M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2021年4月29日更新事業承継
地域経済活性化支援機構(企業再生支援機構)とは
地域経済活性化支援機構(旧企業再生支援機構)は、深刻な債務に悩まされる企業の事業再生・私的整理などを支援する政府系ファンドです。手続き・支援対象の条件は厳格に定められていますが、利用できれば円滑な事業再生・私的整理を実現できます。
目次
地域経済活性化支援機構(企業再生支援機構)とは
地域経済活性化支援機構(Regional Economy Vitalization Corporation of Japan)とは、深刻な債務に悩まされる企業の事業再生・私的整理などを支援する政府系のファンドです。
主要株主は政府や金融機関からの拠出金を受ける預金保険機構であり、この出資をもとに資本金を構成する組織です。
今回は、地域経済活性化支援機構について幅広く紹介します。事業再生や私的整理に関心のある方にとって必見の内容です。まず、組織の概要と変遷について紹介します。
地域経済活性化支援機構(企業再生支援機構)の会社概要
地域経済活性化支援機構の会社概要を以下の表にまとめました。
会社名 | 株式会社地域経済活性化支援機構 |
設立 | 2009年10月14日(株式会社企業再生支援機構として) |
本社所在地 | 東京都千代田区大手町1丁目6番1号 大手町ビル9階 |
資本金 | 131億380万円 |
株主 | 預金保険機構・農林中央金庫 |
役職員数 | 249名(2019年6月27日現在)派遣社員を含む |
子会社 | REVICキャピタル株式会社 REVICパートナーズ株式会社 株式会社日本人材機構 |
地域経済活性化支援機構(企業再生支援機構)の変遷
前身組織である企業再生支援機構は2009年に設立されました。それ以降は、当時より問題視されていた地域経済の深刻な低迷を改善すべく、過大な債務を負う中堅・中小企業などを対象とする事業再生支援活動が実施されています。
企業再生支援機構としての支援実績では、日本航空・グランビスタなどの事例が有名です。2007年に解散した産業再生機構と類似する機能を持っており、支援対象への出資・融資・債権買取・経営者や専門家の派遣なども手掛けています。
2013年、地域経済活性化支援機構に改組されて以降は、主に地域経済を重視する活動への取り組みが重視されるようになりました。
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地域経済活性化支援機構(企業再生支援機構)の業務内容
具体的な業務内容は、以下のとおりです。
- 専門家の派遣
- 地域活性化ファンドの運営
- 事業再生ファンドの運営
- 経営者への再チャレンジ支援
- 事業再生への支援
- ファンドへの出資
①専門家の派遣
金融機関・事業者などに対して、金融機関の実施する事業性評価や事業者の課題解決に役立つ専門家を派遣しています。専門家の派遣は、地域経済活性化支援機構が持つ知識・ノウハウの移転や浸透などを目的に実施される業務です。
②地域活性化ファンドの運営
金融機関などと共同して地域活性化ファンドを運営しています。これにより、地域活性化支援機構の持つ知識・ノウハウを金融機関などに移転可能です。
金融機関などの支援能力向上を図れるため、地域の事業者に対する支援の充実が期待されています。
③事業再生ファンドの運営
蓄積した知識・ノウハウを活かしつつ、事業再生ファンドの運営も手掛けています。事業再生ファンドは従来より各都道府県にて設立が進んでいましたが、存在しない地域も少なくありません。
地域経済活性化支援機構では、存在しない空白地域において事業再生ファンドを組成・運営しているのです。事業再生ファンドを通じて、事業者に対する貸付債権を金融機関から買い取るほか、事業再生に必要な資金を社債・融資などの形で提供しています。
④経営者への再チャレンジ支援
経営者が負う保証債務を金融機関から買い取ったうえで、企業債務と経営者個人の保証債務の整理を一体的に実施しています。
経営者の再チャレンジと地域経済の新陳代謝を促進すべく、私的整理により事業継続が困難な経営者の債務整理を図っているのです。
⑤事業再生への支援
価値ある経営資源を持つ事業者については、事業再生に向けた支援を手掛けています。はじめに着手されるのは、事業者の抱える債務の削減です。その後に、事業者の財務構築・事業内容などを見直しつつ事業利益の確保を図ることで、競争力の回復と事業再生を支援しています。
⑥ファンドへの出資
リミテッド・パートナーとして、地域活性化ファンドや事業再生ファンドに出資しています。リミテッド・パートナーの立場で出資するため、経営には参加しません。上記の出資によって、地域経済活性化・事業再生などを支援しています。
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地域経済活性化支援機構(企業再生支援機構)による私的整理の流れ
ここでは、地域経済活性化支援機構を利用した私的整理の流れを紹介します。
- 初期検討
- 弁済計画の策定
- 支援の申込み・決定
- 関係金融機関との調整・買取決定
- 債務整理・保証整理
①初期検討
はじめに、機構と私的整理を支援する金融機関との間で話し合いが実施されます。ここでは、持ち込まれた事業概要書・直近決算書などの基礎資料をもとに、機構による再チェレンジ支援の対象となるかが判断されるのです。
なお、私的整理に関する話し合いでは秘密保持契約が締結されるため、相談の事実が外部に漏れることはありません。
②弁済計画の策定
金融機関・事業者・保証人が私的整理手続きの進行に同意した場合には、個別的に守秘義務契約を締結したうえで、事業者・保証人の財産状況に関する資料を開示します。資料開示を受けた機構による資産査定・私財調査の結果をもとに、弁済計画が策定されるのです。
多くのケースにおいて機構による簡易的な調査が実施されますが、場合によっては外部のアドバイザーに依頼されることもあります。その場合に発生する費用については、事業者が負担するため注意しておくと良いです。
③特定支援の申込み・決定
