M&Aとは?手法ごとの特徴、目的・メリット、手続きの方法・流れも解説【図解】
2022年6月6日更新事業承継
事業承継ネットワークとは?事業概要、中小企業が利用するメリット【事例あり】
事業承継ネットワークとは、地域の機関・団体が事業承継支援のネットワークを構築することで、中小企業・小規模事業者の事業承継を促す取り組みです。本記事では、事業承継ネットワークの事業概要や、事業承継ネットワークを中小企業が利用するメリットなどについて解説します。
事業承継ネットワークとは?
事業承継ネットワークとは、地域のさまざまな機関や団体が連携することで、中小企業・小規模事業者の事業承継を促す取り組みです。
中小企業経営者は、事業承継ネットワークの取り組みを知っておくと、いざというときに役立ちます。本章では、事業承継ネットワークの成り立ちや構成機関・団体を紹介します。
事業承継ネットワークはなぜ誕生した?
事業承継ネットワークは、中小企業の事業承継を後押しするために、平成29年度から各都道府県での事務局運営が始まりました。
事業承継の準備が必要な中小企業は増加しているにもかかわらず、実際に事業承継の準備に取り掛かっている中小企業は少ないのが現状です。
そこで、中小企業庁は各都道府県に地域事務局を運営する事業者を置き、事業承継の支援を開始しました。
中小企業へプッシュ型の情報提供を行うことで、事業引継ぎ支援センターやよろず支援拠点などへの橋渡し役となっています。
事業承継ネットワークを構成する機関・団体
事業承継ネットワークは、以下の機関・団体などから成り立っています。
- 運営事務局
- 都道府県・市区町村
- 金融機関、商工会・商工会議所、中央会、士業等専門家
- 中小機構地域本部
- 事業引継ぎ支援センター
- よろず支援拠点・再生支援協議会など
- 経済産業局・財務局
- 信用保証協会
運営は中小企業庁から委託された機関が行い、都道府県・市区町村では地域の事業承継支援の立案やとりまとめを行います。
また、中小機構地域本部は支援機関への研修などを実施し、信用保証協会は事業承継ネットワークと連携して金融支援を行なっています。
そして、事業引継ぎ支援センターやよろず支援拠点・再生支援協議会は、M&A案件のフォローや再生支援などを事業承継ネットワークと連携して行っています。
事業承継ネットワークの事業概要
事業承継ネットワークでは中小企業に対して以下の支援を行ってい ます。ここでは、各支援内容について解説します。
- 各都道府県の事業承継を支援
- 各企業の事業承継診断
- 事業承継支援のサポート・連携関係の構築
各都道府県の事業承継を支援
事業承継ネットワークは、各都道府県で事業承継支援体制を整えており、事業承継支援を行うために各機関や団体との連携構築、事業承継支援に関する情報発信などを行っています。
地域の事業承継支援を関係機関・団体が単独で行うことは簡単ではなく、地域の事業承継をスムーズに行うためには、さまざまな関係機関・団体が協力していく必要があります。
そのため、各都道府県では事業承継の支援体制を整備することで、円滑な事業承継を推進しています。
各企業の事業承継診断
各事業承継ネットワークでは、地域の企業の事業承継診断を行っています。事業承継診断を受けることで自社の事業承継における課題をみつけることができ、具体的な準備を始めることができます。
事業承継ネットワークでは事業承継診断の実施のほか、事業承継診断の結果を集約して公表し、結果をまた事業承継診断の作成と実施に活かすといったサイクルを回しています。それによって、事業承継の支援体制をブラッシュアップしています。
事業承継支援のサポート・連携関係の構築
事業承継ネットワークでは、各地域内での機関・団体間の連携体制を構築しています。
具体的には、専門家派遣制度と連動した支援体制の構築や、地域の事業承継支援専門家の発掘・リスト化・情報の共有、経営改善計画策定支援事業を活用した経営改善の環境整備などです。
経営改善計画策定支援事業とは、中小企業・小規模事業者が金融機関から金融支援を受ける際に必要となる経営改善計画の作成を認定機関がサポートする事業です。
各機関・団体がお互いに連携を深めることで、中小企業・小規模事業者が抱える事業承継の課題をさまざまな角度から支援できるようになっています。
