M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2021年4月27日更新会社・事業を売る
M&Aにおける買収価格
M&Aにおいて、買収価格は非常に重要な要素であり、買収価格次第で、M&Aの成功が左右されるといっても過言ではありません。ここでは、企業価値・買収価格をはじめ、企業価値算出方法、M&Aにおける買収価格の調整について詳しく解説していきます。
はじめに
2000年以降、メディアでは大企業同士のM&Aが多く取り上げられるようになりました。海外進出や国内での生き残りをかけて、多くの企業がM&Aを活用しているのです。しかし、メディアで取り上げられるような大企業だけがM&Aを活用しているわけではありません。
近年は、多くの中小企業でM&Aが活用されはじめており、その件数は年々増加傾向にあります。M&Aが増加する背景には、経営者の高齢化や市場の急速な変化などが影響しており、M&Aを取り入れた経営戦略が幅広く浸透しているのです。
そのようなM&Aの重要なプロセスの1つに「買収価格の算出」があります。「買収価格」はM&Aにとって非常に重要な要素であり、「買収価格」次第でM&Aの成功が左右されるといっても過言ではありません。
そこで今回は、M&Aの買収価格について詳しく解説していきます。なお、M&Aの定義について再度確認したい場合は下記の関連記事をご参照ください。
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M&Aにおける「買収価格」とは
まずはじめに、M&Aの買収価格について基本的な事項を解説していきます。
M&Aにおける買収価格の決め方
M&Aにおいて、買収価格がどのように決まっているのかご存じでしょうか?
結論から述べると、最終的には売り手と買い手による交渉で決定します。しかし、突然双方の話し合いをしただけではほぼ100%決まりません。なぜなら、M&Aでは互いの利益が一致しないからです。
当然ながら、売り手側企業は極力高い価格で売りたいと考えます。一方、買い手側企業は、可能な限り安い価格で買いたいと考えているでしょう。そのため、いくら話し合いを重ねても、いつまでも話は平行線となってしまいます。
そこで、M&Aの現場では、はじめに「企業価値」を算出します。次に、買い手側がデューデリジェンス(対象企業の事前調査)の結果などを企業価値に反映させます。
ここで算出されるのが「バイヤーズバリュー」と呼ばれるもので、M&Aで得られるシナジー効果や各種プレミアムを加減算します。求めたバイヤーズバリューをベースに、交渉によって最終的な買収価格を決定します。
その後の交渉をうまく進めていくためには、交渉力も不可欠になるので、専門家のサポートを依頼することをおすすめします。
M&A総合研究所では、M&Aの経験も知識も豊富なアドバイザーがご相談からクロージングまでフルサポートいたします。
料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談をお受けしておりますので、お気軽にお問い合わせください。
「企業価値」と「買収価格」の違い
M&Aの場面では「企業価値」と「買収価格」が同一視されがちです。しかし実際には、「企業価値」と「買収価格」は似て非なる概念で、その実はまったく異なります。
まず、「企業価値」とは、その企業全体としての価値を数値化したものです。「企業価値」はどの観点から見るかによって変わってくるもので、一般的には「本業に関する価値」と「それ以外の価値」を合計した値となります。
一方、「買収価格」とは、M&A取引において「いくらで買収するか」を表す価格で、企業価値に微調整を加えた価格となります。微調整の項目としては、シナジー効果やM&A後のリスク、各種プレミアムなどが該当し、買収する企業によって異なります。
つまり、「企業価値」は同じであっても、買い手企業次第で、「買収価格」が異なる可能性があるということです。
「買収価格」の算出方法
前述した通り、「買収価格」とは、「企業価値」に微調整を加えた価格となります。そのため、算出方法は下記のようになります。
- 買収価格=企業価値±微調整(シナジー効果、各種プレミアム、リスク)
もちろん、売り手側企業の内情も買収価格に影響します。もし理想的な価格で買収したいのであれば、条件にマッチした売り手を見つけることが重要です。その際には、M&A総合研究所のM&Aプラットフォームをぜひご利用ください。
