M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2022年10月17日更新会社・事業を売る
ネームクリアとは?意味とM&Aにおける活用のメリット・デメリットをご紹介
ネームクリアは、M&A初期のプロセスで重要な転換点であり、買収側のM&Aへの意思表示があったことを意味します。ネームクリアとは、より具体的なM&Aの検討や交渉のため、秘密保持契約の締結後、相手側にさまざまな情報を開示することです。
ネームクリアとは
ネームクリアとは、M&Aのプロセスのなかで、相手会社に対し社名を含めて会社情報を全て開示することです。秘密保持契約締結後にしか行われません。それ以前は両社の間にM&A仲介会社がいたとしても、会社情報は社名が伏せられて概略程度の情報のみ伝えられます。
匿名状態レベルでの会社情報を記した資料は、ノンネームシートまたは略してノンネームと呼ばれています。M&Aの最初の検討段階では、ノンネームシートにより行われるのが一般的です。
そノンネームシートをみて、その会社と具体的にM&Aを検討したいと考えるステップに移行するのが、秘密保持契約締結でありネームクリアと呼ばれるプロセスになります。ネームクリアには、M&Aの相手として正式に検討対象として考えるといった意味合いです。
つまり、この段階ではM&Aの実行に関して約定しているわけではなく、その義務もありません。ネームクリア後の検討や交渉の結果、M&Aが破談となることも多々あります。
ネームクリアの意義と情報漏洩のリスク
M&Aは、利害の一致する買い手と売り手が出会わないと成立しません。とはいえ、自社のみで探すのは困難であり、ほとんどの会社はM&A仲介会社に相手探しを委託します。そこで、M&A仲介会社は候補となる会社のノンネームシートを作成する役割を担います。
ここでいうノンネームシートは、買収希望会社に対して売却希望会社をリストアップする構図です。ノンネームシートに掲載される会社情報は、秘密保持契約が締結されていないため、ごく限られた内容です。
単に社名を秘すだけでなく、情報から対象会社が特定されることがないように配慮されています。なぜなら、この段階で会社を特定できる情報を載せてしまっては、情報漏洩につながるためです。M&Aによる売却を模索していることが外部に漏れることは、危機的状況を招く危険性があります。
例えば、取引先が新たな取引にためらうかもしれませんし、融資元の金融機関が融資を引き上げてしまうかもしれません。ただし、その一方、限られた情報では、本格的にM&Aを検討できません。
そこで、目ぼしい会社と思われる場合にネームクリアを実施し、お互いに会社同士の情報を公開し合います。したがって、ネームクリアは、会社同士の情報を守りつつ本格的にM&Aを前進させるために必要不可欠なプロセスです。
ネームクリアのメリットとデメリット
M&Aで必然のプロセスであるネームクリアは、避けては通れない手続きです。そのメリットは大いに享受すべきですが、ネームクリアにもデメリットがあります。ネームクリアのメリットとデメリットをきちんと把握しておきましょう。
ネームクリアのメリット
ネームクリアのルールや過程そのものが、そのままメリットといえます。つまり、M&Aに関する情報を、公表するまで外部に対して秘密にできることです。特に売り手の立場の場合、上述したように取引先や融資元の金融機関との関係悪化を防げます。
それ以外にも、M&Aにおいて会社の重要な資産である、人材の流出を防げる効果もあります。従業員の立場で不確かな会社の売却話などを聞くと、ネガティブな印象を持ちがちです。そうすると、退職し転職を考えてしまう従業員が出現しかねません。
M&Aでは人材も重要視されますから、極力、M&A前の人材の流出は避けたいものです。ネームクリアなど一連のM&A手続きのなかで情報漏洩を制御するには、信頼できるM&A仲介会社に依頼するのがおすすめです。
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ネームクリアのデメリット
ネームクリアの過程であるノンネームシートのプロセスに、デメリットがあります。買い手に渡されるロングリストやショートリストには、会社を特定できる事柄は記載されていません。つまり、具体性に欠けた情報だといえます。
ノンネームシートの情報だけでは、M&Aの実行に踏み切れない買い手もいるでしょう。もしもすべての情報がオープンになっていたら、ベストマッチングとも思えるような売り手がいたとしても、ノンネームシート情報では候補企業に残らない可能性があります。
これは大きなチャンスロスになります。そのため、売り手側はネームクリア前のノンネームシートの段階でも、自社の利点が伝わるような資料作りの努力が大切です。買い手側も限られた情報のなかから、できるだけ売り手の真の姿を見極められるような分析力を磨きましょう。
M&Aにおけるネームクリアの流れと手続き
本章では、M&Aを実施する方針を固め、現実的にM&Aに向かって動き出す場合のネームクリア段階に至るプロセスを具体的に解説します。ネームクリア後の段階も含めた6工程に分けて掲示します。
