2022年10月26日更新事業承継

事業承継の戦略策定方法!手法別メリット・デメリット、成功ポイント、事例も徹底解説

事業承継には、親族内事業承継・親族外事業承継・M&Aによる事業承継の3種類があり、いずれも計画的に行うことが重要です。本記事では、事業承継を戦略的に行う方法や成功のポイント、実際に事業承継を行った会社の事例などを解説します。

目次
  1. 事業承継とは
  2. 事業承継の現状と課題
  3. 事業承継の手法別メリット・デメリット
  4. 事業承継を行う方法・手順
  5. 事業承継の戦略策定方法・ポイント
  6. 事業承継に役立つ支援
  7. 事業承継の相談先
  8. 事業承継の事例
  9. 事業承継の戦略策定方法まとめ
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事業承継とは

事業承継とは、会社や個人事業を新しい経営者に引き継ぐことです。事業承継の戦略はいろいろありますが、例えば中小企業の場合は、旧経営者が保有している株式を新しい経営者に売却して、経営権を移動させる株式譲渡がよく利用されます。

個人事業の場合は株式の売却はできないので、事業を行うための施設や不動産などを売却する事業譲渡という戦略が利用されます。

事業承継の目的

M&Aによる事業承継は、後継者に会社を継がせること以外にもさまざまな目的があります。主な目的には、以下の5つがです。

【事業承継の目的】

  • 後継者問題の解決
  • 従業員の雇用先の確保
  • 倒産・廃業の回避
  • 事業の継続
  • 創業者利益の獲得

後継者問題の解決

後継者問題を解決できるというのは、M&Aによる事業承継の最大のメリットの一つです。特に、近年は親族内事業承継ができない会社が増えています。

それに代わる手段としてM&Aが非常に有用であるため、いかにM&Aによる事業承継を普及させるかが現在の重要な課題です。

国もM&Aによる事業承継の利用を推進しており、公的機関の設置や法整備などを進めているので、今後はM&Aによる事業承継で後継者問題を解決する事例はさらに増えてくると考えられます

【関連】跡取りがいない会社のM&Aを成功させるには?M&A相談先の選び方や後継者不足問題を解説| M&A・事業承継の理解を深める

従業員の雇用先の確保

従業員の雇用先を確保する目的で、M&Aによる事業承継を利用するのもひとつの方法です。親族や従業員に後継者がおらず会社を廃業してしまうと、今まで育ててきた会社は当然消滅します。

そうなれば働いていた従業員は働き口を失うことになりますが、M&Aによる事業承継で会社を存続させれば、従業員の雇用先を確保できます。

倒産・廃業の回避

倒産や廃業を回避する方法として、M&Aによる事業承継を利用することも可能です。経営基盤のしっかりした会社に自社を買い取ってもらうことで、財務を立て直して倒産・廃業を回避できます。

倒産・廃業の危機にある会社にとって買い手をみつけるのはもちろん大変です。しかし、独自の強みを持ち、買い手側にとって何らかの魅力を感じる会社であれば、事業承継が成功する可能性もあります。

買い取ってもらえるはずがないと決めつけず、M&A仲介会社などに相談して最前の戦略を模索してみましょう。

【関連】廃業手続きの種類、業界別廃業手続きについて解説します| M&A・事業承継の理解を深める

事業の継続

何らかの事情で事業の継続が困難になった場合、M&Aによる事業承継を利用して、事業を引き継いでくれる相手を探すという戦略も非常に有効です。

M&Aによる事業承継は株式譲渡を利用することが多いですが、いくつか営んでいる事業のうち特定の事業だけが困難に陥っている場合、事業譲渡でその事業だけを売却するという戦略をとることもできます

不採算事業やノンコア事業を買い取ってくれる企業がうまくみつかれば、事業の選択と集中をしつつ、コア事業のための資金を得ることができます

創業者利益の獲得

株式譲渡でM&Aによる事業承継を実施すると、その売却益は株主のものになります。経営者はほとんどの場合創業者として株式を保有しているはずですから、その場合利益は経営者に入ることになります

