2022年7月22日更新会社・事業を売る

事業譲渡・事業売却の相場は?金額の算出方法、高いバリュエーションを算定するコツも解説

自社の事業を他の会社へ譲り渡すのが、事業譲渡・事業売却です。当記事では、事業譲渡・事業売却の相場をはじめ、相場よりも高い企業価値を算出する方法や、取引価格を上げる方法、事業譲渡・事業売却の長所と短所、相談先などを取り上げています。

目次
  1. 事業譲渡・事業売却とは
  2. 事業譲渡・事業売却のメリット・デメリット
  3. 事業譲渡・事業売却の適切な相場・金額を知る方法
  4. 事業譲渡・事業売却の相場・金額
  5. 事業譲渡・事業売却の相場・金額に対する意識
  6. 事業譲渡・事業売却で高いバリュエーションを算定するコツ
  7. 事業譲渡・事業売却に課される税金
  8. 事業譲渡・事業売却の際には専門家に相談すべき理由
  9. 事業譲渡・事業売却の相場・金額に関する相談先
  10. 事業譲渡・事業売却の相場・金額まとめ

事業譲渡・事業売却とは

会社が営んでいる事業を他社へ譲り渡す取引が、事業譲渡・事業売却です。譲渡する事業の範囲は、一部から全てまで幅広く決められます。譲り渡す対象は、事業に関連する資産をはじめ、負債・営業権・人材・ノウハウなどです。

売り手なら、「必要な事業を残して会社の運営を続ける」「全ての事業を譲って新しい事業に取り掛かる」などの目的を果たせます。

買い手の場合は、「特定の事業のみを承継して事業を大きくできる」「自社に足りない事業を承継して一貫したサービス・商品を提供できるようになる」などのメリットが期待できるでしょう。

株式譲渡・株式売却との違いは

株式譲渡と事業譲渡・事業売却の主な相違点は、譲渡対象の違いによる手続きと競業避止義務の有無です。事業譲渡・事業売却は、譲渡する対象を選び、対象ごとに移転の手続きを行うため、会社自体を譲渡する株式譲渡・会社売却とは異なる手法だといえます。

特に事業譲渡・事業売却では、雇用・取引契約はそのまま承継されないことから、結んでいる各種の契約を締結し直す手続きが必要です。もう1点の競業避止義務とは、事業譲渡・事業売却する売り手に課せられる事業運営の禁止が会社法で定められています。

譲渡した事業と同一の事業を、譲受側企業と同じ市区町村もしくは隣り合う市区町村において、譲渡から20年間、営業を禁止される内容です。株式譲渡・株式売却では、会社法に競業避止義務は定められていません。

営業譲渡との違いは

営業譲渡と事業譲渡・事業売却は、同じ意味の言葉です。2006(平成18)年に会社法が施行されるまでは、商法において「営業譲渡」が用いられていました。会社法では、営業譲渡と同じ取引をさす言葉として「事業譲渡」が用いられるようになったのです。

会社分割との違いは

会社分割は、売り手の事業部門を丸ごと切り出して買い手側が承継するM&Aスキーム(手法)です。結果だけを見れば事業譲渡・事業売却と類似して見えますが、事業譲渡・事業売却は譲渡対象を選別できますが、会社分割は事業部門を包括承継するので対象の選別はできません

この取引方法の違いにより、さらに以下のような相違点が伴います。

  • 会社分割は会社法上で組織再編行為とされているが、事業譲渡・事業売却は該当しない
  • 会社分割は包括承継であるため債権者保護手続きが必須だが、事業譲渡・事業売却では必要ない
  • 会社分割は許認可を引き継げるが、事業譲渡・事業売却は引き継げない(会社分割でも引き継げない許認可はある)

事業譲渡・事業売却のメリット・デメリット

事業を譲り渡す際には、メリットとデメリットの両面が見られるため、それぞれを把握したうえで事業譲渡・事業売却に臨みましょう。

メリット

事業譲渡・事業売却に見られるメリットは、下記のとおりです。

  1. 後継者問題の解決
  2. 人材不足の解消
  3. 従業員の雇用先の確保
  4. 廃業・倒産を免れる
  5. 売却・譲渡益の獲得

①後継者問題の解決

他の会社に事業譲渡・事業売却すれば、事業の継続が見込めます。そのため、後継者不足に悩む企業は、関係者から後継者を探す必要性を回避できるのです。

また、経営者の体力が衰えたことで経営の交代を考えている会社も、事業譲渡・事業売却により、少ない負担で続けられる事業への切り替えが果たせます。既存の主力事業は他社に譲渡して任せ、自社が保有する土地・建物を生かした賃貸事業に注力するなどの事業転換が可能です。

