2022年10月3日更新会社・事業を売る

ビジネスマン必見!M&Aの基礎知識、代表的手法、メリット

会社や個人事業を売買するM&Aの知識は、いまや経営者だけでなく会社員を含む全てのビジネスマンにとって必携となりつつあります。本記事では、ビジネスマンが知っておくべきM&Aの基礎知識について、代表的手法やメリット・デメリットなどを解説します。

目次
  1. ビジネスマン必見!M&Aの基礎知識
  2. ビジネスで見られるM&A手法
  3. ビジネスマンが覚えておきたいM&Aのメリット
  4. ビジネスマンが覚えておきたいM&Aのデメリット
  5. ビジネスマンが覚えておきたいM&A成功のポイント
  6. ビジネスマンがM&Aに触れることのメリット
  7. ビジネスマン必見!M&Aの基礎知識まとめ
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ビジネスマン必見!M&Aの基礎知識

M&Aの基礎知識

ビジネスマンとして評価を高めていくには、さまざまなジャンルの知識や経験を得なければならず、しかも時代によって得るべき知識は変わってきます。

昔はそこまで重要視されていなかったものの、近年になって重要になっているのが「M&A」の知識です。M&Aを実際に行うのは主に経営者ですが、そこで働くビジネスマンも、M&Aで自社に何が起こっているのか理解しておく必要があります。

M&Aは会計・税務を始めとする総合的なビジネスの知識が必要なので、勉強したいと思いつつも、なかなか手が出ない方も多いでしょう。本記事では、ビジネスマンが最低限知っておきたい、M&Aの基礎知識を徹底解説します。

M&Aとは

M&Aとは、会社を売却・買収したり、合併・分割したりする取引のことです。「合併と買収」のことを英語で「Mergers and Acquisitions」というので、頭文字をとってM&Aと呼ばれています。

M&Aは主に会社の合併・買収で利用されますが、個人事業や医療法人など、あらゆる形態の会社・事業を取引することが可能です。

M&Aの手法には多くの種類があり、M&A手法のことを「スキーム」と呼ぶことがあります。具体的なM&Aスキームは、株式譲渡事業譲渡・第三者割当増資・株式交換・株式移転・合併・分割・資本提携・業務提携です。

【関連】「M&A」とは〇〇の略!読み方、「買収」の英語も紹介

日本のM&A事情

日本では1980年代にM&A仲介会社が誕生し、現在までM&A件数は伸び続けています。この傾向は今後も続くと見られ、中小企業を含む全ての経営者の方が、M&Aについて知っておくことが大切です。

日本のM&Aが増加している主な原因は、中小企業のM&Aが増えたことです。大企業のM&Aが主に事業拡大や組織再編を目的としているのに対して、中小企業のM&Aは事業承継を目的としたものが多いといえます。

2020年代は団塊世代の経営者が引退するので、M&A件数は大きく伸びるでしょう。

世界のM&A事情

海外では日本よりも早くM&Aが行われており、件数も日本よりはるかに多いです。海外のM&Aでは、リスクをとった経営手法として、M&Aが積極的に利用される傾向があります。

例えばLBO(レバレッジド・バイアウト)という手法は、買収する企業を担保に資金調達するM&A手法で、少ない資金で大規模なM&Aを行える代わりに、非常にリスクが高いです。

日本でのLBOの事例はソフトバンクなど一部の大企業に限られますが、アメリカでは1960年代ごろには大規模なLBOが行われており、「プリティウーマン」「摩天楼はバラ色に」といった映画でもLBOが描かれています。

ビジネスで見られるM&A手法

ビジネスで見られるM&A手法

M&Aの手法にはさまざまな種類がありますが、代表的な手法として、株式譲渡・新株引受・株式交換・株式移転・事業譲渡・会社分割・合併が挙げられます。この章ではこれらのM&A手法について、ビジネスマンの方が知っておくべき知識を見ていきましょう。

下の図では資本提携や業務提携もありますが、これらは広義のM&Aに分類され、M&Aに含める場合と含めない場合があります。

【M&Aにおける代表的な手法】

  1. 株式譲渡
  2. 新株引受
  3. 株式交換・移転
  4. 事業譲渡
  5. 会社分割
  6. 合併
  7. 提携

株式譲渡(売却)

株式譲渡とは、売却する側の会社(下の図ではA社)の株主(株主A)が、保有株式を買収する側の会社(B社)に売却することで、A社の経営権を株主AからB社へ移転させるM&A手法です。株式譲渡後はA社はB社の子会社となります。

