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2022年6月6日更新事業承継
黒字倒産とは?原因と対策
例え経営が好調の会社でも倒産するケースがあり、これを黒字倒産といいます。しかし、経営状態が黒字であるにも関わらず倒産してしまうのはなぜでしょうか。この記事では、黒字倒産が発生する原因、企業事例、対策について解説します。
目次
黒字倒産
黒字倒産とは読んで字のごとく、経営状態が黒字であるにも関わらず倒産してしまうことを指します。
通常倒産というと経営状態が赤字になることが原因になると考えがちですが、昨今では経営状態が黒字でも倒産になってしまうということが珍しくなくなっています。そのため、例え経営が好調の会社でも黒字倒産には気を付けなければなりません。
そもそも倒産の意味とは?
黒字倒産について説明する前に、まずは、「そもそも倒産とは」どのような状態のことなのかを確認していきましょう。
倒産とは、企業が債務を支払うことができなくなったり、経済活動を続けるのが困難になる状況のことです。
例えば、大量に仕入れをして、売り上げがたったとします。しかし、1ヶ月後に仕入代金を支払い、3ヶ月後に売上の入金がされると、仕入れ代金を払うことができません。
この時に、自己資金や銀行からの借入によって仕入れ代金を支払うことができない場合に、倒産となります。
このように倒産とは、企業が経済的に行き詰まり支払能力をなくし、その結果、事業の存続ができなくなってしまった状態を指します。
黒字倒産とは?黒字倒産の意味
黒字倒産とはどういったものなのでしょうか?
冒頭でお伝えしたように黒字倒産とは黒字に関わらず会社の経営が続けられなくなって倒産するというものです。
そもそも倒産は決して経営状態が赤字になったからといって発生するものではありません。実際収支がマイナスに落ち込んでいても経営を続けていることもあります。
詳しくは後述しますが、黒字倒産は会社内に現金がなくなった際に発生するケースが多いです。中小企業のように一定以上の現金確保が少ない会社であれば、黒字倒産は発生する可能性が高くなります。
黒字倒産は決して縁遠いものではなく、2016年に倒産した会社の内、半数が黒字倒産による倒産だと言われています。
当然、経営状態を黒字にすることは重要ですが、資金繰りが悪ければ経営状態が黒字であろうと倒産になってしまうリスクはあります。経営者の方は常に資金繰りを配慮し、黒字倒産が起こらないように注意しておく必要があります。
黒字倒産を回避するために、M&Aを活用するというのも一つの方法です。M&Aをお考えの場合は、ぜひM&A総合研究所にご相談ください。
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赤字でも倒産しない企業の特徴とは
黒字倒産がある一方で、赤字でも倒産しない場合があります。
赤字でも倒産しない企業の特徴として、一体どのような特徴が挙げられるのでしょうか。
赤字でも倒産しない企業の特徴として以下の3つが挙げられます。
- 資金調達ができる
- 銀行から融資が受けられる
- 自己資金が豊富にある
上述のとおり、倒産とは、「自己資金や銀行からの借入によって仕入れ代金を支払うことができない」場合に起こります。
そのため、赤字を補填して経済活動が続けられる企業は赤字でも倒産しません。
しかし、経営が安定せず、赤字状態が続くと、赤字倒産するのも時間の問題なので注意が必要です。
以下の記事では、赤字会社をM&Aで売却する方法について解説しています。具体的な手法や成功のポイントについても解説しているので、ぜひご確認ください。
黒字倒産の原因と注意点
さきほどもお伝えしたように黒字倒産は会社内に現金がない際に起こります。
「会社内に現金がない」状態は、収支と支出・現金の入金・出金のタイミングが違うことが原因です。
一定の会計期間で発生した収入と支出のうち、収入が多ければ黒字ですが、現金が手元にくる時期は会計上とズレていることはよくあります。
