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2019年11月25日更新
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事業譲渡が従業員に与える影響

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この記事の監修専門家
M&A総合研究所 公認会計士
高谷 俊祐

事業譲渡や会社売却等のM&Aにおいて、その成否を左右しかねない存在が従業員です。つまり会社や事業にとって従業員も大切な資産であり、その動向は無視できません。特に事業譲渡の場合は譲受側も含めセンシティブに従業員と向き合う必要があります。

目次
  1. 従業員の立場から事業譲渡を考える必要性
  2. 事業譲渡とは
  3. 事業譲渡と従業員
  4. 事業譲渡と労働契約の扱い
  5. 事業譲渡と従業員の退職金
  6. 事業譲渡による従業員流出への対策
  7. まとめ

従業員の立場から事業譲渡を考える必要性

事業譲渡を始めとするM&Aでは、経営者同士がその立場から事の良し悪しを判断し話を進めていきます。それは当然のことではありますが、話が決まって後から知らされることになる従業員にとっては、ある意味、青天の霹靂でしょう。

従業員が驚き、動揺し、そして自分の立場がどうなるのか気にするのは、至極当然の成り行きです。そのような精神状態である従業員の心情を理解し、経営的見地を離れ相対することも経営者の務めになります。

もし、それを怠ってしまうと、会社や事業にとって大切な資産でもある従業員の流出を招きかねません。そして、場合によっては、そのことが原因で事業譲渡は破談する可能性すらあります。

また、退職する従業員をめぐって、労働トラブル化まで事態がこじれてしまうことも懸念されます。このように、事業譲渡の際に起こり得る従業員に関する諸問題を未然に防ぐためには、やはり様々な備えが必要です。

事業譲渡の協議を進めていく場合、そのことと並行して、従業員の雇用関係に関する情報や知識を得て、従業員の心情を思いやる対処を心掛けましょう。

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事業売却とは

事業譲渡とは

事業譲渡の実際について、その概要を説明します。特に、譲渡が得るもの、譲受側の思惑に論点を絞りました。また、事業譲渡によって生じることになる明確な課題点もあります。それは従業員の目線でも明らかなことです。

一体どんな課題があるのか、御覧下さい。

①事業譲渡の狙い

事業譲渡は、M&Aの1つの手法です。一般的なM&Aのイメージとしては、どちらかというと会社全体を売却するスタイルの方がお馴染みかもしれません。

実際、関連する諸問題を含めて比べてみると、手続きそのものは事業譲渡よりも会社売却の方が簡易と言えます。それでは、なぜ、会社売却ではなく事業譲渡という方法が選ばれているのか考えてみましょう。

会社の売却とは、譲渡側から見ると会社を丸ごと買収企業に売る、つまり子会社になることを意味します。一方、事業譲渡とは、会社内の事業を個別に他の会社に売って譲渡するものです。

会社売却と比べて事業譲渡の最大の特徴と言えるのは、譲渡契約を結ぶ際に譲受側の会社が、承継する内容の範囲を選んで決められる点にあります。例えば、その事業が抱えている負債や不要な資産、契約などをあらかじめ排除できるわけです。

会社売却の場合は、売り手側の会社が持つ負債などを全てセットで承継せざるを得ません。また、売り手側の経営者にとっては、会社売却では経営権を失うことになりますが、事業譲渡であれば自分の会社は存続した状態です。

細かい点を挙げれば他にも色々な相違点や、会社売却・事業譲渡それぞれ独特のメリット・デメリットは存在します。その中でも最も顕著な違いが上述したものであり、それが手続きの煩雑がありながらも事業譲渡が選ばれる理由でしょう。

ただし、譲渡側と譲受側それぞれの思惑が一致する、事業譲渡の相手探しは容易なことではありません。条件の合う事業譲渡相手をお探しでしたら、M&A総合研究所のM&Aプラットフォームのお試しをお勧めします。

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②事業譲渡で生じる課題

上で述べたような利点のある事業譲渡ですが、事業譲渡成約後、対処しなければならない課題もあります。まず1つは、事業譲渡前にその事業関連でとても優良な取引先との契約があったとしても、それを引き継げません

