M&Aとは?手法ごとの特徴、目的・メリット、手続きの方法・流れも解説【図解】
2022年11月3日更新事業承継
個人事業を事業承継した場合の資産の減価償却方法を解説!
個人事業の事業承継における資産の減価償却方法には2つのパターンがあります。起こりえるパターンを把握して適切な会計処理を行うことで、経費を漏らすことなく計上して経営状況の健全化を図れます。本記事では、個人事業主の事業承継における資産の減価償却方法を解説します。
目次
個人事業を事業承継した場合の資産の減価償却方法
個人事業主が事業承継する際に押さえておきたいポイントの1つに、事業のために利用する資産の減価償却方法があります。
減価償却とは、建物や車などの固定資産を使用年数に応じて資産価値を減少させていき、減少させた分を経費として計上する会計手続きです。
適切な減価償却を行っていないと、事業承継で引き継ぐ固定資産の評価額が高くなり、相続税・贈与税の負担も大きくなるため、個人事業主の事業承継では引き継ぐ固定資産や減価償却方法を把握しておく必要があります。
建物を含む固定資産も事業用資産として事業承継した場合
事業承継で建物等の固定資産を事業用資産として引き継いだ場合、通常通りの減価償却を行います。
被相続人(先代経営者)が取得した資産を、相続人(後継者)が引き続き所有しているものと扱われるので、相続人は被相続人の取得時期や取得価額をそのまま引き継ぎます。
ただし、減価償却費を計算するための償却方法だけは引き継がれません。そのため、事業承継で事業用資産を引き継いだ時点で、所轄の税務署に減価償却方法の届出を行う必要があります。
届出を行わなかった場合は、原則として定額法で減価償却費を計算します。届出を行わず定率法による減価償却を行うと、税務申告の際に税務署より否認される恐れがあります。
引き継いだ事業用資産は、全てに対して相続税あるいは贈与税が課されることになり、事業用資産の未償却残高(毎年計上してきた減価償却額を差し引いた額)を基準に算出されます。
固定資産の所有権は事業承継しなかった場合
個人事業主の事業承継では、事業用資産の事業承継は相続税・贈与税の負担が大きいため、事業用資産の所有権を引き継がずに、被相続人の所有物のまま事業用に使用するケースもあります。
この場合、事業用資産は先代経営者から事業用資産を借り受ける形となります。使用貸借が有償無償に関わらず対価の授受があったものとしたならば、相続人は通常通り減価償却を行えます。
ただし、被相続人と相続人が生計を一にしているという条件があります。生活費のやり取りがなく別々の家屋に住んでいるなど独立した生活を送っている場合は、減価償却費や固定資産税、修繕費等の経費計上ができません。
なお、事業承継時の相続税・贈与税は、所有権を移転していない固定資産については発生しません。手元に資金を残しやすい方法なので、個人事業主の事業承継で選ばれやすい方法となっています。
事業承継した個人事業の取得価額
個人事業主の事業用資産の事業承継で引き継ぐものは、取得タイミング・取得価額・未償却残高・減価償却累計額です。
資産はもともと被相続人が取得したものですが、引き継いだ相続人が引き続き所有するものとして扱われます。
事業承継の取得価額は、被相続人が対象の資産の取得額から相続発生までの減価償却累計額を控除した価額です。
基本的に減価償却は行うべきものですが、被相続人が適切な減価償却を行えていないこともあります。また、個人事業では建物や車などの分かりやすい資産のほかに、高額機器類や棚卸資産なども対象に含まれます。
これら資産の取得価額のまま引き継ぐと、相続税・贈与税の税額も高くなります。相続人の負担が大きくなるだけでなく、税金資金を用意できなくなる可能性もあります。
減価償却が行われず経費計上されていなかった場合は、相続人が被相続人の取得したタイミングや耐用年数を考慮したうえで計上できます。
事業承継した個人事業の耐用年数
耐用年数とは、償却資産が利用に耐えうる年数(寿命)のことです。車や建物などの長期にわたって使用、かつ経済的価値のある資産は、償却資産として耐用年数が決められています。
事業承継で引き継いだ事業用資産の耐用年数は、そのまま引き継ぎます。中古資産ではなく引き継いだ資産として扱われるので、事業承継では中古資産の耐用年数が適用されることはありません。
減価償却費を算出する際は、国が定める法定耐用年数を用います。法定耐用年数は資産の種類ごとに定められており、建物の場合は構造や用途などでも細かく分類されています。
耐用年数がゼロになった償却資産は、それ以上減価償却ができません。耐用年数ゼロでも事業用資産として活用できますが、課税額の増大などの影響で売却・処分を検討するケースが多くなっています。
事業承継した個人事業の償却方法