経営者個人の利益ですから、そのお金を個人的な生活費などに回すことも可能です。40代・50代で早めに創業者利益を得てアーリーリタイアするための戦略として、M&Aによる事業承継を活用することもできます。

事業承継で引き継ぐ要素

事業承継で引き継ぐ要素は、以下の3つに大きく分けられます。

【事業承継で引き継ぐ要素】

  • 経営権・株式
  • 事業用資産
  • 知的資産

経営権・株式

事業承継を進めるためには、後継者に経験権を移行しなければなりません。つまり、会社の株式を後継者へ譲渡するということであり、有償で買い取ってもらうか、相続や贈与で株式を譲渡するか、方法はタイミングや事業承継の計画によって変わります

経営権・株式の移行は、従業員や取引先など関係者に大きな影響を与えるため、周りからの理解を得ながら慎重に進めるのが重要です。

事業用資産

経営に必要な事業用資産も、一般的には経営権や株式と同様に承継します。株式と事業用資産の承継時には贈与税・相続税が課されるので注意が必要です。

現在は、中小企業の事業承継を促進する目的で「事業承継税制」が実施されています。事業用資産に係る贈与税・相続税の支払いが猶予もしくは免除されるので「事業承継税制」の活用を視野に入れて進めていくとよいでしょう。

知的資産

事業承継では、現経営者の顧客とのネットワーク、事業に関する知識や経営スキルなど、目に見えない知的資産の承継も必要です。

知的資産の承継が最も時間と労力がかかります。後継者が完全に独り立ちができるまでに数年かかるケースもあるため、できるだけ早期に後継者を決定し、経営の承継に向けて時間をかけていくのが重要です。

事業承継の現状と課題

事業承継は、かつて親族に継がせることがほとんどでしたが、近年はM&Aや親族外事業承継が増え、戦略は多様化しています。この章では、戦略が多様化している事業承継の現状と課題について解説していきます。

【事業承継の現状と課題】

  • 親族内事業承継の数が減少
  • M&Aによる事業承継が増加
  • 従業員への事業承継も増加

親族内事業承継の数が減少

かつて、事業承継といえばほとんどが親族内事業承継でしたが、近年はその数が大きく減少しています

昔は大体8割から9割くらいが親族内事業承継だったのに対して、最近は3割から5割くらいにまで減少しているとされています

減少の原因としては、少子化と代々家業を継ぐ価値観の希薄化などが挙げられます。そもそも子供がいないので、親族に経営を継がせる選択肢がない経営者も増えています。

また、子供には自由に人生を歩んでほしいという思いから、経営者が自ら親族内事業承継を拒むケースも増えています。

M&Aによる事業承継が増加

親族内事業承継に代わって主流となりつつあるのが、M&Aによる事業承継です。M&Aによる事業承継では、M&A仲介会社が保有している承継先候補のネットワークのなかから、最も適した候補を洗い出して交渉していきます。

親族内事業承継や親族外事業承継に比べて、選択肢が圧倒的に多いのは大きなメリットです。

こういったメリットの大きさに加えて、近年は中小企業でもM&Aができるという知識が広まりつつあることや、中小企業向けのM&A仲介会社が増えて相談しやすくなっていることなどが、増加の大きな要因となっています。

従業員への事業承継も増加

従業員などへ事業承継する親族外事業承継は、M&Aによる事業承継ほどには増加していませんが、それでも傾向としては増加しています。

中小企業白書などのデータによると、事業承継の約3分の1程度が親族外事業承継となっています。

親族外事業承継はM&Aによる事業承継に比べると、従業員や取引先がよく知っている人物が後継者になるため、反発が起こりにくく受け入れられやすいメリットがあります。

M&Aによる事業承継に比べると後継者候補の選択肢は少ないものの、もし適切な後継者がいれば事業承継が円滑に進みやすいといえます。

社員による事業承継は難しい?

