M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2023年6月5日公開事業承継
跡継ぎとは?「後継ぎ」との違いや選び方・必要な資質まで徹底解説!
M&A業界でよく使われる「跡継ぎ」。「後継ぎ」と意味が混同されがちですが明確に違いがあります。本記事では「跡継ぎ」と「後継ぎ」の意味の違いや後継者の選び方・必要な資質などを徹底的に解説します。事業の後継者を探すときの参考にしてください。
跡継ぎとは?
「跡継ぎ」とは、相続すべき財産や事業、権利関係を引き継ぐことを意味します。
M&A業界でも「跡継ぎ」という言葉が使われます。ただ、現代では昔のように一家の長男が跡継ぎになるというケースは少なくM&Aにより跡継ぎを探す必要があります。少子高齢化により出生数の激減などが原因でM&Aに必要性を感じている経営者は多いものの、いまだにM&Aによる跡継ぎが少ないのが現状です。
跡継ぎの意味
M&A業界でも使われる「跡継ぎ」ですが、元々の意味としては血縁関係で引き継ぎを行う際に使われていました。
一家代々で経営していた事業を長男が引き継ぐことを「跡継ぎ」と呼ぶことも少なくなく、広い意味合いで「跡継ぎ」が使われています。今はM&A業界で主に「跡継ぎ」が使われます。
跡継ぎと後継ぎとの違い
「跡継ぎ」は「あとつぎ」と読みますが、同じ読み方で「後継ぎ」があります。それぞれ同じような意味合いを持ちますが、以下のように少し意味が異なります。
- 跡継ぎ:財産・事業・権利関係を引き継ぐこと
- 後継ぎ:前任者の後を引き継ぐこと(地位など)
両者ともに後を継ぐという意味で使われますが、「跡継ぎ」の方が相続者としての意味がより濃く込められています。
事業の引き継ぎ方法
近年、事業の引き継ぎができずに廃業を余儀なくされるケースが後を絶ちません。せっかく立ち上げた事業をそのまま廃業してしまうのは非常にもったいないため、以下の方法で引き継ぎを検討することをおすすめします。
- 親族内承継
- 従業員への承継
- 第三者への承継
それぞれ解説します。
親族内承継
昔からよく行われていた引き継ぎ方法として親族内承継があります。
親族内承継はその名の通り、現経営者の子などの身内に事業を継承させる方法です。内外の関係者から受け入れられやすく比較的スムーズに継承ができることから親族内承継を選択する経営者は多くいます。また、以下のようなメリットもあります。
- 早期から跡継ぎの自覚を持ってもらいやすい
- 準備期間を確保しやすい
- 会社の所有と経営が一体化されている
多くの経営者が親族内承継を選択しているのも頷けます。
従業員への承継
親族以外の役員や従業員へ継承させる方法もあります。
従業員であれば社内環境や経営方針に理解度が深く、親族内継承と同じようにスムーズに継承が進むケースが多いです。一貫性を保ち続けることができたり働きぶりを見て跡継ぎを選ぶことができたりと従業員への承継のメリットは多くあります。
- 会社に詳しい人に承継できる
- 後継者育成に時間をかけられる
- 従業員や取引先からの理解を得やすい
従業員への承継は親族内継承よりも複雑な継承になりやすい傾向にあります。
第三者への承継
近年増加傾向にあるのが第三者への承継です。
例えば、M&Aを活用して第三者に会社・事業を継承することができます。外部の優秀な人材を見つけることができ適任者を探しやすくなるメリットがあります。さらに、シナジー効果を見込んでいる企業に継承することができれば事業をより活用してもらえるかもしれません。そのほかのM&Aのメリットは以下の通りです。
- 培ってきたノウハウを引き継げる
- 従業員の雇用を保証できる
- 売却額として株式や現金が手に入る
第三者への承継含め、他の継承方法もデメリット・リスクがありますので比較検討をして自社に適した継承方法を見つけるべきだといえます。
M&Aは、今後の企業の成長に繋がりやすい点や、成功率が高い点などからおすすめの方法と言えます。
跡継ぎの選び方
一番難しい跡継ぎの選び方ですが、以下の方法がおすすめです。
- 明確なビジョンを持っている
- 経営から逃げ出さない覚悟を持っている
- 経営を全うする意欲がある
- 実務能力がある
それぞれ解説します。
明確なビジョンを持っている人
事業そのものを継承するわけですので、明確なビジョンを持っている人に継承をさせた方がいいでしょう。