譲渡する株式はA社が発行する全株式でもいいですし、一部だけを譲渡することも可能です。全株式を売却することを完全子会社化、一部だけを譲渡することを子会社化といって区別することもあります。

一部だけを譲渡するといっても、株式譲渡は経営権の取得が目的です。そのため、最低でも過半数は取得します。半分以下の株式だけ取得する取引は資本提携と呼ばれます。

新株引受

新株引受とは、会社が新たに株式を発行し、それを既存株主や新しい株主に割り当てることです。既存の株主に新株を割り当てることを「株主割当」、既存株主以外に割り当てることを「第三者割当」と呼んで区別します。

新株引受は会社が発行する株式数が増えるので、基本的には増資目的で行われる手法です。増資ができる一方で、株式の数が増えることは、一株当たりの価値が薄まるデメリットもあります。

【関連】新株引受権

株式交換・移転

株式交換とは、完全親会社・完全子会社を作るためのM&A手法です。ここでいう完全親会社とは子会社の株式を100%保有する親会社のことで、完全親会社の子会社が完全子会社です。

株式交換では、完全親会社となる会社(下の図ではB社)が完全子会社となる会社(A社)の株式を株主Aから取得し、対価としてB社の株式や金銭を支払います

株式移転も完全親会社・完全子会社を作るM&A手法ですが、こちらは新しく設立した会社(下の図のB社)がA社の株式を取得し、B社が完全親会社・A社が完全子会社となります。

事業譲渡(売却)

事業譲渡とは、事業資産を売買するM&A手法のことです。他のM&A手法では株式を売買しますが、事業譲渡では店舗や設備といった事業資産を売買します。

事業譲渡は他のM&A手法と違い、会社の経営権は譲渡されません。下の図でいうとA会社はB会社の子会社とはならず、B会社とは独立した企業として存続します。事業譲渡は株式の売買を伴わないので、個人事業のM&Aでも利用可能です。

会社分割

会社分割とは、ある会社(下の図ではA社)が営んでいる事業の一部(B事業)を切り離し、別な会社(A'社・B社)に承継させるM&A手法です。分割しない事業(A事業)はそのままA社に残ります。

会社分割には、新しく設立した会社(A'社)に事業を承継する「新設分割」と、既存の会社(B社)に承継させる「吸収分割」があり、また、会社分割は対価を会社が受け取る「分社型分割」と、対価を株主が受け取る「分割型分割」に分けられます。

つまり、新設分割・吸収分割それぞれに分社型と分割型があり、計4種類に分類されるのです。

会社分割は主に大企業の組織再編で使われる手法で、中小企業のM&Aでも利用される株式譲渡や事業譲渡に比べると、件数はそこまで多くありません。

【会社分割の種類】

  1. 新設分割
  2. 吸収分割

新設分割

新設分割とは、新しく設立した会社に事業を承継させる会社分割の手法です。新設分割は新しく設立した会社を利用することで、吸収分割よりも手続きを簡便にできます。

ただし、新会社を設立する手間がかかるので、トータルとして簡便になるかどうかは個々の事例によるでしょう。

吸収分割

吸収分割とは、既存の会社に事業を承継させる会社分割の手法です。吸収分割は、グループ企業の組織再編や経営統合の手段としてよく利用されます。中小企業のM&A手段としてはあまり利用されません。

【関連】会社分割とは?分類や手続き、メリット・デメリット、事業譲渡との違いを解説| M&A・事業承継の理解を深める

合併

合併とは、ある会社(下の図ではA社)を別の会社(B社)と合体させるM&Aの手法です。一見株式譲渡と似ていますが、株式譲渡はB社とA社が親会社・子会社の関係になるのに対して、合併ではA社が消滅します。

合併には既存の会社に合併させる「吸収合併」と、新しく設立した会社(C社)に合併させる「新設合併」があります。

【合併の種類】

  1. 新設合併
  2. 吸収合併

新設合併

新設合併は、新しい会社を設立して、その会社に合併させるM&A手法です。新設分割は既存の会社が全て消滅するのが特徴で、許認可の取得などの手間がかかります。

新設分割は吸収分割よりもややメリットが少なく、吸収合併に比べて利用される割合は少ないです。

吸収合併

吸収合併は既存の会社を利用した合併で、合併といえば普通は吸収合併のことをさします。会社法で「吸収合併等」という言葉が出てきますが、これは吸収合併・吸収分割・株式交換の総称として使われる言葉で、吸収合併でない手法も含むので注意しましょう。

