M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2022年6月6日更新業種別M&A
不動産管理会社における事業売却とは?メリット・デメリットを解説
不動産管理業界は、契約を取り付けられれば事業は安定して行えます。そのため競争が激しい一面もあり、事業売却などのM&Aも盛んです。不動産管理業界で事業売却を進めるにあたって押さえておくべきいくつかのポイントを掲示します。
目次
不動産管理会社における事業売却とは
M&Aは、現在では一般的な経営戦略手段として認知されており、大手企業に限らず中小規模・零細規模の会社でも行われています。一方で、M&Aは業界・業種ごとに特色が異なっており、実際にM&Aを行う場合には、事前に同一業界・業種の傾向や動向を把握しておくことが肝要です。
本記事では、不動産管理会社の事業売却について掲示します。M&Aの一環である事業売却は、別称で事業譲渡とも言います。事業売却とは、会社そのものは売却せず、会社の中の事業とそれに関わる資産などについて選別して売却するM&Aです。
事業売却が行われる場合の一般的な目的としては、赤字事業の処分、多角化してしまった事業を絞り込んでの経営資源集中、会社清算のための主力事業移管など、その会社の事情により千差万別と言えます。
不動産管理会社が行う事業売却にはどんな特徴があるのか、詳しく見ていきましょう。
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不動産管理業界の現状
M&A、事業売却の話に行く前に、まずは不動産管理業界の現状について知っておきましょう。4つの事象に分けて説明しますので、それぞれをよく把握してください。
非常に安定的な事業
不動産管理会社の特徴として、事業が「安定的」という点が挙げられます。不動産管理会社とは、文字どおり不動産の管理が主な業務です。その内容は、不動産の設備の維持、居住民からの依頼や相談への対応、家賃回収などで、もっぱら不動産にまつわる管理業務に追われます。
類似業種として不動産会社がありますが、こちらは不動産の転売や投資、売買など不動産の資産性を通じて利益を得ようとする投機事業であるため、相場に左右されやすく収益が不安定になりがちです。
それに対して不動産管理会社は、莫大な利益を上げる可能性はありませんが、不動産管理を委託されている限りにおいては収益が確定・確約されています。つまり、安定的な収益を得られるわけです。
そう考えると、本質的な意味での不動産管理会社の類似業種は、ビル管理会社などが該当することになります。
最近は競争が激化
安定的な事業である不動産管理会社ですが、不動産管理業界は企業数が多いという特徴があります。そのため、それぞれがシェアを取り合っている状態であり、最近は特に競争が激化しています。
その競争に勝つための手段として顧客のニーズに応える必要が生じ、不動産管理会社が提供するサービスも多様化の一途にあります。つまり、顧客のニーズをどう実現できるかが、昨今の不動産管理会社の生命線かもしれません。
しかしながら、多様なサービスを行うには相応のノウハウや資金が必要であり、実践できる会社は限られています。そもそも不動産管理会社は中小規模の会社が多く、大手企業の影響力があまり強くない業界でした。
ところが、激化する競争に勝てない中小規模の不動産管理会社が淘汰されるようになっているのを見た大手の不動産管理会社は、M&Aによって中小規模の不動産管理会社を呑み込むような状況になっています。
このままでいくと他の業種同様に、不動産管理業界も業界再編が進み、大手企業による寡占化が顕著となる日も近いかもしれません。
人手不足
不動産管理業界には、人手不足という課題があります。元来、不動産管理会社は新卒採用するケースが少なく、従業員が高齢化している傾向がありました。不動産管理会社の管理業務には居住民からのクレーム対応などもあり、若手よりも年長者を重視してきたのです。
そのため、不動産管理会社は経営者・従業員が総じて高齢化しており、今後の長期的な経営が難しくなっています。また、昨今の不動産管理会社では、日常の不動産管理業務以外にも、不動産や簿記などの専門的な知識が必要になる場面も増えてきました。
また、2001(平成13)年から導入された国家資格である「マンション管理士」や「管理業務主任者」などを取得すれば、不動産管理会社の業務上、有利になりますが、高齢スタッフでは合格もおぼつかない状況のようです。
有能な若手スタッフをいかにして確保していくかが、不動産管理業界全体の命題と言えるでしょう。
事業承継
日本全体の中小企業の課題として挙げられている事業承継問題は、不動産管理会社にも当てはまります。事業承継問題とは、経営者が高齢となり引退しようという時、身内などに後継者が不在であるため、やむなく廃業せざるを得ないことです。
