2024年4月23日更新事業承継

クリーニング業界の動向とM&Aのメリット!流れや注意点と売却・買収事例7選を解説【2024年最新】

本記事では、クリーニングのM&A・事業承継の動向、課題、成功ポイントを解説します。クリーニング業界では、動向変化から大手グループを中心にM&Aが増加しています。クリーニング業界のM&Aを検討している方は、必見の内容です。

目次
  1. クリーニングとは
  2. クリーニング業界の現状と課題
  3. クリーニングのM&A・事業承継の動向【2023年最新】
  4. クリーニングのM&A・事業承継の事例
  5. クリーニングのM&A・事業承継のメリット
  6. クリーニングのM&A・事業承継の流れ
  7. クリーニングのM&A・事業承継成功ポイント
  8. クリーニングのM&A・事業承継の3つの注意点
  9. クリーニングのM&A・事業承継の価格算定方法
  10. クリーニングのM&A・事業承継でおすすめの相談先
  11. クリーニングのM&A・事業承継のまとめ
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クリーニングとは

近年はクリーニング業界でのM&Aが増えてきました。まずはクリーニング業界の定義や特徴、現状、課題などを説明します。

クリーニング業界の定義

クリーニング業とは、顧客から預かった衣類などの繊維製品を溶剤・洗剤等を使用して洗濯して顧客へ返却するサービスです。

クリーニング取次店・一般クリーニング所・リネンサプライ・ホールセールの業態があり、一般クリーニングサービスは、顧客が店頭に衣服などを持ち込む形式と事業者が各家庭を訪問して受け取る形式に分かれます。

リネンサプライは、タオル・シーツ・パジャマ・制服などの繊維製品を契約先へ貸出し、定期的に回収を行い洗濯して再び契約先へ納品するシステムです。

一般クリーニングとの大きな違いは、リネンサプライ事業者が繊維製品(貸し出し用)の在庫を持つ点であり、貸出しだけでなく補修なども行います。

クリーニング業界の特徴

装置産業

クリーニング事業は、営業部門・集配部門・取次店・洗濯工場により構成されており、行程・作業量ともに大量であるため機械設備の導入による業務効率の向上は必要不可欠です。

衣類などの新素材や環境規制強化への対応や省力化対策などにより、クリーニング業界では年を追うごとに高度化・自働化が求められるようになってきました。

また、価格競争の激化で個人経営のクリーニング店は激減し、直営の洗濯工場を持つ大手クリーニング店が生き残っていますが、需要が低下傾向にあるため以前のような「薄利多売」スタイルでは厳しい状況となっています。

季節変動が大きい

クリーニング業界の売り上げは季節による変動が大きく、需要が集中しやすいは4~6月と10月の衣替えシーズンです。以前は繁忙期以外でもある程度の収入を見込むことができましたが、家庭洗濯やライフスタイルの変化によってクリーニング店の利用は減ってきました。

収益を安定させるために、深夜でも利用できるサービスを提供したり、無人化で営業できるシステムでコストを抑えたりなど、時代のニーズに合わせた営業スタイルを導入して利益拡大を図る動きもみられます。

クリーニング業界の現状と課題

クリーニング業界の現状

従来のクリーニング業界は、市場規模が大きく一大産業を誇っていましたが、近年は業界全体に起こる変化から市場規模が急速に縮小しています。

クリーニング市場規模

総務省 家計調査データを元に作成

出典:https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00200561&tstat=000000330...