①M&A仲介会社・アドバイザリーの利用
会社を売却したい経営者と会社を買収したい経営者のそれぞれが、その決意をしたときがM&Aの始まりです。通常は売り手・買い手ともに、M&A仲介会社と業務委託契約を結び、M&Aに向けた具体的な一歩を踏み出します。
M&A仲介会社は業務委託を受けた会社に対して売却または買収の条件や希望金額などをヒアリングし、その内容を登録します。この際、ネームクリアなども含めてM&Aの基本的な知識や資金の準備ができていると、スムーズにM&Aを実施する可能性が高くなります。
②資料作成
売り手側にとって重要なのが、この段階で行う資料作成です。買い手側に対し、売り手企業の特徴や長所が十分に伝わる内容が求められます。特に注力したいのは、買い手側が最初に見ることになるノンネームシートの出来栄えです。
ノンネームシートでは、会社が特定されないように限られた情報しか掲載されません。その条件下であったとしても、売り手企業の魅力が十二分に伝わる資料となるよう、M&A仲介会社の選任アドバイザーと相談しながら行うことが肝要です。
③ノンネームシートの提示
基本的にM&A仲介会社を通じてM&Aを実施しようとする場合、買い手側に対し売り手側の情報を提供するのが一般的です。M&A仲介会社は、買い手側の要望に合うとおぼしき売り手候補をピックアップし、複数社分のノンネームシートを提示します。
④買い手の検討
買い手側は、提示されたノンネームシートからM&Aの取引先候補選定を実施する流れです。このときの第一段階の候補先リストは、ロングリストと呼ばれています。場合によっては、ロングリストは数十社に及ぶこともあります。
ロングリストから数社レベルまで候補を絞り込んだ段階のものは、ショートリストです。ショートリストからさらに1社まで絞り込むか、2~3社を並行させたまま次の段階に進むのかは、買い手側の自由です。
⑤ネームクリアで打診
買い手側が買収候補先を1社に絞ると、買収候補先に関してより精細に検討するにはすべての情報が必要となるため、ネームクリアを打診します。M&A仲介会社から売り手側に対して買い手側のノンネームシート情報が渡され、ネームクリアの是非を尋ねられます。
売り手側でネームクリアの承認が出れば、秘密保持契約(NDA)が締結される流れです。秘密保持契約の締結後は、お互いのすべての会社情報の開示が解禁され、経営者同士の面談なども実施されます。
⑥M&A手続きの開始
ネームクリア後、売り手側・買い手側それぞれの検討で問題が出ず、M&A実施に向けて前進する判断となった場合、M&A仲介会社が間に入って、買収金額その他の具体条件のすり合わせ(交渉)を行います。
条件交渉は、買い手と売り手の間で、取得シェア・金額・基本的なスキーム・スケジュール(契約締結日・クロージング日)など基本的な条件に関して合意を取り付けることを目的に実施されます。
上記に加えて、買い手側は買収方法や金額などを記載した意向表明書を提示するのが一般的です。買収の諸条件に関して無事に合意が形成されれば、基本合意契約書を締結します。この段階まで到達すれば、そのままM&Aが実行されることが多いです。
ただし、この後もデューデリジェンスの実施・最終譲渡契約書の締結・クロージング(株式譲渡などの具体的な手続き)・PMI(Post Merger Integration=買収後の現実的な経営統合作業)など、さまざまなプロセスを実施しなければなりません。
M&Aにおけるネームクリアの役割と専門家の利用
ネームクリアの過程では、デメリットは存在します。しかし、ネームクリアそのものは、非常に必要性の高いルールです。特に仲介業者を通じてM&Aを行う場合、ネームクリアのルールは重要です。
自社を守る意味でも、相手企業への礼儀を尽くす意味でも、必要なルールにほかなりません。これとは反対に、ネームクリアなどのルールを取り外し、自社の魅力を全面的にアピールしてM&Aの実施を目指す考え方もあります。
その場合、M&A仲介業者を利用せずM&Aを実施します。会社の規模が大きく、知名度が高ければ不可能ではありません。仲介業者を利用しないことにより手数料負担なども発生しませんから、より少ない資金でM&Aを完結可能です。
しかし、中小企業が単独でM&Aを実施するには、専門的な知識やさまざまな手続きがあるため、現実的には非常に難しいです。中小企業の場合は、より多くの選択肢を持つためにも、M&A仲介会社などを利用してM&Aを目指すのが得策といえます。
いうなれば、M&Aの実施を目指す場合、会社の規模が小さいほどネームクリア・ルールの必要性が高まります。
ネームクリアのまとめ
ネームクリア・ルールで勘違いしがちなのが、ネームクリア要請があったことを「M&Aの成約間違いなし」と早とちりしてしまうことです。ネームクリアはM&Aのプロセスとして大きな転換点ではなりますが、1つ段階が進んだことに過ぎません。ネームクリアとなっても、不必要に気を抜いてしまわないよう注意しましょう。
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。