個人事業主の事業承継で引き継いだ資産の償却方法は引き継ぎません。被相続人が選択している償却方法は引き継がず、相続人が新しく選択すると定められています。
償却方法の選択単位は、建物や機械装置、車両運搬具などの償却資産の種類ごとに行えます。複数の事業所を構えている場合は事業所単位で選択することも可能です。
管轄の税務署に届出を行います。償却方法の選定や届出を行わなかった場合は、法定方法である定額法を用いて減価償却することになります。
償却方法の種類
償却資産の減価償却では、基本的に定額法か定率法を用います。どちらを用いるかによって経費の計上方法が変わり、年度ごとの収益にも影響します。
【償却方法の種類】
- 定額法
- 定率法
定額法
定額法は毎年一定額の償却費を計上する方法です。計算が簡便なので、複数の償却資産を保有していても将来の見通しが立ちやすいメリットがあります。
償却費は「取得価額×定額法の償却率」で算出します。例えば、取得価額1000万円、耐用年数10年の資産の場合は、100万円の減価償却を10年繰り返すことになります。
計算方法が分かりやすく帳簿をつけやすい反面、節税効果が薄れる可能性もあります。タイミングに関わらず一定額の経費計上になるので、利益の相殺に利用しづらい面もあります。
なお、平成19年4月1日以後に取得された減価償却資産は、残存価額が廃止されているため、取得価額を法定耐用年数で割ることで減価償却費が算出されます。
定率法
定率法は未償却残高を一定割合で償却する方法です。初年度の償却費を高く計上して徐々に逓減していく方法なので、投資額を早めに回収したい場合に活用できます。
減価償却費は「期首未償却残高×定率法の償却率」で算出します。償却率をかける基準額が徐々に減っていくので、算出される減価償却費も低くなる仕組みです。
定額法と比較すると計算方法が複雑になりがちで、負担が大きくなる傾向があります。さらに、耐用年数の後半年度になると減価償却費が低くなるので、節税効果が弱まっていくデメリットもあります。
償却資産の減価償却は定額法又は定率法を選択しますが、一部の資産については償却方法が限定されているものもあります。
例えば、建物については、平成10年3月31日以前に取得した建物は自由に選択できますが、平成10年4月1日以後に取得した建物は定額法に限定されています。
そのほか、建物附属設備及び構築物や無形固定資産及び生物も定額法に限定されており、定率法の適用ができません。
個人事業の事業承継に関する相談先
個人事業主を引き継ぐ際は、事業承継の手続きや減価償却費の会計処理が必要です。全ての手続きを円滑に進めるためには、個人事業主の事業承継に精通した専門家のサポートを受けることをおすすめします。
M&A総合研究所はM&A・事業承継サポートを手掛けるM&A仲介会社です。中小企業や個人事業主のM&A・事業承継における豊富な実績を有しており、M&Aアドバイザーによる専任フルサポートを行っています。
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個人事業の事業承継で贈与税や相続税を非課税にする制度
事業承継を検討している個人事業主や後継者にとって、個人事業を贈与、相続するときの税金負担は大きな悩みです。政府は、中小企業の事業承継を後押ししていくために、2009年に「事業承継税制」を創設しました。事業承継税制は、贈与税や相続税の納税を猶予する制度です。
対象となるのは、青色申告にかかる事業(不動産貸付業などを除く)の後継者として事業承継税制の認定を受けた者が、2019(平成31)年1月1日から2028(令和10)年12月31日までの贈与・相続などにより特定事業用資産を承継した場合に限ります。
後継者とは、2019(平成31)年1月1日から2024(令和6)年3月31日までに「個人事業承継計画」を提出し、都道府県知事から認定を受けた者です。
事業承継税制が適用されると、一定の要件のもと、個人事業の後継者が取得した一定の特定事業用資産について、贈与税や相続税の納税が猶予されます。その後、一定要件を満たすと、猶予されていた贈与税や相続税の納税は免除されます。
2018年度の税制改正で10年間の限定措置として要件が緩和され、2019年度の税制改正では個人向けの事業承継税制も新設されました。
個人事業を事業承継した場合の資産の減価償却方法まとめ
個人事業の事業承継では、事業用資産の帳簿価額をそのまま引き継ぐことになります。償却方法だけは引き継がないため、相続人が新しい方法を選択して届け出を行う必要があります。
引き継ぐ資産が多い場合は減価償却の会計手続きが大変です。不安がある場合は事業承継の専門家に相談すると、事業承継後の経営も行いやすくなります。
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