クリーニング業界の市場規模は、ピーク時だった1992年と比べると大きく減少しています。厚生労働省「令和3年度 衛生行政報告例の概況」によれば、2021年度末時点での「クリーニング業」は 80,162施設であり、前年度に比べ 4.2%(3,538施設の減少)の減少となりました。

クリーニング業のうち 「取次所を除くクリーニング所」は22,580 施設であり、こちらも前年度から3.5%(823施設の減少)減少しています。

また、総務省の家計調査によれば、2021年における1世帯あたりの洗濯代は3,679円であり、2014年の6,088円と比べると約40%の減少となりました。

参考:厚生労働省「 令和3年度衛生行政報告例の概況」
参考:総務省 家計調査
 

仕入れ値の上昇

クリーニング業では溶剤や洗剤が必要ですが、近年は原油価格高騰の影響によってこれらの仕入価格が上昇しています。ほかのサービス業と比べると、クリーニング業の事業構造では価格転嫁がしにくいため、原油価格や為替の動きは利益に与える影響が非常に大きいです。

また、近年は環境問題への配慮が求められており、工場が排出する化学物質の規制が強化されました。さらに特定の溶剤は製造や輸入が禁止されるなどの措置がとられており、クリーニング業界の売り上げに大きな影響を与えています。

ファッションのカジュアル化

現在はファストファッションに代表する低価格帯の衣類が増え、かつては夏場でもワイシャツにスーツというスタイルだったサラリーマンにも、クールビズなどのビジネスカジュアルが浸透してきました。

クリーニングが必要だった衣類が減り、買い替えしやすい価格帯のものが多くなったことも需要減少につながっています。

家庭洗濯への移行

最近では家庭で洗濯できる衣類が多くなっており、洗濯機や洗濯洗剤も高性能・高機能なものが増えてきました。

また、イージーケアやノーアイロンと呼ばれる手入れの簡単な素材を使用した衣類も増えてきたため、クリーニング需要は以前に比べ減少しています。

節約志向やその他

コロナ禍に広がり始めた在宅ワーク・テレワークは今や多くの企業で採用されるようになり、働き方やライフスタイルは大きく変化しました。

スーツやワイシャツなどの選択需要の減少や衣替え習慣の希薄化なども、クリーニング業界の需要が減少した要因と考えられます。

クリーニング業界の課題・展望

時代の変化に伴い、クリーニング業界は厳しい状況に晒されています。単純な経営状態の悪化だけでなく、後継者の問題も深刻化しているため、いずれかのタイミングでM&A・事業承継を実行する必要があるものの、いくつかの課題があります。

小規模のクリーニング事業者は、M&A規模が小さいため、M&Aの買い手や仲介事業者から注目されない可能性があります。M&A相手や仲介者から注目されない場合、M&A・事業承継を成立させられないため、M&A・事業承継に関して相談できる専門家を確保することが重要な課題です。

中規模のクリーニング事業者は、比較的規模が大きいためM&Aの買収ニーズは高いものの、「市場縮小の影響により経営状態の悪化が激しい」点が課題であり、再建が難しいと判断された場合は買い手が見つからないケースもあります。

クリーニングのM&A・事業承継の動向【2023年最新】

クリーニング業界の現状を受けて、M&A・事業承継の動きが活性化しています。特に目立っているのは、以下の点です。

大手グループによるM&Aの増加

大手グループは、市場シェア拡大のために、M&Aで中小規模のクリーニングを買収し、大型商業施設や駅ビルなど各所への出店を強化しています。既存のクリーニングをM&A買収することで、新規出店の手間や従業員の確保を省けるため、効率的に事業規模を拡大させています。

中小のクリーニング店は競争激化によりM&A・事業承継を希望

大手グループは豊富な経営資源を活用して順調に事業エリアを拡大させている一方で、中小のクリーニング店は激化する競争に付いていくことが難しく、経営状態が悪化する傾向にあります。

この解決策として注目されているのが、M&A・事業承継です。M&Aで大手クリーニングの傘下に入ることで、業界での生き残りを目指す企業が増えています。

M&Aの買収側では、グループ全体の企業価値の向上を目指しているケースが多いため、顧客リストや販路などの経営資源を共有させることが一般的です。そのため、「クリーニングの工場・技術を保有しているものの顧客が少ない」といった特徴を持つ事業者からすると、飛躍的な成長を図るチャンスともいえるでしょう。

