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2019年11月13日更新
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事業譲渡が従業員に与える影響

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この記事の監修専門家
M&A総合研究所 公認会計士
高谷 俊祐

事業譲渡に限らず、M&Aでは従業員に関するリスクを留意しておく必要があります。事業譲渡と従業員の関係、事業譲渡と労働契約の扱い、事業譲渡と従業員の退職金、事業譲渡による従業員流出への対策について解説していきます。

目次
  1. 事業譲渡が従業員に与える影響
  2. 事業譲渡とは
  3. 事業譲渡と従業員の関係
  4. 事業譲渡と労働契約の扱い
  5. 事業譲渡と従業員の退職金
  6. 事業譲渡による従業員流出への対策
  7. まとめ

事業譲渡が従業員に与える影響

事業譲渡に限らず、M&Aでは従業員に関するリスクを留意しておく必要があるものです。

しかし事業譲渡に関してはとりわけ従業員に気を使っておかなければなりません。

なぜなら事業譲渡によって従業員が流出しやすくなるリスクがあるからです。

事業譲渡を行う際にはそのリスクをしっかり検討したうえで対処しておくべきでしょう。

今回は事業譲渡の際の従業員に関するリスクを中心に、その対処法などをお伝えしていきます。

事業譲渡とは

①事業譲渡の手法

まずは事業譲渡とはどういった手法かについてお伝えします。

事業譲渡はM&Aの手法の一つであり、その名の通り会社内の事業を他の会社に譲渡するものです。

事業譲渡は中小企業で一般的に使われる手法であり、組織拡大や組織再編、事業譲渡など様々なシチュエーションで使われます。

事業譲渡の最大の特徴はただ会社の事業を譲渡するだけでなく、譲渡する際に譲受側の会社が承継するものを契約の範囲で定められる点にあります。

例えばその事業が抱えている負債や不要な資産、契約などをあらかじめ排除できるというわけです。

これは譲渡側の会社の負債や資産、契約などを全て承継することになる株式譲渡や合併、会社分割などといった手法と大きく異なっている点です。

そのため譲受側の会社にとっては不都合な負債や資産をあらかじめ除去したうえで相手の事業を譲受できるため、経営戦略への支障となり得る要素を最大限に減らすことが可能になります。

ただ、事業譲渡を行うには条件の合う売り手を見つける必要があります。
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②事業譲渡のデメリット

事業譲渡にもデメリットはあります。

事業譲渡を行うことはその事業の事業主が別の会社に変わることでもあるため、取引関係との契約や事業の許認可などがリセットされてしまうため、改めて契約を取り直す必要があります。

そしてこの際に従業員との労働契約もリセットされてしまいます。

この点がこれからお話する事業譲渡の際の従業員に関するリスクにつながっていきます。

事業譲渡に関するリスクを避けたいのであれば、M&A総合研究所にご相談ください。
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事業譲渡と従業員の関係

ここでは事業譲渡と従業員の関係をお伝えします。

冒頭の最後で触れましたが、事業譲渡の際には従業員との労働契約がリセットされるため、改めて譲受側の会社が従業員との労働契約を結び直す必要があります。

そもそも事業譲渡はこういった契約の結び直しなどを行う必要があるため、手間がかかってしまうというデメリットがあります。

ただこの点で考慮すべきことは事業譲渡の際の手続きの煩雑さよりも、従業員が流出するリスクです。

本来、事業譲渡に限らずM&Aは常に従業員が流出する、あるいはM&Aそれ自体に反発するというリスクが挙げられます。

一部の手法や状況を除き、基本的にM&Aは他の会社と経営統合を行うものです。

いうなれば異なる企業文化同士が融合することであり、M&Aをきっかけに異なる価値観、経営理念、システム、ルールなどがぶつかることになります。

そのため譲渡側と譲受側の従業員同士が対立したり、これまでの労働環境とのギャップで困惑する従業員が続出するなど、何かとトラブルの種になりやすくなります。

このような状態になると結果的に従業員の離職が発生するという事態に落ちかねません。

事業譲渡は一度労働契約をリセットされてしまう手法です。

労働契約は従業員の同意が得られなければ締結できないため、もし事業譲渡に不満を持つ従業員がいれば契約を拒否し、結果的に離職してしまう可能性があります。

さらに事業譲渡に不満を持つ従業員がその事業の中核を担う従業員だった場合、離職してしまえばその事業の価値は大きく下がってしまいますし、譲受側の経営戦略においても大きな痛手になります。

