M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2025年10月28日更新会社・事業を売る
M&A・事業承継の手法「事業譲渡」とは?債権者保護手続きの要否や流れを解説
M&Aによる事業承継で事業譲渡を検討中ですか?本記事では、事業譲渡のメリット・デメリットから、債権者保護手続きの要否、具体的な流れまで専門家がわかりやすく解説します。
目次
M&A・事業承継における事業譲渡の位置づけ
後継者不在に悩む中小企業にとって、M&Aは事業承継の有力な選択肢です。事業譲渡は会社全体ではなく特定の事業のみを売買する手法であり、不採算事業を切り離し、将来性のある中核事業だけを第三者に承継させたい場合などに活用されます。
事業承継の選択肢としての事業譲渡
経済産業省・中小企業庁のデータによると、2025年までに平均引退年齢の70歳を超える経営者が約245万人に達すると予測されており、後継者不在問題は喫緊の課題です。この解決策としてM&Aによる事業承継が注目されており、事業譲渡は柔軟な承継を可能にする手法として広く活用されています。
株式譲渡との違いと比較
M&Aで多用される株式譲渡は、会社の経営権(株式)を包括的に承継する手法です。そのため、買い手は売り手企業の資産も負債もすべて引き継ぎます。一方、事業譲渡は承継する資産・負債を個別に選べる「個別承継」である点が最大の違いです。これにより、買い手は簿外債務などの潜在的リスクを回避しやすくなります。
事業譲渡が適しているケース
事業譲渡は、以下のようなケースでの活用に適しています。
- 複数の事業のうち、一部の事業だけを売却したい
- 会社は手元に残し、特定の事業の現金化を図りたい
- 買い手として、不要な資産や簿外債務のリスクを避けたい
- 個人事業主が事業を法人へ承継したい
事業譲渡の概要と流れ
事業譲渡はM&Aの手法の一つであり、大企業に限らず中小企業でも用いられます。M&Aというと、会社同士が買収や合併をするようなイメージがありますが、事業譲渡は事業単体を取引するものです。そのため、事業譲渡は他のM&Aの手法と違う点が多く、その違いについてはよく把握しておく必要があります。
今回は、事業譲渡の全体の流れや、ケースによって必要となる可能性がある債権者保護手続きについてお伝えしていきます。
事業譲渡とは?M&Aにおける2つの大きな特徴
まずは、事業譲渡がどのような手法なのかについて紹介していきます。事業譲渡は冒頭でもお伝えしたように、会社のすべてを取引するのではなく、基本的には特定の事業を取引するM&Aの手法の一つです。そのため、事業譲渡では会社の一部の資産を売買することになります。
なお、事業譲渡などのM&Aを行う際には専門的な知識や実務が多くありますので、専門家のサポートを受けて実施するのがおすすめです。
事業譲渡などのM&Aをお考えの場合は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。M&A総合研究所には知識と経験が豊富なアドバイザーが多数在籍しており、培ってきたノウハウを活かしてM&Aをフルサポートいたします。
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買い手は承継する資産や負債を選択できる
事業譲渡の最大の特徴は、買い手が承継する資産や負債を個別に選択できる点にあります。M&Aで一般的な株式譲渡は、会社の経営権ごと引き継ぐ「包括承継」のため、買い手は帳簿に載らない簿外債務などの潜在的リスクもすべて背負うことになります。
一方、事業譲渡は「個別承継」であるため、買い手は必要な資産だけを選び、不要な負債やリスクを切り離すことが可能です。これにより、M&Aや事業承継をより安全に進められるというメリットがあります。
プロセスが煩雑でコストもかかる
事業譲渡は、個別に資産や契約を移転するため、手続きが煩雑になりやすいデメリットがあります。例えば、従業員とは個別に再契約を結び直す必要があり、取引先との契約や事業に必要な許認可も原則として再取得しなければなりません。
また、不動産を移転する場合は登記費用が、課税対象資産を譲渡する場合は消費税が発生するなど、コスト面での負担も大きくなります。特に、キーパーソンとなる従業員の同意が得られず離職してしまうと事業価値が大きく損なわれるため、丁寧な説明と交渉が不可欠です。