たとえ黒字になるくらい売り上げが上げていたとしても、実際に収益が現金になってくるのは売り上げの発生後から数ヶ月経ってからという場合が有り得るのです。
例えば、収益が現金として振り込まれるのが、売り上げの発生から3ヶ月後であれば、もし会社内に現金が無ければ、危機的な状況になってしまいます。
このように、現金が手元に無くて支払いが滞る状態になると、会計上は黒字化していても資金が尽きてしまい、倒産してしまうのです。
「会社内に現金がない」という状況は決して珍しいものではありません。
会社経営において出金が先に発生し、入金は後になるという状況は珍しいものではなく、ギリギリの資金繰りでやっている会社や発展途上のベンチャー企業だと会社内の現金がなくなってしまうことは充分にありえます。
そのため資金繰りを工夫するなどして、最低限の現金は確保しておくことが重要です。
ちなみに、倒産ではありませんが、黒字のまま会社を廃業するというケースが中小企業を中心に増えています。
この場合は「後継者不在」が原因であることが多いです。
昨今は経営者が高齢化していく一方、子供が会社を継ぐという例が少なくなっているため、経営者が引退する場合でも後継者がいないというケースが少なくありません。
そのため、後継者が用意できなかった経営者は、事業を続けたくても引退に際して会社を廃業せざるを得ないという状況になってしまうわけです。
後継者不在は黒字倒産の原因にはなりませんが、黒字であるにも関わらず会社の存続が出来ないという点では似通っています。
年齢を重ねている一方で後継者の選定や育成が出来ていないという経営者の方は気を付けた方がいいでしょう。
黒字倒産の企業事例
2016年の会社の倒産の半数が黒字倒産だったように、黒字倒産という形で倒産する会社は少なくありません。
ここでは黒字倒産の事例をご紹介します。
①株式会社アーバン・コーポレイション
株式会社アーバン・コーポレイションは黒字倒産の説明の際によく使われる会社であり、その名を聞いたことがあるという人も少なくないかと思います。
アーバン・コーポレイションは売上高も経常利益も毎年右肩上がりで上昇していましたが、結果的に資金繰りに行き詰まって黒字倒産してしまいました。
その原因はやはり資金繰りの失敗にあります。
アーバン・コーポレイションは販売が行き詰まりつつある状況にあるにも関わらず仕入れを継続した結果、在庫が増えたことで資金が滞留してしまいました。
それでもアーバン・コーポレイションは融資を受けながら無理に経営状態を維持しようとしていましたが、結果的に負債が膨らみ、銀行からの追加融資が途絶えたことによって黒字倒産を迎えることになりました。
ここまで聞くとアーバン・コーポレイションが黒字計上されていたことが不思議に思えますが、これには損益計算書の仕組みが関係しています。
損益計算書は売れ残っている在庫の支出は計上されないため、その分の支出が反映されないことによって黒字計上が発生してしまうというわけです。
②江守グループホールディングス
江守グループホールディングスも黒字倒産の代表的な事例の一つです。
江守グループホールディングスは黒字倒産するまでの過去5年は黒字で計上されていましたが、一方で営業のキャッシュフローは赤字の状態が続いているという奇妙な状態になっていました。
この原因は中国の取引先の資金繰りが悪化し、中国子会社が売掛債権の回収や取引の継続が難しくなったために資金が滞留したことです。
いくら他の事業で売り上げを出していても海外で取引を行う事業が大量の資金を垂れ流していたために、結果的に資金繰りに行き詰まったことが江守グループホールディングスの特徴だといえます。
取引先の経営状態の悪化や倒産が黒字倒産につながるというケースは少なくなく、江守グループホールディングスは海外に子会社を設置して取引をしている会社にとっては気を付けておきたい事例だといえるでしょう。
黒字倒産の対策とキャッシュフロー
黒字倒産を防ぐためにはどのような対策が適しているのでしょうか?