②人材不足の解消

事業を続けるには、会社で働く人材を確保していなければ事業の継続がままならないうえ、順当に売上を計上し利益が出ている事業であっても、事業活動を担う人材が足りないと経営状況の悪化を招きます。

その点、人材を豊富に抱える他社が見つかれば、事業を譲り渡すことで事業の継続が望めるでしょう。国内の人口は減少傾向にあり、少子化の状態も継続しているため、人材の世代交代を行えない企業では、事業譲渡・事業売却により人材の不足を回避できます。

③従業員の雇用先の確保

同じ事業を営む会社へ事業を譲り渡すならば、買い手は事業の拡大などを図るために事業の運営を継続します。これにより、事業活動に欠かせない社員も必要とされるため、事業譲渡・事業売却により、社員の雇用も買い手に引き継がれるでしょう。

特に、近隣業種の会社・新規参入を図る会社は、承継する事業の運営経験を持たないことが多いため、日々の仕事を任せられる社員もまとめて引き継ぐ可能性は濃厚です。

④廃業・倒産を免れる

会社をたたんでしまうと、取引を行ってきた会社に迷惑がかかり、社員から職を奪います。また、先代から引き継いできた事業を自分の代で終わらせたり、積み重ねた技術・ノウハウを手放したりといった事態を受け入れなければなりません。

その点、事業を譲り渡す相手がいれば、再契約により取引・雇用は引き継がれるうえに、事業そのものや技術・ノウハウは買い手により後世へと引き継がれ存続していきます。

⑤売却・譲渡益の獲得

事業を譲り渡すと、会社が対価を受け取れます。業績の良い事業は残し、業績が落ち込んでいる事業を売ることで、得られた資金を残した事業の運営に充てることが可能です。また、得られた対価を新しく始める事業に活用すれば、事業の切り替えにも役立てられます。

デメリット

事業譲渡・事業売却で散見される主なデメリット面は、下記のとおりです。

  1. 希望どおりの条件で売却・譲渡ができない可能性
  2. 成立まで期間がかかる
  3. 契約成立の段階で従業員が離職する可能性

①希望どおりの条件で売却・譲渡ができない可能性

買い手の希望に見合わなければ、交渉に発展しないことから、当初の条件を下げた状態で、買い手の探索を強いられます。さらに、譲渡までに時間をかけると、事業の価値が下がってしまうため、希望を下回る価格で事業を譲り渡す事態が予想される点も押さえておきましょう。

②成立まで期間がかかる

事業を譲り渡す場合は、譲渡する資産を選ぶことから、個々に引き継ぎの手続きが求められます。特に社員・取引先との契約は相手側の同意を得て、買い手による再契約を行わないと契約が引き継がれないため、成約までに多くの時間がかかる点を押さえておきましょう。

③契約成立の段階で従業員が離職する可能性

買い手が提示する雇用契約の内容は、必ずしも売り手の雇用条件を全て反映するとは言い切れません。ある程度の期間は前の会社の雇用条件が継続するものの、以降は新たな条件に切り替える例も見られるため、条件に不満を抱く社員が契約の成立によって会社を離職する可能性があります。

事業譲渡・事業売却の適切な相場・金額を知る方法

事業譲渡・事業売却などのM&Aでは、最終的に当事者間の交渉によって取引価額が決まります。当事者の状況や思惑などは個々のケースで異なりますが、売り手と買い手が単に希望額を主張するだけでは交渉はまとまりません。

そこで必要になるのは、基準値、つまりは相場です。ここでは、M&Aでの相場の算定方法について解説します。

企業価値の算定

M&Aでの相場は、個々の企業・事業ごとに算定します。その算定結果の呼称が、企業価値・事業価値です。企業価値・事業価値を算定することを、企業価値評価(バリュエーション)と呼んでいます(企業価値評価には、事業価値評価の意味合いも含まれる)。

企業価値評価の結果が、事業譲渡・事業売却の交渉における基準値となるのが一般的です。

企業価値評価(バリュエーション)とは

事業譲渡・事業売却などのM&Aにおいて、企業価値評価には専門的な算定方法が数多く確立されています。それらを複数、組み合わせて企業価値評価を行いますが、それぞれの算定方法は大きく3つの体系に分かれており、それは以下のとおりです。

