています。したがって、納税する消費税額は、基本的に以下の計算を行います。

  • 納付消費税額=売上高にかかる消費税額−仕入等に要する消費税額

納付する消費税を計算する際は、顧客から預かっている消費税額から、仕入等で支払った消費税額を差し引き計算するわけです。

⑶消費税の還付

上述した納付消費税額を計算する際に、売上が不振だったケースを想定してみましょう。どういうことが起こり得るかというと、売上に付随する消費税額よりも仕入等に要した消費税額が上回ることです。

そのような事態の場合は還付申告を行います。そうすれば出費として上回った分の消費税額は還付を受ける、つまり戻ってくるのです。ただし、還付申告ができるのは消費税課税事業者だけです。消費税免税事業者は、申告自体ができません。

この場合の制度として、消費税課税事業者を選択することができるようになっています。所管の税務署に「消費税課税事業者選択届出書」を提出すれば、消費税免税事業者から消費税課税事業者に変更可能な制度です。

ただし、いったん消費税課税事業者を選択した場合には、2年間は消費税免税事業者に戻ることはできませんので注意してください。なお、消費税免税事業者に戻る場合には「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出します。

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法人税と消費税の中間申告と納付期限(支払時期)

法人税、消費税のどちらも、前年度の納税額が一定以上だった場合、確定申告以外に中間申告とそれに合わせた納付が義務付けられています。また、法人税と消費税の税の性格の違いから、中間申告のルールは異なるものです。

混同してしまわないように、法人税と消費税それぞれの中間申告について、その内容を理解しておきましょう。

⑴法人税の中間申告と納付期限(支払時期)

前事業年度の法人税額が20万円を超えた場合、当事業年度においては法人税の中間申告と納付を行わなければなりません。そして、法人税の中間申告期限と納付期限は同日です。

事業年度開始日から6ヶ月後の日を起算日として、2ヶ月以内が期限となっています。つまり、上半期が終わった後の2ヶ月後までです。3月が決算期の法人であれば、11月30日が法人税の中間申告と納付期限となります。

ちなみに、法人税の中間申告が規定されている理由は、年度末に多額の納税となることを避け、半期ずつに振り分ける意図があるからです。

また、法人税の中間申告が課される法人は、地方税(都道府県民税、市町村民税、事業税など)についての申告も必要になります。

⑵法人税の中間申告計算方法

法人税の中間申告の計算方法には2通りの方法があります。1つは前事業年度の法人税納税額を基にして以下の計算式を用いて算出します。なお、100円未満は切り捨て処理です。

  • 中間(予定)税額=前事業年度の確定法人税額÷12×6

この算出方法は簡単で手間がいりません。ただし、前事業年度が特別に業績がよかったため法人税額がとても高額だったり、本事業年度は前事業年度の業績を大きく下回っていたりするケースを考えてみてください。

この算出方法であると、本事業年度の実績にそぐわない高額な法人税の中間税納付となってしまいます。年度末での確定申告において相殺計算にはなりませんが、キャッシュフローにインパクトを与えるのは事実です。

そのような場合を回避するためにできる法人税の中間申告算出方法として、中間決算があります。確定申告と同様に上半期分に対する決算を行うのです。こうすれば実態に即した中間納税額となります。

ただし、決算と同様の手間がかかるという点がデメリットです。なお、万が一、法人税の中間申告を忘れてしまった場合は、上述した1つ目の計算方法にて算出した金額で自動的に中間申告があったと見なす措置が取られます。

しかし、納付忘れは延滞税が加算されてしまうので注意してください。

⑶消費税の中間申告と納付期限(支払時期)

消費税の中間申告が課されるのは、前事業年度の消費税額(地方消費税額は除く)が48万円を超えた法人です。そして、法人税とは異なり、前事業年度の消費税納税金額によって、以下のように中間申告の回数が3通りに分かれています。

前事業年度納税額 48万円超~400万円 400万円超~4,800万円 4,800万円超
中間申告の回数 1回 3回 11回
申告と納付の期限 課税期間から2ヶ月 同左 別途記載
1回の中間納付額 前年度の6/12 前年度の3/12 前年度の1/12

つまり、前事業年度の消費税納税額によって、半期ごと、四半期ごと、毎月という3パターンの中間申告に分かれるということです。なお、前事業年度の消費税納税額48万以下の法人であっても、任意の中間申告書の提出をすることができます。

その場合は、事前に所管の税務署に中間申告書を提出する旨を記載した届出書を提出しておかなければなりません。また、提出可能な中間申告は年1回のみです。

消費税の中間申告が年11回必要となるケースでは、その申告と納付期限が以下のとおり、個人事業者と法人とでは規定が異なっています。

個人事業者
  • 1月〜3月分→5月末日
  • 4月〜11月分→中間申告対象期間の翌日から2ヶ月以内
法人
  • 課税期間開始後の最初の1ヶ月分→その課税期間開始日から2ヶ月を経過した日から2ヶ月以内
  • 上記以後の10ヶ月分→中間申告対象期間の翌日から2ヶ月以内

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法人税と消費税の相殺

最後に法人税や消費税の相殺や還付について見ておきましょう。法人税と消費税のうち、どちらかは納付、どちらかは還付と想定します。この時、個別に納付を行い還付を受けるのでは、処理が複雑化し手間も掛かって不合理です。

このようなケースでは法人税と消費税のどちらかの納付額と、どちらかの還付額を相殺計算をして、最終的な金額を納付するか、還付を受けることができることになっています。ただし、自動的に相殺されるわけではありません。

還付額と納付額を相殺処理して欲しい旨を、税務署に書面にて届け出る必要があります。届け出に際しては、特に決まった書式はありませんので、オリジナルのフォーマットの書類で構いません。

また、消費税や他の国税に未納額がある場合、届け出がなくとも自動的に相殺されます。例えば、消費税の未納分が残る状況で法人税の還付が生じた場合、自動的に法人税と消費税が相殺され、法人税の還付は受け取れません。

まとめ

法人税と消費税は会社が納付する税金の中でも高額となるものです。中小企業の場合、顧客から預かった消費税をプールはせず、日常のキャッシュフローの中で流用しているケースも多いでしょう。

法人税と消費税の納付時期が来て慌てないためにも、納税を見据えたキャッシュフローを心掛けてください。本記事の要点は下記のとおりです。

・法人税と消費税の違い
 →法人税は直接税であり消費税は間接税

・法人税の計算
 →税務上の所得に対して法人の規模や種類に基づく税率を掛ける

・消費税の計算
 →売上高にかかる消費税額から仕入等に要する消費税額を差し引く

・法人税の中間申告納付期限
 →各事業年度開始日から6ヶ月後の日から起算して2ヶ月以内

・消費税の中間申告納付期限
 →中間申告1回の場合は法人税と同じであるが中間申告が3回、11回の場合は異なる

・法人税と消費税の相殺
 →還付額と納付額を相殺して欲しい旨を税務署に書面で届け出ることで可能

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