2021年4月21日更新会社・事業を売る

企業価値の計算方法

M&Aは会社の売買ですから企業価値を数値化しなければなりません。企業価値の算定には複数の計算方法があります。それら計算方法は3種に大別され、ネットアセットアプローチ、インカムアプローチ、マーケットアプローチに区分されています。

目次
  1. 企業価値とは
  2. 企業価値の計算方法(ネットアセットアプローチ)
  3. 企業価値の計算方法(インカムアプローチ)
  4. 企業価値の計算方法(マーケットアプローチ)
  5. まとめ
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企業価値とは

企業価値とは

企業価値とは、その言葉のとおり、会社の価値を指しています。金融機関が会社を審査する場合や、株式市場で該当企業の評価を行う時などによく出てくる言葉です。そして、M&Aの現場においても、対象企業の売却相当額を評する際にも用いられます。

特にM&Aでは、対象企業は最終的に売買されるわけですから、企業価値の明確な数値化が必要です。対象企業が現在所有している資産、抱えている負債、収益の状況、今後の事業見通しなど、その企業を取り巻く様々な要因を全て合わせ込んで計算しなければなりません。

そのような非常にデリケートである企業価値算定にあたっては、特別な計算方法がいくつも開発され実用化されてきました。現在、それらの計算方法は以下の3タイプに分類されています。

  • ネットアセットアプローチ(コストアプローチ)
  • インカムアプローチ
  • マーケットアプローチ

どの企業価値計算方法も専門的で高度であるため、M&Aにおいて当事者企業側でその計算を実施するのは非常に難しいでしょう。しかし、心配には及びません。M&A実施の際にはM&A仲介会社に業務委託しているでしょうから、企業価値の計算もM&A仲介会社が行ってくれます。

ただし、その際に注意したいのは、M&Aの経験が不十分な担当者の場合、企業価値の計算で思わぬミスを起こしかねません。

M&A総合研究所では、M&Aに豊富な知識と経験を持つアドバイザーがフルサポートいたします。

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企業価値の計算方法(ネットアセットアプローチ)

企業価値の計算方法(ネットアセットアプローチ)

企業価値を計算する際には、会社のどの点に着目するかでその計算方法が変わります。ネットアセットアプローチとは、会社が現在どれくらいの資産を保有しているかに着目した計算方法です。会社の開業当時から現在までを、数値化して分かりやすく計算できます。

ネットアセットアプローチは、英語でNet Asset Approachと表記し、Net Assetは純資産という意味です。ネットアセットアプローチは、インカムアプローチやマーケットアプローチと違って、別称があります。

それは、コストアプローチ(Cost Approach)とストックアプローチ(Stock Approach)です。Costとは費用の意味で、Stockとは株式資本という意味になります。昨今では、コストアプローチと呼ぶ方が多いかもしれません。

ネットアセットアプローチに分類されている計算方法はたくさんあるのですが、その計算方法の特性から、会社の業績が悪く今後回復の見込みがないような場合に限って使用される計算方法も存在します。

そのようにネットアセットアプローチには、最も客観的に現時点での企業価値を算出できることがメリットです。しかし、開業からこれまでの業績に注目しすぎて、将来性の価値が計算方法に含まれていないデメリットがあります。

ネットアセットアプローチには、主に以下の3つの企業価値計算方法があります。

①時価純資産価額法

その時点の需要を反映した純資産額を基に、企業価値を計算する方法です。つまり、会社が現段階で保有している資産に着目します。現金や株式数、固定資産などプラスの資産を時価換算し、そこから負債などのマイナス資産を指し引いた計算で企業価値を出します。

したがって、資産が有形でも無形でも評価の対象です。しかしながら、将来性を全く評価しないわけにはいかないので、営業権を評価します。営業権とは、のれん代とも言われ、将来的に生み出されるであろう利益のことです。

「プラスの資産−マイナスの資産+営業権」が、時価純資産価額法の計算式になります。中小企業のM&Aにおいて、簡単に企業価値を計算できる方法として採用されています。

②簿価純資産価額法

簿価とは、仕入れた時に会計処理され、帳簿に記載された価値です。つまり簿価純資産価額法とは、資産を手に入れた時点の価格を基にして、企業価値を計算する方法です。時価純資産価額法との違いは、純資産を時価で見るか簿価で見るかの違いのみで、計算方法は変わりません。

時価換算をしなくてもいいため、計算方法としては時価純資産価額法よりもさらに簡便ですが、仕入れた時の簿価に対して、現在の時価があまりにもかけ離れているケースでは、企業価値を適正に計算できません。

したがって、資産の価値が著しく低下もしくは上昇している場合には、他の方法で企業価値を計算するのが妥当です。

③清算価値法

清算価値法では、現在抱えている負債を、現在保有している資産を売却した金額で返済したと仮定します。その後に、どの程度の資産が残っているかを計算し、それを企業価値とするのです。しかし、実際の計算方法としては、注意点があります。

資産の価値を簿価の満額とはしません。例えば売掛金などは金額の80%、棚卸資産などは50%といった具合に修正したうえで計算を行います。つまり、全ての資産は、仕入れ時よりも価格が下がっていると判断して計算するのです。

そして、清算価値法は、その名が示すとおり、会社清算時に株主が得られるであろう金額を算定するために用いられる計算方法です。

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企業価値の計算方法(インカムアプローチ)

