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2024年5月28日更新事業承継
事業承継税制の特例措置とは?制度の内容・メリット・適用要件・注意点も解説【2024年最新】
事業承継税制には特例措置と一般措置が設けられています。特例措置は特に高い節税効果を期待できますが、いくつかのデメリットもあるため違いを把握することが大切です。本記事では、2024年最新版の事業承継税制における特例措置のメリットや適用要件などを解説します。
目次
事業承継税制とは
3種の事業承継のうち親族内事業承継では、後継者は相続、または贈与によって会社の株式や事業用資産を取得します。一方、社内事業承継・M&Aによる事業承継における株式・事業用資産の取得方法は、後継者による買取りです。
したがって、親族内事業承継が実施された場合のみ、後継者に相続税、または贈与税が課されます。取得した株式や事業用資産の評価いかんでは、相続税・贈与税が高額になりかねません。この税負担を嫌って、後継者になることをためらう親族もいます。
そうなると事業承継が頓挫し、そのまま後継者不在が続けば廃業危機に陥ってしまうのです。そこで国としては、円滑な事業承継環境が整うことを企図して、2009(平成21)年に「中⼩企業における経営の承継の円滑化に関する法律(以下、経営承継円滑化法」を施行しました。
この経営承継円滑化法で定められたのが、事業承継税制です。事業承継税制では、要件を満たせば事業承継時に発生する相続税・贈与税が猶予・免除されます。なお、個人事業向け事業承継税制は2019(令和元)年に創設されましたが、こちらは10年間(2028年まで)の時限税制です。
相続税の仕組み・税率
オーナー経営者(被相続人)が亡くなったときに、配偶者や子ども(相続人)は自社株式やその他の遺産を相続します。この相続の際に課されるのが相続税です。相続税には基礎控除額が定められており、全遺産の合計額が下記の計算額以下であれば課税されません。
- 相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の人数
基礎控除額を超えた金額に対する相続税の税率および控除額は以下のとおりです。
相続額(基礎控除額を引いた金額) | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | ― |
1,000万円超~3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
3,000万円超~5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
5,000万円超~1億円以下 | 30% | 700万円 |
1億円超~2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
2億円超~3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
3億円超~6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
贈与税の仕組み・税率
事業承継では、オーナー経営者の所有する自社株式を、生前贈与で後継者に引き渡すこともあります。その際に課されるのが贈与税です。贈与税の基礎控除額は、1年単位(1月1日~12月31日の間)で110万円であり、毎年、110万円以下に分けて株式を贈与すれば、課税を受けません。
ただし、その場合、全株式を贈与するのに10年以上かかるでしょうから、あまり現実的な選択肢とはいえないでしょう。贈与税の税率は、一般税率と特例税率があります。特例税率は、直系尊属(父母・祖父母)が18歳以上の子・孫に贈与した場合の税率で、以下のとおりです。
贈与額(110万円を引いた金額) | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | ― |
200万円超~400万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円超~600万円以下 | 20% | 30万円 |
600万円超~1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
1,000万円超~1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
