2021年2月23日更新事業承継

逆さ合併とは?種類や特徴、注意点について解説!

逆さ合併とは、事業規模が小さな企業が存続会社となる合併のことで、吸収合併に該当します。通常とは会計処理が異なるため、逆取得に該当するかどうかに注意してください。逆さ合併を学べば、合併を体系的に把握が可能です。今回は、逆さ合併の種類・特徴・注意点などを紹介します。

目次
  1. 逆さ合併とは
  2. 逆さ合併が行われる背景
  3. 逆さ合併のメリット
  4. 逆さ合併の仕訳
  5. 逆さ合併と登記
  6. 逆さ合併と自己株式
  7. 逆さ合併の事例5選
  8. 逆さ合併の注意点
  9. 逆さ合併のまとめ
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逆さ合併とは

逆さ合併とは

合併は、一般的に事業規模の大きな会社が事業規模の小さい会社を合併します。これに対して、逆さ合併とは、事業規模が小さい会社を存続会社にする合併方法です。逆さ合併では、合併差損の回避や繰越欠損金の控除などのメリットを期待できます。

本記事では逆さ合併について幅広く紹介しますが、まずは合併の仕組みから整理します。

合併とは何か?

そもそも合併とは、2つ以上の会社を1つに統合する方法のことです。例えば、A社・B社の2社があり、B社がA社を合併することで最終的にB社のみが存続すると想定します。これが合併の基本的な仕組みです。

合併は、吸収合併と新設合併の2種類に分けられます。吸収合併と新設合併の各特徴は以下のとおりです。

吸収合併の特徴

吸収合併は、一方の会社が他方の会社を吸収する合併のことです。合併で消滅する会社の権利義務のすべては、合併後の存続会社に引き継がれます。例えば、A社がB社を吸収する場合は、B社の権利義務のすべてがA社に承継されて最終的にB社は消滅してA社のみが残る仕組みです。

このときに、雇用関係も存続会社に引き継がれるため、消滅会社の従業員は存続会社のもとで勤務できます。つまり、合併による会社の消滅は、従業員のリストラを意味しません。ただし、吸収合併後は、企業文化の融合によって従業員が不安を抱きやすくなります。

そのため、個性の強い企業同士が合併する場合は、それぞれの従業員がともに仕事しやすい環境を整えることが大切です。このように従業員に与える影響は少なくありませんが、その一方で存続会社に負債や不要な資源なども引き継いでもらえる点は見過ごせないメリットだといえます。

新設合併の特徴

新設合併とは、2つ以上の会社の合併により、新たな設立会社にすべての権利義務を承継させる方法です。合併によって当事会社は消滅し、設立会社のみが存続します。消滅会社の雇用契約についても、新たな設立会社が承継する仕組みです。

新設合併のメリットは、会社の規模が広がる点です。人員の増加により、新事業の立ち上げも可能となります。また、吸収合併とは異なり支配関係が生じないため、被合併会社の従業員・経営者のモチベーションに影響を及ぼしにくい点も見過ごせないメリットです。

ただし、新設合併では新たな会社を立ち上げることから、被合併会社の資格・免許・許認可などが消滅してしまうデメリットがあるため注意しましょう。

逆さ合併の特徴

逆さ合併は、事業規模の小さな会社を存続会社にする吸収合併です。つまり、事業規模の大きな会社が消滅し、事業規模の小さな会社が存続します。そのため、新設合併のように新しく会社を設立するわけではありません。なお、事業規模の大小は、あくまでも既存会社の間で判断されます。

合併の手続き

吸収合併を行うには、当事会社間における合併契約の締結と取締役会における合併承認決議のプロセス遂行が必要です。具体的にいうと、まずは取締役会で決議された後に合併契約を結び、株主総会で承認を求めるという順序が一般的とされています。

その後は、合併契約書を含む事前開示書類を登記にもとづく本店に配備し、債権者に対する催告や公告を実施します。このとき、債権者が異議を申述できる期間は、1カ月以上に定めなければなりません。また、被合併会社が株券発行会社であれば、株券提出の通知も必要です。