提携

ビジネスで見られるM&A手法として、提携があります。2つ以上の会社が事業を実施するために互いに協力することです。提携は、「資本提携」と「業務提携」があるので紹介します。

資本提携

資本を受けたり、提携会社へ資本を出したりすることが、資本提携です。互いに資本を投入するので、より強い関係性をキープできます。

業務提携

互いの会社がノウハウ、資金・技術・人材を出し合って効率的な事業運営を実施することが、業務提携です。資本の移動は伴いませんが、互いに共同し事業や業務を行います。新技術の開発や販売力を強めることも可能です。

【関連】合併の意味とは?種類、メリット・デメリット、事例や会計処理も紹介| M&A・事業承継の理解を深める

ビジネスマンが覚えておきたいM&Aのメリット

M&Aのメリット

M&Aのメリットにはさまざまなものがあるので、ビジネスマンの方も一とおり把握しましょう。M&Aのメリットは買収側と売却側で全く違ってくるので、買収側・売却側に分けて理解することが大切です。

この章では、ビジネスマンが覚えておきたいM&Aのメリットについて、買収側・売却側それぞれの立場から解説します。

買収側のメリット

まずこの節では、ビジネスマンが覚えておきたいM&Aの買収側のメリットについて解説します。買収側の主なメリットは以下の4つです。

【ビジネスマンが覚えておきたいM&Aの買収側のメリット】

  1. 事業規模・シェアの拡大
  2. 新規分野へのスピード参入
  3. 事業強化
  4. 優秀な人材の獲得

事業規模・シェアの拡大

事業規模やシェアを拡大する場合、普通は新しい店舗を展開したり、新会社を設立したりして進めます。

しかし、一から事業規模やシェアを拡大しようとすると、すでにシェアを持っている同業他社との競争に勝たなければなりませんし、ノウハウや顧客などを一から獲得しなければなりません。

M&Aですでにノウハウや顧客を持っている会社を買収すれば、手早く事業規模・シェアの拡大を実現できます。

新規分野へのスピード参入

新規分野へ参入しようとすると、許認可の取得や設備投資、人材の育成や顧客の獲得などに時間がかかり、軌道に乗るまでに数年間は赤字を余儀なくされることもあります。

M&Aにより既存の会社や店舗を獲得すれば、設備投資のコストや人材育成の時間を短縮でき、スピード感をもって新規分野へ参入することが可能です。

事業強化

M&Aによる買収は新規参入に利用するのも有効ですが、既存事業の強化にも利用できます。

例えば、独自の強みを持っている会社をM&Aで買収し、自社の強みと融合して新しい製品を生み出すこともでき、自社の弱点を補完できる会社をM&Aで買収して、事業基盤を固めることも可能です。

優秀な人材の獲得

人材の獲得を目的として、M&Aによる買収が行われることもあります。

優秀な人材を持つ会社がM&Aで簡単に買収に応じるのか疑問に思うかもしれません。しかし、M&Aで売却されることで大手のしっかりした経営基盤を獲得できます。大手の傘下に入ることは、優秀な人材がより良い雇用条件で働けることも意味します。

優秀な人材のいる会社をM&Aすることは、売却側にとってもメリットの多い取引であり、買収側・売却側ともにWin-Winの関係を築けるのです。

売却側のメリット

次にこの節では、ビジネスマンが覚えておきたいM&Aの売却側のメリットについて解説します。主なメリットは、後継者問題の解決・経営難からの脱却・従業員の雇用確保・資金調達・事業の拡大です。

【ビジネスマンが覚えておきたいM&Aの売却側のメリット】

  1. 後継者問題の解決
  2. 経営難からの脱却
  3. 従業員の雇用確保
  4. 資金調達
  5. 事業の拡大

後継者問題の解決

日本では高齢化が進んでおり、中小企業経営者の平均年齢も60代となっています。今後多くの中小企業経営者が引退しますが、近年は昔のように子供が家業を継ぐケースが減ってきているので、後継者がおらず廃業してしまう事例が増加しています。

親族による事業承継に代わる手段として普及しつつあるのが、M&Aによる事業承継です。M&Aなら全国から後継者候補を探せるので、親族よりもはるかに広い選択肢から、最適な後継者を見つけられます