黒字倒産を防ぐための対策は様々なものがありますが、いずれも会社の将来的なキャッシュフローを改善するためのものです。
いうなればキャッシュフローを健全化が黒字倒産を防ぐ鍵だといえるでしょう。
黒字倒産の対策に使えるものは以下の通りです。
また、以下の記事では資金繰りの改善方法についても解説していますので、こちらも併せてご確認ください。
①資金繰り表の作成や在庫管理による資金繰りの良化
資金繰り表の作成や在庫管理による徹底的な資金繰りの良化は黒字倒産の対策の最も基本的なものだといえます。
そもそも黒字倒産は杜撰で強引な資金繰りや在庫管理の不徹底による資金の滞留といった要因で発生するものです。
そのため経営者は将来のキャッシュフローを詳細に踏まえて設計し、資金繰り表を作成し、その計画を在庫管理と共に徹底して行うことが重要です。
資金繰り表の作成は必要があれば経営コンサルティング会社のような外部の専門家を招いて行うことがおすすめです。
②コストの削減
無駄なコストの削減を実施することも黒字倒産を回避する基本的な対策です。
例えば設備や業務にかかる固定費や会社が事務所を抱えている立地に発生する費用、そして役員報酬のような人件費などが削減の対象になるでしょう。
これらは杜撰な管理をすると会社に思わぬ負担をかけてしまうものであり、不要な出費が発生しているようであれば、徹底的に削減すべきものです。
また必要があれば労働環境を大胆に変えることも有効的な対策の一つです。
最近ではフレックスタイム制やSkypeなど既存のソフトを利用したコミュニケーションの導入などを活用することによってコストの削減に成功している事例が増えています。
このコストの削減は経営者の腕が試されるものだといえるでしょう。
③銀行へのリスケ
黒字倒産の可能性が見えてきた際に即効性がある対策として挙げられるのが銀行へのリスケです。
リスケとは返済期間の延長や支払いの減額を要求することであり、上手くいけば融資の返済という負担を軽減させることができます。
ただ、一般的にリスケの成功率は2~3割といわれており、決して成功率が高いものではありません。
そのため銀行へのリスケを成功させるには、返済が悪化した原因を客観的かつ正確し、キャッシュフローまでを詳細に分析したコストダウン計画の作成などを行い、リスケを行うことの説得力を引き上げる必要があります。
また日本政策公庫や自治体が行っている公的な融資であれば会社の事情に合わせてリスケがしやすくなっているケースがあります。
万が一のことを踏まえ、あらかじめそういった融資を優先的に利用することも有効的な手段の一つだといえます。
④資産の現金化
会社が所有している資産を現金化することも即効性のある対策の一つです。
資金繰りが苦しくなってきた際に資金を現金化できれば、最低でもその場しのぎにはなるでしょう。
現金化する資産として挙げられるものには事業と関係がない遊休資産や預金、手形割引などといったものが挙げられます。
また不動産ローンや在庫担保融資といった、会社の不動産・建物や在庫を担保にして融資を受けるという方法もあります。
ただこれは借金を借金で返すような行為であり、返済に失敗すれば担保としたものを丸ごと失うリスクがあるので、実際に使用する際には注意が必要です。
⑤支払の先延ばしや入金の前倒し
黒字倒産の対策を行うなら支払の先延ばしや入金の前倒しも有効的な手段だといえます。
これは具体的には支払いサイトの延長や前借を実施するというものです。
どちらも取引先に交渉することで実現させるものであり、やはり経営者の腕が問われるものです。
日ごろから付き合いがある取引先であれば経営者の交渉があれば支払いサイトの延長や前借は実現させられる可能性は高いですが、実際に交渉する際には経営者が自ら出向いて直接対面するなど、誠意と熱意を見せる必要があるものです。
⑥不良債権に細心の注意を払う
不良債権には細心の注意を払いましょう。
不良債権の発生を防ぐためには、普段から顧客の格付けを行ことが重要になります。
あらかじめ、顧客の格付けを行うことで、製造や仕入れなどの支払いがあるにもかかわらず、入金はないと言った貸倒れを予防することができます。
顧客の信用力を判断する基準として、顧客を訪問した際に以下の点をチェックしてみましょう。
- 社内が活気付いているかどうか
- 古い在庫がないかなど、在庫の状況など
あらかじめ、顧客の格付けを行うことによって不良債権の発生を防ぐことができます。
貸倒れなどの不測の事態を防ぐためにも、不良債権には細心の注意を払いましょう。