そして、株主を株主総会に招集します。この通知は総会の2週間前までに実施しなければなりません。異議申述期間を過ぎて株主総会で合併が認められると、契約された内容に効力が生じます。これに伴い、2週間以内に登記申請を実施しなければなりません。

【関連】合併の手続きについて解説します

逆さ合併が行われる背景

逆さ合併が行われる背景

逆さ合併が実施される背景には、「合併差損の回避・繰越欠損金の控除」「上場企業への昇格」などが挙げられます。前者の実現を目指して逆さ合併が検討される場合、事業規模の小さい会社の方が高い知名度を持っているケースが多いです。

また、後者の目的は、主として「事業規模の小さな会社が上場企業」「事業規模の大きな会社が非上場企業」のケースに見られます。

【関連】繰越欠損金とは?税効果や期限、控除限度額をわかりやすく解説

逆さ合併のメリット

逆さ合併のメリット

逆さ合併のメリットの一つは、合併差損を回避できる点です。合併差損とは、消滅会社の債務額や資産額などの要因によって存続会社が被る損失を意味します。そのため、これは費用面が足かせとなって株式上場ができない場合に生きるメリットです。

また、繰越欠損金の控除を活用できる点も魅力的です。繰越欠損金とは、課税所得がマイナスになり欠損金が生じた際に、将来に繰り越せる額を意味します。繰越欠損金の控除によって、税額を減少させることが可能です。

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逆さ合併の仕訳

逆さ合併の仕訳

逆さ合併と類似する言葉に、逆取得があります。逆さ合併の仕訳では、逆取得の理解が必要不可欠です。それに加えて、合併対価と取得企業の意味も理解しておかなければなりません。そこで本章では、合併対価と取得企業の意味から順番に解説します。

合併対価とは?

もともと合併では、権利義務をすべて承継する代わりに、消滅会社の株主に対価を交付しなければなりません。合併対価の種類は、存続会社の株式・新株予約権・社債などです。もしも合併対価を存続会社の株式とする場合、消滅会社の株主は合併後に存続会社の株主になります。

取得企業とは?

取得企業とは、企業あるいは企業の事業に対する支配権を得る企業のことであり、企業結合会計で使われる用語の一つとして知られています。吸収合併を例に挙げると、対価として株式を交付する企業が取得企業です。つまり、存続会社が取得企業に該当します。

逆取得の仕組み

逆取得は、存続会社が消滅会社の株主に対価の株式を交付した結果として、消滅会社の株主が存続会社の支配権を獲得した状態のことです。このとき、消滅会社の株主が実質的な支配権を得るため、消滅会社が取得企業に該当します。

通常は株式を交付する存続会社が取得企業に該当しますが、逆取得の状態では株式を交付した会社が取得企業に該当しない点が特徴的です。なお、逆取得は企業結合会計基準における用語ですが、逆さ合併と呼ばれるケースもあります。なぜなら、逆さ合併を通じて逆取得が行われるケースが多いためです。

例えば、事業規模が大きい消滅会社の株主が、存続会社の実質的な支配権を維持するために、逆さ合併によって存続会社の株式を大量に取得するケースなどが該当します。

逆取得の会計処理

逆取得に該当する場合は会計処理が異なるため、逆さ合併の会計・仕訳についても注意が必要です。取得企業(消滅会社)側では、合併によって消滅して合併前日を最終日として決算するため、通常のケースと変わりません。

その一方で、被取得企業(存続会社)側では、取得企業の資産・負債を簿価で受け入れるために時価が用いられない点に注意しましょう。

【関連】逆取得とは?事例やM&Aでの活用をわかりやすく解説

逆さ合併と登記

逆さ合併と登記

逆さ合併は吸収合併であるため、本章では吸収合併の登記について整理します。吸収合併では、消滅会社と存続会社で登記手続きが異なるため注意が必要です。具体的にいうと、消滅会社は合併で消滅するため「解散の登記」を行うのに対して、存続会社は消滅会社を合併したことを示す「変更の登記」を行います。