  • コストアプローチ
  • インカムアプローチ
  • マーケットアプローチ

コストアプローチ

コストアプローチは、企業価値評価方法の中で、比較的、簡易に算定できるのが特徴です。算定は、貸借対照表に記載されている資産と負債から算出できる純資産額をベースとして行います。純資産額の計算方法は、以下のとおりです。

  • 純資産額=資産の総額-負債の総額

代表的なコストアプローチの方法には、資産額と負債額を簿価のまま計算する「簿価純資産法」と、資産額と負債額を時価で評価して計算する「時価純資産法」などがあります。

インカムアプローチ

インカムアプローチは、売り手企業(事業)に想定される将来の収益力をベースに算定を行います。具体的には、3年程度の中期事業計画から想定される収益を基に、専門的な割引率などを掛け合わせて算出するものです。

事業譲渡・事業売却などのM&Aで多用されているインカムアプローチとして、「DCF(Discounted Cash Flow)法」があります。ひと言で言えば、将来のキャッシュフローを現在価値に割り引く算出方法です。不動産の鑑定評価にも多用される「収益還元法」も、インカムアプローチになります。

マーケットアプローチ

マーケットアプローチは、市場(マーケット)で成立した金額に着目する算定方法です。マーケットアプローチの1つである「類似会社比較法」では、売り手企業と同一の業種で類似する規模の上場企業を探し、その株価を参照して企業価値評価を行います。

また、「類似取引比較法」は、過去に行われたM&A取引で内容が公表されているものの中から、当該M&Aと類似する取引を探し、そのM&Aの成立価額を参照して、企業価値評価を行うものです。

事業譲渡・事業売却の相場・金額

事業譲渡・事業売却では、事業の財務状況・規模・譲渡する対象によって譲渡価額は上下するため、画一的な相場は決められていません。そこで、簡易的に相場を算定する方法として用いられる計算式があります。

  • 対象事業の純資産額+(対象事業の営業利益×2~5年)


ここで算出された相場は、あくまでもおおよその基準額だと捉えましょう。事業譲渡・事業売却の価額は、交渉を重ねたうえで取り決められます。売り手の価値は、買い手の捉え方次第で相場を上回る、または下回る可能性がある点を理解しておきましょう。

また、事業の営業利益に掛ける年数は、対象事業の収益維持が見込まれる期間であるため、業種の需要度合に応じて変化します。売り手市場の業種・景気の良い時期であれば年数が長く設定されますし、景気が悪ければ年数が短くなる点を把握しておきましょう。

のれん代とは

企業が保有する無形の資産に数えられるのが「のれん代」で、営業権とも呼ばれています。「営業利益×2~5年」にあたる部分が、のれん代です。事業の価格に上乗せされた付加価値だと捉えましょう。

譲り渡す資産に特殊技術・有能な従業員・ブランド力などが含まれていると、買い手は事業価値を高く評価するため、事業の純資産額にのれん代を加えた価値が相場として表されます。

事業譲渡・事業売却の算出方法

ここでは、事業譲渡・事業売却で事業価値を算出する具体的な算定方法として、以下の3つを取り上げます。

  1. 収益還元法
  2. 類似会社比較法
  3. 時価純資産法

①収益還元法

これまでの収益から導き出した平均値を資本還元率で割ることで、事業価値を算出するのが収益還元法です。事業を譲り渡したとしても、これまでどおりに収益を上げられる保証はないため、平均した収益に、リスクを加味した還元率で割ることで価値を計ります。

収益還元法は、下記のような計算式で導き出されます。

  • FCF×還元率 (FCF=フリーキャッシュフロー)


企業の収益力をベースとする計算法の中には、将来、手元に残る現金を資本コストで現在の価値に割り引くDCF法も存在しますが、中小企業では事業計画書を作成していない会社が多いことから、収益還元法が主に利用されています。

中小企業が、高い収益性を上げている事業を売る際に収益還元法を選ぶと、高い価値をつけられる可能性があるでしょう。

②類似会社比較法

非公開会社に用いられる企業価値の算定方法であり、事業の種類などが似ている公開会社をいくつかピックアップして得られた株価の平均と、財務に関する指標の倍率を用いて企業の価値を算出するのが類会社比較法です。

