2019年12月19日更新会社・事業を売る

逆取得とは?事例やM&Aでの活用をわかりやすく解説

逆取得とは、対価を交付した企業側が「取得企業」にならない企業結合(M&A)を指します。逆取得は大企業のM&Aの際に活用でき、繰越欠損金の控除や上場コストや期間を削減できるメリットがあります。大企業が双方利害を調整しつつ逆取得によるM&Aが実行されます。

目次
  1. 逆取得とは?逆取得の意味
  2. 逆取得による会社分割の会計処理
  3. 逆取得と逆さ合併
  4. 逆取得の事例
  5. M&Aにおける逆取得の活用
  6. まとめ
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逆取得とは?逆取得の意味

合併や会社分割は、グループ再編を主な目的として実施するM&A手法です。「組織再編」とも呼ばれるこれらの手法は、大企業のみならず中小企業でも活用され始めています。

通常よりも税務上のメリットをより多く享受する目的で、「逆取得」という手法が用いられるケースがあります。では、逆取得とはどのような手法なのでしょうか。

⑴企業結合と逆取得

逆取得に関して理解するために、まずは「企業結合」についておさらいします。企業結合とは、合併や株式交換、会社分割などにより、複数の企業が一つに統合されることを指します。

通常の企業結合では、他社を自社内に取り込んで、相手に対価を支払う企業側が「取得企業」となります。取得企業は「ある企業もしくは企業内の事業を取得する企業」を意味し、基本的にはM&Aの買い手側と一致します。

会計や税務を考える際は、どちら側が「取得企業」になるかを考えなくてはいけません。株式譲渡によるM&Aでは、対価を交付する側を「取得企業」と見なすケースが一般的です。

合併や株式交換などの手法では、必ずしも対価を交付する側(買い手)側が取得企業になるとは限りません。逆取得も企業結合には変わりありませんが、対価を交付した側が取得企業とはならないのが特徴です。

⑵逆取得の意味

逆取得とは、対価を交付した企業側が「取得企業」にならない企業結合(M&A)を指します。つまり、対価を受け取った側が取得企業となり、対価を交付した側が被取得企業になります

吸収合併であれば、対価を受け取る側(消滅会社)が取得企業、対価を交付する側(存続会社)が被取得企業となる場合を逆取得といい、表面的なM&A当事者間の関係と、法律上の取得企業・被取得企業の関係が一致するとは限りません。

逆取得に該当するM&Aでは、個別財務諸表と連結財務諸表の各会計処理に関して通常とは異なるため、この点についても十分な注意が必要です。

逆取得は「財務諸表等規則第8条」で規定されている

逆取得に関しては、「財務諸表等規則第8条」内で規定されており、「吸収合併」と「吸収分割」「株式交換」について、逆取得の定義が定められています。詳しくは後述しますが、逆取得は手続きが煩雑なうえに、少々ややこしいものです。

そのため、専門家のサポートが不可欠です。もし逆取得を伴うM&Aを行う場合は、M&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所は会計士が在籍していますので、M&Aや財務の知識が豊富なアドバイザーがフルサポートをお約束します。

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⑶逆取得による影響

逆取得を別の視点から見ると、存続会社から消滅会社の株主に対価(株式)を交付した結果、存続会社における消滅会社株主の議決権持株比率が過半数に達し、逆取得では消滅会社側の株主が存続会社の支配権を獲得します。

これにより存続会社の株主は支配権を失い、法的には消滅する会社の株主(経営陣)が、実質的に存続会社の支配権を掌握します。消滅会社の株主が支配権を取得する点が通常のM&Aとは「逆」であるために、「逆取得」と呼ばれています

何が「逆」なのかを明確化すれば、逆取得の仕組みを理解しやすいでしょう。非常にややこしい逆取得が行われる理由は、通常の企業結合(M&A)では得られないメリットがあるからです。逆取得によるM&Aのメリット・目的については、後ほど詳しく解説します。