1,500万円超~3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
3,000万円超~4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
4,500万円超 | 55% | 640万円 |
特例税率に該当しないケースが一般税率であり、内容は以下のとおりです。
贈与額(110万円を引いた金額) | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | ― |
200万円超~300万円以下 | 15% | 10万円 |
300万円超~400万円以下 | 20% | 25万円 |
400万円超~600万円以下 | 30% | 65万円 |
600万円超~1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,000万円超~1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
1,500万円超~3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超 | 55% | 400万円 |
税額の計算では、贈与額に該当する税率を掛け合わせた後、控除額を差し引いて納税額を求めます。
事業承継税制の特例措置とは
事業承継税制の特例措置とは、事業承継税制の大幅な改正で設けられた10年間限定の特例措置です。一般措置と比較すると利便性が大幅に向上し、多くの事業者にとって活用しやすい制度となりました。
事業承継税制は、相続税と贈与税の両方に適用が可能です。事業者は猶予措置を受け続け、最終的に免除措置を受けて税金負担を軽減させ、事業承継の円滑化を図る制度となっています。
事業承継税制の特例措置が設けられた理由
事業承継税制は、2009年に創設されてから適時改正が行われていましたが、手続きの複雑さや要件の厳しさが原因で利用件数が伸び悩んでいました。
近年は、中小企業経営者の高齢化や後継者不足が加速し、事業承継問題が深刻化しています。事業承継税制の適用要件を抜本的に緩和させることで、中小企業の事業承継を促進させる狙いです。
事業承継税制の特例措置と一般措置の違い
事業承継税制の適用を検討する際は、特例措置と一般措置の違いを把握することが大切です。下表に特例措置と一般措置の違いをまとめました。
特例措置 | 一般措置 | |
適用期限 | 2018(平成30)年1月1日~2027(令和9)年12月31日 | なし |
対象株式 | 後継者が取得する全株式 | 発行済議決権株式総数の3分の2が上限 |
納税猶予割合 | 相続税・贈与税ともに100% | 相続税80%・贈与税100% |
対象に含まれる後継者 | 最大3人(総議決権数10%以上の保有者) | 1人 |
雇用確保要件 | 雇用維持できない理由を都道府県に提出すれば納税猶予は継続される(事実上の撤廃) | 承継後5年間は平均8割の雇用維持 |
特例承継計画の提出 | 必要 | 不要 |
相続時精算課税の適用 | 推定相続人などの後継者以外も対象 | 推定相続人などの後継者のみ |
主な変更点は、対象株式や納税猶予割合の範囲拡大です。従来の一般措置では、相続税の場合、3分の2×80%の53%は猶予されますが、残りの47%は納税が必要でした。
特例措置では、自社株にかかる相続税・贈与税に関して全額の猶予・免除措置を受けられるため、実質的に納税負担がゼロです。また、雇用確保要件も大幅な緩和が行われています。
労働力不足が深刻化している日本では、厳しい雇用維持要件で事業承継を阻害するよりも、緩和を図って積極的な引継ぎを促す方が合理的という判断から実施されました。
ただし、事業承継税制の特例措置を受けるためには、特例承継計画が必要です。作成には認定支援機関の支援・助言が必須で、この点だけが一般措置にはない条件となっています。
納税猶予の基本ポイント
ここでは、納税猶予の基本ポイントを、相続税と贈与税に分けてみていきましょう。
相続税の納税猶予を受けられる仕組み
事業承継税制の最も大きなポイントは、納税猶予です。免除や非課税ではありませんが、相続が発生する際、通常は自社株に多額の相続税がかかりますが、手続きを行うと納税が猶予となります。その後、経営を継続して株を売らなければ、納税猶予が続き、最終的に免除を受けられるのです。
贈与税の納税猶予を受けられる仕組み