企業価値の計算で用いられる倍率には、EV/EBIT倍率と、EV/EBITDA倍率が挙げられます。EVは事業価値を表し、EBITは「経常利益+支払利息-受取利息」、EBITDAは「営業利益+減価償却費」です。

EV/EBIT倍率を用いれば、税金・利息・減価償却費を支払う前の企業価値をベースに計算を進めるため、他の会社よりも優れた収益性を備えている企業であれば価値の高さが反映されます。

また、EV/EBITDA倍率では、企業の全資金に対する営業利益を割った指標を用いるため、少ない資金で利益を上げている企業が選ぶと企業価値の高さを示せるでしょう。

ただし、類似会社比較法では、自社と似ている企業を公開会社から探す必要があるため、特殊な事業を営んでいれば比べられる会社を見つけにくいです。対象の事業が他の会社でも運営されているかどうかで、類会社比較法の利用を検討する必要があります。

EV/EBITDA倍率を用いた計算

以下では、多くの活用例があるEV/EBITDA倍率を指標に利用した計算例を取り上げました。収益性の高さを企業価値に反映させたい場合に参照ください。EV/EBITDA倍率を指標に用いると、企業価値は下記のように計算されます。

【比較する企業の企業価値からEV/EBITDA倍率を求める場合】

  • 企業価値=株式価値+有利子負債-現預金
  • EV/EBITDA倍率=企業価値÷EBITDA


【EBITDAと自社の企業価値を求める場合】

  • 自社のEBITDA=営業利益+減価償却費
  • 自社の企業価値=EBITDA×EBITDA倍率


【自社の株価を求める場合】

  • 自社株式の価値=自社の企業価値+現預金-有利子負債

③時価純資産法

貸借対照表の資産と負債を時価に置き換えて企業価値を算出するのが、時価純資産法です。「これまでの事業活動で得られた利益が資産に組み込まれている」との考えから、会社の資産を元に企業価値を測ります。時価純資産法の計算式は、下記のとおりです。

  • 時価に置き換えた資産-時価に置き換えた負債


保有する不動産・建物や取得した特許などの資産が高く評価される場合、時価純資産法での評価により高い企業価値が算出されます。しかし、資産に限った評価であり、将来の利益は加味されていません。

多くのケースでは、時価に置き換えた資産から負債を引いた値に、のれん代を加えた計算式が用いられます。

【関連】バリュエーション(企業価値評価)の方法・手法| M&A・事業承継の理解を深める

事業譲渡・事業売却の相場・金額に対する意識

事業譲渡・事業売却の当事者、つまり譲渡側と譲受側では、立場の違いから事業譲渡・事業売却の相場・金額に対する意識が異なります。具体的な意識の違いを比較してみましょう。

譲渡側

これは、事業譲渡・事業売却に限ったことではなく、売る側の立場としては、少しでも高い金額で売りたいと思うものです。特に事業譲渡・事業売却の場合、譲渡側は以下のような心情になっていると推察されます。

  • 長年、苦労をしながら継続し成長させてきた事業だから、そこを評価してほしい
  • 事業譲渡・事業売却を行った同業他社の売却額の噂を聞いたが、それよりも高く売れるはずだ
  • 売却益を元手にして新規事業を立ち上げたいので、できるだけ資金が欲しい
  • 事業譲渡・事業売却後は引退するので、老後資金として十分な売却益を得たい

譲受側

一方、事業譲渡・事業売却の譲受側はと言えば、譲渡側とは反対に、少しでも安く買いたいと考えるものです。その心情は、以下のようなものでしょう。

  • 経営統合(PMI=Post Merger Integration)に時間がかかった場合のリスクを考えて低めの金額で取引したい
  • 想定しているとおりにシナジー効果が得られなかったときのリスクヘッジとして、安めの金額で譲受したい
  • 事業譲渡・事業売却の対価を借入金で賄うため、金利を考えるとできるだけ安い対価にしたい

このように、事業譲渡・事業売却の譲渡側・譲受側は利益が相反する立場であるため、意識も同じように異なります。事業譲渡・事業売却の交渉では、そのことも踏まえて臨むとよいでしょう。また、そうであるからこそ、適正な企業価値評価の意義は重要です。