別会社に事業が移ってしまったわけですから、取引関係の契約はほぼ無効になります。また、許認可が必要な事業であった場合、その許認可は事業を譲渡した企業が得ているものですから、これも継承できるものではありません

それらは、基本的に会社売却では起こり得ない問題です。また、譲渡した事業に必要な人員の労働契約についても、表面上は継承できません。別会社でありグループ会社でもないのですから、法律上、労働契約の継承は不可能なのです。

したがって、事業譲渡の場合、譲渡する事業に関わる従業員の取り扱いについて、譲受側の会社も含めた3者できちんとした取り決めを行わなければいけないという課題が発生します。

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事業譲渡のメリット・デメリット

従業員の待遇問題も含めた価値ある事業譲渡の実現をお考えでしたら、ぜひM&A総合研究所に御相談下さい。M&A総合研究所は全国のM&A案件の取り扱いをしており、中小企業のM&Aにも数多く仲介させていただいております。

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事業譲渡と従業員

事業譲渡が成立する時、経営者側が従業員についてどのように考えているのか整理してみましょう。まず、事業譲渡する側の経営者の場合は、主に2つの考え方が混在しているはずです。それは、無事の転籍と流出防止と推測されます。

つまり、譲渡事業に関わる従業員については、自社では退職または解雇という手続き後、譲渡された会社側で問題無く再雇用されることを願うスタンスでしょう。さらに、譲渡事業で重要な役割を持つ従業員が他社に就職することも心配です。

また、社に残っている他の事業に関わる従業員については、事業譲渡という出来事に動揺や反発をして感情的に退職する者が多発しないようなケアも考えているでしょう。

次に、事業譲受する側の経営者ですが、これはその会社の事業の状態次第で2つの考えに分かれるはずです。1つには、譲受した事業がその会社にとって全くの新規ビジネスだった場合、その事業を担える従業員は会社の中にはいません。

譲渡側従業員全員の入社はウェルカムどころかマストと言っていいでしょう。そして、もう1つには、譲受側に既に存在する事業を拡大するため、事業譲渡を受けた場合です。これは、先程とは少々状況が変わります。

事業を拡大するわけですから一定のマンパワーの増員は必要でしょう。特に主力の従業員にはみてほしいはずです。しかし、全員が必要かというと、その点は疑問符があり、全員の入社を歓迎する雰囲気ではないことが想像されます。

一方、当事者である従業員はどんな考えでしょうか。これまで働いてきた会社への愛着、突然の事業譲渡という事態への反感、これを機に全く違う他社への転職を考えるなど、人それぞれの反応があるでしょう。

また、人によっては譲受側企業への入社を楽しみに思うケースもあります。なぜなら、事業譲渡が成立するほとんどの場合で、譲渡側企業より譲受側企業の方が会社の規模が大きかったり、上場企業であったりとキャリアアップになるからです。

いずれにしても、従業員それぞれに個別の考え方がありますから、経営者の言いなりのように事は進まないでしょう。事業譲渡交渉と同じくらい丁寧に誠意をもって従業員と向き合う必要があります。

したがって、事業譲渡交渉において譲渡側と譲受側の気持ちがある程度、固まった段階で、事業譲渡する会社側の従業員には情報を開示し、説明を行うケースが多くなってきています。

譲渡側従業員の希望、譲受側の受け入れ態勢に折り合いをつけ、事業譲渡と共にトラブル無く従業員が移れる環境にすることが最も望ましいことです。

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事業譲渡と労働契約の扱い

事業譲渡が成立しても、会社売却のようなM&Aではないので従業員を転籍扱いにはできません。事業譲渡した会社を退職し、譲受した会社に入社するという手続きをするしかないのです。

労働契約という観点で考えれば、事業譲渡企業との労働契約は終了となり、譲受企業と新たな労働契約を結ぶということになります。しかし、従業員はこの労働契約の内容について、以前のものを継承するよう主張が可能です。

もっと正確に言えば、有給休暇の取得日数など従業員が既に有している権利等の譲渡側の会社の労働契約内容を承継するかどうかを譲渡側の会社、譲受側の会社、そして従業員との3者間で合意を取ることになっています。

この際、従業員側が労働契約の承継を拒否すれば従業員は譲受側の会社に移りません。逆に、従業員が労働契約の承継を許諾しても、譲受側の会社が拒否すれば労働契約の承継は行われません。