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逆取得による会社分割の会計処理

この項では、逆取得による会社分割の会計処理について、わかりやすく要点を解説します。通常のM&Aとは関係が逆になることで、逆取得による会社分割に際しては、会計処理も通常とは異なります

承継会社(事業を引き継ぐ側)と分割会社(事業を切り離す側)で会計処理が異なるだけでなく、個別財務諸表と連結財務諸表でも異なります。この項では、パターンごとに分けて解説します。

⑴承継会社における個別財務諸表の会計処理

分割会社から引き継ぐ事業に関する資産と負債に関しては、適正な帳簿価額で引き継ぎ、引き継ぐ資産と負債の差額から、移転事業に関する評価・換算差額等および新株予約権を差し引いた額を、株主資本の払込として会計処理します。

評価・換算差額等および新株予約権は、分割会社の適正な帳簿価額を承継します。なお、個別財務諸表の場合、資産や負債を時価で評価することは会社法で認められておりませんので、帳簿価格で引き継ぐことになります。

⑵分割会社における個別財務諸表の会計処理

分割会社が受け取った承継会社株式については、移転する事業に関係する株主資本相当額を基に取得原価を算定します。つまり分割会社では、会社分割による損益を考慮しません。

⑶分割会社における連結財務諸表の会計処理

会社分割により承継会社の支配権を獲得するため、分割会社では新規連結が発生します。逆取得による会社分割では、分割会社側で連結財務諸表の会計処理が必要となるのでご注意ください。

会社分割の対価は、移転する事業の時価となり、「承継会社に関する分割会社の持分増加額」と「移転事業に関する分割会社の持分減少額」の差額は、親会社の持分変動差額と「のれん」に区別したうえで会計処理します。

のれんとは、簿価純資産と買収価格の差額分を意味します。上記の会計処理に加えて、持分比率の低下にも留意しなくてはいけません。持分比率低下分に関して、「移転事業門に係る株主資本相当額」と「移転事業の時価」の差額を資本準備金として会計処理します。

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逆取得と逆さ合併

逆取得と似た言葉に「逆さ合併」という言葉があります。逆さ合併の意味は、事業規模が小さい企業を存続会社とする合併ということです。合併によるM&Aを実施する際、規模の大きい企業が存続会社となり、規模の小さい企業を吸収するケースが一般的です。

存続する規模の大きい企業は、規模の小さい企業(消滅会社)に対して株式を対価として交付します。この場合、存続会社が当然のように取得企業となり、消滅した会社が被取得企業になります。

一方、逆さ合併では、規模の大きな会社側が消滅し、規模の小さい企業が存続します。消滅する側の規模の大きい会社が対価を交付した場合、基本的には逆取得になります。

「逆取得=逆さ取得」で良い

逆取得と逆さ取得とでは、意味合いが類似しています。「逆取得=逆さ取得」と見なす場合が大半であり、基本的には「逆取得=逆さ合併」という認識で間違いありません。

子会社が存続会社として親会社と合併する場合、逆取得ではなく「共通支配下の取引」になるケースも存在します。税務や会計処理が異なるので、逆さ合併を実施する際は逆取得で正しいのか、念のため確認しましょう。

税務や会計について専門的知識がなければ、逆さ合併や逆取得に該当するかを判断することはリスクがあります。逆さ合併や逆取得を実施する際は、あらかじめ税理士や公認会計士などの専門家に相談しましょう。

また、このような場合もM&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所は会計士が在籍していますので、M&Aや財務の知識が豊富なアドバイザーがサポートをお約束します。さらに、M&A総合研究所は完全成功報酬制となっておりますので、M&Aをご検討される際には気軽にご相談ください。

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会社の合併

逆取得の事例

逆取得について理解を深めるうえで、実際の事例を知ることは効果的です。ここでは逆取得の事例として、東京証券取引所と大阪証券取引所による吸収合併(逆さ合併)をご紹介します。

