期待収益率とは?求め方や意味、M&Aにおける期待収益率の活用
2021年2月17日更新会社・事業を売る
企業買収とは?企業買収の方法と価格
企業買収には複数種類の方法があり、それぞれのメリット・デメリットを十分に踏まえて行う必要があります。本記事では、企業買収の目的・企業買収の失敗/成功事例・企業買収のメリット/デメリット・企業買収の方法・企業買収の価格を中心に詳しくまとめました。
企業買収とは?
昨今、M&Aによる企業買収はさまざまな企業が実施を検討しており、M&A=企業買収というイメージを持っている経営者の方も少なくありません。今や企業買収は、ポピュラーな経営戦略の手法といっても過言ではないのです。
この企業買収は多種多様な手法に分かれており、それぞれに異なるメリットやデメリットが存在します。そのため、これらのポイントを十分に踏まえたうえで実施しないと失敗してしまいかねません。そこで今回は、企業買収の目的・手法・メリット/デメリットなどを中心に紹介します。
企業買収の意味
企業買収を文字どおり読むと「企業を買収する」となりますが、厳密には企業における議決権の過半数や一部の事業を買い取る行為を意味します。つまり、企業買収とは、対象となる企業の経営権・事業を買収する行為のことです。
M&Aにより企業買収を行うと、買い手となる企業は対象企業の支配権を獲得する一方で、対象企業は買い手となった企業の子会社あるいは完全子会社となります。
なお、M&Aというと企業買収を連想する経営者の方も多いですが、正確にいうとM&Aは「Mergers(合併)」と「Acquisitions(買収)」という双方の意味を含む行為です。合併と買収は一見すると似ていますが、合併では経営統合の実施時に当事会社のいずれかが消滅する点に相違が見られます。
また、広義のM&Aには企業同士の連携も含まれており、資本提携や一部株式譲渡などもM&Aに該当する手法です。とはいえ、企業買収にもさまざまな手法が存在しており、実施時は自社に最適な手段を選び取る必要があります。もしも企業買収を検討しているのであれば、M&A総合研究所にお任せください。
M&A総合研究所では、M&Aに関する豊富な知識・経験を持つアドバイザーがM&Aをフルサポートしております。国内最安値水準の手数料体系に強みがあるほか、完全成功報酬制を採用しておりますので、成約に至らない限り費用は一切発生いたしません。
相談料は無料となっておりますので、企業買収に不安を持つ経営者の方はお気軽にお問い合わせください。
企業買収の目的
企業のさらなる成長の実現
企業買収の代表的な目的は、企業のさらなる成長の実現にあります。企業買収により事業領域を拡大し、異なる企業のノウハウ・設備などを取り込んで経営のシナジー効果を獲得すれば、企業がより成長するきっかけとなります。これと同時に、買収対象企業の人材・シェアなどを獲得できる点も非常に有益です。
また、企業買収は、新規事業に進出する際にも大いに活用できます。企業買収であれば、新事業に必要なノウハウ・設備・許認可などをまとめて獲得できるため、事業拡大にかかるコストを軽減できる可能性が高いです。さらには、新しいエリアに展開したい際にも、企業買収を利用すれば容易に進められます。
海外進出
最近では、企業の海外進出のために企業買収が活用されるケースも多いです。特定の国・地域に進出するために企業買収を行っている日本企業は、数多く見られます。これは新規エリアでの事業展開を目的とする企業買収と類似するケースであり、現地企業の買収によってその国への進出の足掛かりとなります。
当然ながら、現地企業は現地の習慣・法律・市場動向など経営の必要事項を心得ているため、買収すれば海外進出を効率的に進められます。
経営再建
経営が悪化している企業であれば、経営再建を目的に企業買収を行うケースもあります。これは特に売り手となる企業に多い目的であり、売り手から見れば会社売却に該当する行為です。