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事業譲渡の具体的な進め方【4ステップ】
ここでは、事業譲渡の流れを大まかにお伝えしていきます。事業譲渡は、以下のようなプロセスで行っていきます。
- 事業譲渡の準備
- 意向表明・基本合意
- デューデリジェンス
- 事業譲渡契約の締結
①事業譲渡の準備
事業譲渡は買い手、あるいは売り手の候補を見つけることから始まります。このとき、自分達だけで候補を探してもいいですが、M&A仲介会社の協力を得た方が見つけやすくなるでしょう。候補が決まったらスクリーニングを実施し、最終的な候補に打診します。
先方が事業譲渡に興味を持ち、交渉を承諾すれば秘密保持契約を締結し、本格的に交渉を開始していきます。
②意向表明・基本合意
事業譲渡の交渉が開始されると、先方とトップ面談を行います。そして、事業譲渡を行うことが決定されると、意向表明・基本合意が行われます。意向表明では、買収方法・買収価格・買収条件などの提案が書かれた資料である「意向表明書」を作成します。
その後に、基本合意において事業譲渡を行うことの決定を示す基本合意契約を締結します。
③デューデリジェンス
事業譲渡、ひいてはM&Aのプロセスで重要なものの一つが、このデューデリジェンスです。デューデリジェンスはM&Aを行う会社のリスクを洗い出す作業であり、M&Aの成否を占うといっても過言ではありません。当然、ここで致命的なリスクが見つかれば、M&Aが破綻してしまうこともあり得ます。
④事業譲渡契約の締結
デューデリジェンスを経て、事業譲渡の実行に問題がなければ、事業譲渡契約を締結します。このプロセスは俗にいうクロージングであり、事業譲渡を実行するプロセスの最後の場面といってもいいでしょう。
事業譲渡契約では、改めて事業譲渡の内容を記載すると共に、トラブルがあった際の賠償を明記する表明保証などを記載していきます。
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事業譲渡における契約関係
さきほどお伝えした事業譲渡のプロセスの中で、いくつか契約が出てきましたが、ここではその契約についてより詳しくお伝えしていきます。
秘密保持契約
秘密保持契約とは、その名のとおり取引に関する機密情報を定め、それを保持することを明確にする契約です。事業譲渡に限らず、M&Aは会社や事業の在り方が大きく変わる可能性が高いものであり、初期段階で漏洩してしまうと従業員や取引先を動揺させてしまうことにつながります。
そのため、秘密保持契約を締結することは、M&Aを行ううえで非常に重要です。
意向表明
意向表明は、さきほどもお伝えしたようにM&Aを行うことに対して双方が合意を得た際に交わすものです。内容としては、M&Aを行ううえでの企業提携を行う意思や基本的な条件があります。ただ、意向表明は必ず締結するものではなく、基本合意のみを行うケースもあります。
基本合意
さきほども触れた基本合意契約(基本合意書)ですが、これは事業譲渡、ひいてはM&Aで行うにあたり、これまで交渉を行ってきたことの中で決定した基本的な諸条件を明確にしたものです。ただ、基本合意は法的な拘束力があるものではありません。
後のデューデリジェンスなどで問題が発生し、条件を変えなければならない場合は変更されることがあります。
事業譲渡契約
事業譲渡契約はクロージングの段階で締結する契約です。事業譲渡契約では、譲渡する対象や対価、手続き、競業避止義務、従業員の扱いなどについて明記します。ただ、契約は取引の実態や結果を決めるうえで一番重要なものであり、手違いがあると、後々トラブルに発展することもあります。
最近はインターネットで検索すれば雛型が見つかり、無料で使うことができますが、それをそのまま使ってしまうと取引の実態から乖離してしまう恐れがあります。そのため、事業譲渡契約のような重要な契約を締結する際は、専門家に相談してきちんとチェックを受けておきましょう。
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事業譲渡で債権者保護手続きは必要か?