最近では事業譲渡に限らずM&Aを行う際、譲受側の会社はまず事業の従業員の雇用を確保することから始めるケースが多いです。

むしろ雇用をどれだけ確保できるかどうかでM&Aの実行の是非を決める傾向が増えています。

実際、事業譲渡の対象となっている事業の価値には当然従業員が含まれています。

事業によっては中核を担っている従業員次第で事業の質や継続性が大きく変化するため、譲受側の会社にとっても雇用の確保は非常に重要な要素だといえます。

譲受側の会社の中には事業譲渡を含め、M&Aによって従業員過多になるような事態を避けたいと考えているケースもあります。

その場合、そのまま経営統合をしてしまうと従業員の解雇が難しくなるため、契約を締結する前に従業員の数を事前に調整するようなことを行う可能性は少なくないでしょう。

事業譲渡と労働契約の扱い

ここでは事業譲渡における労働契約の扱い方についてお伝えします。

さきほど事業譲渡では従業員との労働契約はリセットされるとお伝えしましたが、正確には譲渡側の会社の労働契約を承継するかどうかを譲渡側の会社、譲受側の会社、そして従業員との間で合意が取るものになっています。

この際従業員から労働契約の承継を拒否すれば従業員は譲受側の会社に移りませんし、逆に従業員が労働契約の承継を許諾しても譲渡側の会社や譲受側の会社が拒否すれば労働契約の承継は行われません。

そのため事業譲渡では譲渡側の会社、譲受側の会社、従業員の三者の間でコンセンサスを取る必要があります。

一方、事業譲渡を行う際に譲渡側の会社が事業に関わる従業員を解雇し、譲受側の会社の会社が再雇用する「再雇用型」というやり方があります。

再雇用される場合は基本的に譲受側の会社の労働条件に従業員が従うことになりますが、再雇用する譲受側の会社と従業員の間で合意が取れれば、労働条件を変更できます。

ただ、労働条件の変更は専門的な知識を織り交ぜながらやる必要があります。
その際はM&A総合研究所が力をお貸しします。
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事業譲渡と従業員の退職金

事業譲渡で譲受側の会社に移った場合、従業員が気にするのは退職金の扱いかと思います。

事業譲渡では従業員は実質的に新しい会社に移ることになるため、退職金も譲受側の会社に移った際にそれで途切れてしまうイメージがあります。

ただ、実際は退職金の扱いは2通りに分かれており、「事前に清算する」か「譲受側の会社が引き継ぐか」のどちらかになります。

事前に清算する場合はあらかじめ譲渡側の会社で退職金を清算し、譲受側の会社の退職金の制度に従うという形になります。

こちらは譲渡側の会社がある程度資金を用意しておく必要があり、また退職金の制度が変わることで従業員が不満を抱くリスクがあります。

対して譲受側の会社が退職金の制度を引き継ぐなら従業員の不満は少なくなります。

ただ譲受側の会社が退職金の支払いを請け負う以上、事業譲渡の代金にも影響します。

もしこれを行う場合、譲受側の会社が負担する退職金の分だけ事業譲渡の際の代金が安くなるのが通例です。

事業譲渡による従業員流出への対策

①事業譲渡による従業員流出リスク

ここでは事業譲渡による従業員への対応についてお伝えします。

先ほど事業譲渡で従業員が流出するリスクがあるということをお伝えしましたが、実際の事業譲渡ではそういったリスクを踏まえたうえで雇用の確保ができるかどうかを念頭において事業譲渡に取り組みます。

こういったリスクを踏まえていない事業譲渡は、たとえ契約が成立しても従業員の流出によって事業が成立しなくなってしまい、想定していたシナジー効果を得られなくなってしまいます。

そうなると経営戦略に深刻なダメージが発生してしまうでしょう。

そのため事業譲渡を行う際は譲受側の会社と譲渡側の会社で、それぞれ協議したうえで従業員に入念な説明や説得を行うケースが多いです。

事業譲渡は従業員にとって労働環境が大きく変わることであり、表面上は落ち着ているように見えても内心では不安を抱えていることが多いものです。

とりわけM&Aのような会社の行く末を左右するような大きな戦略の場合、従業員はそこに直接介在しているわけではないので、いきなり事業譲渡を告げられるようなシチュエーションは充分に考えられます。