事業承継ネットワークを中小企業が利用するメリット
中小企業が事業承継ネットワークを活用する場合、 以下のメリットが得られます。本章では、 事業承継ネットワークを中小企業が活用するメリットについて解説します。
【事業承継ネットワークを中小企業が利用するメリット】
【事業承継ネットワークを中小企業が利用するメリット】
- 後継者問題の円滑な解決
- 事業の存続と発展
- 地元経済の維持・発展
1.後継者問題の円滑な解決
事業承継の準備が必要な段階にある中小企業は数多くありますが、後継者問題を抱えていることで事業承継の準備が進まないケースも少なくありません。
親族内に事業承継候補がいないケースもあり、経営者に子どもがいないパターンと、子どもはいるものの子どもが会社を継ぎたがらないパターンがあります。
親族内に事業承継候補がいない場合は、従業員から事業承継候補を探したり、外部から事業承継候補を迎え入れたりするパターンがあります。
親族内事業承継・親族外事業承継のいずれでも候補がいない場合は、M&Aによって第三者へ事業承継を行うパターンもあります。
近年はM&Aによる第三者事業承継の数が増え続けており、事業承継ネットワークでもM&Aによる第三者事業承継の相談やM&Aの成立事例が年々増加しています。
事業承継ネットワークに相談することで自社の課題を探り出し、後継者問題の円滑な解決方法をみつけることが可能です。
2.事業の存続と発展
事業承継ネットワークを活用する大きなメリットは、事業を存続させることができるうえ、うまくいけば事業の発展も望める点です。
自身で創業から会社を育ててきた経営者にとっては、自分の子どものような会社をできれば潰したくないと考える方も多いでしょう。また、代々継いできた会社の場合、自分の代で会社を潰したくないという思いもあるでしょう。
しかし、実際には、十分な事業承継の準備ができなかったことが原因で、廃業に至ってしまった会社も多くみられます。
事業承継ができず廃業に至ってしまう原因として、事業承継の準備に取り掛かるのが遅かったことが挙げられます。
事業承継の準備を始めようにも、何から始めたらよいかわからないという経営者や、日々の業務が忙しくて事業承継の準備になかなか時間が割けないという経営者も少なくありません。
事業承継ネットワークはプッシュ型のサポートを行っているので、経営者自身ではできなかった事業承継の準備が事業承継ネットワークの後押しによりできるというメリットがあります。
3.地元経済の維持・発展
事業承継ネットワークの大きな目的は、地元企業の廃業による地域経済の衰退を防ぐことです。地元企業の廃業は雇用の減少へ、雇用の減少が地域の衰退へとつながっていきます。
また、高齢化が進む地方では、地元企業の廃業が生活にも大きな影響を与えます。各地域が事業承継ネットワークを構築することで中小企業の事業承継を促進し、地域経済の衰退を食い止めようとしています。
地元企業の廃業による地域経済の衰退を食い止めるには、事業承継ネットワークの関係機関・団体や、中小企業の事業承継を中心に支援しているM&A仲介会社などのサポートが必要です。
近年は、M&A仲介会社やマッチングサイトなど、第三者事業承継を専門に支援する環境が整ってきているので、適切に専門家を選ぶことができれば円滑に第三者事業承継が行えるようになってきています。
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事業承継ネットワークを活用した事例
本章では、実際に事業承継ネットワークを活用した5つの事例を紹介します。
【事業承継ネットワークを活用した事例】
- 千葉県の事業承継支援事例
- 神奈川県の事業承継支援事例
- 群馬県の事業承継支援事例
- 愛知県の事業承継支援事例
- 岐阜県の事業承継支援事例
1.千葉県の事業承継支援事例
金融機関で事業承継診断を行っていた製造業経営者のAさんは、今後について事業承継ネットワークに相談をしました。
相談内容は、事業承継を検討しているが親族内に後継者がおらず、取引先から業務提携の打診ももらっているがどうしたらよいか、というものです。
千葉県事業承継ネットワーク事務局は、まず事業承継ネットワークのコーディネーターとアンケートを実施した金融機関、製造業経営者のAさんで話し合いを行いました。
