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2022年6月6日更新事業承継
後継者問題に悩む林業の事業承継を徹底解説!業界動向・相場【事例あり】
林業は、後継者不足や従業員の高齢化により事業承継問題が深刻化しています。後継者不在により古くから引き継いできた家業を廃業する事例も増えてきており、業界全体の問題になりつつあります。今回は、林業の事業承継や業界動向、相場を解説します。
目次
林業とは
近年、林業は後継者不足の影響から事業承継問題が深刻化しています。後継者不足により親族に引き継ぐことができず、廃業あるいはM&Aによる事業承継を行うケースが増えています。
本記事では、林業の事業承継の現状や業界動向について解説しますが、この章ではまず、林業の定義や業種・組合、土地問題などについて解説します。
林業について
林業とは、経済的利用を目的に森林を伐採して木材を生産する産業のことです。伐採した後は、苗木を植えて数十年以上世話をしながら育てて、新たな木材を生産します。
チェーンソーなどを用いて伐採するイメージが強いですが、森林環境の保全のための活動も行っています。森林の適切な管理により、土壌流出や洪水の防止に努めることで、災害の被害を最小限に抑えています。
幅広い産業に活用されている木材の生産と環境維持を両立している林業は、重要性の高い産業として様々な事業者が取り組んでいます。
林業の業種と組合とは
林業の中でも業種によって事業内容が全く異なります。クリーンウッド法に基づく木材関連事業者と森林保全や林業の発展に努める森林組合の2者に大別されます。
森林組合は、森林組合法に基づき森林所有者が組合員になり組織された組合です。日本の国土の約7割は森林であり、さらに森林の7割は個人所有の私有林となっています。
全国森林組合連合会によると、全国155万人、624組合(平成29年時点)が設立されており、9,000人の役員と16,000人を超える伐採事業者と共に林業活動を行っています。
所有者不明の土地問題について
日本の森林の7割は個人所有であることが判明していますが、相続登記がされていない所有者不明の土地が問題になっています。
特に近年は、地方の過疎化や少子高齢化が進む中で、事業承継の際に土地の所有権の移転登記が正しく行われないケースが多発しています。所有者不明の土地が急激に増えており、森林の適切な管理を行う上で、様々な支障が生じています。
後継者問題に悩む林業の現状
林業は、後継者不在などの事業者が多く後継者問題に悩んでいるため、親族への事業承継よりも親族外やM&Aによる事業承継が多い傾向にあります。
親族外やM&Aによる事業承継は、同業者や取引先などに事業や従業員を任せて自分は引退するというものです。長年かけて行ってきた事業や尽力してくれた従業員を引継ぎできるので、林業の事業承継の在り方として一般化しつつあります。
また、林業の親族外やM&Aによる事業承継は有償譲渡になることが一般的なので、一定の売却益を獲得することができます。
従来は山の地価は低く評価されることが多かったですが、近年は遊休土地の活用に注目が集まっていることもあり事業承継の際も高い評価を期待することもできます。
後継者問題に悩む林業の業界動向
日本の産業の中でも重要な立ち位置にある林業ですが、業界動向はあまり芳しくありません。特に影響の大きい動向は以下の2点です。
【後継者問題に悩む林業の業界動向】
- 昭和20年以降成長した林業は、衰退
- 後継者不足・従業員の高齢化が深刻化
1.昭和20年以降成長した林業は、衰退
林業は、昭和20年以降の戦後復興のために木材需要が急増したことで、急激に成長しています。木材はあらゆる産業で活用するため、木材不足による材料の高騰などが続き、林業の市場は大きく成長することになります。
しかし、昭和30年代の木材不足解決を目的とした木材輸入の自由化の影響で林業は大きく衰退することになります。木材輸入の自由化は段階的に始まり、昭和39年に全面自由化になり、海外製の木材を入手しやすい時代が訪れました。
市場に安価の海外製の木材が出回ると、国産木材は販売価格を引き下げるしかありません。植林・保育作業や伐採費用を回収することができずに業績が下がる事業者が急増し、業界全体も大きく低迷することになります。