M&Aによる後継者問題の解決は国も後押ししており、事業承継の税制を優遇したり、事業承継を支援する公的機関を設置したりしています。

M&Aによる事業承継をお考えの際は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。M&A総合研究所では、M&Aによる事業承継の経験豊富なM&Aアドバイザーが、丁寧に案件をフルサポートいたします。

料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談をお受けしておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

M&A・事業承継ならM&A総合研究所

経営難からの脱却

経営難から脱却するために、M&Aで会社を売却するのも有力な選択肢です。安定した経営基盤を持つ大手の傘下に入れば、倒産や廃業のリスクを軽減できます。

ただし、経営状態が悪いことは買い手から見るとマイナス材料なので、うまく買い手を見つけられるかが重要です。独自の技術や顧客層を持っていたり、特定の地域で強みを持ったりする会社なら、経営難でも売却できる可能性があります。

従業員の雇用確保

従業員の雇用を確保できるのも、M&Aによる売却のメリットの一つです。経営難で倒産の危機にあったり、経営者が引退して後継者がおらず廃業の危機にあったりする会社をM&Aで売却すれば、働いている従業員を解雇せずにすむでしょう。

M&Aによる売却は雇用の確保だけでなく、雇用条件を改善できるケースもよくあります。

資金調達

M&Aで会社を売却した対価は主に金銭で支払われるので、資金調達ができるのもM&Aのメリットです。例えば複数の事業を展開している場合、そのうちの一つだけをM&Aで売却し、その資金を残りの事業に充てるといった戦略をとれます。

経営者がエグジット目的でM&Aを行う事例も増加しています。M&A手法には株主に対価が支払われる手法が多いので、経営者が保有株式を売却して利益を得られるのです。

事業の拡大

事業拡大目的で会社を買収することはよくありますが、事業拡大目的で会社を売却する戦略も有力です。

例えば大手の傘下に入って経営基盤を確立したり、特定のエリアに強みを持つ会社に買収してもらうことで事業エリアを拡大したりできます。

自社の強みに相乗効果をもたらす会社に買収してもらい、シナジー効果を得ることにより事業を拡大することも可能です。

ビジネスマンが覚えておきたいM&Aのデメリット

M&Aのデメリット

M&Aには多くのメリットがありますが、一方でデメリットも存在しています。ビジネスマンがM&Aを理解する際は、メリットだけでなくデメリットも知っておくことが大切です。

デメリットもメリットと同様に、買収側・売却側に分けて理解しましょう。この章では、ビジネスマンが覚えておきたいM&Aのデメリットを、買収側・売却側それぞれの立場から解説します。

買収側のデメリット

まずこの節では、ビジネスマンが覚えておきたいM&Aの買収側のデメリットについて解説します。主なデメリットは以下のとおりです。

【ビジネスマンが覚えておきたいM&Aの買収側のデメリット】

  1. M&Aによる企業価値の低下
  2. 人材流出の可能性
  3. 統合失敗のリスク
  4. 簿外債務などの可能性

M&Aによる企業価値の低下

M&Aはもちろん企業価値を高めるために行うものですが、うまく行わないとかえって企業価値が下がるケースもあります。特に無計画な多角化をM&Aで行うと、企業価値が下がることが多いでしょう。

また、シナジー効果を見込んでM&Aを行ったものの、実際に業務を開始してみると予想と違ってうまくいかないこともよくあります。M&A自体はうまくいっても、その後の統合プロセスに失敗し、結局企業価値が下がってしまうケースもあるでしょう。

人材流出の可能性

M&Aで会社を買収するとその会社の人材を獲得できますが、必ずしも全ての従業員がM&Aに従ってくれるとは限りません。従業員は給与や雇用条件以外に、企業風土や職場の雰囲気、その会社への思い入れなど、さまざまなモチベーションを持って働いています。

M&Aは従業員のこういった環境を大きく変えてしまうので、それを不満に思った従業員が退職してしまうケースも十分考えられます。M&Aで会社を買収する際は、人材流出の可能性を考えておくことが重要です。

統合失敗のリスク

M&Aは最終契約を締結すれば一応完了となりますが、その後には統合プロセスの難関が待ち構えています。統合プロセスとは、買収した会社と経営方針や企業風土などをうまくすり合わせて、親会社・子会社として円滑に経営を進める基盤を作る作業です。

この統合プロセスに失敗すると、せっかく多大な資金と時間をかけて成約にこぎつけたM&Aが、無駄に終わってしまうことにもなりかねません。統合プロセスをうまく実行できるかどうかは、M&Aの成約そのものと同じくらい重要です。