M&A総合研究所には日本全国から多種多様な業界・業種のM&A案件が集まっており、理想的な売り手を見つけることができます。また、豊富なM&A案件の中からAIがマッチングするという独自のシステムを持っています。
そのため、買収ニーズを登録するだけで自動的に条件の合う案件が紹介され、効率的にM&Aの候補探しを行うことができます。
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企業価値の算出方法
M&Aの「買収価格」は、買い手側企業次第で異なりますが、「企業価値」については相場の算出方法が決まっており、客観的な結果を得ることができます。先に述べた「買収価格」の算出方法を見ればわかるように、「買収価格」を算出するには「企業価値」を算出する必要があります。
そのため、M&Aを成功させるためには、「企業価値」の算出についても理解しておく必要があるでしょう。ここでは、M&Aで用いる企業価値の算出について解説します。企業価値の算出方法は、大きく分けて下記の3種類です。
- インカムアプローチ
- マーケットアプローチ
- コストアプローチ
上記3つは、企業価値を算出する際の「観点」が異なります。買収価格を決定する状況や会社の規模によって、用いるアプローチ手法は異なりますので注意が必要です。ここでは、各アプローチ手法を詳しく解説します。
動画でも解説しておりますので、ぜひご覧ください。
①インカムアプローチ
インカムアプローチとは、企業が将来創出すると予想されるインカム(収入)をベースとする手法です。
ここでいうインカム(収入)とは、フリーキャッシュフロー(FCF)や収益などをさします。簡単にいうと、将来的な収益力を基に、企業価値を評価する方法といえます。よって、M&Aの買収価格を算出する方法としては、非常に合理的な方法です。
ただし、インカムアプローチは、企業評価が主観的になりやすいという欠点もあります。そのため、インカムアプローチを使用する際は、第三者に企業評価を依頼することをおすすめします。なお、M&Aの買収価格算出以外にも、設備投資の評価や無形資産の評価などにも活用されている算出方法です。
インカムアプローチの具体的な手法(DCF法)
インカムアプローチは、M&Aの買収価格算出方法の中で最も利用されている方法です。将来得られるFCFの現在価値を合計し、企業価値とします。
インカムアプローチの具体的な手法にDCF法があります。DCF法は、インカムアプローチの中でも特にM&Aの買収価格算出に向いた手法です。
ただし、算出する際の計算が大変複雑で、とりわけ、FCFや割引率(WACC)の計算には、専門的な知識が必要となるため、専門家でないと正確な企業評価は困難です。
M&Aにおいて正確な企業評価は、M&Aの成功率にも影響します。M&Aの成功確立を上げたい方は専門家に依頼することをおすすめします。
M&A総合研究所はM&Aの経験が豊富なアドバイザーがフルサポートいたします。料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談をお受けしておりますので、お気軽にお問い合わせください。
②マーケットアプローチ
マーケットアプローチとは、株式市場や類似する業種・企業をベースとする手法です。つまり、外部環境との比較によって、M&Aの買収価格を算出していきます。
他の手法と比べて、客観性のある企業価値(買収価格)を算出可能な方法ではありますが、各手法ごとに活用できる場面や条件が限られています。M&Aの買収価格を算出する際は、手法の特徴を認識しておきましょう。
また、市場の平均値を理解したうえで会社の価値を決めるとなると、業界や評価に詳しい専門家が必要になります。さらに、市場は常に大きく変化をするので、マーケットアプローチを使用するべきかどうかを見極めなくてはなりません。
マーケットアプローチに関してだけでなく、M&Aをしようと考えたら、まず一度M&A総合研究所にご相談ください。M&Aのプロがフルサポートさせていただきます。
マーケットアプローチの具体的な手法(マルチプル法)
類似会社比準法とも呼ばれるこの方法では、自社と類似する上場企業の株価指標を用います。マーケットアプローチは事業内容が類似する上場企業を参考にするため、非常に客観性の高い企業価値(買収価格)を算出でき、主に非上場のベンチャー企業のM&Aで活用されています。
ベンチャー企業のM&Aでは、EV/EBITDA倍率が利用されます。EV/EBITDA倍率とは、EV(企業価値)がEBITDA(営業利益+減価償却費)の何倍かを表したものです。上場企業のEV/EBITDA倍率を基に、対象企業の企業価値を計算します。