機構により策定された弁済計画を添付したうえで、金融機関・事業者・保証人は連名によって、私的整理に関する支援を申込むことになります。
支援の申込みを受けた機構によって、決定基準の各要件を満たしているか調査されたうえで、可能であると判断した場合に支援の実施が決定されるのです。
④関係金融機関との調整・買取決定
支援の決定後、機構によって関係金融機関との間で調整手続きが実施されます。ここでは、関係金融機関に対して、支援を決定した経緯・弁済計画の内容・金融支援の依頼内容などが説明されたうえで、私的整理の具体的な手法が決定されるのです。
金融機関からの支援同意を得られた場合、機構によって債権買取りなどが決定されます。
⑤債務整理・保証整理
最後の手続きは、買取決定を受けた事業者による、弁済計画にもとづいた資産の処分・弁済の実施です。弁済の実施によって保証人の保証債務が免除され、清算などで事業者への債権が放棄されれば、一連の支援手続きが終了します。以上が、地域経済活性化支援機構を利用した私的整理の流れでした。
紹介したとおり、機構による私的整理の支援は、経営者の再チェレンジを促進する目的を持っています。しかし、経営者が自社を経営するうえで再起を図るための有効策は、私的整理のみではありません。
M&Aによる企業売却は、廃業を回避しつつ個人保証からの解放を目指せる一つの手段です。売却に成功すれば、従業員の雇用を維持できるうえに、売却利益の獲得も見込めます。
手続きをスムーズに済ませるにはM&Aに関する専門知識が求められるため、専門家へ相談することをおすすめします。
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地域経済活性化支援機構(企業再生支援機構)による私的整理の条件
地域経済活性化支援機構の私的整理手続きを利用するには、以下のような条件を満たす必要があります。
- 3者連名での申込みを実施する
- 一般債務などの⽀払能⼒がある
- 過大な債務を負っている
- 経営者が再チャレンジを表明している
①3者連名での申込みを実施する
私的整理手続きを利用するには、事業者・代表者などの保証人・金融機関の3者による連名での申込みが求められます。上記のうち、1者でも連名を拒否すれば利用できないため注意が必要です。
②一般債務などの⽀払能⼒がある
私的整理手続きを利用するには、一般債務・租税債務・労働債務などについて、全額の支払いが可能となっている必要があります。
③過大な債務を負っている
一般債務などの⽀払能⼒があるものの、事業者が過大な債務を負っている必要があります。つまり、事業者自身では対処できないほどの債務を負っていることが支援対象となる条件です。あくまでも、最終手段として検討することをおすすめします。
④経営者が再チャレンジを表明している
地域経済活性化支援機構による私的整理は、経営者の再チャレンジを促す目的を持つ事業です。そのため、手続きを利用するには、経営者による再チャレンジの表明が求められます。
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地域経済活性化支援機構(企業再生支援機構)による私的整理と法的整理の違い
最後に、地域経済活性化支援機構による私的整理と法的整理(自己破産)の違いについてまとめました。
- 対象債権者
- 金融調整の実施者
- 再生計画の成立要件
- 公表義務の有無
①対象債権者の範囲
法的整理では、一般債権者を含むすべての債権者が対象となります。その一方で私的整理では、原則として金融債権者のみが対象です。法的整理と比べて対象債権者の範囲が限定されている点に、私的整理の特徴があります。
②金融調整の実施者
法的整理では裁判所がすべての債権者と金融調整を進めていく一方で、私的整理では地域経済活性化支援機構自身が金融債権者とともに調整を進めます。
③再生計画の成立要件
私的整理と法的再生の大きな違いは、再生計画の成立要件です。法的再生では多数決により計画が成立しますが、地域経済活性化支援機構による私的整理では実質的に事業者・保証人・金融機関・機構すべての同意が必要となります。
法的再生とは違い強制的ではないために、私的整理では全員の同意を求めているのです。
④公表義務の有無
法的整理の場合、自己破産の実施を公表します。その一方で私的整理では、大企業の再生を除いて事業者に公表義務はありません。そもそも私的整理では、保証人は破産せずに金融機関に係る保証債務を整理可能です。
信用情報機関に登録されないほか、官報などで個人情報が公表されないなどのメリットを享受できます。
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自己破産とは?メリット・デメリットや費用、方法をわかりやすく解説
まとめ
地域経済活性化支援機構は、企業規模を問わず、これまで数々の事業再生・私的整理を成功させてきた組織です。手続きや支援対象の条件は厳格に規定されていますが、利用すれば事業再生・私的整理を円滑に実施できます。
事業再生・私的整理などの必要性が生じた場合には、地域経済活性化支援機構の利用を検討すると良いです。要点をまとめると、下記になります。
・地域経済活性化支援機構(企業再生支援機構)とは
→深刻な債務に悩まされる企業の事業再生や私的整理などを支援する政府系のファンド
・地域経済活性化支援機構(企業再生支援機構)の業務内容
→専門家の派遣、地域活性化ファンドの運営、事業再生ファンドの運営、経営者への再チャレンジ支援、事業再生への支援、ファンドへの出資
・地域経済活性化支援機構(企業再生支援機構)による私的整理の流れ
→初期検討、弁済計画の策定、支援の申込み・決定、関係金融機関との調整・買取決定、債務整理・保証整理
・地域経済活性化支援機構(企業再生支援機構)による私的整理の条件
→3者連名での申込みを実施する、一般債務などの⽀払能⼒がある、過大な債務を負っている、経営者が再チャレンジを表明している
・地域経済活性化支援機構(企業再生支援機構)による私的整理と法的整理の違い
→対象債権者、金融調整の実施者、再生計画の成立要件、公表義務の有無
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。