そのため事業譲渡では譲渡側の会社、譲受側の会社、従業員の3者の間でコンセンサスを得る協議が必要となるのです。

一方、事業譲渡を行う際に、譲渡側の会社が事業に関わる従業員を解雇し、譲受側の会社の会社が再雇用する「再雇用型」という方法があります。

再雇用される場合は、基本的に譲受側の会社の労働条件に従業員が従うことになりますが、再雇用する譲受側の会社と従業員の間で合意が取れれば、労働条件の変更は可能です。

ただし、イレギュラーな労働条件の変更は、会社の人事体系に波紋を投げかけてしまうかもしれません。労務や法務などの専門的な知識を織り交ぜながら実施する必要があります。

そのような場合こそ、M&A総合研究所に御相談下さい。M&A総合研究所では単なるM&Aの仲介だけでなく、事業譲渡で発生する諸問題の解決にも、豊富な知識と経験を持つ公認会計士をはじめとするスタッフがフルサポートいたします。

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事業譲渡と従業員の退職金

事業譲渡で譲受側の会社に移った場合、従業員が最も気にするのは退職金の扱いです。事業譲渡では従業員は実質的に新しい会社に移ることになるため、退職金も譲受側の会社に移った際にそれで途切れてしまうイメージがあるからでしょう。

しかし実際は、退職金の扱いは2通りに分かれています。1つは「譲渡側の会社がその時点で清算する」であり、もう1つは「譲受側の会社が引き継ぐ」という対応方法です。

譲渡側の会社が従業員の退職金を清算する場合、従業員は譲受側の会社に新規入社した扱いになり、その退職金制度に従うことになります。

このケースでは譲渡側の会社は、そのための資金を確保しておく必要が欠かせません。また、従業員としては、必然的に退職金制度が変わってしまうことに不満を抱くリスクがあります。

それに対して、譲受側の会社が退職金の制度を引き継ぐこととなれば、従業員の不満は出にくいでしょう。ただし、この場合は、譲受側の会社が退職金の支払いを請け負うことになるので、事業譲渡の金額に影響を及ぼすでしょう。

つまり、本来であれば譲渡側の会社が支払うはずであった退職金分も、譲受側の会社が肩代わりするわけです。当然その金額を算出し、本来の事業譲渡の価格から差し引かれることになるのが通例となっています。

事業譲渡による従業員流出への対策

結局のところ会社にとって従業員は財産です。従業員が担当している事業にとって、その人は資産に他なりません。したがって、実際の現場では細かい点で色々と条件があるでしょうが、基本的に従業員の移籍なくして事業譲渡は成立しません。

その意味において、事業譲渡をきっかけに人材が外部に流出してしまっては、せっかくの交渉が水泡に帰してしまいます。事業譲渡の際にできるだけ従業員を惹きつけておくための秘訣を探ります。

①事業譲渡による従業員流出リスク

事業譲渡の際に従業員が流出するリスクについてできるだけ担保を取るため、実際の現場では、事業譲渡側の会社が、該当する従業員から「転籍承諾書」を取り付ける手続きが取られるケースが多くなっています。

こういったリスクヘッジを踏まえていない事業譲渡は、たとえ契約が成立しても従業員の流出によって事業が成立しなくなってしまい、譲受側が意図した事業戦略は実現できないでしょう。そうなれば違約問題にも発展しかねません。

そのため、事業譲渡を行う際は譲受側の会社と譲渡側の会社で、それぞれ協議したうえで従業員に入念な説明や説得を行うケースが必須となってきています。

1人1人の従業員にとってみれば、事業譲渡によって労働環境は大きく変わることを意味します。しかもそれは自分が望んだわけでもなく、会社の都合によって半ば強制的にそうされるわけです。その心中では不安があって当然でしょう。

したがって、やはり重要なのは従業員への丁寧で真摯な説明です。事業譲渡のディールがある程度、固まった段階になったら、譲渡側の会社も譲受側の会社も、従業員への配慮に心を砕くことが求められます。