また、登記の申請人については特に注意が必要です。存続会社では代表者が変更登記を申請するため、申請人は通常の登記申請と変わりません。その一方で、消滅会社では消滅会社の代表者ではなく、存続会社の代表者が消滅会社を代表して解散登記を申請します。

【関連】合併を行う際の登記とは?合併の登記書類、登記手続き、登録免許税を解説します

逆さ合併と自己株式

逆さ合併と自己株式

逆さ合併は吸収合併の仕組みにもとづくため、吸収合併と自己株式の関係についても整理します。自己株式とは、会社が保有する自社株式のことです。合併では消滅会社の株主に合併対価を交付する必要がありますが、ここで自己株式が関係します。

ここからは、2つのケースに分けて逆さ合併と自己株式の関係を説明します。

存続会社が消滅会社の株主である場合

吸収合併において存続会社が消滅会社の株式を所有していると、存続会社の株式を存続会社に交付するケースが想定されます。ところが、これでは存続会社が自己株式を自社に割り当てることになるため、財産が増加しません。そのため、存続会社は存続会社に交付できない仕組みになっています。

消滅会社が自己株式を保有している場合

もともと対価の交付を受けるのは消滅会社の株主ですが、消滅会社は合併によって消滅するため、存続会社は消滅する会社に対価を交付します。そのため、このケースにおける自己株式については、合併対価として交付できないルールが設けられているのです。

【関連】自己株式とは?メリット・デメリット、制限やM&Aでの活用をわかりやすく解説

逆さ合併の事例5選

逆さ合併の事例5選

これまで基礎知識を中心に紹介しましたが、「実際に事例も把握しておきたい」と考える経営者の方も多いです。そこで本章では、逆さ合併を実際に行った企業の事例として以下の5つを取り上げます。

  1. フジスタッフ・アイライン・ランスタッドによる逆さ合併
  2. 大阪証券取引所と東京証券取引所グループによる逆さ合併
  3. 新光証券と旧みずほ証券による逆さ合併
  4. 日本板硝子とピルキントンによる逆さ合併
  5. わかしお銀行と三井住友銀行による逆さ合併

上記の事例からポイントをつかんで、合併検討時の参考としましょう。

①フジスタッフ・アイライン・ランスタッドによる逆さ合併

ランスタッド

ランスタッド

出典:https://www.randstad.co.jp/

2011年7月、フジスタッフは、アイラインとランスタッド日本法人を吸収合併しました。存続会社をフジスタッフとする吸収合併でしたが、ランスタッド株式会社に改称しています。存続会社であるフジスタッフは、東京都と栃木県に本社を置いていた人材派遣・業務請負業者です。

消滅会社であるアイラインは人材派遣・業務請負業者で、フジスタッフホールディングスの完全子会社でした。また、ランスタッド日本法人は、世界最大級の総合人材サービス会社であり世界43カ国で事業を展開する「ランスタッド・ホールディング・エヌ・ヴィー」の日本法人です。

この逆さ合併の目的は、顧客に提供するサービス領域の拡大および幅広いニーズへの対応にありました。加えて、それぞれのブランドで人材サービスを展開する3社の経営統合により、グループ従業員の活動をランスタッドブランドの価値向上に結集すると発表しています。

②大阪証券取引所と東京証券取引所グループによる逆さ合併

日本取引所グループ

日本取引所グループ

出典:https://www.jpx.co.jp/

2011年1月、大阪証券取引所は、東京証券取引所グループを吸収合併(逆さ合併)しました。これに伴い、東京証券取引所と東京証券取引所自主規制法人の持株会社「東京証券取引所グループ」は、吸収合併されて解散しています。その後、大阪証券取引所は日本取引所グループに商号変更しました。

存続会社である大阪証券取引所は、市場デリバティブ取引を取り扱う金融商品取引所であり、日本で初かつ唯一の総合取引所です。この逆さ合併の目的は、国際競争力の向上およびシステム費用の効率化であると考えられています。