身内に後継者がいなくとも、その場合、社内の役員や従業員に事業承継することもあります。しかし、前述したように不動産管理業界は、従業員も高齢であることが多く、社内への事業承継も思うようにままなりません。
中小企業の廃業が相次げば、国の経済状況そのものにも大きな影響があるため、現在、事業承継については、国や自治体が支援策に力を入れています。具体的には、第三の事業承継方法として、M&Aによる事業承継が推奨されている状況です。
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不動産管理会社の事業売却におけるメリット
それでは、不動産管理業界の特徴を踏まえて、不動産管理会社がM&Aによって行う事業売却について、見ていきましょう。まずは、不動産管理会社の事業売却におけるメリットを掲示しますが、買い手と売り手とでは、メリットの内容が異なります。
買い手のメリット
買い手が不動産管理会社である場合、事業売却をしている同業者から事業を買収することは、収益の増大に直接繋がります。不動産管理は管理戸数が増えるほど収益が増すため、他の不動産管理会社の事業を買収すれば、その分スケールメリットを享受できるようになるのです。
また、事業売却を受ける際に、事業だけでなく従業員も受け入れる契約とすれば、人手不足を解決する手段としても役立ちます。新しい人材を確保するには、採用や育成という手間が発生するところを、それらを抜きにまとまった数の人材を得られるのは大きな収穫です。
このように、不動産管理業界の事業売却においては、同業者が買い手である場合のメリットが大きいため、昨今は大手の不動産管理会社が積極的にM&Aを行う傾向があります。
売り手のメリット
不動産管理会社の事業売却における売り手のメリットには、主として3点が考えられます。順を追ってそれぞれを確認しましょう。
事業の存続の実現
不動産管理会社が主力事業である不動産管理業を売却するケースであれば、それは売り手が経営的に危急の事態にあることを示します。何らかの理由で負債が膨らみ、財務状況が苦しく経営継続が困難な状態に陥ってしまっているということでしょう。
このケースでは、会社を丸ごと売却するという選択肢もあります。しかし、負債などを見て買収に二の足を踏む買い手が多いでしょう。このような場合、事業とそれに関連する資産、そして、従業員の移籍をセットにして売却した方が、買い手がつくはずです。
事業売却後、売り手側経営者は会社の清算手続きを行っていくことになりますが、事業売却を行ったことで顧客との契約に問題は生じず、従業員の雇用は守られ、安定した経営力のある企業の中で、事業は継続されていくことになります。
多様なサービスの実現
不動産管理会社に対して、顧客である居住民からは様々なサービスの提供を要求されます。しかしながら、規模の小さな不動産管理会社では、顧客の全ての要求に応えきるのは至難の業です。このようなケースで、大手の不動産管理会社に事業売却がされたとしましょう。
アイディアはあっても資金的な余力がなく実現できなかったサービスも、十分な資金がある大手の不動産管理会社の中であれば提供可能となるでしょう。また、大手の不動産管理会社であれば、独自の業務ノウハウが確立されている可能性もあります。
その意味でも、これまでの顧客に対し新たなサービスが提供できるようになるのです。
経営再建
不動産管理会社が本業以外にも事業を拡張し、新規事業に参入していたとします。ところが新規事業ではこれまでのノウハウも生かせず、一向に収益が上がらないというのは、よくある話です。このようなケースでは、その新規事業を売却することがよく行われます。
赤字事業がある場合、人も資金も振り分けたそのままでいると本業の黒字事業まで共倒れとなってしまう可能性があります。その場合、該当事業を欲しがってくれる買い手を探して売却し、あらためて本業に資産を集中させ、経営を再び安定軌道に乗せることが必要なのです。
不動産管理会社の事業売却におけるデメリット
不動産管理会社が事業売却を行う場合のデメリットは、その手法に紐づきます。事業売却はその契約時に、承継する資産や負債などを選択して取り決められることが特徴です。買い手側としては、承継したくない資産や負債などをあらかじめ除くことができます。
これは、ある意味ではメリットとも言えることです。しかし、そのために事業売却は1つ1つの手続きが発生し、そのプロセスのために時間と労力がかかってしまうのです。例えば会社売却であれば、会社を丸ごと譲渡するので手続きは株式の譲渡だけです。
ところが事業売却では、承継する事業、資産、権利や義務などを、それぞれ個別に移管する手続きを取らなければなりません。また、事業売却では契約関係を移管することは、基本的にはできません。
したがって、取引先との業務契約も、従業員との雇用契約も全て締結し直さなければならないのです。さらに、許認可がいる事業について、買い手がその許認可を持っていないのであれば、それも新たに得なければなりません。