武田信玄が「人は城、人は石垣、人は堀…」という名言を残しました。まさにその言葉のとおりに従業員を考え対応することが、事業譲渡を成功さえ事業拡大という成果を得る鍵だと言えるでしょう。

②事業譲渡による従業員のメリット

従業員に事業譲渡の説明を行う場合、ただ転籍のお願いをするよりも、従業員にとってメリットがある点もアピールすべきです。そのメリットとは、従業員としての待遇の向上が見込まれることが予想できます。

中小企業基盤整備機構の調査によると、事業譲渡に限らずM&Aにおいては、譲渡側の会社より譲受側の会社の方が規模が大きいケースが全体の8割以上だそうです。

つまり、譲渡側の会社の入ることによって労働環境が一変し、労働条件が良化することも珍しくありません。とりわけ、それが上場会社で大企業であったならば、その変化は顕著でしょう。

充実した福利厚生や安定した給料もさることながら、住宅ローンを組む際の信用性など様々な場面で必要になる社会的信用も高まるはずです。これはメリット以外の何ものでもありません。

単純にキャリアアップが実現することにもなりますし、譲受側の会社の環境次第では個人のさらなるスキルアップが図れたりすることもあり、それは仕事のやりがいの向上として期待できるでしょう。

また、会社規模が大きい上場企業であればあるほど倒産などの心配もありません。さらに、会社は高いコンプライアンス性が求められることから、問題行為など起こさなければ解雇されるようなこともないでしょう。

これらは従業員にとって大きなメリットです。きちんと説明すれば従業員も事業譲渡による転籍に合意してくれるでしょう。あるいは逆に、譲受側の会社の条件に共鳴し、事業譲渡を積極的に支持してくれるかもしれません。

そして、だからこそ退職金や労働契約の承継などの対応で失敗しないことが大切です。ちょっとした対応のミスが従業員の誤解を呼び、場合によっては転籍承諾どころか、訴訟沙汰にさえなりかねません。

ですから、それらの対応を担当する人事や労務のスタッフには、くれぐれも会社のスタンスを十二分に理解させて、事に当たるようにさせねばならないのです。

裁判沙汰までいかなくても、例えば従業員に無理に選択を迫るようなことをすれば会社の評判が悪化し、譲渡側の会社にも譲受側の会社にも影響する可能性があります。

会社をこれまで支えてくれた従業員のことも考えると、冷淡な対応は倫理的にも良いことではありません。事業譲渡について従業員と話す際には、それぞれ理想とする道筋を考え、お互いが納得できる答を見い出すことを心掛けましょう。

まとめ

事業譲渡は経営判断です。その意図について従業員が100%理解・納得することはできないかもしれません。それでも、経営者としてできる限りの説明責任を果たす気持ちで最後まで対応しましょう。

その態度を示すことが、経営者も従業員もWin-Winとなる事業譲渡が成立する原動力となります。それを肝に銘じておいて下さい。本記事の要点は以下のとおりです。

  • 従業員の立場から事業譲渡を考える必要性
→従業員を軽視した事業譲渡は従業員の流出を招き成立が危ぶまれる。
  • 事業譲渡の狙い
→譲受側の会社は譲渡される内容を選んで決められること。譲渡側の会社は譲渡後も経営権があること。
  • 事業譲渡で生じる課題
→取引契約や許認可は譲渡できない。従業員転籍問題。
  • 事業譲渡と従業員
→事業譲渡共にトラブル無く従業員が転籍できることが望ましい。
  • 事業譲渡と労働契約の扱い
→事業譲渡での労働契約の承継は譲渡側の会社、譲受側の会社、従業員それぞれの合意が必要となる。
→譲渡側の会社が事業に関わる従業員を解雇し、譲受側の会社の会社が再雇用する「再雇用型」という方法もある。
  • 事業譲渡と従業員の退職金
→事業譲渡する会社がその時点で退職金を清算するか、譲受側の会社が退職金を引き継ぐかのどちらかになる。
  • 事業譲渡による従業員流出リスク
→従業員に入念な説明や説得を行い、転籍承諾書を取り付けるのが通例化しつつある。
  • 事業譲渡による従業員のメリット
→譲受側の会社が譲渡側より大きな企業であることが多く、福利厚生や安定した給料、社会的信用が高まり、キャリアアップにもなる。

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