たとえ経営状態が悪化し赤字から脱却できない企業であっても、会社売却を行えば買い手企業による新たな資金の投入などを通じて経営再建のめどを立てられます。そして何よりも売り手企業の経営者のメリットとして大きいのは、自分の企業を存続させられる点です。
その一方で買い手企業としても、経営が悪化している企業に投資して収益性を引き上げれば自社の成長に寄与させられます。ただし、こうした目的を掲げる企業買収では、特に売り手企業の選び方に注意が必要です。
事業承継
事業承継も、売り手となる企業が企業買収の当事会社となる際に掲げる目的の一つです。事業承継というと、「経営者が自身の子供を後継者として企業を承継させる」パターンを連想する経営者の方が多く見られます。
しかし、近年では中小企業を中心に後継者不在の問題が深刻化しており、後継者がいないために廃業を余儀なくされる企業が増加傾向にあります。こうした企業にとって企業買収は有効的な手段であり、買い手企業に買収してもらえば企業の存続だけでなく企業の成長までかなえられる可能性があります。
そのため、近年ではM&Aによる企業買収を利用して事業承継を行う企業が増えています。
会社の買収を失敗した事例5選
本章では、「実際に企業買収を行い会社の買収を失敗した」事例を5つ取り上げます。
- のれんの減損処理が巨額に上ったケース
- M&A後に売り手企業で不祥事が発覚したケース
- 新規事業への進出に遅れを取ったケース
- バブル崩壊の影響を受けたケース
- 資金投入のタイミングを誤ったケース
それぞれの事例を順番に詳しく解説します。
失敗事例①:のれんの減損処理が巨額に上ったケース
1つ目に、のれんの減損処理が巨額に上ったことが原因となり失敗に発展した企業買収の事例を取り上げます。そもそも「のれん」とは、企業買収の対象となる企業が将来にわたって収益を獲得する力を買い手企業が評価したものです。貸借対照表では、無形固定資産として計上されます。
もしも企業買収後に対象となった企業の収益力が低下したと判断される場合、のれんの評価を引き下げて損失処理を行わなければなりません。この手続きを、「のれんの減損処理」と呼んでいます。企業買収に伴い、のれんの減損処理が巨額に上った企業は、主に以下のとおりです。
- 東芝(米原発子企業ウエスチングハウス社の買収で約7,200億円の減損処理(2017年3月期))
- 日本郵政(豪物流子企業トール・ホールディングス社の買収で約4,000億円の減損処理(2017年3月期))
- パナソニック(三洋電機の買収で約2,500億円の減損処理(2012年3月期))
- 富士通(英国ICL社の買収で2,900億円の評価損計上(2007年3月期)
- NTTコミュニケーションズ(ベリオ社の買収で5,000億円の減損処理(2001年9月))
失敗事例②:M&A後に売り手企業で不祥事が発覚したケース
2つ目に取り上げるのは、M&A後に売り手企業で不祥事が発覚したことで失敗に発展した企業買収の事例です。2008年、第一三共はインドの後発医薬品メーカー「ランバクシー」を買収しました。
買収側の第一三共は、日本の大手製薬会社です。武田薬品工業・アステラス製薬・大塚ホールディングス・エーザイと合わせて、国内製薬会社大手5社の1つに数えられています。
本件企業買収の金額は当時の為替レートで約4,900億円と発表され、大規模M&Aとして注目を浴びました。ところが結果的には、第一三共は2009年3月期にランバクシー関連で3,500億円以上の特別損失を計上しています。特別損失の原因は、ランバクシーの抱えるトラブルに気が付かなかった点にあります。
この企業買収ではTOBが採用されましたが、TOB期間中に米国FDAより抗生物質の取り扱いや製造器具の洗浄状況・生産管理・品質管理などに関する記録保存について問題が改善されていないことを理由に、30種以上の医薬品の米国への輸入を禁止する措置を講じられました。