インターネットを活用したアパレル業への出資

クリーニング業界は客数の減少・原材料費の上昇などの問題点が目立っているものの、インターネットを活用した新たな事業性を見出す動きも生まれており、希望が見え始めています。

とりわけ宅配クリーニング・ファッションレンタル専用事業者は、一定の市場シェアを獲得しており、大手クリーニング事業者やアパレル事業者から注目を集めています

【関連】リネンサプライ・クリーニング会社のM&A動向!事例、売却・買収の流れ、注意点を解説!| M&A・事業承継の理解を深める

クリーニングのM&A・事業承継の事例

①きょくとうが二葉のクリーニング事業の一部を譲受

2021年11月、きょくとうは二葉が手掛けるクリーニング事業の一部を譲受すると発表しました。二葉はクリーニング店舗の運営に関する事業を行う企業で、杉並区・中野区・東京都武蔵野市に13のクリーニング取次所を持っています。

きょくとうが譲受するのは13店舗のうち7店舗で、関東エリアでの効率化および営業基盤の強化を図るとし、7店舗合計で年間8000万円の売上を見込んでいます。

参考:株式会社きょくとう「事業の一部譲り受けに関するお知らせ」

②白洋舎による日本インテリアサプライの吸収合併

2020年6月、白洋舍は連結子会社の日本リネンサプライを吸収合併すると発表しました。日本リネンサプライは、横浜エリアのリネンサプライ事業を担当しています。

コロナ禍の影響でリネンサプライ事業は厳しい環境下にあり、吸収合併によって首都圏エリアにおける事業運営の効率向上を図り、収益力回復することが目的です。本M&Aでは白洋舎が存続会社、日本インテリアサプライは消滅会社となり解散します。

参考:株式会社白洋舍「子会社の吸収合併(簡易合併・略式合併)に関するお知らせ」

③きょくとうが新幸のクリーニング取次所20店舗を譲受

2019年5月、きょくとうは新幸がもつ首都圏のクリーニング取次所20店舗を譲受したと発表しました。譲受したのは、東京23区のうち新宿区・千代田区・世田谷区など8区と埼玉県新座市にある合計20店舗です。

きょくとうは、需要の中核である関東エリアの営業基盤強化を目的としており、譲受により同エリアの店舗数を82店舗から102店舗へ拡大しています。

参考:株式会社きょくとう「事業の一部譲り受けに関するお知らせ」

④きょくとうが清洗舎からクリーニング取次店の一部を取得

2019年10月、きょくとうは有限会社清洗舎から首都圏のクリーニング取次所4店舗を譲受したと発表しました。

譲受したのは、東京都心に近い3区に位置する合計4店舗で、関東エリアにおける営業基盤のさらなる強化を目的としています。

参考:株式会社きょくとう「事業の一部譲り受けに関するお知らせ」

⑤白洋舎による北海道リネンサプライの子会社化

2016年、白洋舎は北海道旅客鉄道(JR北海道)の子会社である北海道リネンサプライの株式を追加取得し、同社を子会社化したと発表しました。

北海道リネンサプライは、鉄道やホテル向けのリネンサプライ事業、法人向けクリーニング事業を展開しており、道内では確固たる営業基盤をもっています。白洋舎は北海道地区の業容拡大や生産性向上を目的として、本M&Aに至りました。

参考:株式会社白洋舎「北海道リネンサプライ株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ 」

⑥ロイヤルネットワークによるほくしんの新設分割会社の子会社化

2016年、ロイヤルネットワークは、ほくしんが新設分割によって設立した新会社を完全子会社化しました。ほくしんは多摩地区と神奈川県を中心としてクリーニング店を展開しており、本M&Aに先駆け譲渡対象の45店舗を新設分割により新設会社へ承継しています。