社員による親族外事業承継が、M&Aによる事業承継ほど普及しない理由はいくつか考えられます。最も大きな理由といえるのが、株式の買収資金の調達が困難だということです。

買い取る株式の価格は、会社の純資産や営業権などから算出しますが、よほど小規模な会社でない限り、後継者が自分で買い取れる金額に収まることはありません。

さらに、金融機関からの融資に対する担保や保証をどうするかという問題もあります。本来なら旧経営者の担保や個人保証を後継者に引き継ぐことになりますが、後継者にとっては大きな負担となるので、受け入れてもらえないことも多いです。

後継者だけでなく、その家族や融資している金融機関も、担保や保証の引き継ぎに難色を示すことは少なくありません。

事業承継の手法別メリット・デメリット

事業承継は誰に会社を引き継ぐかによって、親族内事業承継・親族外事業承継・M&Aによる事業承継の3つの戦略に分けられます。ここでは、事業承継の手法別メリット・デメリットを解説します。

【事業承継の手法別メリット・デメリット】

  • 親族内事業承継
  • 親族外事業承継
  • M&Aによる事業承継

親族内事業承継

親族内事業承継とは、旧経営者の親族を新しい経営者に据える事業承継の戦略です。親族は、旧経営者の子供のことが多いですが、甥や姪などほかの親族に継がせることもできます。

親族内事業承継は、3つの事業承継のなかで最もシンプルな戦略であり、かつては多くの事業承継が親族内事業承継でした。しかし、近年は子供に代々家業を継がせる風習がなくなってきており、親族内事業承継は大きく減少しています。

親族内事業承継のメリットは、後継者の選定がスムーズに進みやすく、あらかじめ候補者が決まっている場合には、早いタイミングで事業承継が可能です。従業員や取引先など、関係者からの理解を得やすいのもメリットです。

一方、後継者候補がいない場合や候補者がいても経営者としての資質がない場合は、親族内事業承継ができないといったデメリットがあります。今後は、親族外事業承継やM&Aによる事業承継について戦略をよく知っておくことが、中小企業経営者にとって重要になるでしょう。

親族外事業承継

親族外事業承継は、旧経営者の親族ではない人物に事業を引き継ぐ戦略です。次に紹介するM&Aによる事業承継でも、親族でない人物に事業を引き継ぎますが、親族外事業承継は会社の従業員など身近な人物を後継者にすることを指します。

親族外事業承継なら、親族に適切な後継者がいない場合でも、社内に精通した人物を後継者に指名することで、会社を存続させつつ旧経営者が引退することが可能です。

ただし、親族でない人間には資産の相続ができないので、株式や事業資産を買収する資金を用意できるかが問題になります。

資金調達方法にはMBOなど専門的な手法があるので、M&A仲介会社などの専門家のサポートを受けながら、これらの手法を活用して手続きを進めていくことになります。

M&Aによる事業承継

M&Aとは、会社の合併(Mergers)と買収(Acquisitions)の頭文字をとった用語で、製品やサービスではなく会社そのものを売買する取引をいいます。

M&Aというと、大企業の敵対的買収がメディアで取り沙汰されることもあり、マイナスイメージを持つ人もいますが、実際はほとんどのM&Aは買い手・売り手双方の発展を目指す友好的な手法です。最大のメリットは、経営者の手元に売却益が残ることでしょう。

さらに、M&Aは大企業だけが行うものではなく、社員数名程度の零細企業や、一人で営業している個人事業でも行うことが可能です。親族にも社員にも適切な後継者がいない場合、M&Aで後継者を探すという戦略が有力な選択肢となるでしょう。

M&Aのデメリットは、希望する相手企業を見つけるのが困難で、相手探しだけで長い期間を要するケースもあります。進め方によっては、統合後に経営の一体性が維持できず従業員が戸惑ってしまう恐れがあるでしょう。