これらの影響は現在も残っています。見切りをつけた若い事業者が林業から離れてしまい、業界全体の高齢化が急進し、山村問題や限界集落などと呼ばれてしまうほど深刻化しています。
2.後継者不足・従業員の高齢化が深刻化
林業は、後継者・従業員の高齢化により林業人口が急激に減少していることも問題です。事業承継による後継者候補の若者が次々に村を出て行っているため、他業種よりも後継者不足は深刻です。
事業承継できない林業は、経営者の高齢化が進むにつれて経営は難しくなります。歳を重ねると共に求心力は落ちていくので、いつまでも同じ経営者が引っ張るということはできません。
事業承継しないまま林業を廃業すると、培ったノウハウや経営資源だけでなく、従業員の雇用も失われてしまいます。ますます林業人口が減少してしまうので、後継者・従業員の高齢化は業界全体が抱えている問題といえます。
後継者問題に悩む林業の将来性
後継者問題を中心として深刻な状態にある林業ですが、既存の事業性に囚われないアイディアによって将来性を見出している事業者も増えてきています。
自宅の建築に使用する木材を、自分自身で伐採して生産しようというサービスです。日常生活で触れることがほとんどない林業に、家族で触れてもらうことで、林業に対する関心を深めてもらうことを目的としています。
また、建築CADなどのデータをもとに必要な木材のみを伐採・生産するというサービスもあります。不要に木を切り倒すこともないので、森林保全の面からも素晴らしいアイディアとされています。
このように新たな林業の在り方を模索する動きも活性化しています。所有者不明の土地問題などに関しては、森林経営管理法の特例措置などにより対応を強化する動きもみられており、林業の将来性に注目する企業・事業者も少なくありません。
林業の事業承継相場
林業を親族外やM&Aによる事業承継する場合、有償譲渡になることが一般的です。ただし、林業においては一定の相場が存在しないため、一概に明確な金額を提示することはできません。
そのため、林業の事業承継の相場は、企業価値評価を用いて算出します。企業や事業価値を算出する評価方法のことで、M&Aや投資などのビジネスシーンで活用されています。
林業で利用されることが多い企業価値評価の方法は、「時価純資産法+営業権(のれん)」です。時価評価した純資産額(資産-負債)に、技術・ノウハウなどの無形資産を営業権に計上して企業価値を評価します。
純粋な資産の他に将来的な収益価値を考慮できる評価方法なので、適正な評価を行いやすいメリットがあります。林業の適正な価値が評価できたら、その値を土台にして価格交渉を行い、最終的な取引価格が決定します。
林業の事業承継事例
林業では、いくつもの事業承継事例が見受けられます。この章では、規模の大きなものや話題性のある事例をピックアップして紹介します。
【林業の事業承継事例】
- ユニバーサル園芸社による子会社への事業承継
- 日本アジアグループによる会社分割
- ベルグアースによる花苗育苗事業の譲り受け
1.ユニバーサル園芸社による子会社への事業承継
ユニバーサル園芸社
2020年7月、ユニバーサル園芸者は100%子会社の株式会社小林ナーセリーを新設し、林業の一部事業を事業承継することを公表しました。
ユニバーサル園芸社は、レンタルグリーン事業やレンタルフラワー事業を中核事業とする会社です。オフィス用の観葉植物などを主力として、業績を向上させています。
今回の事業承継の目的は、園芸関連商品の事業の拡大・成長のためです。新設会社は既存の建物・温室等を活用する形で新たな体制で事業を開始するとしています。
2.日本アジアグループによる会社分割
日本アジアグループ
2019年4月、日本アジアグループは森林活性化事業に関する権利義務をJAGフォレストに会社分割により承継しました。
森林活性化事業は、地理空間情報技術の活用による国産木材の供給体制の安定化や、林業・木材関連産業の成長産業化を推進させることを目的とした事業です。
日本アジアグループで進められていた事業でしたが、今回の会社分割によりJAGフォレストに経営資源を集約させることで、業容拡大を目指すとしています。
3.ベルグアースによる花苗育苗事業の譲り受け
ベルグアース