事業譲渡・事業売却で高いバリュエーションを算定するコツ

事業譲渡・事業売却の価格を上げるための主な方法には、以下のようなものがあります。

  1. 利益率の向上
  2. 事業の長所を伸ばす
  3. 権限の委譲
  4. 不要資産・不動産の整理
  5. 退職金の処理

①利益率の向上

買い手の多くは、売上高よりも利益率を重要視します。たとえ高い売上高を誇っていたとしても、得られる利益が少ないならば、売り手の事業に対する関心は薄いです。

そこで、事業を譲り渡す前に経営計画を前倒しで実施したり、提供・生産するサービス・製品を保守的なラインナップに切り替えたりして利益率を高めると、事業の価値が高められて取引価額の上昇が見込めます。

利益率を高める対象には、事業に見られる弱点を選ぶのがポイントです。買い手はリスクを嫌うことから、弱点をなくしておけば買い手からの評価を高められるでしょう。

②事業の長所を伸ばす

事業の譲り渡しでは、買い手の求めに応えるために、事業の良い点を伸ばしておきましょう。長所を伸ばす方法には、2つの方法が挙げられます。

1つは取引先との関係の見直しです。ニッチな分野で市場を独占しているなら、取引先との関係を強めましょう。自社事業と同じ事業を他社が営んでいるなら、取引先を複数に分けて取引の解消によるリスクを回避します。

2つ目は既存・新規エリアへの出店です。特定のエリアで高いシェアを誇っているなら、さらなる出店攻勢を仕掛けてシェアの拡大を図ったり、近隣エリアへ出店し短期間で相応のシェアを確保したりすることで、事業の長所を伸ばします。

③権限の委譲

事業譲渡・事業売却に備えて、経営者の権限を幹部に移譲させて、経営の一部を任せるようにしましょう。事業を譲り渡すと、経営者は会社を離れることが多く、これまでのようには事業に携われません。

その結果、期待した売上・利益に達しないと買い手に思われて、対価を下げられる可能性があります。幹部に事業運営を任せることで、経営者が離れてからも事業に支障が出ない体制を事前に構築しておくと、事業の価値を上げられるでしょう。

④不要資産・不動産の整理

売り手にとって価値のある資産でも、買い手には必要のない資産と判断されるケースがあります。不要資産を抱えたまま交渉を進めれば、取引額に対する認識に差異が生まれ、想定した額を下げる事態に発展しかねません。

買い手が不要と判断すると予想される資産を事前に売却しておくと、取引価額を下げずにすむでしょう。不動産の整理では、建物・土地の権利が、オーナー経営者と会社に分散している例が見られます。

「建物は会社、土地はオーナー経営者が所有」というケースでは、賃貸借契約を結ばずに事業を行っている場合があるため、両者の関係を明確化させるための対応が必要です。

たとえば、「賃貸借契約を結ぶ」「一方が所有する不動産をもう一方に譲り渡す」「老朽化した建物を取り壊す」などの対応が挙げられます。権利関係を明確にしていれば、買い手の負担が減るため、良い事業だと判断されて価格の上昇につなげられるでしょう。

⑤退職金の処理

買い手が社員と新たに契約して雇用を引き継ぐ場合、退職金の処理を徹底していないと取引価額の低下を招きかねません。退職金の扱いに関して徹底性を欠いていたり、買い手と支給基準が異っていたりすると、譲渡する資産の額が低く評価されます。

退職金の正しい計算と買い手の基準に合わせた再計算を徹底し、企業価値を下げないようにしましょう。社外の退職金制度を活用しているなら、月々の掛け金を増やしておくことも、企業価値の上昇につながる施策といえます。

事業譲渡・事業売却に課される税金

本章では、事業譲渡・事業売却を実施した場合に課せられる税金を、譲渡側・譲受側それぞれの立場に分けて説明します。

譲渡側の税金

事業譲渡・事業売却は、原則として時価で取引されるため、譲渡損益が生じます。譲渡側が利益を出している法人である場合、譲渡益の発生に伴い、法人税が課されます。ひと口に法人税とくくられていますが、実際には以下の4種類が法人税です。

  • 法人税
  • 法人住民税
  • 法人事業税
  • 特別法人事業税


事業譲渡益を求める計算式は以下のとおりです。

  • 事業譲渡益=事業譲渡金額ー譲渡する資産・負債の簿価


法人税は他の損益と通算したうえで計算されるため、仮に多額の損金があり決算が赤字の場合、課税されません。法人税の実行税率(4種の法人税を合わせた総合的な税率)は、2022(令和4)年7月時点で約31%です。