③新光証券と旧みずほ証券による逆さ合併

みずほ証券

みずほ証券

出典:https://www.mizuho-sc.com/index.html

2009年5月、新光証券は旧みずほ証券を吸収合併(逆さ合併)して、みずほ証券に改称しています。存続会社である新光証券は、みずほフィナンシャルグループ系列のフルライン型の証券会社であり、2000年4月に新日本証券と和光証券が対等合併したことで発足しました。

消滅会社である旧みずほ証券は、みずほFGでホールセール部門を手掛けていた証券会社です。この逆さ合併の目的は、上場の維持にありました。

④日本板硝子とピルキントンによる逆さ合併

日本板硝子

日本板硝子

出典:https://www.nsg.co.jp/ja-jp

2006年6月、日本板硝子は、板ガラス世界大手の英ピルキントンを吸収合併(逆さ合併)しました。合併に際して、日本板硝子が投じた資金は約6,000億円と報じられています。存続会社である日本板硝子は、住友グループに属するガラス・土石製品を製造・販売する企業です。

この逆さ合併の目的は、海外拠点の増加および事業の拡大にありました。合併後には売上を約2,700億円から8,000億円以上増加させたため逆さ合併の成功事例といえますが、その後は巨額の財務負担・経営の国際融合における苦闘・不安定な経済環境などの影響で、赤字基調に悩まされています。

⑤わかしお銀行と三井住友銀行による逆さ合併

三井住友銀行

三井住友銀行

出典:https://www.smbc.co.jp/

2003年3月、わかしお銀行は、親会社の三井住友銀行と吸収合併(逆さ合併)しています。わかしお銀行は、合併と同時に商号変更し、三井住友銀行となりました。存続会社であるわかしお銀行は、1996年に経営破綻した太平洋銀行の支援を手掛けていた「さくら銀行」が受け皿会社として設立した銀行です。

三井住友銀行は都市銀行であり、3大メガバンクの一角を占める都市銀行です。消滅会社である三井住友銀行と現存する同名の法人は別の法人格ですが、商号・営業上は連続しています。この逆さ合併の目的は、三井住友銀行における有価証券の含み損の排除による経営の改善および健全化にありました。

【関連】M&A成功事例とは?大手・中小企業、スタートアップやベンチャー企業のM&A成功事例を解説

逆さ合併の注意点

逆さ合併の注意点

逆さ合併は合併差損の回避や繰越欠損金の控除などを目的に行われますが、仕組みは吸収合併と同様であるため、株主総会の特別決議などの手続きを経る必要があります。また、登記手続きや自己株式の仕組みも吸収合併と同様であるため、関連する手続きを事前に整理しておかなければなりません。

また、消滅会社と存続会社において手続きが大きく異なる点にも注意が必要です。特に会計処理の面では、逆取得に該当するかどうか念入りに確認しましょう。

【関連】M&Aの注意点(売り手編)

逆さ合併のまとめ

逆さ合併のまとめ

逆さ合併は吸収合併に該当するため、まずは吸収合併の仕組み・新設合併との違いなどを把握する必要があります。そのうえで、「逆さ合併は、事業規模が小さな会社を存続会社とする合併である」点を押さえておきましょう。

なお、吸収合併の一つと考えると、自己株式との関係・登記手続き・注意点などを把握しやすくなります。その一方で、逆さ合併では、会計処理を誤らないよう、逆取得に該当するかどうか念入りな注意が必要です。本記事の要点をまとめると、下記になります。

・逆さ合併が行われる背景
→「合併差損の回避・繰越欠損金の控除」「上場企業への昇格」など

・逆さ合併のメリット
→合併差損を回避できる、繰越欠損金の控除を活用できる

・逆さ合併の仕訳
→逆取得の理解が必要不可欠

・逆さ合併と登記
→消滅会社は合併で消滅するため「解散の登記」を行う、存続会社は消滅会社を合併したことを示す「変更の登記」を行う

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