したがって、M&Aを検討する際は、M&Aの専門家へ相談するのがおすすめです。

【関連】事業承継スキームの重要性

事業承継を行う方法・手順

基礎知識として事業承継を行う方法・手順を把握しておきましょう。実際の事業承継の進め方はケースごとに異なりますが、基本的には以下の流れで進めます。

  1. 会社の現状把握(自社の資産状況や株式保有状況、経営者の資産を把握)
  2. 後継者候補のリストアップ
  3. 承継方法の決定(自社に適した事業承継を選択)
  4. 事業承継計画の策定(承継予定時期、会社概要など)
  5. 関係者への説明(従業員や取引先への説明)
  6. 経営改善や後継者教育(承継までの経営改善や後継者教育の実施)
  7. 事業承継の実施

事業承継の戦略策定方法・ポイント

事業承継を戦略的に行うためには、成功のポイントを押さえておくことが大切です。以下のような点を押さえたうえで、戦略的に事業承継を行うようにしましょう。

【事業承継を戦略的に行う際の成功ポイント】

  • 事業承継の準備期間・検討するタイミング
  • 後継者選び・育成
  • 親族外・M&Aによる事業承継は相手選びが重要
  • 事業承継計画を立てる
  • 適切な手法を選ぶ
  • 専門家への相談

事業承継の準備期間・検討するタイミング

事業承継は、準備期間と承継後の育成期間を含めると、5年から10年かかるともいわれています。多くの経営者が考えているよりも、はるかに長い時間がかかるということを把握しておくことが大切です。

親族内事業承継と親族外事業承継の場合は後継者がほぼ決まっていることが多いので、検討するタイミングは早ければ早いほどよいことになります。

事業承継を検討するタイミングは、一般的に遅すぎる傾向があります。自分はまだ元気だと先延ばしにする、事業承継のことがよく分からず億劫(おっくう)に感じて後回しにしてしまう、などはよくあるケースです。

後継者選び・育成

事業承継における後継者選びと育成は、親族内事業承継・親族外事業承継の場合と、M&Aによる事業承継の場合とで大きく異なります。

親族内事業承継・親族外事業承継の場合は、経営者の子供を選ぶにしろ従業員を選ぶにしろ、経営者より若くて経験の少ない人物を後継者に据えることになります。

そのため、後継者が経営者として一人前になれるように、現経営者が経営の心構えなどについて指導していくことが大切です。

一方、M&Aによる事業承継の場合は、後継者はすでに長年会社の経営に携わっていることが多く、年齢もまちまちです。

ですから、一から教育するというよりも、自社の経営理念や社風などをすり合わせていく統合プロセス(PMI)が重要になります。

親族外・M&Aによる事業承継は相手選びが重要

親族内事業承継では後継者の選択肢はほとんどありませんが、親族外事業承継とM&Aによる事業承継の場合は、まず誰を後継者に据えるのか選定する作業が重要になります。

いくら周到に事業承継の計画を進めても、後継者が経営者としての資質がなければどうしようもありません。

従業員を選ぶ時は、もちろん従業員として優秀な人物を選ぶべきですが、従業員として優秀な人物が必ずしも経営者として優秀とは限りません

そのため、経営者が普段から社員のことをよくみて、従業員の経営者としての適性を見定めておく必要があります。

M&Aによる事業承継の場合は、経営者同士のトップ面談の段階で相手の人間性をよく観察しておくようにしましょう。

事業承継計画を立てる

事業承継は、ほとんどの経営者にとって初めてのことなので、どういう戦略で進めていけばよいか分からないこともあるでしょう。

事業承継をスムーズに進めるためには、事業承継計画書を作成して、大まかなスケジュールを書面にして把握しておくのがおすすめです。

事業承継計画書の決まった書き方はありませんが、例えば年ごとに10年分くらいの表を作って、各年度に何を行うかを記しておくといった方法があります。

現状の把握を行う

適切な事業承継計画を作成するには、前段階として自社の現状についてあらためて把握しておく必要があります。

顧客や取引先のリストや競合他社の状況の把握を始め、自社の強みと弱みの洗い出しなどを行うことで、どういうスケジュールで事業承継を行うべきか、どの事業承継手法を使うべきかなどがみえやすくなります。