黒字倒産における税金
黒字倒産の可能性が見えてきた際に気を付けておきたいものの一つに挙げられるのが税金です。
税金は支払う義務がある以上、支払を避けるということはできません。
そのため、会社にとってはある意味発生を避けられないコストだといえます。
実際法人税などの税金の支払いが想定より膨らんでしまい、会社の資金繰りが悪化したというケースは少なくありません。
税金は銀行へのリスケのように支払いを一時的に遅らせようと思えば遅らせられますが、延滞税が発生するリスクがあるため、あまり有効的な手段とはいえないでしょう。
そのため日ごろ税金の支払いに関しては積極的に節税対策を行うなどして上手くコントロールする必要があります。
節税対策には保険を利用したものや役員報酬を利用したものなど様々なものがありますが、いずれも税務に対する正確な知識がなければ上手く効果を発揮しないものです。
そのため、会社の経営者の方は税金の知識に長けた税理士を味方につけ、その会社の実情にあったベストな節税対策を立てておく必要があります。
ただ、味方につける税理士は慎重に選ぶ必要があります。
節税は税理士の腕によって結果が変わると言っても過言ではないため、節税対策を依頼するならちゃんと実績のある税理士を選ぶことが重要です。
黒字倒産を防ぐために知っておきたい評価指標
黒字倒産する前に以下の3つの決算書の特徴を捉えておくことが黒字倒産を防ぐことにつながります。
- 損益計算書(PL)
- 賃借対照表(BS)
- キャッシュフロー計算書(CF)
それぞれ詳しくみていきましょう。
損益計算書(PL)
損益計算書とは、会社の利益を知ることができる決算書類です。
英語の「Profit and Loss Statement」の頭文字をとってPLとも呼ばれています。
損益計算書には、収益・費用・利益が示されていて、決算時に収益から費用を差し引いて算出された利益の金額がわかるようになっています。
そのため、企業が「何に費用を使ったのか」「いくら売り上げが立ったのか」「どれくらいの利益が出たのか」が可視化されます。
さらに、損益計算書(PL)を正確に把握していると、企業の本業と本業以外で「どちらの方が儲かっているのか」を知ることができます。
また、損益計算書の変動費と固定費を分けることによって、赤字と黒字の分岐点である「損益分岐点」を把握することが可能です。
損益分岐点は、赤字の会社なら「黒字にするためにはどれくらい売り上げを上げなければならないのか」、黒字の会社なら「売上がどの程度まで下がると赤字になってしまうのか」を見極めるための目安になります。
会社の経営状態を分析し、黒字倒産を防ぐ上で、損益分岐点は非常に重要な指標となるものです。
貸借対照表(B/S)
貸借対照表はバランスシート(B/S)とも呼ばれ、企業の1年間の期末日における財政状態を「資産」「負債」「純資産」から可視化できます。
つまり、決算時(一定時点)、企業はどのような財産(資産)を持っていて、その財産の元になるお金(負債・純資産)はどのように集めてきたのかを把握できます。
BSを見ることによって企業の財政状況が分かりやすくなります。
キャッシュフロー計算書(C F)
キャッシュフロー計算書は、会社のキャッシュの増減を一会計期間で示したものです。
キャッシュフロー計算書は一年間のお金の流れに注目している決算書で、会社にどのくらいのお金があるかを把握することができます。
キャッシュフロー計算書は「営業キャッシュフロー」、「投資キャッシュフロー」、「財務キャッシュフロー」の3つに分けて示されています。
これによって会社が営業活動でどのくらいの資金を獲得し、その使い道を読み取れます。
上述のように、商品やサービスの提供とその売上の入金にはタイムラグがあります。
つまり、どれだけ売り上げをあげようとも、その回収に時間がかかって現金がなくなると、借入金を返済したり、商品の仕入れ資金を調達しなければならず、黒字倒産になる可能性があるのです。
ですので、キャッシュフロー計算書を正確に読み取ることで、このような黒字倒産の危機を察知することができます。
まとめ
黒字倒産は一見不思議な現象に見えますが、実際は会社の資金繰りの杜撰さが引き金になって起こるものです。
多額の現金を持っていることが少ない中小企業やベンチャー企業はもちろん、上場している大企業でも黒字倒産は発生し得るものであるため、日ごろの資金繰りに注意を払った方がいいでしょう。
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