M&A・事業承継の理解を深める M&A総合研究所ポータル(旧M&A STORY)

Logo

この記事は、約 3分で読めます。
事業承継の信託

事業承継の信託

Medium
この記事の監修専門家
M&A総合研究所 公認会計士
高谷 俊祐

目次

    事業承継の信託

    事業承継のための信託

    昨今、中小企業を中心に多くの経営者の頭を悩ませている事業承継。

    せっかく後継者を選定ができても、会社の経営権を円滑に譲り渡すことができなければ事業承継が成功したとはいえません。

    ただ、最近は事業承継を考えている経営者に向けに事業承継用の信託が行われており、経営者にとって心強い味方になりつつあります。

    今回は事業承継のための信託の特徴や種類、使ううえでのメリットをお伝えしていきます。

    ぜひ参考にしてみてください。

    事業承継信託とは

    そもそも事業承継信託とはどういったものなのでしょうか。

    元々信託とは財産を持つ人(委託者)がその財産を特定の信託行為を通じて受託者に託し、財産を持つ人が定めた目的通りに財産を管理・分配・処分し、その行為を通じて発生する利益を委託者が定めた受益者に提供する法律関係のことをいいます。

    平成19年の法改正以降、信託はその種類が増えており、近年では中小企業の事業承継に役立つ形で設計された信託サービスが提供されるようになりました。

    事業承継信託の場合、信託されるのは株式です。

    そのため、事業承継信託といわず「自社株信託」という名目でサービスを提供している金融機関もあります。

    経営者の方にとっては常識の範疇の話になりますが、事象承継において後継者に経営権を引き継がせる際に最も重要なファクタ―となるのが株式です。

    株式は一定以上所有することで初めて経営権を発生させるものであり、経営者が後継者にいかに株式を引き継がせていくかが事業承継において重要なポイントとなります。

    もちろん、事業承継信託を使わずとも株式を贈与や相続といった形で後継者に引き継がせることは可能です。

    しかし確実に後継者に株式を所有させ、経営権を確立させることは決して簡単なことではありません。

    もし後継者と他の後継者候補が対立するような事態になれば株式の取り合いになるような事態が発生しますし、単純に株式を贈与・相続するだけで後継者に手元に渡らず、株式が他の親族の手に渡ってしまう可能性もあります。

    経営者が遺言書を残しておくという方法も使えますが、もし経営者の意図がしっかりと周囲の人間と共有されていなければ遺言書通りに相続が進むとは限りません。

    万が一後継者以外の人間が一定以上の株式を所有する事態になってしまうと経営権が確立せず、逆に株主としての権力を行使され安定的な経営が阻害される恐れがあります。

    何よりせっかく会社を引き継がせた後継者が本来のポテンシャルを発揮できない経営環境になってしまい、会社存続が危うくなってしまいます。

    以上の点を踏まえると、事業承継のプロセスをより円滑に遂行し、さらに事業承継を確実に成功させるうえで事業承継信託は欠かせない存在になり得ます。

    ※関連記事

    事業承継とは?方法や事業承継税制・補助金、M&Aでの活用について解説

    事業承継における信託の種類

    事業承継のための信託は一種類ではなく、複数の種類があります。

    そもそも信託は内閣総理大臣から免許を得ている、あるいは登録を受けている信託会社などが行っている営利目的の信託「商事信託」と受託者に対する制限がない業者が行っている「民事信託」です。

    さらに事業承継のための信託となると、大きく分けて3種類の信託が挙げられます。

    ここからは事業承継に役立つ3種類の信託をそれぞれご紹介していきます。

    ①遺言代用信託

    遺言代用信託とは委託者が信託会社や金融機関と遺言の内容に則した契約を結び、委託者の死後に確実にその契約を実行してもらうという形の信託です。

    こういってしまうと、似たような名前の「遺言信託」と混同してしまうかもしれません。

    しかし遺言代用信託と遺言信託は全く別物といっても過言ではありません。

    遺言信託は信託会社や金融機関が委託者の遺言の作成をサポートし、完成した遺言を保管、そして委託者が死亡し相続が発生した際に委託された遺言を確実に遂行していくことに重きを置いています。