ロイヤルネットワークは「うさちゃんクリーニング」を展開する企業です。ほくしんの新会社を子会社化し、段階的に「うさちゃんクリーニング」ブランドへ切り替え、府中市に新工場を建設するとしています。

⑦きょくとうによる神戸ホープの合併

2014年2月、きょくとうは、神戸市でクリーニング業を手掛ける神戸ホープを吸収合併しました。きょくとうが存続会社、神戸ホープを消滅会社とする吸収合併方式で行われ、効力実行日をもって神戸ホープは解散します。

きょくとうは神戸ホープの好立地の店舗を取り込むことで、エリア内での安定した事業運営が見込めるとし、本M&Aに至りました。

参考:株式会社きょくとう「株式会社きょくとうと神戸ホープ有限会社の合併契約締結(簡易合併)に関するお知らせ 」

クリーニングのM&A・事業承継のメリット

本章では、クリーニング事業を対象とするM&A・事業承継に期待されるメリットを、当事会社それぞれの立場に分けて取り上げます。

売却側のメリット 買収側のメリット
・後継者問題の解決
・従業員の雇用先を確保
・売却・譲渡益の獲得
・屋号を継続し、地域の人たちからの信頼を維持
・個人保証・担保などからの解放
・事業をスムーズに推進できる
・優秀な従業員を獲得できる

売却側の5つのメリット

特に大きいメリットは、以下の5点です。

①後継者問題の解決

クリーニング業界では、少子高齢化や人口の都市部集中の影響で、後継者問題が深刻化しています。黒字経営で順調に事業規模を拡大していても、後継者が不在のままでは企業の未来は廃業しかありません。

その点、M&A・事業承継であれば、後継者探しや経営を託せるため、多くのクリーニング事業者が抱えている後継者問題を解決できます。

②従業員の雇用先を確保

クリーニング業界では、経営状態の悪化や後継者問題により、廃業を視野に入れている企業が増加しています。廃業は会社が消滅するほか、従業員も解雇しなくてはならないため、経営者としてはできる限り避けたい選択肢です。

M&A・事業承継では、従業員の雇用先を確保することが可能です。M&A先との交渉で従業員の雇用条件に関して取り決めをしておくことで、買収と同時に一方的に解雇されるような事態を防げます。

③売却・譲渡益の獲得

クリーニングのM&A・事業承継では、会社の価値に応じた売却・譲渡益を獲得できます。企業価値評価と呼ばれる評価方法を用いることで客観的な価値を算出し、M&A交渉により最終的な取引価格を決定します。

株式譲渡であれば株主(経営者)が獲得します。中小のクリーニングの場合、経営者およびその親族が大半の株式を保有していることが多く、売却・譲渡益の大半の獲得を期待できます。

④屋号を継続し、地域の人たちからの信頼を維持

クリーニング業界では、地域密着型で古くより地域の人から支えられながら成長してきた事業者が多いです。クリーニングの利用が生活サイクルに組み込まれている消費者も少なくないため、突然廃業すると信頼を失う可能性があります。

M&A・事業承継では屋号を継続させられるため、突然廃業して地域の人から信頼を失う心配がありません。

⑤個人保証・担保などからの解放

個人保証・担保は、金融機関から融資を受ける際に提供します。中小規模のクリーニング事業では、大手と比較すると信頼性の点で劣る部分があるため、事業資金を調達するには経営者の個人資産を担保に入れるなどの対価が必要です。

個人保証・担保は経営者にとって大きなストレス要因ですが、M&A・事業承継であれば会社や事業とまとめて引き継いでもらえます。

買収側の2つのメリット

一方で、買収側に期待されるメリットには、以下のような項目が挙げられます。

  • 事業をスムーズに推進できる
  • 優秀な従業員を獲得できる

クリーニング事業は、設備投資や事業ノウハウなどが不可欠な業種であり、ゼロの状態から起業を図る場合、非常に多くの資金と労力が必要です。

その点、M&Aによる買収を利用すれば、従業員を含めた経営資源をまとめて引き継げるため、事業をスムーズに推進でき、経済面・効率面からメリットを享受できます。

事業をスムーズに推進できる

クリーニング事業は、設備投資や事業ノウハウなどが不可欠な業種であり、ゼロの状態から事業を立ち上げるとなれば多くの資金と労力が必要です。

また、店舗を構える場所は集客に大きく影響しますが、好立地エリアはすでに競合店が出店済みであるケースもあります。M&Aであれば、好立地の店舗をそのまま取得できる点も買収側のメリットです。