事業売却の契約内容次第という部分もありますが、事業売却を実施する場合、綿密に計画を持っておかないと、スムーズに事業売却が完遂せず、現実に業務が行えるようになるまで混乱した事態となってしまいます。
不動産管理会社の事業売却における注意点
不動産管理会社の事業売却における注意点は「売り手のリスクをいかに減らせるか」です。業界・業種を問わず、あらゆるM&Aに共通することですが、売り手はリスクを見抜かれると交渉で一気に不利になります。
足元を見られて不利な条件を突きつけられるならまだしも、M&A自体ができなくなることも珍しくありません。ここでいうリスクとは、負債や訴訟のような会社の経営に影響する事柄だけでなく、日々の業務や従業員の質も含まれています。
不動産管理会社のM&Aは人手不足解消が目的であることが多く、また、業務品質を重視する観点から人材の質も求めます。資格を持っているような優れた従業員がいなかったり、業務のずさんな従業員がいるなどの情報があると、それだけで買い手は敬遠するでしょう。
したがって、事業売却に臨む際、売り手は会社に潜在するリスクを的確に見極め、改善する必要があります。とりわけ日々の業務に改善点があるようなら、早急に直した方がいいでしょう。
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不動産管理会社のM&Aの事例
不動産管理会社関連のM&A事例を2例、掲示します。世間に公表されているM&Aは、上場企業のものに限られるため、該当するものが少ないのですが、近年のM&Aから事業売却(事業譲受)と会社売却(会社買収)の事例を選びました。
アズームがライナフの事業を譲受
2019(令和元)年、遊休不動産活用事業を行う東京のアズームが、不動産管理向けシステムやアプリの開発などを行う東京のライナフより、貸会議室WEB予約システム「スマート会議室」事業の譲渡に応じ、これを譲受しました。
「スマート会議室」は、空き会議室情報と、会議室を使用したいユーザーをマッチングさせるシステムであり、アズームが従来から行う遊休不動産の新たな活用事業を補完するものとして位置づけ、譲受を決めた模様です。
ケイアイスター不動産がフレスコを子会社化
2018(平成30)年、関東を中心に不動産事業を展開している埼玉のケイアイスター不動産は、戸建住宅の分譲事業や注文住宅事業などを行う千葉のフレスコを子会社化しました。ケイアイスター不動産はフレスコの株式50.5%を取得しての子会社化です。
ケイアイスター不動産はグループ内に200社ほどの会社を抱えるなど、M&Aを積極的に行って事業展開をしてきました。このM&Aでは、特に北関東で展開している戸建分譲事業においてフレスコとのシナジー効果が見込まれると判断したようです。
不動産管理会社の事業売却はM&A仲介会社の専門家に相談
不動産管理業界の場合、同業者とのM&Aにおいて、ややもすると自分たちだけでM&Aを進めてしまうケースがあります。しかし、M&Aは成約するまで何段階ものプロセスがあり、そのプロセスごとに法務・税務・財務などの専門的な知識が必要です。
交渉も一朝一夕で済むようなものではなく、最低でも半年以上の時間を要すとされています。また、成功率も4割前後と言われ、慎重に話を進めなければなりません。
そのため、不動産業界のM&A・事業売却を行う際はM&A仲介会社などの専門家にサポートを依頼することをおすすめします。
不動産業界のM&A・事業売却をお考えの際は、ぜひ一度、M&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所では、豊富な知識と経験を持つアドバイザーが、M&Aを徹底フルサポートいたします。
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まとめ
不動産管理業界は、事業売却をはじめとするM&Aが積極的に行われている業界です。この傾向が続けば、大手の不動産管理会社による寡占化が、どんどん進んでいくかもしれません。自社の方向性を定めるには、不動産管理業界全体の動向を読み取っていくことが重要でしょう。
本記事の要点は以下のとおりです。
・不動産管理会社における事業売却とは
→会社そのものは売却せず事業とそれに関わる資産などを選別して売却するM&A
・不動産管理会社業界の現状
→事業は安定しているが、競争激化・人手不足・事業承継の問題がある
・不動産管理会社の事業売却買い手のメリット
→収益増大効果と人手不足解消
・不動産管理会社の事業売却売り手のメリット
→事業存続、サービス内容の充実、経営再建
・不動産管理会社の事業売却デメリット
→契約の締結し直しなど煩雑な諸手続きに労力と時間が取られる
・不動産管理会社の事業売却での注意点
→売り手側は極力リスク低減の必要がある
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。