将来性についてまとめる

事業承継は今後の会社の成長が重要なので、会社の将来性についてあらためてまとめておくとよいでしょう。

事業の中長期計画や後継者教育などについて書面にしてまとめておけば、事業承継のスケジュールも把握しやすくなり、M&Aの場合は買い手候補に資料としてみせることもできます。

【関連】事業承継計画の作成方法とメリット

適切な手法を選ぶ

事業承継の戦略は、まず親族内事業承継・親族外事業承継・M&Aによる事業承継のどれを選択するかが重要ですが、M&Aによる事業承継を選んだ場合は、さらにどのM&Aスキームを選択するかも重要です

どのM&Aスキームを選択するべきかは専門家のサポートがないと判断が難しいため、M&A仲介会社などの専門家に相談して決めていくのが一般的です。

M&Aの手法

M&Aには、株式譲渡・事業譲渡・合併・会社分割・株式交換などさまざまな手法がありますが、中小企業の事業承継においては、ほとんどの場合株式譲渡を選択することになるでしょう

株式譲渡とは、会社の株式を後継者に売却して経営権を譲り渡す手法で、手続きが比較的簡単なのが特徴です。

個人事業の場合は株式譲渡ができないため、事業にかかる資産を直接売却する事業譲渡が用いられます。

株式会社の場合でも、会社全部ではなく特定の事業だけを承継したいケースでは、事業譲渡を利用できます。

専門家への相談

事業承継は、ほとんどの経営者にとってはじめてのことであり、事業承継の経験が豊富な専門家に相談することになります

事業承継の相談先には、M&A仲介会社・銀行や信用金庫などの金融機関・会計士や税理士などの士業事務所・事業引継ぎ支援センターなどの公的機関といった選択肢があります。

M&A仲介会社以外の相談先では、事業承継のトータルなサポートは受けられないことがほとんどであり、相談のみで具体的な手続きは提携のM&A仲介会社に流すことも多いのが注意点です。

しかし、メインバンクや顧問税理士などは普段から付き合いがあり相談しやすいメリットがあるので、それぞれ一長一短があるといえるでしょう。

事業承継に役立つ支援

政府は、中小企業の事業承継を後押しするためにさまざまな支援策を実施しています。資金不足や法律上の制約によって生じる事業承継の問題は、公的支支援施策を活用すると解決できる可能性も高まるでしょう。

税制面の支援

親族内承継は、株式など相続・贈与による税金が問題点であり、M&Aでは買い手側の資金不足が問題点となるケースが多いです。事業承継問題を税制面から支援する制度として、「事業承継税制」や「経営資源集約化税制」「登録免許税・不動産取得税の特例 」があります。

事業承継税制(特例措置)は、中小企業の株式などの承継に伴う贈与税・相続税の負担を実質ゼロとする特例措置です。この特例を受けるためには、2024年3月までに「特例事業承継計画」を提出し、2027年までに事業承継を実施しなければなりません。

経営資源集約化税制は「設備投資減税」「雇用確保を促す税制」「準備金の積立」の3つの措置を活用することが可能です。

登録免許税・不動産取得税の特例 は、M&Aの際に不動産の権利移転にかかる登録免許税・不動産取得税を軽減するものです。

融資面の支援

自社株や事業用資産を相続や贈与によって取得した場合、M&Aを行うための買収資金の調達に役立つ融資もあります。

経営承継円滑化法の認定を受ければ、相続・贈与・M&Aなどで必要になる融資を、日本政策金融公庫や民間金融機関の信用保証融資に申し込めることなどがメリットです。

経営承継円滑化法は、中小企業の事業承継を総合的に支援する制度で、事業承継資金などを確保するための金融支援、事業承継に伴う税負担の軽減が盛り込まれています。

経営者保証解除の支援

後継者未定または不在の中小企業・小規模事業者に対して国が全国に設置したのが事業承継・引継ぎセンターです。事業承継・引継ぎセンターは、経営者保証解除の支援を行っています。

事業承継に際、金融機関からの借入金に対する経営者保証がネックとなり、承継候補者との話が円滑に進まないケースも多いです。

その場合、経営者保証コーディネーターが、経営者に対して経営者保証ガイドラインの充足状況の確認を行い、経営者保証解除に向けた今後の方策を提案してくれます。しかし、最終的な判断は、あくまで金融機関の判断となる点は覚えておくようにしましょう。