優秀な従業員を獲得できる

また、売却側の従業員を引き継ぐことも可能です。M&Aでは従業員などのリソースをまとめて取得することができるので、事業をスムーズに推進でき、生産性や効率面でのメリットにも期待できます。

クリーニングのM&A・事業承継の流れ

クリーニングのM&A・事業承継では、さまざま必要な手続きを経る必要があり、基本的な流れが決まっています。この章では、クリーニングのM&A・事業承継の流れを解説します。

①M&Aの専門家に相談

クリーニングのM&A・事業承継は、M&Aの専門家に相談するプロセスから始めます。M&A先の選定・交渉などの手続きが必要になるため、専門家の知見を頼ることで、今後の進行を円滑に進めることが可能です。

M&Aの専門家は数多く存在しますが、クリーニングのM&A・事業承継でおすすめの相談先はM&A仲介会社です。中堅・中小規模の仲介を得意とする会社が多く、クリーニングのM&A売却に関して親身になって対応してもらえる可能性が高いです。

②M&A先の選定と交渉

M&Aの専門家とアドバイザリー契約を締結したら、M&A先の選定を行います。選定では個人的なネットワークも利用できるものの、専門家が保有するネットワークを活用することで広範囲から好条件の相手を見つけやすくなります。

複数のM&A先候補が見つかったら、各候補との交渉に入ります。売却側では企業概要書などの資料を提供し、買収側は提供された資料をチェックすることで買収検討を行うのが一般的です。

③M&A先のトップと面談

M&Aの専門家とアドバイザリー契約を締結したら、M&A先の選定を行います。選定では個人的なネットワークも利用できるものの、専門家が保有するネットワークを活用することで広範囲から好条件の相手を見つけやすくなります。

複数のM&A先候補が見つかったら、各候補との交渉に入ります。売却側では企業概要書などの資料を提供し、買収側は提供された資料をチェックすることで買収検討を行うのが一般的です。

④基本合意書の締結

基本合意書とは、現段階の交渉内容に関して双方の合意が得られていることを示す契約書のことです。トップ面談を経て双方がM&Aに対して前向きであれば、基本合意書を締結します。

基本合意書の主な記載内容は、M&Aの取引価格・手法・デューデリジェンスの規定などです。ここまでの交渉内容や今後の進行を確認しておくことで、M&A成約に向けた足掛かりを作っておきます。

⑤買収側のデューデリジェンスの実施

デューデリジェンスとは、M&A対象の価値・リスクを調査する活動のことです。売却側に潜在的なリスクが存在しないかどうか、買収側より専門家が派遣されて徹底的に調査が行われます。

クリーニング事業におけるデューデリジェンスの焦点は、簿外債務であることが多いです。財務諸表に記載されない潜在的な債務であるため、買収側からすると大きなリスクであり、M&A成約前に洗い出しておきます。

⑥最終契約書の締結

最終契約書とは、M&Aの最終的な交渉内容について締結する契約書のことです。最終契約書は正式名称ではなく、M&Aの手法によって株式譲渡契約書や事業譲渡契約書などの名称が用いられています。

契約書に記載される事項は、すべて法的な効力を伴います。締結後に一方的に破棄すると、損害賠償問題に発展することもあるため、締結の際は記載事項を慎重に確認する必要があります。