    つまり、遺言信託が本来の効力を発揮するのは委託者の死後であり、遺言通りに財産の分配などを行っていくための信託だといえます。

    似たような名前でも遺言信託は事業承継のために使うには難しいものです。

    遺言信託はあくまで委託者の遺言通りに行動することに重きを置いているものですが、遺言は相続の段階、つまり委託者が死亡して初めて効力を発揮するものです。

    そのため委託者は残された遺言がちゃんと遂行されていくかを確認することができないため、遺言が親族などによって内容通りにちゃんと遂行されるかどうかの確証を得ることができません。

    対して遺言代用信託は信託会社や金融機関の間に交わされる契約それ自体が締結後に効力を発揮します。

    生前から意図通りの遺言が効力を発揮していることを委託者は確認できるため、より確実に事業承継を達成することができます。

    ②他益信託

    他益信託とは経営者が自社の株式を第三者の受託者に信託し、受益者に後継者を定めるという信託です。

    他益信託の最大のメリットは経営者が後継者に自社の株式を託しつつも、経営権を保持できる点にあります。

    これは株式の議決権と財産権を分けているからこそできることです。

    他益信託は経営者に議決権を保持させたままにしておくことができ、同時に財産権を後継者が得る形にできます。

    さらに他益信託は後継者に議決権を持たせる形にもできるため、経営者の理想的な設計にできることも魅力です。

    ③後継ぎ遺贈型受益者連続信託

    後継ぎ遺贈型受益者連続信託は後継者を受益者にしつつ、万が一後継者が死亡した際に受益権を別の後継者に移すことができる信託です。

    つまり複数の後継者を経営者の設定した順番に沿って受益者に据えることができる方法であり、後継者に万が一があった際に対応できます。

    後継者が高齢化している際はうってつけの信託だといえるでしょう。

    しかし、信託法第91条により、信託期間は30年と定められており、30年を超えると新たに受益権を承継することが一度しかできなくなってしまうので気を付けてください。

    事業承継の信託の設定方法

    事業承継の際の信託の設定方法は一つではなく、大きく分けて3つの方法があります。

    いずれの設定方法を使うかは実際に事業承継を行う経営者の都合に合わせて判断されるものであるため、いずれの方法が優れているということはありません。

    あくまで経営者が描く事業承継のプランに適したものを選ぶようにしておきましょう。

    ①信託契約を締結する

    これは委託者と受託者の間で信託契約を締結するという設定方法です。

    原則として信託契約を締結した時に効力が発動するようになっています。

    この設定方法だと受益者が契約当事者になれなくなりますが、この点は問題ありません。

    基本的に受益者は一方的に利益を得られる存在であるため、契約当事者になる必要がないと考えられているためです。

    ただ、事業承継ではあまりない構図かもしれませんが、受託者は受益者に「受益者になった」という旨を伝える必要があります。

    ②遺言書に信託を期待する

    これはシンプルに遺言書に信託を記載するという方法であり、遺言書である以上遺言と同時に(つまり委託者が死亡した際に)効力が発生するようになっています。

    ある意味では遺言信託と同じようなタイミングで信託の効力を発生させるといったケースです。

    これも一概に悪い方法とは言えませんが、委託者が死亡したタイミングでなければ効力が発揮しないため、早い段階から信託の効力を発揮させたいと考えている人には不向きな設定方法だといえます。