結論から言うと、事業譲渡において会社法で定められた債権者保護手続きは原則として不要です。事業譲渡では売り手企業の法人格がそのまま存続し、譲渡対象としなかった債務は売り手企業に残るため、既存の債権者の権利に直接的な影響が及ばないからです。
ただし、買い手が売り手の負債(債務)の一部を引き継ぐ「債務引受」を行う場合は例外です。この場合、債権者の利益を保護するため、個別に債権者から同意を得る必要があります。これは会社法上の手続きではなく、民法上のルールに基づきます。
事業譲渡における債権者保護手続きの流れ
事業譲渡は債権の移転、つまり負債を買い手となる会社に承継させるかどうかを決められるため、債権者保護手続きが必ず発生するわけではありません。ただ、負債を背負っている会社が売り手となる場合、できることなら買い手となる会社に承継してほしいと考えることは多いでしょう。
ここでは、債権者保護手続きを行う際のプロセスとなる「債権者の個別同意」と「官報公告への通知」についてお伝えします。
債権者の個別同意
債務引受を行うには、原則として各債権者から個別に同意を得る必要があります。まず、対象となる債権者をリストアップし、債務の移転に関する同意書(通知書)を送付します。
この通知書には、事業譲渡によって債務者が買い手企業に変更される旨を明記し、一定期間内(例:1ヶ月以内)に返答がない場合は同意したものとみなす旨を記載することが一般的です(民法第472条の4)。ただし、すべての債権者から円滑に同意を得られるとは限らないため、丁寧な説明と交渉が重要になります。
官報公告への通知
官報公告への通知を行う際、まずは記載しなければならない内容を把握しておく必要があります。官報公告に記載する内容は、直近の会社財務諸表や、決算報告などといった会社に関する情報であり、事業譲渡の際の売り手、買い手の双方ともに必要となります。
そして、これらの情報は決算公告を掲載した官報の号数とページ数を記載することによって掲載となります。ただ、決算公告を掲載していない場合は、債権者保護手続きを行う官報公告で記載することになるので注意してください。
ちなみに、個別通知にも要約貸借対照表を掲載する必要があります。この手続きが大変であることが多いので、気を付けておきましょう。
官報公告における注意点
官報公告に情報が掲載されるまでの期間は、官報公告の掲載号などの記載で済むのであれば、あまりかかることはありません。しかし、貸借対照表などを掲載する場合は、10営業日ほどかかることがあるため、スケジュール調整は注意しておきましょう。
また、官報公告に掲載するには費用がかかります。官報公告は一行ごとに費用が発生する形式をとっており、1行ごとに1000円弱~数千円ほどかかります。また、枠で申し込むのであれば、枠の数によって費用が変化します。
1枠であれば7万円ほどの費用が発生し、枠の数が増えると数十万円に達することもあります。官報公告の記載には、それなりの費用がかかるため留意しておいてください。
債権者から異議を唱えられた場合
債権者保護手続きの過程で、債権者が事業譲渡に同意せず、異議を唱えることもあります。債権者が異議申し立てを行った場合、債権者の利益や権利を損なうようであれば、その都度対処を行う必要があります。この場合の対処は債務の弁済や、担保の提供といったものが挙げられます。
いうなれば債権をすぐに解消する、もしくは債権の回収が困難となった際の保全がされるように対処するわけです。
事業譲渡が債権支払いに影響しなければ対応は不要
債権者が異議申し立てを行ったとしても、債権者に対する債務支払いに事業譲渡が影響しないのであれば、特段対応する必要はありません。たとえ異議申し立てが発生したとしても、債務の支払い自体に影響がなければ、問題がないからです。
裏を返せば、事業譲渡による債権者への影響がないようにすれば、異議申し立ての影響はあまりなく、債務の弁済や担保の提供といった対処が必要になったとしても、ちゃんと実行すれば事業譲渡が頓挫(とんざ)するようなことはないでしょう。
ただ、債権者とのトラブルは会社の信頼に関わるようなことであるため、債権者保護が必要な場合はきちんと相手の利益や権利を尊重して行うようにしましょう。
まとめ
事業譲渡は買い手となる会社が承継できるものを選べる方法である一方、ケースによって債権者保護の手続きが必要となる場合や不要となる場合があるなど、他のM&Aの手法とは異なる点が多いものです。そのため、あらかじめ専門家のサポートを得ておくなど、万全の体制を整えたうえで行うようにしておきましょう。
また、必ずしも必要と限らないとはいえ、債権者保護の手続きには備えておいた方が賢明です。
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。