譲受側の税金

譲受側では、消費税における課税取引にあたるため、譲渡対象資産に消費税課税資産がある場合は、消費税として10%(2022年7月時点)が課されます。消費税課税資産は、以下のとおりです。

  • 土地以外の有形固定資産
  • ソフトウェア
  • 商標
  • 特許権
  • 意匠権
  • 棚卸資産(在庫や原材料など)

一方、消費税非課税資産は以下のようなものです。
  • 土地
  • 有価証券
  • 売掛金、貸付金などの債権

事業譲渡・事業売却の際には専門家に相談すべき理由

事業譲渡・事業売却を検討するなら、自社単独で行わずに専門家に業務を依頼しましょう。専門家への委託が望ましい理由は、以下のとおりです。

  1. 難しい契約・交渉を任せられる
  2. 売却先を見つけてくれる
  3. 専門的な知識によるアドバイス

①難しい契約・交渉を任せられる

会社が赤字を計上していたり、譲渡する事業で採算が取れていなかったりする場合でも、専門家に任せれば保有する企業データやネットワークから、事業を承継してくれる買い手を引き合わせてくれます。

また、専門性の高い交渉も、アドバイザーへの一任が可能です。赤字・債務超過などの問題を抱えていても、自社事業の長所を買い手にアピールしてくれるため、成約につなげられる可能性を高められます。

②売却先を見つけてくれる

専門家は独自の企業データを抱えていたり、提携先とのつながりを持っていたりするため、事業の譲渡・売却に適した買い手を引き合わせてくれます。

自社が単独で探すには限られた範囲に留まるうえに、仮に買い手を見つけられても多くの時間を費やしては事業の価値を下げてしまいかねないため、専門家に任せて短期間のうちに買い手を紹介してもらいましょう。

③専門的な知識によるアドバイス

事業を譲り渡す際は、事前に行う準備から、事業の価値を上げる工夫・妥当な取引価額・条件の把握・譲り渡す対象の選定・交渉や契約(基本合意書、事業譲渡契約など)の締結・デューデリジェンス・成約の手続きなど、対応する内容が多岐にわたります。

自社単独でこれらの対応を適切にこなすのは難しいため、専門家へ任せましょう。専門家は事業譲渡・事業売却の知識・仲介ノウハウ・経験を備えているため、あらゆる局面で適切な助言を得られます。

事業譲渡・事業売却の相場・金額に関する相談先

事業譲渡・事業売却をご検討の際は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。M&A総合研究所は、中堅・中小規模企業のM&A案件を得意としており、さまざまな業種でM&Aの仲介実績を豊富に有しているM&A仲介会社です。

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随時、無料相談をお受けしておりますので、事業譲渡・事業売却をご検討の際は、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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事業譲渡・事業売却の相場・金額まとめ

事業を譲り渡す際の相場に基準は定められていないものの、ある程度の相場を算出することは可能です。より高い価額で事業を譲るなら、取り上げた計算方法や価額を上げる方法を参考にすることをおすすめします。

また、事業譲渡・事業売却では、良い面ばかりではなく、悪い面も挙げられるため、希望どおりに譲渡を終えられるように、専門家の力を借りて準備・交渉・手続きを進めましょう。

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宅配・フードデリバリー・ケータリング業界のM&A動向!事例、相場も徹底解説【2022年最新】

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2021年は新型コロナの影響などもあり、宅配・フードデリバリー・ケータリング業界が好調を維持するとともに、M&A動向も活発な動きでした。本記事では、宅配・フードデリバリー・ケータリング業...

M&Aの手数料はなぜ高いのか?支払う費用の相場、計算方法、仲介会社の報酬体系を解説

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昨今、M&Aが年々普及していく一方で、M&Aの手数料の高さがクローズアップされるようになりました。本記事では、M&A仲介会社の手数料が高い理由、手数料相場、手数料が高いか...

アライアンス契約とは?提携の種類とM&Aとの違いや契約書の記載事項を解説!

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企業同士が資本提携や業務提携を結ぶ契約を「アライアンス契約」と呼ぶことがありますが、聞きなれない単語なのでよくわからないという方もいるかもしれません。本記事では、アライアンス契約とは何か、M&a...

資本業務提携とは?資本提携のメリット・デメリットと流れを解説!

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資本提携や資本業務提携とは、企業同士の独立性を保ったまま他社と協働したい場合に有力な選択肢です。本記事では、資本業務提携・資本提携とはどのようなものか、業務提携の違いやメリット・デメリット、契約...

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