簿外債務などの可能性

株式譲渡など会社を包括的に買収するM&A手法を用いる場合、簿外債務の可能性を考慮しなければなりません。簿外債務とは貸借対照表に乗っていない債務のことで、買収した後で多額の簿外債務が発覚すると、その後の経営に大きな悪影響を及ぼします。

経理以外の分野で働いているビジネスマンは、貸借対照表に乗らない債務があることをよく知らないこともあるでしょう。

簿外債務はどの会社にも意外とよくあり、特に中小企業は多かれ少なかれ簿外債務を抱えているものです。M&Aで会社を買収する際は、あらかじめ簿外債務がないかチェックしてください。

売却側のデメリット

次にこの節では、ビジネスマンが覚えておきたいM&Aの売却側のデメリットについて解説します。主なデメリットは、企業文化の変化に対応を迫られる・雇用条件や待遇の変化・譲渡先の選定が希望通りに行かない、です。

【ビジネスマンが覚えておきたいM&Aの売却側のデメリット】

  1. 企業文化の変化に対応を迫られる
  2. 雇用条件や待遇の変化
  3. 譲渡先の選定が希望通りに行かない

企業文化の変化に対応を迫られる

M&Aで会社を売却すると、その会社は買収側企業の子会社になったり、吸収されて親会社の一部になったりします。すると買収された会社の従業員は親会社の風土に合わせなければならなくなり、うまく変化に対応できるかが課題です。

ビジネスマンは、企業文化が急に変わることは、仕事の能率やモチベーションに大きく影響することが理解できるでしょう。企業文化の変化に対応できず、従業員が辞めてしまったりモチベーションが下がったりする事例も実際によく見られます。

雇用条件や待遇の変化

ビジネスマンにとって仕事のやりがいや将来性はもちろん重要ですが、それは給与などの雇用条件が満足いくものであることが前提です。M&Aで会社を売却した結果、雇用条件や待遇が悪化して従業員のモチベーションが下がってはいけません。

M&Aによる売却では、売却後に従業員の雇用条件や待遇が悪くならないように、交渉段階でうまくまとめることが重要です。

譲渡先の選定が希望通りに行かない

M&Aで譲渡先を探す場合、M&A仲介会社などに相談して、仲介会社が保有しているネットワークから候補を選定します。

譲渡先候補の会社は、今までこちらの会社と取引をしたこともなく、企業風土や理念もそれぞれ違います。その中から希望に合った譲渡先を見つけるのは、一筋縄でいかないことが想像できるでしょう。

M&Aの成功率は30%ともいわれており、失敗するケースの方がむしろ多いのが現状です。希望通りの譲渡先を見つけるには、譲れない条件を明確にし、それ以外の条件については相手の意見に合わせるなどの交渉術が必要になります。

ビジネスマンが覚えておきたいM&A成功のポイント

ビジネスマンが覚えておきたいM&A成功のポイント

この章では、ビジネスマンが覚えておきたいM&A成功のポイントについて見ていきましょう。

M&Aで期待できるメリット

M&Aで売上アップなどの結果を出すには、シナジー効果を見込める相手を探すことが欠かせません。買収側と売却側の信頼関係が築けそうか、企業文化が合うか、なども相手を選ぶときのポイントです。

シナジー効果は、企業価値の向上や事業の発展につながるので、シナジー効果を見込める相手探しには、信頼できるM&Aの専門家選びが大切になります。

買収側は、プラスになるM&Aを行うために買収条件をしっかり設定しましょう。高いシナジー効果が期待できても、条件のために目的が達成できないこともあります。

M&A価格の妥当性

ビジネスマンが覚えておきたいM&A成功のポイントとして、M&A価格の妥当性も重要です。売却側の企業評価をしっかり実施し、M&A価格が適切か見極めてください

デューデリジェンスは専門家に依頼し、財務面、法務、人事、ITのチェックを行いましょう。潜在的な債務などのリスクも把握しなければなりません。許容範囲を熟考し、価格設定してください。

M&A成立後の統合プロセスの明確性

M&A統合後の適切なプロセス(PMI)も、ビジネスマンが覚えておきたいM&A成功のポイントです。

買収側と売却側の企業文化は異なるので、意思決定、システムの運用、経理の方法などさまざまな点で違います。各担当が、異なる点などをリストアップし、ひとつずつ統合しましょう。労力と時間がかかりますが、経営者は適切なPMIを実施するよう指揮してください。