これにより、ランバクシーの株価は買収価格より70%近く下落してしまい、特別損失を計上しなければならなくなりました。以上の失敗を踏まえて、売手企業のトラブルを洗い出すためにも、企業買収ではデューデリジェンスを徹底すると良いでしょう。
失敗事例③:新規事業への進出に遅れを取ったケース
3つ目に、新規事業への進出に遅れを取ったことで失敗に発展した企業買収の事例を取り上げます。2014年、アメリカのマイクロソフトは、フィンランドの通信インフラベンダー「ノキア」のデバイス事業を買収しました。当時の買収額は約72億ドルと発表されています。
買収側のマイクロソフトは、ソフトウェアの開発・販売を手掛ける会社で、1975年にビル・ゲイツとポール・アレンにより創業されました。1985年にはパソコン用OSのWindowsを開発し、1990年にはWindows向けのオフィスソフトとしてMicrosoft Officeを販売するなど、世界的に高い知名度を誇る企業です。
対する売却側のノキアは、従来型の携帯電話の時代において世界トップのシェアを誇っていたメーカーです。本件企業買収の当時、マイクロソフトはスマートフォン事業においてApple・Googleなどに大きな遅れを取っていました。
そのため、ノキアの買収によりスマートフォンへの対応を加速化させる狙いがありましたが、買収後もスマートフォン事業の遅れを取り戻せませんでした。結果的に翌年の2015年にはCEOを変更し、元ノキアの社員を大量にリストラしたうえに約76億ドルの減損損失を計上しています。
このように、企業買収ではたとえ買収自体には成功したとしても、その後の業績向上につながらず失敗に発展するおそれがあります。
失敗事例④:バブル崩壊の影響を受けたケース
4つ目に取り上げるのは、バブル崩壊の影響を受けたことで失敗に発展した企業買収の事例です。1989年、三菱地所は、アメリカ・ニューヨークのロックフェラーセンターを買収しました。当時の買収金額は2,200億円と発表されています。
買収側の三菱地所は、日本の不動産ディベロッパーです。グループ内には、丸ビル・新丸ビルなどのオフィスビルのプロパティマネジメントを担う「三菱地所プロパティマネジメント」や、住宅事業を担う「三菱地所レジデンス」・設計事業を担う「三菱地所設計」などを擁しています。
本件企業買収はいわゆるバブル時代によく見られた「日本企業による海外資産の買収ケース」の一つです。また本件は、当時アメリカ国民とニューヨーク市民より大きな反感を買っています。
そして、その後のバブル崩壊により、1995年には莫大な負債を抱えた運営企業が破綻しました。買収した物件の大半を放棄した結果として、三菱地所は1,500億円の損失を計上しています。
失敗事例⑤:資金投入のタイミングを誤ったケース
5つ目に、資金投入のタイミングを誤ったことで失敗に発展した企業買収の事例を取り上げます。2002年、アメリカの小売大手「ウォルマート」は、本件企業買収当時、業績不振に悩んでいた西友と資本業務提携を実施しています。
買収側のウォルマートは、アメリカ・アーカンソー州に本部を置く世界最大のスーパーマーケットチェーンであり、売上額で世界最大の企業です。ウォルトン一族による同族経営企業(ファミリー・ビジネス)としても高い知名度を誇っています。
対する売却側の西友は、東京都を拠点としてスーパーマーケットチェーン・ゼネラルマーチャンダイズストア ・スーパーセンターなどを全国展開する企業です。かつては、旧セゾングループの中核的存在に位置づけられていました。
上記の資本業務提携後も西友の業績は改善しなかったため、2008年にウォルマートは約1,000億円を追加投入して西友を完全子会社化しています。これにより、最終的なウォルマートの投資額は2,500億円にも及びました。
ウォルマートからすると経営再建への見とおしを立てていたと考えられますが、2002年に資本業務提携を行った際に完全子会社化していれば買収金額を抑えられたとも推測されています。
企業買収の成功事例5選
本章では、企業買収の成功事例として以下の5つを取り上げます。