補助金・助成金の支援

補助金・助成金の支援も行っています。事業承継・引継ぎ補助金は、事業承継を契機とした新事業を行う中小企業に対して、経営革新などの挑戦や、M&Aによる経営資源の引継ぎ、廃業・再チャレンジを行う場合に経費の一部を補助する制度です。

必要な設備投資費用、人件費、店舗・事務所の改築工事費用、M&Aの専門家活用費用などの支出が主な対象です。
 

民法・会社法特例の支援

スムーズな事業承継の妨げとなる課題として「相続人の遺留分」と「所在不明株主」があります。

そこで「遺留分に関する民法の特例」が設けられており、生前贈与株式が遺留分減殺請求の対象となるのを回避したり、贈与を受けた後の後継者の遺留分算定基礎財産から除外したりすることが可能です。

また、「産業競争力強化法等の一部を改正する等の法律」に伴う経営承継円滑化法の改正(2021年8月)によって、「所在不明株主に関する会社法の特例」が新設されました。一定の要件を満たした場合、株式買取りの手続きに必要な期間を5年から1年に短縮が可能となります。

事業承継の相談先

事業承継の相談先としては、主に以下の5つの選択肢があります。それぞれの特徴やメリット・デメリットを理解して、最適な相談先を選べるようにしておきましょう。

【事業承継の相談先】

  • M&A仲介会社
  • 地元の金融機関
  • 地元の公的機関
  • 地元の弁護士・会計士・税理士
  • マッチングサイト

M&A仲介会社

M&A仲介会社とは、M&Aの仲介を専門に取り扱っている企業のことです。M&Aによる事業承継の相談先としては、最もオーソドックスな選択肢だといえるでしょう。

事業承継をお考えの方は、ぜひM&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所は、中堅・中小企業のM&A・事業承継をサポートするM&A仲介会社です。

M&A総合研究所では、事業承継の経験が豊富なアドバイザーが親身になって最適な戦略を提案し、クロージングまでフルサポートいたします。

料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です。(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)M&Aに関して、無料相談をお受けしておりますのでお気軽にお問い合わせください。

M&A・事業承継ならM&A総合研究所

地元の金融機関

地方銀行や信用金庫といった地元の金融機関では、M&Aや事業承継に関する相談窓口が設けられているところがあります。M&A仲介会社以外の相談先の選択肢として、金融機関を利用するのもおすすめです。普段から付き合いのあるメインバンクなら相談しやすいでしょう。

どのM&A仲介会社を選ぶか自分で決められない場合、金融機関の相談窓口で提携の仲介会社を紹介してもらうこともできます。

地元の公的機関

自治体や商工会議所、事業引継ぎ支援センターといった、地元の公的機関に相談するという選択肢もあります。

公的機関は、M&A仲介会社のようにM&A・事業承継に詳しいとは限らないのがデメリットですが、国や都道府県が運営している安心感はメリットだといえるでしょう。

公的機関ではM&A・事業承継の具体的な手続きは行わず、相談のみの受け付けであることが一般的です。結局は提携のM&A仲介会社に流されるので、二度手間になるのは注意点です。公的機関では、中小企業支援の補助金・助成金が受けられるので活用するのもおすすめです。

【関連】事業引継ぎ支援センターに相談するのは危険?仲介会社との違いは?