製造業経営者のAさんは、先代から事業承継する際に株式が分散したままになっており、工場も賃貸借契約になっていました。
そこで、千葉県事業承継ネットワーク事務局は、株式の買取を行うことと、土地の賃貸借契約について地主と交渉することを提案しています。
その結果、製造業経営者のAさんは紹介された専門家の支援を受けながら株式のほとんどを集約し、土地の賃貸借契約も継続できることとなりました。
取引先との業務提携も成立したことから、今後は取引先とのM&Aも進めていく方向で話が進んでいます。
2.神奈川県の事業承継支援事例
酒販店経営者のSさんは、事業承継ネットワークを通じて事業承継診断を受けました。その結果、酒販店経営者のSさんが円滑な事業承継を行うには、会社の強みや課題の見える化と、会社の磨き上げが必要との判断に至ります。
事業承継ネットワークはコーディネーターを派遣し、酒販店の現状を分析、強み・魅力を洗い出しました。
酒販店の後継者は事業承継に消極的でしたが、会社の現状分析によって酒販店の将来性がみえたことで、後継者となることに前向きになりました。
今後は事業承継計画を策定することで、酒販店の事業承継を具体的に進めていく計画となっています。
3.群馬県の事業承継支援事例
金属加工会社を経営するDさんは、60代後半で経営者の平均引退年齢を迎えていましたが後継者がおらず、社員の雇用維持のためにもよい事業承継先があれば引き継ぎたいと考えていました。
そこで、事業承継ネットワーク事務局は事業引継ぎ支援センターを紹介し、事業承継先を探すよう提案します。
Dさんも第三者への事業承継に興味を示したことから、事業引継ぎ支援センターでの相談を行い、事業承継の準備を進めることとなりました。
Dさんの会社は社員の技術力が高く設備も整っており、今後10年以上事業を継続できる体制が整っています。
しかし、親族内や社員に後継者候補がいなかったため、事業引継ぎ支援センターがネットワークのなかから事業承継相手を探し、候補をみつけることができました。
4.愛知県の事業承継支援事例
経営者のFさんは70代になり、娘婿への事業承継を検討していましたが、それまで事業承継対策をしてきませんでした。
そのため、事業承継の際に自社株式や事業用資産が分散するリスクがあることから、Fさんは譲渡価額ネットワーク事務局へ全面的なサポートを依頼します。
Fさんは事業承継ネットワークを通じて、生前贈与の準備や事業承継計画書の策定など、事業承継に向けた準備をスタートさせました。
事業承継ネットワークの各専門家が分野ごとにサポートを行ったので、Fさんが抱えていた課題は整理され、具体的な事業承継にスムーズに移れる体制が整っています。
5.岐阜県の事業承継支援事例
廃業予定だったキャンプ場運営を、もし事業承継先があれば引き継ぎたいと考えていた経営者のGさんは、キャンプ場の従業員が事業を引き継ぎたいという意思を示したことから、事業承継について商工会を通じて相談しました。
事業承継ネットワーク事務局は、Gさんの相談に対して新たな経営計画の策定や事業計画の作成、税務や法務などさまざまな視点からアドバイスを行いました。また、アウトドア事業コンサルタントを派遣し、キャンプ事業の具体的な戦略を構築していきます。
その結果、Gさんは事業承継について明確なイメージを持つことができ、事業承継に向けて計画的な準備を行うことができました。
まとめ
事業承継ネットワークは、地域企業が廃業することによる経済の衰退を防ぐことが大きな目的であり、さまざまな機関や団体がネットワークを構築することによって、中小規模事業者の事業承継の促進・支援を行っています。
いざという時に役立つ存在であるため、中小企業経営者はどのような支援を受けられるのかなどを知っておくとよいでしょう。
いざという時に役立つ存在であるため、中小企業経営者はどのような支援を受けられるのかなどを知っておくとよいでしょう。
【支援内容】
- 各都道府県の事業承継を支援
- 各企業の事業承継診断
- 事業承継支援のサポート・連携関係の構築
【メリット】
- 後継者問題の円滑な解決
- 事業の存続と発展
- 地元経済の維持・発展
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