贈与税のケースも、相続税の仕組みとほぼ同じといえます。納税猶予であることが、最も大きなポイントです。贈与の際、手続きを行えば、通常支払う多額の贈与税を払わなくてよくなります。
その後、本業を継続して株を売らなければ、納税猶予を続けられるのです。前任の経営者に相続が起こると、相続税の納税猶予へ切替え、最終的に免除を受けられます。
事業承継税制の特例措置のメリット・デメリット
事業承継税制の特例措置を受けて、実際に得られるメリットはどのようなものがあるのでしょうか。この章では、特例措置のメリットとデメリットを解説します。
事業承継税制の特例措置のメリット
まずは、事業承継税制の特例措置におけるメリットです。主なメリットは、以下の3つが挙げられます。
- 相続税・贈与税の負担軽減
- 株価対策が不要
- 円滑な事業承継
相続税・贈与税の負担軽減
事業承継税制の一般措置では、対象株式や猶予割合に上限が設けられています。各種要件を満たして認定を受けても、一定の相続税・贈与税を納めなくてはなりませんでした。特例措置は、対象株式が全株式、納税猶予割合が100%になる制度です。
上限と割合の縛りが撤廃されているので、自社株承継時における相続税・贈与税の負担が実質的にゼロになります。中小企業の事業承継で悩みの種となっていた税金負担を解決できるため、特例措置の最も大きなメリットといえるでしょう。
株価対策が不要
事業承継で自社株を承継する際は、自社株の評価額に応じて相続税・贈与税が課せられます。そのため、納税負担を軽減する目的で役員報酬の増額や持株会社化などの株価対策を行うことがあるのです。しかし、過度な株価対策は、税務申告の際に税務署から否認される場合があります。
株価対策の加減や追徴課税などのリスクも考慮しなくてはなりません。事業承継税制の特例措置では、相続税・贈与税の全額猶予措置を受けられるので、そもそも株価対策を行う必要がなくなるため、他の手続きに気を取られることなく事業承継に集中できます。
円滑な事業承継
事業承継が滞る要因の1つに、相続の話は後継者の立場からは切り出しづらいことがあります。死亡に備えた話なので現経営者の気持ちを考えると行いにくいものです。事業承継税制の特例措置は、適用期間が定められています。
時間的な制限があるため、事業承継に対して前向きになりやすい特徴があり、後継者の立場からも話をしやすいでしょう。相続について事前に話し合いを進めれば、いざというときに円滑な事業承継を行いやすくなります。
事業承継税制の特例措置のデメリット
続いて、事業承継税制の特例措置におけるデメリットです。特例措置には大きなメリットがある反面、注意しなければならないポイントもあります。
- 利子税を支払う可能性
- 複雑な制度
- 専門家が少ない
利子税を支払う可能性
利子税とは、猶予措置が取り消された場合に猶予されている相続税・猶予税と合わせて納税する税金のことです。利率は原則として年3.6%となっています。利息の対象期間は猶予措置を受けていた全期間なので、猶予措置中に取り消された場合は本来納めるべき税額よりも高くなってしまうのです。
取消事由は、会社の要件に該当しなくなる、株式を譲渡した場合など、一定のことが設けられており、免除措置を受けるまではこれらの要件を満たし続けなければ、猶予措置が取り消されて利子税が発生します。
複雑な制度
事業承継税制の特例措置は、適用要件が複雑です。継続的な要件の順守や報告義務もあり、いずれかを怠ると猶予措置が取り消されて相続税・贈与税と前述した利子税の納税義務が発生します。
最終的に免除措置を受けて税金負担を軽減するためには、複雑な制度を理解してうまく活用しなくてはなりません。経営者や後継者が全ての手続きや要件を把握するのは大変なので、事業承継税制に詳しい専門家のサポートを受けるのが一般的です。
専門家が少ない
事業承継税制の特例措置を活用するには専門家のサポートが必須ですが、その専門家の数が少ない現状があります。中小企業の事業承継事情や社会環境の変化に合わせて改正が繰り返されているので、経験不足の専門家では難しく、満足したサポートは受けられない可能性が高いです。
事業承継を検討する経営者は、まずは頼れる相談先を見つけることが課題といえます。経験豊富な専門家を見つけられれば、円滑な事業承継サポートが期待できるでしょう。
事業承継税制の特例措置の適用要件とは
事業承継税制の特例措置を受けるためには、適用要件を満たして認定を受ける必要があります。この章では、前経営者・後継者・会社に設けられている適用要件をみていきましょう。
前経営者の適用要件