地元の弁護士・会計士・税理士

地元の弁護士・会計士・税理士といった、士業事務所に事業承継の相談を持ちかけるという選択肢もあります。

弁護士・会計士・税理士は必ずしもM&Aや事業承継に詳しいわけではないので、どの事務所に相談するかは慎重に選ぶ必要があります。しかし、普段から付き合いのある士業事務所なら相談しやすいでしょう

ただし、M&A仲介会社のスタッフは弁護士・会計士・税理士の資格保有者であることが多いので、士業事務所でなければ会計や税務の専門的なサポートを受けられないわけではありません。

マッチングサイト

マッチングサイトとは、M&A・事業承継を希望する売り手が情報をサイトに掲載し、買い手がそれを見て交渉を持ちかけることができるサイトのことです。

マッチングサイトは、必ずしも専門家のもとで利用する必要はなく、経営者が自分だけで手続きを進めることもできるのが特徴です。大手のマッチングサイトなら多くの登録案件があり、ほとんどの業種をカバーできます。

手数料もM&A仲介会社に比べると安く設定されていることが多く、特に売り手は完全無料となっているケースもあります。

事業承継の事例

この章では、実際に行われた事業承継の事例から、どのような企業がどういったプロセスで事業承継に至ったのかを解説していきます。

【事業承継の事例】

  1. 機械の保守・点検サービス会社の事業承継事例
  2. 光学用品販売会社の事業承継事例
  3. 表面処理・メッキ会社の事業承継事例
  4. 木工製品・建材・合板メーカーの事業承継事例
  5. 印刷関連会社の事業承継事例

①機械の保守・点検サービス会社の事業承継事例

1973年設立の機械保守・点検サービス会社の事業承継事例です。この会社は従業員が170人ほどおり、やや規模の大きい中堅企業となります。

創業者の息子を後継者とする親族内事業承継の事例で、後継者は自らの意思でこの会社に入社し、約20年の勤務経験があります

後継者は経営者としての能力も高く、他の社員や役員からの信頼も厚いということなので、事業承継としては非常にスムーズにいった事例といえるでしょう。

②光学用品販売会社の事業承継事例

1967年設立の光学用品販売会社を、創業者の息子が承継した親族内事業承継の事例です。社員は110名で、規模としては中堅の部類に入ります。

後継者の息子は学生時代から会社を継ぐ意思があり、大学卒業後あえて他社に就職して経験を積んだ後に家業に戻ります。

息子からみた家業会社は非効率でロスも多く、それを改善しようとして社長や社員が衝突するケースも少なくありませんでしたしかし、息子による経営改革はうまくいき、事業承継は結果的に成功となりました。

③表面処理・メッキ会社の事業承継事例

1958年創業の、表面処理・メッキ会社の事業承継事例です。従業員は約80名で、こちらも現経営者の息子が後を継ぐ親族内事業承継の事例となっています。

経営状態も良好で息子も早くから会社を継ぐ意思があり、現経営者(父親)や社員もそれを後押ししているという状態で、非常にスムーズに承継が進んでいきます。

息子は他社に数年間務めた後、家業に戻り、生産現場・営業・財務・人事と業務の全般を経験して会社の全体像を理解します

息子は副社長として経営のノウハウを経験し、事実上の経営トップとして父親は後ろから後押しするというスタンスをとっています

④木工製品・建材・合板メーカーの事業承継事例

1956年創業の木工製品・建材・合板メーカーの事業承継事例です。この会社は、当時(80年代)債務超過で倒産寸前の状態にあり、経営者の息子が立て直しのために半ば仕方なく後継者となります

息子は、当初は経営が安定したら再び他の職に就くつもりでいたが、経営にやりがいを見出しそのまま後継者として経営に携わっています

⑤印刷関連会社の事業承継事例

1949年創業の、印刷関連会社の事業承継事例です。祖父が創業し現社長は5代目で、経営立て直しのため外部から社長が出向したことがあったものの、基本的には親族が代々事業を継いでいます。

90年代に業績が落ち込んだ時期に現経営者が事業承継し、リストラや不採算事業の整理などを行い経営を立て直しました。

業績不振による予定しない形の事業承継ですが、現経営者の改革が成功し承継がうまくいったケースとなっています。

事業承継の戦略策定方法まとめ

事業承継の戦略には、まず誰を後継者に据えるかによって親族内事業承継・親族外事業承継・M&Aによる事業承継の3種類があり、さらにM&Aには株式譲渡・事業譲渡といった戦略があります。

戦略について事前にしっかり理解しておくことが、事業承継を成功させるポイントです。

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