- サコスグループによる親和電気の株式取得(株式譲渡)
- ユーグレナによるLIGUNAとの株式交換
- ジェクシードによるXYEEDの株式取得(第三者割当増資)
- ワットマンによるシナノ・グループのゲームステーション事業の譲受(事業譲渡)
- サンケン電気によるGSユアサへの子会社譲渡(会社分割)
それぞれの事例からポイントをつかんで、自社の企業買収戦略の策定に役立てましょう。
成功事例①:サコスグループによる親和電気の株式取得(株式譲渡)
2021年1月、株式譲渡により、サコスグループは親和電気の株式すべてを取得すると発表しました。本件企業買収の取引価格は非公開です。買収側のサコスグループは、機械/機器のレンタル・リース業・機械・機器などの輸出入および販売業を展開しています。
対する売却側の親和電気は、名古屋市を拠点に、総合電気設備/資材卸販売業・電気をアクセスとした快適空間・環境商品の開発・関連工事請負業などを手掛けている企業です。本件企業買収の目的は、グループの成長戦略の達成および中長期的な企業価値向上にあります。
成功事例②:ユーグレナによるLIGUNAとの株式交換
2021年1月、ユーグレナは、LIGUNAとの間で簡易株式交換を実施すると発表し、株式交換契約を締結しました。本件株式交換では、ユーグレナを株式交換完全親会社、LIGUNAを株式交換完全子会社としています。
ユーグレナは、藻類の一種であるミドリムシを中心とした微細藻類に関する研究開発・生産管理・品質管理・販売などを展開している企業です。ミドリムシの59種類の栄養素を活用し食品販売・化粧品販売を展開しながら、ミドリムシ由来のバイオジェット燃料・バイオディーゼル燃料の研究開発を行っています。
一方のLIGUNAは、スキンケア・雑貨・食品の企画開発および通信販売事業などを手掛けています。本件企業買収の目的は、ユーグレナの直販顧客基盤をはじめとする事業基盤・ブランド力・資金力と、LIGUNAのサステナブルな健康や美容を実現する商品開発力・ブランド力の融合による協業の実現にあります。
成功事例③:ジェクシードによるXYEEDの株式取得(第三者割当増資)
2020年12月、ジェクシードは、株式取得および第三者割当増資の引き受けによりXYEEDを子会社化すると発表しました。本件企業買収の金額は1,000万円です。
買収側のジェクシードは、ERPコンサルティング・人事コンサルティング・業務効率化・セキュリティ対策を手掛ける企業です。クラウドストレージ「Box」・AIオペレーター「commubo」・業務自動化RPA「UiPath」の導入支援コンサルティングで得た経験を生かし、企業のテレワーク推進をサポートしています。
対する売却側のXYEEDは、教育事業を展開する企業です。本件企業買収の目的は、教育事業の拡大およびグループとしての収益力強化にあります。
成功事例④:ワットマンによるシナノ・グループのゲームステーション事業の譲受(事業譲渡)
2020年12月、ワットマンは、事業譲渡の手法を用いてシナノ・グループのゲームステーション事業を譲受すると発表しました。本件企業買収の金額は非公開です。
買収側のワットマンは、神奈川県に本社を置く販売事業者です。 以前は家電製品の販売事業を中心としていましたが、現在はリユース・リサイクル事業を主軸としています。売却側のシナノ・グループは、「TSUTAYA」「Game Station」などのメディアのほか、ウェルネス・不動産事業を展開する企業です。
本件企業買収の目的は、神奈川県におけるホビー商材専門店の出店推進にあります。
成功事例⑤:サンケン電気によるGSユアサへの子会社譲渡(会社分割)
2020年8月、サンケン電気は、吸収分割を採用して、パワーシステム事業のうち社会システム事業を子会社「サンケン電設」に承継させたうえで、サンケン電設の発行済株式すべてをGSユアサに譲渡すると発表しました。本件企業買収の金額は、約48億円です。