この方法を使うことで、十分な利益が出ていないベンチャー企業でも、M&Aの買収価格を算出できます。一方で、成熟した企業に用いると、割高な買収価格となってしまうため、注意が必要です。
以下の動画で弊社M&Aアドバイザーが計算例を用いてマルチプル法について解説しておりますので、是非ご覧ください。
③コストアプローチ
コストアプローチとは、企業の貸借対照表をベースとする手法です。簡単にいうと、これまでの蓄積に着目した方法であるといえます。よって、歴史ある企業の買収価格算出に向いている方法です。
また、多くの資産を保有する企業にも適している方法でしょう。一方で、創業間もないベンチャー企業や、技術やノウハウが強みの企業には不向きな手法です。
コストアプローチの具体的な手法(簿価純資産価額法)
簿価純資産価額法は、貸借対照表に記載された純資産をそのまま企業価値と見なす方法です。そのため、貸借対照表さえあれば誰でも企業価値を算出できます。
ただし、多額の含み益(所有する不動産や証券など価格の上昇によって生じる利益)を抱えている場合には、一度資産を時価換算する必要があります。
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M&Aにおける買収価格の調整
前述の通り、「買収価格」とは「企業価値」に微調整を加えることで決定されます。ここでは、M&Aの買収価格で調整される事項をご紹介します。
支配権プレミアム
M&Aによって売り手の経営権を握れるだけの株式を取得する場合、買収価格にプレミアム価格を上乗せします。これをM&Aの実務上では、「支配権プレミアム」と呼びます。
M&Aでは、経営権を支配できる事自体に価値があるとみなされるため、相手企業の全株式を買収する場合はその分の価値も考慮する必要があります。
TOBプレミアム
TOBとは、事前に期間や株数、価格を公開したうえで、市場を通さずに直接株式を買収するM&A手法です。TOBを用いることで、迅速にM&Aを実行することができます。ただし、TOBを成功させるためには、買収価格にプレミアムを上乗せする必要があります。
これをM&Aでは、「TOBプレミアム」と呼びます。「TOBプレミアム」は、企業価値の算出結果に対して、2〜4割程度となるのが一般的です。
非流動性ディスカウント
株式を売買する際、上場企業の株式は簡単に売買できますが、非上場企業の株式はそうはいきません。なぜなら、非上場株式は現金化しづらく、証券取引所を通じた売却をすることができません。そのため、自ら買主を探す必要が出てきます。
よって、非上場企業とM&Aを実施する際は、買収価格をその分低く見積もる場合があります。これを「非流動性ディスカウント」と呼びます。つまり、非上場企業のM&Aでは、買収価格が多少下方調整される可能性があるということです。
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まとめ
今回は、M&Aの買収価格についてお伝えしました。
M&Aでは、企業価値や調整項目を基に「買収価格」を算出します。「買収価格」は、用いるアプローチ方法や微調整項目によって変動し、M&Aを行う企業によっても異なるため、一概にこの価格が正解であると断言することはできません。
「買収価格」は、最終的に売り手と買い手の交渉によって決まります。しかし、何の基準もなくやみくもに交渉をはじめても、当事者同士の利害が相反し、いつまでも決定できないでしょう。そうならないためにも、まずはじめに「企業価値」および「買収価格」を算出することが大切です。
ただし、M&Aの買収金額を算出するには専門的な知識が必要であるため、自力だけで算出するのは大変困難です。M&Aを実施する際は、その都度M&Aアドバイザリーに相談に乗ってもらうことをおすすめします。
要点をまとめると、下記の通りです。
・M&Aにおける買収価格の決め方
→「企業価値」の算出、「バイヤーズバリュー」の算出、最終的な「買収価格」の交渉
・「企業価値」と「買収価格」の違い
→企業価値=企業全体としての価値を数値化したもの
→買収価格=企業価値に微調整を加えた価格
・「買収価格」の算出方法
→買収価格=企業価値±微調整(シナジー効果、各種プレミアム、リスク)
・企業価値の算出方法
→インカムアプローチ、マーケットアプローチ、コストアプローチ
・M&Aにおける買収価格の調整
→支配権プレミアム、TOBプレミアム、非流動性ディスカウント
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。