例えば、「この事業を~~にしていきたい!」と明確に言語化できている人に継承をさせた方がうまくいく可能性は高くなります。逆に以下のような人に継承をすることはおすすめできません。
- 経営自体にやる気がない
- 軸がぶれている
- 自分の意見を言うことができない
経営者として欠けている部分があれば教育することもできますが、教育コストがかかります。
経営から逃げ出さない覚悟を持っている人
経営は多くの課題に直面しそれを乗り越える力が要求されるため、経営から逃げ出さない覚悟を持っているかどうかも選び方の1つです。
経営者になると「もう嫌になってきた」など曖昧な理由で地位を撤退することはできません。一般的な会社員であれば転職・退職という選択肢が取れますが、経営者はそう簡単に地位を退くことはできないのです。そのため、経営に対する相当な覚悟がないと事業が傾いてしまうことになりかねません。
経営を全うする意欲がある人
さらに言えば、経営を全うする意欲があるかどうかも選ぶときの基準として考えておくべきでしょう。
経営の跡継ぎを探す際に以下の要素を持っている人がおすすめです。
- 自社の事業・業界に精通している
- 経営に対する意欲が高い
普通の従業員としてではなく経営者として人を動かす意欲がある人に継承をすべきだといえます。
実務能力
経営者としての実務能力も問われます。
例えば、決断力や実行力が人並み以上にないと経営はうまくいきません。ただ言われたからやっているだけのように思考停止の状態で仕事をし続けている人に継承をしてしまうと事業が傾いてしまうのは目に見えているでしょう。また以下の要素を持ち合わせていると跡継ぎとしての期待値は高くなります。
- リーダーシップ
- コミュニケーション力
- 人望
事業を継続させていくためには実務能力だけでなく「人間力」も必要です。
跡継ぎに必要な資質・能力
跡継ぎには色々な資質や能力が求められますが、具体的にどのような資質や能力が必要になるのでしょうか。ここからは代表的な跡継ぎに必要な資質・能力を3つご紹介します。
経営能力
当然ですが、経営能力は必須です。
経営能力は現場経験や実務から培われる能力のため、いろいろな現場での経験値が必要になってきます。後継ぎに適している人かどうかを判断する時には経営能力として「現場でどれだけ働いた経験があるのか」も要素の1つとして入れておくといいでしょう。また、現場経験がない場合は経営者の近くでサポート経験を積ませる方法があります。
自社の事業に関する理解
従業員として働いていると、自社の事業に関する理解が薄くなってしまいがちです。
例えば、「うちの会社の事業内容は?」「今後の展望は?」など自分の事業に関する理解度を測るような質問をしてみましょう。特に親族内継承の場合は社内の各部門でローテーション経験を積ませて必要な知識を吸収させていく必要があります。また、第三者への継承の場合も同様に自社の事業に関する理解度を高めるために自社で勤務経験を積んでもらうべきかもしれません。
後継ぎとして100%を求めることは難しいかもしれませんが、できる限りのことはしておきましょう。
リーダーとしての責任感・決断力
経営者は従業員のリーダーとして舵を取らなければなりません。
時には正解がないような判断をしなければならないこともあるでしょう。そういった際に責任感を持って決断ができるかどうかをみておく必要があります。正しい選び方としてリーダーとしての責任感・決断力が欠けていると後継ぎには向いていません。また、リーダーとしての責任感・決断力は一朝一夕で身につけられるものではありませんので時間をかけて成長させていく必要もあります。
跡継ぎを選定する際の注意点
さて、跡継ぎに必要な要素や資質がわかったとしても失敗するケースが後を絶ちません。その理由を跡継ぎを選定する際の注意点から解説します。
- 相当な時間が必要
- 資質・能力は育成だけでは難しい面がある
- 親族内承継では相続に注意
- 人選を間違えると経営が傾く可能性も
それぞれ解説します。
相当な時間が必要
事業継承はどれだけとんとん拍子で進んだとしても、5~10年ほど時間がかかります。
これは跡継ぎを育成した場合に限ります。例えば、親族内継承や従業員への継承をする場合だと既に経営者としての能力・資質を備えている人は多くありません。その人材が親族内・自社にいてくれているとは限りませんので育成する必要があります。経営者になるにはリーダーシップやコミュニケーション力だけでなく税務や法務などあらゆる面での知識が必要になります。