買収側のサンケン電気は、埼玉県新座市に本社を置く電気機器メーカーです。電源3社の一角を占めており、3社の中で最も事業規模が大きく中心的存在に位置づけられています。
一方のGSユアサは、ジーエス・ユアサ コーポレーションのグループ企業です。自動車用/産業用各種電池・電源システム・受変電設備・照明機器・紫外線応用機器・その他電気機器の製造・販売を手掛けています。
本件企業買収の目的は、主力の半導体デバイスとパワーモジュールへの経営リソースの集中に伴う、一層の競争力強化・経営効率向上の推進・さらなる企業の成長にあります。
企業買収のメリット・デメリット
M&Aによる企業買収を実際に行う際は、メリットとデメリットを十分に把握しておかなければなりません。そこで本章では、企業買収に伴うメリットとデメリットを順番に取り上げます。はじめに紹介するのは、企業買収に伴うメリットについてです。
企業買収のメリット
企業買収のメリットは、異なる企業同士の経営統合により得られるシナジー効果とも言い換えられます。企業買収を行うと、他の企業のノウハウ・技術・人材などさまざまな要素を吸収可能です。これらの経営資源を利用すれば、事業拡大・新事業への参画などが容易に進められます。
また、企業買収は、財務力の強化にもつながります。事業資金の充実している企業を買収できれば、資金力が向上するだけでなく、資金調達時にかかるコストの軽減も期待できます。ただし、企業買収でこうしたメリットを最大限に獲得するには、条件の合う売り手企業を見つける必要があります。
企業買収のデメリット
企業買収のデメリットには、主に以下の2つが挙げられます。
- 不要なものを承継する可能性がある
- 人材の流出を招く可能性がある
それぞれのデメリットを把握して、自社の企業買収戦略の策定に役立てましょう。
不要なものを承継する可能性がある
主として企業買収は対象となる企業の経営権を獲得する行為であり、対象となる企業を包括的に承継する行為です。つまり、買い手となる企業は買収対象となる企業のすべてを引き継ぐため、この中には負債・不要な資産・契約などのネガティブな項目も含まれます。
とりわけ債務に関しては帳簿に記載されていない簿外債務・偶発債務などが懸念材料となり、企業買収時に気付かないまま承継してしまうと後々トラブルに発展する可能性が高いです。これを回避するには、買い手・売り手の両社で協議を重ねて、トラブルの種となる要素を排除しなければなりません。
人材の流出を招く可能性がある
企業買収は異なる企業同士が経営統合する行為であるため、必ずしも従業員が歓迎するとは限りません。異なる企業であれば、理念・風土・ルールなどの企業文化も異なるため、従業員同士で摩擦が発生するリスクは十分に考えられます。
特に売り手となる企業では、買い手となる企業の傘下に入ることを不満に感じる従業員の発生が懸念されます。実際にM&Aによる企業買収を行ったことで、従業員が流出したケースは珍しくありません。
もしも事業の中核を担うような人材が流出してしまえば、想定していたシナジー効果が大幅に低下するおそれがあります。したがって、企業買収への反発が想定される従業員がいる場合には、事前に説得しておくと良いでしょう。
企業買収の方法
企業買収の方法はそれぞれ共通点もありますが、厳密にはスキームが大きく異なるため注意して把握する必要があります。企業買収の方法は、主に以下の5つです。
- 株式譲渡
- 株式交換
- 第三者割当増資
- 事業譲渡
- 会社分割
それぞれの方法を順番に紹介します。
①株式譲渡
株式譲渡は、M&Aによる企業買収において最も活用されている方法です。株式譲渡とは、その名のとおり株式の3分の2以上を取得し経営権を獲得することで、対象企業を買収する方法をさします。
株式譲渡は株式譲渡契約の締結を完了させれば即座に実行できるため、公的機関をとおさずスピーディーに手続きを進められます。手続き自体も簡略であるため多くの企業で使用されていますが、包括的承継を行うために売り手の内情に大きく左右される点がデメリットです。