まずは、前経営者の適用要件です。経営者自身が満たす必要がある要件は以下になります。
- 相続・贈与の時点で会社の代表者である
- 後継者を除いた一族の中で筆頭株主
- 一族で議決権50%を超える株式の保有
- 贈与により代表を退任する、あるいは退任済み
①~③は相続・贈与共通、④は贈与の場合に満たすべき要件です。前経営者が上記要件に該当すれば、相続・贈与時点で会社の代表者だったことを示せます。なお、④の代表退任は、前経営者が有給の役員として会社に残ることが可能です。後継者が次期経営者として育つまで、近くで見守れます。
後継者の適用要件
自社株を引き継ぐ後継者も満たすべき適用要件があります。満たすべき要件は以下の5つです。
- 相続・贈与の直後に会社の代表者である
- 一族の中で筆頭株主
- 一族で議決権50%を超える株式の保有
- 相続の場合は相続直前に役員であった(前経営者が60歳未満で死亡した場合を除く)
- 贈与の場合は役員就任後に3年以上が経過かつ20歳以上である
相続の場合、相続直前に役員という要件に注意しましょう。60歳を超えても現役の経営者は多いため、後継者が役員に就いていないことも珍しくありません。前経営者が不慮の事故や急な病気で亡くなると、要件を満たせずに事業承継税制が利用できないこともあります。
贈与の場合は3年以上の役員就任が要件です。事業承継税制の特例措置は10年の期間限定なので、8年目以降の就任では要件を満たせない点に気をつけてください。相続・贈与のどちらも期間的な要件が設けられているので、手遅れにならないためにも事業承継税制に早期から取り組むことが大切です。
会社の適用要件
最後に会社の適用要件です。事業承継税制は事業に取り組む中小企業を支援する制度なので、会社も一定の要件を満たす必要があります。
- 中小企業者であること
- 従業員数が1人以上であること
- 資産管理会社・風俗営業会社でないこと
中小企業者の要件は業種・資本金・従業員数で決まっています。たとえば、製造業その他であれば、資本金3億円以下または従業員300人以下に該当すれば中小企業者として認められるのです。
資産管理会社は、不動産や株式の資産管理を主な目的として設立される会社で、積極的に事業活動を行っていないため、事業承継税制の対象から外されています。
ただし、資産管理会社も事業実態要件を満たせば、適用対象になることも可能です。相続税・贈与税の納税猶予措置を受けられる可能性はあるので、検討する価値は大いにあるでしょう。
事業承継税制の特例措置の納税猶予額の算出方法
事業承継税制の特例措置において、納税猶予額はどのように算出されるのでしょうか。この章では、贈与税と相続税、それぞれの納税猶予額の算出方法をみていきましょう。贈与税の場合は、以下のように各金額を計算し、納税猶予額が決まります。
- その年に贈与を受けた全財産の額→贈与税額
- 対象株式の価格→贈与税額
- ②が納税猶予額で①から②を引いたものが納付額
相続税の場合は、事業承継税制の対象株式も含めて税率が決定し、対象株式を相続しない他の相続人も、株を含めた高税率で算出されます。
- 後継者以外における取得財産の合計と後継者における取得財産の合計→後継者の相続税額
- 後継者以外における取得財産の合計と対象株式の価格→後継者の相続税額
- ②が納税猶予額で①から②を引いたものが後継者の納付額
また、相続税では、超過累進税率による低税率の部分が、納税猶予以外の部分に使用されることもポイントです。
事業承継税制の特例措置の免除・取消事由
事業承継税制の特例措置は大幅な緩和で使い勝手がよくなりましたが、安易に活用すると負担が大きくなることもあります。取消事由に該当すると猶予措置が取り消されてしまい、納める税金が増えるおそれがあるのです。この章では、贈与・相続から5年以内と5年経過後の取消事由を解説します。
主な免除事由
まずは、主な免除事由を見ていきましょう。「後継者の死亡」と「後継者が次後継者へ贈与税における納税猶予の適用を受ける贈与を行った」の2点が、主な免除事由になります。 免除事由に該当すれば、払う必要はありません。
相続・贈与から5年以内の取消事由
事業承継税制の適用を受けてから5年間は厳しい取消事由が定められています。主な事由は下記です。
- 後継者が代表権を有さなくなった
- 後継者が筆頭株主ではなくなった
- 後継者および一族の議決権が50%を下回った
- 議決権制限のある株式に変更した
- 対象の自社株を譲渡した
後継者が代表をやめた場合は、猶予されていた相続税・贈与税を一括納付します。ただし、代表権を有さなくなった理由がやむを得ないものであれば、確定事由には該当しません。