また、第三者への継承の場合でも相当の時間がかかります。順当に進むケースもありますが事業への親和度を考えると一朝一夕で事業の後継者を決めてしまうのは危険かもしれません。M&Aで後継者を見つけるにしても一対一で面談をしてお互いのことをよく知る必要があるため、ここも相当の時間が必要です。
事業を引き継ぐというのはすぐにできることではありませんから、余裕を持って準備しておく必要があります。
資質・能力は育成だけでは難しい面がある
また、経営者に必要な資質・能力は育成だけでは難しい面があることも理解しなければなりません。
例えば、税務や法務など後天的に勉強して身につけられるものは育成でカバーすることができます。しかし、以下のような資質・能力は育成だけではどうしても難しいことがあります。
- 経営を受け継ぐ覚悟
- 経営理念の理解・共感
- 人間性(リーダーシップ・決断力)
特に人間性の部分は生まれ持ったものが大きいとされています。「カリスマ性」という言葉に代替できますが、生まれ持って人を動かす能力がある人もいればそうでない人もいます。育ってきた環境も大きく影響しているため後天的に育成でカバーできる範囲ではないことがあります。リーダーシップを発揮し重要なところでは正解の決断を下すことができる人間はほんの一握りです。
若い頃の経験が影響することもありますので育成ではどうしようもないことがあることを理解しておきましょう。
親族内承継では相続に注意
従業員・第三者への継承でも気を付けておくべきことですが、親族内承継では特に相続に注意する必要があります。
その理由は「税金」です。例えば、会社の株式を相続する場合だと受け継いだ相続人は相続税の支払いが義務付けられています。親族内継承がうまくいったとしても相続人は相当の相続税を支払う必要があるため資金が一気に枯渇してしまう可能性があります。ここは税理士に相談をして税金対策を綿密に練っておく必要があります。もし顧問税理士がいる場合は顧問税理士に相談することがベストでしょう。
人選を間違えると経営が傾く可能性も
事業継承で一番大事なのは「人選」です。
どれだけ事業がうまくいっており売り上げが右肩上がりで伸びていたとしても人選を間違えると一気に奈落の底へ突き落とされます。経営はマーケティングなど経営面だけでなく人間性も大きく影響しています。
- あなただから契約をした
- あなたと一緒に事業を大きくしていきたい
経営者の人間性が良い方向に影響し売り上げが上がっていた場合、人選を間違えると契約が終了になってしまうことが考えられます。また、取引先だけでなく従業員からの反発を食らう可能性もゼロではありません。経営は人間性がものを言うところがありますから事業を継承させる人は慎重に選んだ方がいいでしょう。
跡継ぎ選びは計画的に準備をしよう
事業の跡継ぎが確定し継承が完了するまでは早くても5~10年は必要です。
「今すぐ継承したい!」と思ってもその通りにならないことがほとんどのため、計画的に準備をしておく必要があります。また、年齢的な問題で継承が必要になる場合でも計画性を持って準備しておけば大きな問題に直面することは少なくなります。ギリギリになって「これができていない」「あれができていない」とバタバタしてしまわないように今のうちから必要な準備はしておく必要があります。
また、資質・能力は実際に経営者になってみないとわからないことがあるでしょう。事前に経営者のサポート役として抜擢し経営面のノウハウや知識を徹底的に教え込む方法もあります。「跡継ぎ」には自分の労力も必要になることを理解しておく必要があります。
今後の成長速度とかかる労力を考慮するとM&Aがおすすめです。
まとめ
今回は「跡継ぎ」について解説しました。
「跡継ぎ」とよく似た言葉に「後継ぎ」がありますが、大義的にはそれほど変わりません。ただ「跡継ぎ」の方が相続という意味合いでは濃く使われることを覚えておきましょう。また、「跡継ぎ」は一朝一夕でできることではなくいろいろな手続きや業務が必要ですので計画的に準備しておく必要があります。
- 後継者を探す
- 後継者の資質・能力を育成する
- 事業を継承する
「跡継ぎ」といっても以上のような手続きや業務が発生しますので5~10年は余裕を持って動き始めておくとスムーズに継承が完了します。
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。