②株式交換
株式交換は株式譲渡と類似する手法ですが、株式交換では「対象企業の株式を100%取得して完全子会社化することが目的として掲げられる」という点において相違が見られます。また、株式交換では株式譲渡と異なり株主総会を開催しなければなりません。
とはいえ、一定条件を満たせば企業同士の合意のみで済ませられるため、比較的スピーディーに手続きを進められます。また、株式譲渡との大きな違いとしては、株式譲渡では現金のみが対価となるのに対して、株式交換では対価として株式の交付が可能である点も代表的です。
そのため、現金の用意ができない企業でも株式交換は実行できます。
③第三者割当増資
第三者割当増資とは厳密にいうと、買収ではなく増資に類する方法です。第三者割当増資は、「対象となる企業における株式の新株を引き受ける権利を特定の第三者に与える」という形で実行されます。
主に第三者割当増資は売り手となる企業の資金を増やしたい場合に採用される方法であり、売買ではないことから課税は発生しない点が特徴的です。
④事業譲渡
事業譲渡とは、企業内の事業の一部あるいは全てを譲渡する方法のことです。事業譲渡は、株式譲渡などとは違って、契約の範囲内で承継するものを選択できます。そのため、不要な資産・契約・簿外債務などの負債をあらかじめ取り除いたうえで事業を承継することが可能です。
とはいえ、事業譲渡では、取引先や従業員との契約・許認可の取り直し・不動産の移転といった必要な手続きが多くスキームが非常に煩雑です。なお、企業買収では法人税が課されるのが一般的ですが、事業譲渡では資産の売買として取り扱われるため消費税が課税されます。
⑤会社分割
会社分割は、企業における事業の権利義務のすべてあるいは一部を分割し別の企業に承継させる方法をさします。この点は事業譲渡と共通していますが、会社分割は事業譲渡と異なり吸収分割と新設分割の2つの手法に分かれる点が特徴的です。
このうち吸収分割は既存の企業に事業を吸収させる方法であるのに対して、新設分割は新たに設立した企業に事業を吸収させる方法をさします。なお、後者は企業単体でも実施可能です。また、会社分割は株式譲渡と同じく包括的な承継を行う方法であり、不要な資産・負債などを事前に取り除くことはできません。
企業買収の価格
本章では、企業買収の価格について取り上げます。実際に企業買収を行う際にまず行われるのは、売り手となる企業のおおよその売却価格を決めるためのバリュエーションです。
バリュエーションとは
バリュエーションとは、企業価値を算定するプロセスのことです。バリュエーションでは、主としてコストアプローチ・インカムアプローチ・マーケットアプローチなどの手法が採用されます。
このプロセスでは会計・財務など多様な専門知識が求められるため、M&A仲介会社・会計士事務所など外部の専門家に依頼すると良いでしょう。なお、バリュエーションにより企業価値を算定しても、それがそのまま売却価格に設定されるわけではありません。
条件交渉による価格の決定
企業買収は企業の取引であり、もちろん交渉の場が設けられます。最終的な売却価格は、交渉の場で決められる仕組みです。交渉では、売り手企業であれば少しでも高く売却価格を付けたい心理が、買い手企業であれば少しでも安く売却価格を付けたい心理がそれぞれ働きます。
そのため、交渉の場ではお互いの企業が納得できる結果になるまで交渉が行われます。売り手、買い手であれ、理想的な売却価格がある場合、交渉により実現を目指さなければなりません。交渉では条件の押し付けければ難航するため、ときには譲歩する姿勢も大切といえます。
交渉についてはアドバイザリー業務を手掛けるM&A仲介会社などの専門家が代行しているため、交渉力に自信のない場合には依頼を検討しましょう。もしも専門家選びでお悩みでしたら、M&A総合研究所にお任せください。