2010年11月、東京証券取引所と大阪証券取引所が対等な立場で経営統合することを発表し話題となり、TOB(公開買い付け)による子会社化や会社分割などを経て、最終的には吸収合併により経営統合されました。

この際の流れとしてはまず、東京証券取引所が大阪証券取引所に対してTOBを行い子会社化し、双方が会社分割により諸条件を整えたうえで、親会社である東京証券取引所グループを子会社である大阪証券取引所が逆取得(逆さ合併)を行いました。

この逆取得により、東京証券取引所グループは「株式会社日本取引所グループ」に商号を変更しました。

大阪証券取引所による逆取得となった理由

一般的な吸収合併のセオリーに基づけば、東京証券取引所と大阪証券取引所の関係からすると、東京証券取引所を存続会社とします。しかし、実際には大阪証券取引所が逆取得する手法を取っています。

では、なぜこの事例では、子会社である大阪証券取引所による逆取得が用いられたのでしょうか?正確にその理由が発表されているわけではありませんが、「東証を存続させた場合に生じる上場費用や手続き等を削減すること」が目的にあったと言われています。

加えて、この経営統合には「国際競争力の強化」という長期目標も背景にありました。この双方目的を達成するためには、上場企業である「大阪証券取引所」を存続会社としつつ、東京証券取引所が実質的な経営権を掌握する必要がありました。

さまざまな目的を達成する目的で、わざわざ逆取得による吸収合併を実施したということが通説です。逆取得により、国際競争力の強化を目指しつつ、東証の立場を維持できる形に落ち着きました。

この事例からわかる通り、大企業が双方利害を調整しつつM&Aを実行する目的で、逆取得によるM&Aは実行されます。この事例以外には、三井住友銀行とわかしお銀行による合併も、逆取得に該当する事例として有名であり、大企業同士のM&Aにおいて、逆取得は非常に有用なスキームです。

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M&Aにおける逆取得の活用

最後に、M&Aにおける逆取得の活用について解説します。前述した事例の通り、逆取得は大企業のM&Aで効果的に利用できます。逆取得によるM&Aにはその他にも下記2つのメリットがあります

⑴繰越欠損金の控除

逆取得によるM&A最大のメリットは、繰越欠損金の控除を利用できる点です。繰越欠損金とは前期以前から繰り越した欠損金(税務上の赤字)であり、黒字所得との相殺により節税できます。例えば、繰越欠損金が100万円存在すれば、今期が黒字であっても100万円までは所得を減額できるわけです。

逆取得(逆さ合併)の結果、赤字企業が取得企業となれば、繰越欠損金の控除を活用して大きな節税効果を実現可能です。会計上大きなメリットがある理由から、逆取得によるM&Aをあえて選択するケースもあります。

⑵上場コストや期間の削減

逆取得によるM&Aには、東京証券取引所と大阪証券取引所の事例にありましたように、上場コストや期間を削減できるメリットもあります。株式市場に上場すると、資金調達力の強化やブランド力・認知度向上などのメリットが得られます。

業績が良い企業は基本的に上場を視野に入れるものの、上場のためには多大な時間やコストを要します。時間やコストを理由に、業績が良いにもかかわらず上場しない(できない)企業は少なくありません。そのような規模の大きい企業にとって、逆取得によるM&Aはとても有用な手法です。

上場している小規模な会社と逆取得によるM&Aを実行すれば、実質的に上場を果たせます。自力で目指すよりもはるかに短期間かつ低コストで上場できる点で、逆取得によるM&Aは非常に効果的なスキームです。

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まとめ

逆取得は大企業のM&Aの際に活用でき、繰越欠損金の控除や上場コストや期間を削減できるメリットがあります。大企業が双方利害を調整しつつM&Aを実行する目的で、逆取得によるM&Aは実行されるケースが多く事例についても理解を深めることが重要です。

しかし、表面的に見たM&A当事者間の関係と、法律上の取得企業・被取得企業の関係が一致するとは限らないので注意が必要です。専門家を活用し、慎重に実行しましょう。

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