    ③自己信託による信託宣言

    自己信託とは特殊な信託の設定方法であり、平成19年の法改正以降から使えるようになった信託です。

    自己信託は自分自身を委託者であると同時に受託者に設定するものであり、信託される財産は委託者や受託者の固有財産とは切り離して管理されるようになります。

    自己信託の場合、委託者と受託者が同一人物であるため契約当事者になることはできません。

    そのため委託者の単独意思表示として扱われる信託宣言を行うことになります。

    ※関連記事

    事業承継の相談

    事業承継信託のメリット

    他の事業承継の手法とは一味も二味も違う事業承継信託ですが、具体的にはどんなメリットがあるのでしょうか。

    ここでは事業承継信託のメリットをまとめてみました。

    経営者の理想に叶った柔軟な事業承継が可能

    事業承継信託の最大のメリットはその柔軟さにあります。

    事業承継信託を使えば株式の議決権と財産権を切り離したうえで設定できるため、経営者が会社の経営権を保持したまま後継者に株式の財産権を承継させることができ、受益権の設定や行使する条件を経営者の意向に沿った形にすることで後継者の地位が脅かされにくくなります。

    従来の事業承継だと後継者の株式の承継は相続や贈与、譲渡といった形が多くありましたが、相続は経営者の死亡後になるため、「コントロールがしにくい」「贈与は時間と手間がかかる」「譲渡は後継者に一定以上の資金力が求められる」など、様々な面で難点があり、同時に融通が利きづらいものでもあります。

    しかし事業承継信託であれば経営者の理想に沿った形でプランを組み立てることができるため、従来の方法では理想的な事業承継は難しいという経営者にとって最も最適な方法だといっても過言ではありません。

    後継者の地位を確実に固められる

    事業承継信託のメリットは後継者の地位を確実に固められるという点にもあります。

    信託は信託会社などの機関を間に挟んだうえで株式を承継する相手(受託者、受益者)を設定できるため、後継者の地位を確実に固められると同時に経営者の意向を反映させやすい形式になっています。

    そもそも信託では株式の議決権と財産権を切り離せるため、経営者の経営権をキープしたまま後継者への承継準備を着実に進められる点は経営者にとって都合が良いものだといえるでしょう。

    また信託の設定方法によっては後継者の次の後継者も設定でき、実際に信託が行われる際は第三者(信託会社など)の手でしっかり承継の実務が進めら、後継者を巡ったトラブルが起きにくいことも経営者にとって嬉しいポイントだといえるでしょう。

    経営に空白ができない

    事業承継は相続という側面があるため、経営者の死亡後、遺産分割協議など様々な出来事が発生してしまうと、事業承継が完了するまで会社の経営に空白ができてしまう恐れがあります。

    しかし信託は基本的に委託者である経営者が死亡したと同時に、迅速に議決権や受益権が移動するようになっているため、余計な作業を挟む必要がありません。

    そのため事業承継がスピーディーに行われるようになり、相続のゴタゴタで会社の経営に空白ができる…という最悪な状況を避けることができます。

    信託の活用方法/ケース

    実際に事業承継信託を活用した場合、どういったことになるのでしょうか。

    さすがに全てのケースを紹介するのは難しいですが、ここではとある中小企業を一例に、実際に事業承継信託を使った場合のオーソドックスなケースを紹介していきます。

    【とある中小企業の場合】

    会社経営者Aは経営している会社の創設者であり、経営者。会社の株式を100%保有している。

    そんなAにはBとCと言った子供が2人おり、後継者にはBを指定している。

    しかし、会社経営者Aの財産の大半は会社の株式であり、生命保険等の金融資産は持っていない。

    そのためもし後継者であるBを優先とした相続を行った場合、現状の財産ではCの遺留分を満たせない状況になっていた。

    そこでAは信託を利用し、受託者をB、受益者をCに設定する。

    これにより、株式の議決権(経営権)はBに移譲するが、財産権(株式の配当など)は受益者であるCに移譲するようになった。

    これによりBの後継者としての地位を守りつつ、Cの遺留分を確保した相続が実現した。

    【ポイント】

    ある意味最もオーソドックスな信託活用だといえます。

    信託の最大のメリットである株式の議決権・財産権の区分けを利用することで後継者が議決権を行使できるように設定しつつ、それ以外の親族は受益者として設定することで遺留分の財産は確保できるようにしています。