事業承継税制は、後継者やその親族が支配を継続して経営することが前提で、一族の議決権が50%を下回った場合は取消事由に該当します。議決権制限株式とは議決権を有さない株式のことです。相続における経営権の分散を回避するために活用されることがあります。
なお、対象の株式を議決権制限株式に変更することは認められていません。猶予対象の自社株を譲渡した場合は、猶予措置が取り消されます。合併などで消滅させた場合も同様です。
相続・贈与から5年経過した後の取消事由
贈与・相続から5年経過した後は取消事由が緩和されます。実際の取消事由はさまざまですが、主に注意すべきポイントは以下の1点です。
- 対象の自社株を譲渡した
自社株の譲渡に関しては、年月にかかわらず取消事由に該当します。最終的に免除措置を受けるまでは、自社株を保有し続けなくてはなりません。他の取消事由については、5年経過後は納税猶予が取り消されず、後継者の交代や議決権が50%を下回っても問題ありません。
事業を引き継いで間もなくは、やや厳しい条件が定められていますが、時間の経過と共に各種制限や条件が緩和されるため、徐々に経営の自由度が高くなります。
事業承継税制の特例措置のセーフティネット
ここでは、事業承継税制の特例措置におけるセーフティネットについてみていきましょう。事業承継税制の特例措置は、猶予期間が長いです。しかし、その間に業績が悪くなり会社が立ち行かなくなると、どのようになるのでしょうか。
基本的には、本業を止めたり、株式を売却すれば猶予されている税額に利息を足して全額を払わなければなりません。
しかし、事業承継税制特例措置では、経営状況の悪化で会社売却や廃業となったときの特例があります。これがセーフティネットで、売却や廃業する際の株価などをベースに税額を再び算出し、差額は免除されるのです。
事業承継税制の特例措置を受ける手続き
事業承継税制の特例措置は複雑な制度なので、1つずつ確実に進めましょう。大まかな流れは以下のとおりです。
- 特例承継計画の提出
- 代表者の交代
- 贈与税の申告
- 都道府県や税務署への報告
①特例承継計画の提出
事業承継税制の特例措置を受ける際は、特例承継計画が必要です。まずは、認定支援機関の協力のもとで特例承継計画を作成して都道府県知事に提出します。特に、事業承継後の経営計画は具体的な内容を記載するため、次の経営者の取り組み・施策をわかりやすく記載しなくてはなりません。
- 会社の事業内容・従業員数
- 代表者・後継者
- 承継までの経営計画
- 承継後5年間の経営計画
②代表者の交代
贈与により前経営者から後継者に株式の移転を行います。後継者が筆頭株主となり経営権が移転し、事業承継が行われます。贈与の契約書は2通作成し、前経営者と後継者の双方で保管するとよいでしょう。贈与対象の株式価額に応じた印紙を貼り付けて、印鑑登録してある実印で捺印します。
③贈与税の申告
事業承継税制の特例措置を受けたら税務署に贈与税の申告を行います。申告期限は贈与した年の翌年2月1日~3月15日です。年末に事業承継を行った場合は、スケジュールがぎりぎりになる可能性があります。贈与の場合、ある程度は時期をコントロールできるので、都合がよい時期を待つのも有効です。
④都道府県や税務署への報告
贈与税の申告が終わると、都道府県へ「年次報告書」、税務署へ「継続届出書」を定期的に提出します。事業承継税制の適用要件を満たしていることを示すために必要なプロセスです。これらの報告を怠ると、納税猶予されていた相続税・贈与税の納税義務が生じます。
利子税も加算されるので、負担を増やさないためにも継続して報告を行わなくてなりません。特例措置で大幅な緩和がされている雇用維持要件に関しては、8割の雇用維持が難しくなった場合は「実績報告」を作成して都道府県に提出します。
やむを得ない理由であると判断された場合は、猶予措置が取り消されません。ただし、提出・報告を怠ると猶予措置を取り消される可能性があるので、雇用維持が難しい場合は速やかに報告しましょう。
事業承継税制の注意すべきポイント
事業承継税制の注意すべきポイントはいくつかあります。
- 自社株を相続する相続人のみしか恩恵がない
- M&Aなどで株式を譲渡すると贈与税・相続税猶予が打ち切られる
- 取消事由が複数ある
それぞれ解説します。
自社株を相続する相続人のみしか恩恵がない
事業継承税制はそもそもとして自社株を引き継ぐ後継者のみが納税猶予を受けることができる制度です。