M&A総合研究所では、企業買収に関する経験が豊富なアドバイザーが在籍しており、M&Aによる企業買収の手続きをフルサポートしております。M&Aによる企業買収では一般的に完了までに1年程度の期間が求められますが、M&A総合研究所では最短3カ月で成約まで導いた実績を誇っております。
相談料は無料となっておりますので、M&Aによる企業買収を検討している場合には、買い手・売り手を問わずお気軽にお問い合わせください。
企業買収を成功させるポイント
最後に企業買収を成功させるポイントについて、マッチング面と手続き面の2つに分けて取り上げます。企業買収におけるマッチングの成功ポイントは、主に以下のとおりです。
- 信頼感やネットワークの広さをもとに専門家を選ぶ
- シナジー効果の大きさを検討したうえで相手企業を選ぶ
- 相手企業と信頼関係が構築できるかどうか慎重に吟味する
次に、企業買収で必要な手続きを円滑に済ませるポイントとして、以下の項目を紹介します。
- 自社の経営環境や経営資源を再確認して戦略を策定する
- 専門性の高さでアドバイザーを選ぶ
- 自社に潜むリスクは専門家と早急に共有する
これらのポイントを実践することで、買い手・売り手を問わず企業買収の成功確率を高められます。
企業買収まとめ
従来の企業買収については「会社を売る」という行為にネガティブな印象を抱く経営者の方が多く見られましたが、最近では企業買収をはじめとするM&Aの実施が一般化しており、日本でも多くの企業で行われています。
現在、さまざまなメディアにおいて大企業・有名企業が企業買収を行って事業の拡大を実現したというニュースが報じられています。とはいえ、企業買収には多くの方法があるため、それぞれのメリット・デメリットを踏まえて実施しなければなりません。
また、理想的な企業買収を実現するには交渉力も必要となるため、専門家であるM&A総合研究所にお任せください。今回の記事をまとめると、以下のとおりです。
・企業買収
→企業の経営権や事業を買収すること
・企業買収の目的
→企業のさらなる成長の実現、海外進出、経営再建、事業承継
・企業買収のメリット
→他の企業のノウハウ/技術/人材などさまざまな要素を吸収できる、資金力が向上する、資金調達時にかかるコストの軽減も期待できる
・企業買収のデメリット
→不要なものを承継する可能性がある、人材の流出を招く可能性がある
・企業買収の方法
→株式譲渡、株式交換、第三者割当増資、事業譲渡、会社分割
・企業買収の価格
→バリュエーションによる企業価値算定後に交渉で決定する
・企業買収を成功させるポイント
→信頼感やネットワークの広さをもとに専門家を選ぶ、自社の経営環境や経営資源を再確認して戦略を策定する など
M&A・事業承継のご相談なら24時間対応のM&A総合研究所
M&A・事業承継のご相談は完全成功報酬制(成約まで完全無料)のM&A総合研究所にご相談ください。
M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴をご紹介します。
M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴
- 業界最安値水準!完全成功報酬!
- 経験豊富なM&Aアドバイザーがフルサポート
- 最短3ヶ月という圧倒的なスピード成約
- 独自のAIシステムによる高いマッチング精度
M&A総合研究所は、M&Aに関する知識・経験が豊富なM&Aアドバイザーによって、相談から成約に至るまで丁寧なサポートを提供しています。
また、独自のAIマッチングシステムおよび企業データベースを保有しており、オンライン上でのマッチングを活用しながら、圧倒的スピード感のあるM&Aを実現しています。
相談も無料ですので、まずはお気軽にご相談ください。
あなたにおすすめの記事
M&Aとは?M&Aの意味から手続きまでをわかりやすく解説!【図解あり】
M&Aとは、「合併と買収」という意味を表す言葉です。昨今、M&Aは経営戦略として人気を集めており、実施件数は年々増加しています。経営課題解決のために、前向きにM&Aを考えてみてください。M&A仲...