⑦クロージング

クロージングとは、売却側のM&A対象の引き渡しと、売却側の取得対価の支払いを行うことです。M&A交渉は最終契約書の締結段階で完了していますが、引き渡しのための準備が必要であるため、契約書の締結日から一定期間を空けてから実施されるケースが多いです。

なお、株式譲渡の場合、手続きが簡便であるため、最終契約書の締結と同時に実施することがあります。中小規模のクリーニングのM&Aでは株式譲渡を用いることが一般的であるため、早期のクロージングを目指すことが可能です。

クリーニングのM&A・事業承継成功ポイント

クリーニングのM&A・事業承継の成功率を高めるためには、複数のポイントを押さえておくことが大切です。この章では、特に重要なポイントをM&A事例付きで解説します。

双方が納得するM&Aを行う

クリーニングのM&A・事業承継は、片方の利益のみを追求すると、その後の経営が円滑に進まなくなるおそれがあります。

安定して事業を存続させるためにも、双方の納得できる形でM&A・事業承継を成立させることが望ましいです。

売却のタイミングを適切に判断

業界動向は常に変動しているため、M&A・事業承継のシナジー効果を最大化できるタイミングも常に変化します。クリーニングのM&A・事業承継は、売却のタイミングも重要です。

無理のない売却価格でM&Aを進める

M&Aの売却側としては、できる限り高い価格で売却したいと考えるのが通常です。しかし、売却価格が高すぎると、売却タイミングを逃してしまうおそれがあるため、適切な価格設定が望ましいでしょう。

デューデリジェンスに向けた準備を行う

買い手との交渉がスムーズに進み基本合意を締結したら、次は売り手企業に対してデューデリジェンスが実施されます。デューデリジェンスは、人事・法務・財務などの面から各専門家が買収リスクを調査することです。

クリーニング業の場合、工場や店舗のプレス機械などの設備の状態について、老朽化が進んでいないか、メンテナンスは適切に行われっているかなどを確認されます。

売り手側はM&Aを行う前に、自社の設備状態を確認しメンテナンスや補修などで対応できる箇所は事前に済ませておくとよいでしょう。

M&Aの専門家に相談する

クリーニングのM&A・事業承継では、通常の業務を行いながら交渉や手続きを進めていかなければなりません。複雑な手続きだけでなく、業界の動向調査や専門的な知識が必要な場面も多いです。

効率的かつスムーズなM&A進行のためには、M&Aの専門家のサポートを得ることをおすすめします。

クリーニングのM&A・事業承継の3つの注意点

クリーニングのM&A・事業承継は、マイナス要素があると取引価格に悪影響を与えるため、注意しておくべき点があります。特に注意するべきポイントは、以下の3点です。

土壌汚染に関して

近年、クリーニングに使用される特殊な洗剤が土壌汚染の原因になる可能性が指摘されており、特に「テトラクロロエチレン(パークロロエチレン)」と呼ばれる溶剤は法改正によって厳しく規制されています。

そのため、クリーニング工場の取り壊しを行った場合は土壌汚染調査を義務付けられることも多いです。クリーニング工場の取り壊しとM&A・事業承継のタイミングが重なる場合は買収側にとって負担となる可能性が高く、マイナス評価につながる可能性があります。

賃金の未払いには注意

クリーニング業界に限らず、経営状態が悪化すると、人事・労務面で問題が発生する企業は少なくありません。従業員の賃金未払いが発生している場合、M&Aに際して買収側に法務・人事リスクを指摘されて、大きく評価を引き下げられる要因となります。

そのため、売却側では人事・労務面で管理を徹底し、買収側では法務・人事デューデリジェンスにより潜在的なリスクを徹底的に把握する必要があります。

設備の老朽化に注意

クリーニング事業を行うには、事業規模に応じた設備が必要です。適切に機能している設備に関しては資産として評価されますが、劣化が激しい設備は処分費用がかかるため負債に分類される場合もあります。設備の丁寧な扱いを心掛けていても経年劣化は避けられず、定期的な手入れ・交換が必要です。