    普通の相続のように株式を分けると、どうしても株式が分散してしまい、後継者以外の人間が経営に口出しできる権限を持ってしまうことがありますが、この信託の活用法を使えば後継者以外が保有する株式は実質的に議決権がない株式になるため、経営における発言権がなくなります。

    つまり受益権が別の子どもの手に渡っても、後継者の会社における地位を守ることができるというわけです。

    事業承継信託を使う際の注意点

    事業承継信託を実際に使う際、注意点が2つあります。

    ここではその注意点をそれぞれお伝えしていきます。

    ①事業承継信託への理解を共有しておく

    事業承継信託は平成19年の法改正以降に一般化した事業承継の手法であるため、他の手法と比べると比較的新しく、また信託という特殊な形式を使うため、その仕組みを理解していない人は少なくありません。

    そのため、実際に事業承継信託を使う際には信託に対する知識を、後継者をはじめとした事業承継に関わる人間と共有しておくことが重要です。

    ②遺留分には注意しておく

    これは事業承継信託だけというよりも、相続全体に対して言える注意点ですが、他の親族の遺留分については常に注意しておくようにしておきましょう。

    信託は他の親族が内容に関して口を出せないような設定になっているからからこそ後継者の地位を確立させやすいというメリットがあります。

    しかしその反面、他の親族の遺留分を無視し、後継者に偏った設定もしやすくなっています。

    結果、実際に信託を行う際に余計なトラブルが発生してしまう恐れがあります。

    もし他の親族が信託の内容に不満を持ち、遺留分を確保するために遺留分減殺請求を使うような事態になったら、そしてそれが法廷での紛争にまで発展するようなことになると、スムーズな事業承継の実現は難しくなってしまいます。

    そのため事業承継信託を使う際には他の親族の遺留分も加味したうえで設定や条件付けを作っていくことがおすすめです。

    ※関連記事

    事業承継の手続き【法人・個人事業主向け】

    まとめ

    今回の記事をまとめると以下の通りです。

    ・事業承継信託は事業承継を円滑化するうえで有効的な方法。

    ・事業承継信託は大きく分けて3種類ある。

    ・事業承継信託の設定方法も大きく分けて3種類ある。

    ・事業承継信託のメリットは経営者の意向を反省させやすい点や後継者の地位を確立しやすい、経営に空白ができないといった点がある。

    ・事業承継信託を使う場合は信託への理解を周囲の人間と共有し、他の親族の遺留分に注意しておく。

    中小企業にとって事業承継は会社が存続するか否かの分水嶺であり、確実に成功させたいと願うものです。

    そんな経営者の気持ちを叶えるうえにあたって事業承継信託は非常に有効的な方法となり得るでしょう。

    ただ、事業承継信託を活用する方法は比較的に新しいものであり、理解が足りないとせっかくのメリットを享受できない可能性があります。

    事業承継信託を活用する場合、信託に関する知識を少しでも多く蓄えておくことがおすすめです。

    M&A・事業承継のご相談ならM&A総合研究所

    M&A・事業承継のご相談なら専門の会計士のいるM&A総合研究所にご相談ください。
    M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴をご紹介します。

    M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴

    1. 業界最安値水準!完全成果報酬!
    2. M&Aに強い会計士がフルサポート
    3. 圧倒的なスピード対応
    4. 独自のAIシステムによる高いマッチング精度
    >>M&A総合研究所の強みの詳細はこちら

    M&A総合研究所は会計士が運営するM&A仲介会社です。
    企業会計に強く、かつM&Aの実績も豊富です。全国にパートナーがいるので案件数も豊富。
    また、業界最安値水準の完全成果報酬制のため、M&Aが成約するまで完全無料になります。
    まずはお気軽に無料相談してください。

    >>【※国内最安値水準】M&A仲介サービスはこちら

    電話で無料相談WEBから無料相談
    • 02
    • 03
    • 04
    • 05
    ご相談はこちら