そのため譲渡側の会社も譲受側の会社も、まずは従業員に事業譲渡を行うことに対する理解を得ておくことが重要だといえるでしょう。

その理解が欠けていれば譲受側の会社へ移る可能性は著しく低下するでしょう。

②事業譲渡による従業員のメリット

ただ、従業員にとって事業譲渡が必ずしもデメリットしかないというわけではありません。

事業譲渡に限らずM&Aでは譲渡側の会社より譲受側の会社の方が規模が大きくなる傾向があります。(中小企業基盤整備機構の調査では全体の約8割です。)

結果として譲渡側の会社の入ることによって労働環境が変わり、労働条件が良化することは珍しくありません。

とりわけ上場会社のような大企業ならその変化は顕著であり、充実した福利厚生や安定した給料、ローンを組むなど様々な場面で必要になる社会的信用性が得られるなど、様々なメリットを享受できる可能性が高まります。

単純にキャリアアップが実現することにもなりますし、譲受側の会社の環境がよければ従業員の更なるスキルアップややりがいの向上が期待できるでしょう。

また事業譲渡などM&Aによって従業員過多の状態になっても日本の法律上、従業員の解雇は簡単にできないようになっています。

そのため譲受側の会社に移っても、その会社の経営状態が悪化したり、不法行為などを行うようなことがなければ会社を解雇させられるようなことはないでしょう。

これらのようなメリットがしっかり享受されていれば従業員も事業譲渡に合意してくれる可能性が高まるでしょう。

むしろ譲受側の会社の条件が良ければ積極的に事業譲渡を支持してくれる可能性があります。

ただ、気を付けてほしいのがさきほどお伝えしたような退職金や労働契約の承継などの対応で失敗したケースです。

退職金や労働契約の承継などの対応を誤り、未払いの退職金や給料が発生したり、従業員の認識と食い違う状況が発生すると従業員から訴訟を起こされることもあります。

こうなると事業譲渡を行ってからの経営統合に影響が出る恐れもあるため、こういった事態に陥らないように慎重に配慮する必要があります。

このような事態にならなかったとしても、基本的に事業譲渡に反対する従業員は譲渡側の会社の別の事業に移るか、退職するかの二者択一を迫られます。

事業譲渡の際の従業員の対応が悪いとそれは会社の評判にも直結します。

従業員に無理に選択を迫るようなことをすると会社の評判が悪化し、譲渡側の会社にも譲受側の会社にも影響する可能性があります。

会社の為にこれまで支えてくれた従業員のことも考えると、冷淡な対応は倫理的にも良いことではありません。

事業譲渡について従業員と話す際には、その従業員と譲渡側の会社がそれぞれ理想とする道筋を考え、お互いが納得できる答えを模索した方がいいでしょう。

まとめ

今回の記事をまとめると以下のようになります。

  • 事業譲渡は会社内にある事業を他の会社に譲渡するM&Aの手法の一つ。
  • 事業譲渡は従業員の労働契約がリセットされるため、従業員の流出が発生しやすい一面がある。
  • 事業譲渡に限らず、実際のM&Aでは従業員の流出を考慮し、雇用の確保をできるかどうかでM&Aの実行の是非を決める場合がある。
  • 事業譲渡での労働契約の承継は譲渡側の会社、譲受側の会社、従業員それぞれの合意が必要となる。
  • 事業譲渡を行ってからの退職金の扱いは事前に清算を済ませるか、譲受側の会社が退職金を引き継ぐかのどちらかになる。
  • 事業譲渡による従業員の影響はネガティブなものばかりではなく、譲受側の会社の労働条件がよければ従業員が積極的に事業譲渡を受け入れる可能性がある。
  • 従業員の扱い方を間違えると譲受側の会社、譲渡側の会社それぞれの評判が悪化する可能性があるため、それぞれが納得できる答えを模索する必要がある。

今回お伝えした内容は手法に限らず、M&Aであれば最大限考慮すべき内容でもあります。

ただ事業譲渡は従業員にも譲受側の会社に移るかどうかの決定権の一部が委ねられているため、とりわけ従業員との合意が重要になってくるといっても過言ではありません。

実際、事業譲渡に限らずM&Aでは雇用の確保がどれだけできるかを念頭において実行に移すかどうかを決める傾向が強まっており、従業員の扱い方は慎重に検討すべき重大な事柄の一つだといえるでしょう。

もし事業譲渡を行う際には従業員の反応や彼らへの影響を最大限考慮したうえで計画を進めていくことがおすすめです。

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