企業価値の計算方法(インカムアプローチ)

インカムアプローチでは、会社の将来性に着目して企業価値を計算します。将来的にどのくらいキャッシュフローや収益を生み出せるかが鍵となります。この企業価値の計算方法は、将来的な成長が期待されるケースで活用されます。M&Aは、統合後の利益を期待して実施されます。

したがって、M&Aにおいて最も適した企業価値の計算方法だと言われています。ただし、将来性を合理的に判断できる反面、企業価値が安定しないデメリットもあります。なぜならば、企業価値の計算式の割合や数字は操作可能だからです。

この方法を用いて企業価値を計算する場合、ある程度その不明瞭さを理解しておく必要があります。インカムアプローチに分類されている計算方法は、主なものとして以下の3つです。

①DCF法

DCF法とは「Discounted Cash Flow」の頭文字で省略した呼称です。その会社が将来に渡り、どの程度利益を生み出すかを企業価値として数値化します。キャッシュフローを生み出せる能力、すなわち期待値を加重平均資本コストで割り引いたものが企業価値なのです。

基本的にDCF法は、成長性が高い会社の企業価値を計算する際に用いられます。インカムアプローチの中でも、客観的に企業価値を計算できる方法とされており、現在のM&Aの現場でも最も多く採用されている計算方法です。

②APV法

資本構成が今後変化するかどうかは、経営者でも予測不可能です。したがって、DCF法で将来的なキャッシュフローを計算するには限界があります。そして生み出された計算方法が、このAPV法です。なお「Adjusted Present Value」の頭文字を取って呼称となっています。

APV法は、将来得られるキャッシュフローに重点を起きつつも、現在の価値も企業価値の計算に含めます。DCF法で算出する場合と比べ、企業価値が高くなりやすい特徴があるので、その点は前提として抑えておきましょう。

③配当還元法

配当還元法は、現段階で配当金額を株主にいくら分配できるのか、という点に着目しています。前述した企業価値の計算方法では会社全体の価値を算出しましたが、配当還元法では会社の配当のみに着目します。

この場合、他の計算方法よりも企業価値は低くなります。株式を少ししか保有していない株主や、ストックオプションとして保有している従業員などに対して、より多く還元するために活用される方法です。

計算方法の内容でわかるとおり、配当還元法がM&Aでの企業価値算定で用いられることはありません。

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企業価値の評価方法

企業価値の計算方法(マーケットアプローチ)

企業価値の計算方法(マーケットアプローチ)

マーケットアプローチは、株式の公開を目指している会社に対して利用されることが多い計算方法です。計算対象となる会社が市場の中でどのような立場にあるのか、他の会社と比べてどのくらい価値があるのか、などの視点で企業価値を計算します。

対象会社と似ている会社との比較により、企業価値を定めるということは、客観性のある計算方法と言えます。しかし、その似ている会社を探すというこちに時間と手間がかかります。また、本質的な企業価値を計算できているのか、という点では不確かさは否めません。

マーケットアプローチには、いくつもの計算方法がありますが、本項では以下2種類の計算方法を掲示します。

①類似企業比準法

類似企業比準法は、マーケットアプローチの代表的な計算方法の1つです。計算対象となる会社と、企業規模や事業規模、利益やキャッシュフローが似ている上場企業を選び出し、その会社の数値を基準に企業価値を算出します。

この時比較対象とする会社は、上場企業でなければいけません。上場企業でなければ、企業価値のわかる数値が公表されていないからです。同じマーケットアプローチの中には、類似する計算方法として、「類似取引比較法」や「類似業種比準法」があります。

②売買実例法

売買実例法では、これまでの売買実例に着目して企業価値を計算します。非上場企業の場合、上場企業と違って株式市場での売買取引はされません。しかし、株式市場外で現実に株式取引がなされる場合もある場合があります。

そのような過去にあった取引実態を転用して、対象企業の企業価値とする計算方法が売買実例法です。このように、マーケットアプローチでは、対象会社の立場やこれまでの実績に基づいて企業価値を計算します。

企業価値の計算を行う際、会社の状態やどこに着目するかによって用いるべき手法が異なります。会社の業績が悪ければアセットアプローチを使用し、将来性が期待できる会社であればインカムアプローチを使用するのが通例となりつつあります。

※関連記事
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M&Aの成功を左右する企業価値

まとめ

まとめ

企業価値評価は、M&Aにおいて核となる重要な点です。その会社が買収に値するのか、M&Aを実施する価値があるのかの判断材料となります。そのため、企業価値については、売却側も非常に重点を置いている部分です。

企業価値をどのような方法で計算するかは、対象となる会社の意向はもちろん、買収を検討している会社の意向も重要になります。必ずしも双方の希望が通るわけではありません。その時に最も適している評価方法を組み合わせて選択することが大事です。

できるだけ高く売りたい売却側と、可能な限り安く買いたい買収側では、意見が食い違う可能性があります。その時に、客観的な企業価値の計算は、両者の折り合いをつけるうえで有効です。本記事の要点は以下のようになります。

・企業価値とは
 →M&Aの際に会社の価値を表す

・ネットアセットアプローチ(コストアプローチ)
 →貸借対照表の資産の部に着目して行う企業価値の計算方法

・インカムアプローチ
 →将来的な成長が期待できる場合に利用される企業価値の計算方法

・マーケットアプローチ
 →類似する上場企業の数値から企業価値を求める計算方法

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