買収とは?意味やメリット・デメリット、M&A手法や買収防衛策を解説します
買収には、友好的買収と敵対的買収があります。また、買収には「株式を買収する場合」「事業を買収する場合」の2種類があります。メリット・デメリットをしっかり把握し、知識を得て実施・検討しましょう。

現在価値とは?計算方法や割引率、キャッシュフローとの関係をわかりやすく解説
M&Aや投資の意思決定をするうえで、現在価値の理解は欠かせません。現在価値とは今後得られる利益の現時点での価値を表す指標であり、将来の利益を期待して行う取引・契約・投資で重要な概念です。今回は、...

株価算定方法を解説します
株価算定方法は、多種多様でそれぞれ活用する場面や特徴が異なります。マーケットアプローチ、インカムアプローチ、コストアプローチといった株価算定方法の種類、株価算定のプロセスについて詳細に解説します...

赤字になったら会社はつぶれる?赤字経営のメリット・デメリット、赤字決算について解説
法人税を節税するために、赤字経営をわざと行う会社も存在します。会社は赤字だからといって、倒産する訳ではありません。逆に黒字でも倒産するリスクがあります。赤字経営のメリット・デメリットを踏まえ経営...
関連する記事
M&Aで違約金が発生する条件とは?基本合意や最終契約の注意点を解説
M&Aは契約書の内容に違反した場合、違約金が生じることがあります。成約までに締結する契約は数多く、細かい発生条件は契約の種類や法的拘束力の有無によって違います。今回は、M&Aで違約金や発生する条...
M&Aキャピタルパートナーズの最低仲介手数料は?報酬体系や相場を解説
M&Aキャピタルパートナーズは中堅・中小企業を対象にM&A仲介を手掛ける会社です。豊富な実績を持つ会社ですが、最低手数料はどうなっているのでしょうか。本記事では、M&Aキャピタルパートナーズの最...
M&Aの増加理由!買い手のリスクは?注意点なども解説
M&Aを行う理由や目的はさまざまですが、近年のM&Aブームや中小企業庁によるM&A支援の影響を受けて、M&A増加が顕著となっています。本記事では、M&A増加理由や買い手のリスク、買い手と売り手の...
再生型M&Aの基本的な手続きやスケジュールは?再生型M&Aを取り入れるメリットも
再生型M&Aとは、業績が悪化して自力での再生が難しい状態の企業を一部清算することも視野に入れながら、M&Aを活用して事業再生を図る手法です。本記事では、再生型M&Aの基本的な手続きやスケジュール...
M&Aブーム!今回の特徴は?過去のブームとの違いなどまとめ
近年、社会を取り巻く環境の変化の影響でM&Aブームが到来しつつあります。その特徴から、一過性のものではなく持続性があるものという見方もされています。本記事では、今回のM&Aブームの特徴や過去のブ...
事業再生の手法まとめ!M&Aを利用する方法も?手続きとメリットなども解説
事業の業績悪化が続く場合、事業再生により健全化を図ることがあります。M&Aを活用する手法もあるので、最善手を見極めるためには各手法の特徴を押さえておく必要があります。本記事では、事業再生の手法や...
M&A(国内)の現状!市場規模や課題は?対策と今後の展開などを考察
不況による市場の縮小や経営者の高齢化、さらには新型コロナウイルスの影響などにより、M&A(国内)の現状は不透明さが増しています。本記事では、M&A(国内)の市場規模や課題といった現状を解説し、そ...
500万円で買える会社・M&A案件!買収するメリット・デメリット
M&Aでは500万円以下の少額案件も多く、500万円で買える会社なら資金の少ない個人でも買収できます。本記事では、500万円で買える会社のM&A案件についてメリット・デメリットを解説するとともに...
信用組合にM&A・事業承継は相談できる?信金キャピタルの評判とは
信用組合とは、地域密着型の会員制金融機関です。また、信金キャピタルは、中小企業向けにM&A・事業承継支援や投資育成を行っています。本記事では、信用組合や信用金庫、信金キャピタルにM&A・事業承継...
株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。