クリーニングのM&A・事業承継の価格算定方法

クリーニング業界のM&Aでは、取引価格を算定する際、主に以下の3種類の方法を用います。

  コストアプローチ インカムアプローチ マーケットアプローチ
主な手法 ・時価純資産法
・簿価純資産法
・DCF法
・残余利益法
・配当還元法
・類似会社比較法
・類似取引比較法
・市場株価法
基準となる要素 ・貸借対照表の純資産 ・収益力 ・類似会社
・過去のM&A事例
メリット ・高い客観性 ・収益性が加味される
・企業性質の反映
・高い客観性
・市場取引の反映
デメリット ・将来性は加味されない
・市場状況は反映しにくい
・主観や恣意が入りやすい ・企業性質は反映しにくい
・短期的な市場要因で評価がゆがみやすい
 

コストアプローチとは、企業の純資産の時価評価額等をもとに、株主資本価値を算定する評価手法のことです。これに対して、インカムアプローチとは、企業の将来の収益やキャッシュフローの予想を指標として企業価値を評価する方法をさします。

そして、マーケットアプローチは、評価対象企業の決算書等の数値に係数(一定の率)を乗じて価値を算出する方法です。

これらのなかから、現在の状態や今後の展望、企業が保有している事業の特性などから総合的に判断して適した手法で企業価値を算出します。また、1つの方法だけでなく、複数を組み合わせて企業価値を算出する場合もあります。

クリーニングのM&A・事業承継でおすすめの相談先

M&A総合研究所は、主に中小・中堅規模のM&Aを扱うM&A仲介会社です。中堅・中小規模の案件を得意としており、幅広い業種における豊富な実績を有しています。

また、M&Aの知識・経験が豊富なアドバイザーが担当につき、過去の相談・仲介で培ってきた経験・ノウハウを生かしてながら、クリーニングのM&Aをご相談からクロージングまで親身になってサポートいたします。

M&Aの料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ、譲受企業様は中間金がかかります)

無料相談をお受けしていますので、クリーニングのM&Aをご検討中であれば、お気軽にM&A総合研究所までご連絡ください。

M&A・事業承継ならM&A総合研究所

クリーニングのM&A・事業承継のまとめ

クリーニング業界は、市場縮小による業界再編の動きが活性化しており、大手によるM&A買収や中小による生き残りをかけたM&A・事業承継が増加しています。

クリーニングのM&A・事業承継の成功率を上げるためには、成功ポイントや注意点を押さえておくことが大切です。その際は、M&Aの専門家にサポートを受けると、効果的に対処できます。

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印刷会社を取り巻く業界では、デジタルブックの普及による経営悪化や競争激化といった状況から脱却を目指すため、事業承継を行う会社が見られます。当記事では、事業承継のメリットを踏まえながら、印刷会社で...

介護事業の事業承継を徹底解説!流れや成功事例・メリット・デメリットは?

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介護事業を取り巻く業界では、各企業で事業承継を検討・実施するケースが増加しています。当記事では、介護事業で事業承継が増えた理由を確認した上で、基本的な手続きの流れや事業承継の成功事例、メリットや...

クリニック・医院の事業承継の手続き方法を徹底解説!費用や相場・注意点は?

クリニック・医院の事業承継の手続き方法を徹底解説!費用や相場・注意点は?

クリニック・医院では、院長の高齢化による後継者不在の問題が深刻化しており、業界内で事業承継を目指す動きが見られるようになりました。当記事では、手続きの流れや費用相場、注意点に触れながらクリニック...

歯科医院の事業承継とは?手続き方法から費用・相場・メリットまで解説!

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歯科医院では、院長高齢化により廃院せざるを得なくなるケースが顕著です。そんな中、事業承継で歯科医院存続を目指す事例が目立つようになりました。当記事では、手続き方法や費用相場、メリットとデメリット...

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