2019年5月、ベルグアースは長野セルトップからの花苗育苗事業の譲り受けを決定したことを公表しました。譲受価格は約6000万円です。
長野セルトップは、トルコギキョウを中心とした花苗育苗事業を中核とする会社です。関連生産設備と高い技術・ノウハウを保有しており、順調に事業規模を拡大させています。
今後は、ベルグアースが培ってきた野菜苗生産技術を活用することで、花苗生産技術及び生産性のさらなる向上により更なる事業の拡大を目指すとしています。
林業が後継者問題を解決するポイント
林業で深刻化している後継者問題を解決するためには、いくつかのポイントを押さえておくことが大切です。特に重要なポイントは以下の5点です。
【林業が後継者問題を解決するポイント】
- 積極的な事業承継
- 林業の重要性をアピール
- 人材となる従業員を有している
- 土地を所有している
- 専門家に相談する
1.積極的な事業承継
林業の後継者問題に対する有効な対抗策は、事業承継の準備に積極的に取り組むことです。早期から後継者育成に着手しておけば、後継者不足になる確率が下がるので、後継者対策として有効です。
身近に有望な人材がいない場合は、M&Aによる事業承継も有効です。広範囲から後継者候補を探せるので、後継者として優秀な人材を見つけやすいメリットがあります。
2.林業の重要性をアピール
林業の重要性をアピールすることで、林業全体の人口を回復させる方法もあります。若い世代が林業に目を向けてくれれば、業界全体の高齢化を抑えられるので、後継者問題を解決することにも繋がります。
近年は、異業種からの林業への参入事例も見受けられます。新たな事業を一から始めると大変なコストがかかるため、既存の林業事業を買収することで、短期間で事業の多角化を図ろうとする動きです。
3.人材となる従業員を有している
林業の事業承継先に注目してもらうためには、従業員を多く有していることがポイントです。林業は、経験やノウハウを培っている従業員がいなければ事業を存続させることが難しいので、買い手からしても従業員の存在は重要なポイントになります。
従業員名簿を作成しておくと、各従業員の能力や規模が分かりやすくなるので、買い手側に対して効果的にアピールすることができます。
4.土地を所有している
林業の事業承継は、所有している土地も重要です。所有土地が多ければ多いほど、事業領域が広くビジネスチャンスが高まることを意味しているためです。
特に、森林の所有者不明の土地問題は深刻化しているので、所有権を明示できる土地は価値が高いです。事業承継先より高い金額の提示を受ける可能性も高くなります。
5.専門家に相談する
林業の事業承継は、事業承継や相続に関する知識が必要になるため、M&A・事業承継の専門家のサポートを受けるのがベストです。
林業の事業承継で特におすすめの相談先は、M&A仲介会社です。M&Aと事業承継の仲介サポートに特化した専門家なので、事業承継の一連の流れを確立しており、手厚いサポートを受けることができます。
後継者問題に悩む林業におすすめの相談先
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無料相談をお受けしていますので、林業の事業承継にお悩みの際は、お気軽にM&A総合研究所までご連絡ください。経験豊富なスタッフが親身になって対応させていただきます。
まとめ
本記事では、林業の事業承継問題についてみてきました。経営者や従業員の高齢化が激しく、事業承継が進んでいない問題があり、業界全体が深刻な状況に陥りつつあります。
林業の廃業を避けるためには、早期から後継者問題や事業承継に目を向けておくことが大切です。その際は必要に応じて専門家に相談しておくことで、様々な選択肢が見えやすくなります。
【林業まとめ】
- 林業とは経済的利用を目的に森林を伐採して木材を生産する産業のこと
- 林業は所有者不明の土地問題が深刻化
【後継者問題に悩む林業の業界動向】
- 昭和20年以降成長した林業は、衰退
- 後継者不足・従業員の高齢化が深刻化
【林業が後継者問題を解決するポイント】
- 積極的な事業承継
- 林業の重要性をアピール
- 人材となる従業員を有している
- 土地を所有している
- 専門家に相談する
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。