M&A後の事業運営や新組織体制を築くために、PMIは欠かせないプロセスです。

ビジネスマンがM&Aに触れることのメリット

ビジネスマンがM&Aに触れることのメリット

従業員として働くビジネスマンが直接M&Aに携わることは少ないかもしれませんが、自分が働いている会社がM&Aを行うことは十分あり得ますし、近年活発になっているM&Aについて知っておくことは、ビジネスにおいて今後ますます重要です。

ネットや書籍などでM&Aを勉強するのももちろんビジネスに役立ちますが、実際にM&Aに携わり、生の感覚に触れる機会があればそれに勝るものはありません。実務としてM&Aに触れることは、ビジネスマンとして多くのメリットをもたらします。

【ビジネスマンがM&Aに触れることのメリット】

  1. 財務に関する考えを養える
  2. ビジネス感度が身につく
  3. 各種契約書への見識もできる
  4. マネイジメント能力が身につく
  5. ビジネスマンとしての評価につながる

財務に関する考えを養える

営業や開発などの分野で働いているビジネスマンは、会社の財務に関してあまり深く知らないこともよくあります。ネットや書籍などで勉強しても、知識だけで得られるものには限界があるでしょう。

ビジネスとしてM&Aに携わると、財務や会計、税務に関して現場の考え方を養えます。こうして得た現場の感覚は、他のビジネスでも生かせるでしょう。

財務や会計は、簿記などの高い専門知識がないとかかわれないと思うかもしれませんが、ビジネスでのM&Aでは必ずしも高度な専門知識が必要ではないことも多いです。

M&Aにかかわるチャンスがあれば、臆せずに飛び込んでいくことがビジネスマンとしてのスキルアップにもつながります。

ビジネス感度が身につく

ビジネスでは知識や経験、コミュニケーション能力などに加えて、ビジネスに対する感覚、いわゆるビジネス感度が大切です。企業の中で営業や開発など一部の業務だけを担当していると、このビジネス感覚がどうしても鈍ってしまいます。

ビジネスマンがM&Aに触れるのは、ビジネス感度を磨くいい機会です。会社が売上をあげるシステムを俯瞰的に理解でき、表面上の数字に表れないポイントを感じ取れます。

各種契約書への見識もできる

M&Aでは、最終的な契約を結ぶ最終契約書以外にも、意向表明書や基本合意書などいろいろな契約書を締結します。こういった各種契約書への見識ができるのも、ビジネスマンがM&Aに触れるメリットの一つです。

契約書の作成は弁護士や税理士などに任せることも多いですが、何もわからずに丸投げするのと、こちらもしっかり理解したうえで依頼するのとでは全く違います。最終的には弁護士などに依頼するにしても、契約書への見識を持っておくことはビジネスマンとして重要です。

マネイジメント能力が身につく

M&Aは会社の取引であると同時に、経営者や従業員、そして顧客や取引先といった人間同士の取引でもあります。不動産や金融商品の取引と違って、利益を得るにはマネイジメント能力も重要です。

相手の気持ちを読んで合わせたり、円滑に交渉を進めたりする能力は、生まれつきの性格だけでなく、経験によって磨くことができる部分もあります。ビジネスマンがM&Aに触れることは、こういったマネイジメント能力を磨く意味でも有効といえるでしょう。

ビジネスマンとしての評価につながる

M&Aの経験があることは、ビジネスマンとしての評価を高めることにもつながります。

M&Aは会計・財務・税務・法律などいろいろな知識が必要です。それに加えて業界動向なども把握しなければなりません。M&Aの経験があることは、これらの幅広い知識・見識を持っているいいアピールになります。

M&Aに触れることは短期的に評価につながらないかもしれませんが、長期的にはビジネスマンとしてプラスに働くでしょう。ネットや書籍、セミナーだけでなく、ぜひ実地経験としてM&Aに触れておくことをおすすめします。

ビジネスマン必見!M&Aの基礎知識まとめ

ビジネスマン必見!M&Aの基礎知識まとめ

M&Aは経営者や独立起業を目指しているビジネスマンだけでなく、会社員を含めてビジネスをする人なら知っておきたい知識といえます。M&Aは難しそうに見えますが、要点を押さえればそこまで難解ではありません。

M&Aについてしっかりした見識を持ち、ビジネスマンとしてのスキルをよりアップさせましょう。

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