そのため、自社株を引き継ぐ後継者以外は相続税が下がるわけではありません。事業継承税制を利用したとしても恩恵を受けることができないため事前に自社株株価に対して何かしらの施策を行う必要があります。
M&Aなどで株式を譲渡すると贈与税・相続税猶予が打ち切られる
事業継承税制の適用中にM&Aなどを行い、自社株式を第三者へ譲渡するとその時点で贈与税・相続税猶予が打ち切られます。
打ち切られるだけでなく、それまで猶予されていた贈与税・相続税と利子税を合算して支払う必要があるのです。ただ、事業継承税制適用から5年経過した後であればM&Aなどにより自社株式を第三者に譲渡しても株式のみ猶予がなくなります。5年以内の場合は株式を一部だけでも譲渡した段階で打ち切りになるので注意が必要です。
取消事由が複数ある
先ほどご紹介したM&Aなどにより自社株式を第三者に譲渡した場合、猶予が打ち切られますが他にも取消事由が複数あります。
例えば、以下のような取消事由が該当します。
- 資本金、資本準備金が減少した
- 後継者が代表者から退任した
- 廃業した
- 総収入金額がゼロになった
- 組織変更をした
- 期限までに年次報告書を提出しなかった
これらのケースでも猶予が打ち切りになります。合計して取消事由は20以上ありますので事前に確認しておくことをおすすめします。
事業承継税制特例措置の申請期限延長【2024年度税制改正】
2024年度の税制改正により、事業承継税制に関する特例承継計画の提出期限が2年間延長され、2026年3月31日までとなりました。
2020年度以降、コロナ禍の影響で特例措置の利用件数が減少しています。経営環境の変化により、事業承継の検討が遅れているため、事業承継を集中的に進めるための措置として、提出期限の延長が決まりました。
ただし、特例承継計画の提出期限は延長されましたが、事業承継税制の対象となる贈与・相続の期限は2027年12月31日のままです。事業承継税制の適用を受けるためには、早めの対応が必要です。
事業承継税制の特例措置を受ける際の相談先
事業承継税制の特例措置を受ける際は、専門家のサポートが必要不可欠です。適用を受けるまでの複雑な要件や、適用後に継続的に満たすべき要件・報告義務など、対処すべき事項がたくさんあります。
M&A総合研究所は、主に中小・中堅規模企業のM&A・事業承継をサポートするM&A仲介会社です。事業承継の経験・知識が豊富なM&Aアドバイザーが、丁寧に案件をフルサポートいたします。
後継者不在で事業承継の準備が進められない場合は、M&Aでの事業承継が有効策です。多角的な視野を持って計画を立てられますので、事業承継税制の特例措置をご検討の際は、どうぞお気軽にご相談ください。
事業承継税制の特例措置まとめ
事業承継税制の特例措置を活用すると、税金負担を大幅に抑えられます。しかし、複雑な制度であるため、早めに準備を進めなければ、満足に効果を得られない場合もあるかもしれません。
したがって、制度の活用や手続きに不安がある場合は、事業承継の専門家に相談しましょう。豊富な経験と知識を持つ専門家のサポートを受ければ、万全の体制で事業承継に臨めます。
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M&Aで退職金を活用すると、節税効果が得られます。当記事では、退職金を利用したM&Aの節税方法やメリット、注意点を交えながら、退職金の扱い方や税務について解説します。従業員や役員...
M&Aにおける人事DDの目的や調査範囲を徹底チェック!費用・注意点は?
人事DD(デューデリジェンス)は、買収側がM&Aの実施後に受ける損失を最小限に抑えるために必要な調査です。当記事では、調査が行われる目的や調査範囲、かかる費用や注意点を踏まえながら、人事...
100日プランとは?PMIの概要・重要性・策定のポイントまで徹底解説!
M&Aを実施する際にはPMIの工程が重要となり、100日プランはPMIの成功に大きな役割を果たします。今回はM&Aを検討している企業に向けて、100日プランの概要・重要性・策定の...
管工事会社の事業承継の動向や事例を徹底解説!メリットや費用相場・注意点は?
管工事会社業界は将来的な需要増加が見込める半面、人材不足や後継者不在といった問題が深刻です。当記事では、過去の事例を取り上げながら、管工事会社(管工事業界)の事業承継について解説します。事業承継...
株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。