M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2023年12月5日更新事業承継
EBOとは?各バイアウト事業承継との違いや目的・事例を解説!
M&Aには、合併や株式取得などいろいろな方法がありますが、その1つに「バイアウト」という手法があります。「バイアウト」とは経営が悪化した場合に経営者か従業員が会社を買収することですが、誰が買収するかによってパターンに分けられています。
EBO(エンプロイーバイアウト)とは
事業承継ということについて調べていくと、「EBO」のワードがよく出てきますが、EBO(エンプロイーバイアウト)とはどういう意味なのでしょうか。
そして「バイアウト」という方法にはEBO(エンプロイーバイアウト)以外にも他のバイアウトがあります。
他のバイアウトとは何が違うのか、実際にEBO(エンプロイーバイアウト)はどのような手順に沿って行うのかについて解説します。
EBOの意味は?
EBOとは、エンプロイー・バイアウト(Employee Buyout)の略です。簡単にいうと「従業員(エンプロイー)による企業の買収(バイアウト)」ということです。
従業員が資金を出して事業承継するために自社の株式などを買い取り、その事業の経営権などを取得します。EBO(エンプロイーバイアウト)はとくに中小企業での経営者から従業員への事業承継のために以前から利用されている方法になります。
EBOとMBOとの違い
MBOとは、マネジメント・バイアウト(Management Buyout)の略です。その企業の現在の経営陣が自社の株式を買い取って経営権などを取得します。
EBOとMBOとの違いは、買収の主体がEBOでは従業員で、MBOでは経営陣が株式を買い取るという点があります。
ほかには、EBOの場合は経営陣が新しくなるため、新体制での経営で始まりますが、MBOの場合は、現在の経営陣がそのまま経営権を握るという点があります。
一般的には、成立させるにはEBOのほうが厳しいと言われています。
EBOとLBOとの違い
LBOとは、レバレッジドバイアウト(Leveraged Buyout)の略です。企業を買収するために買収対象の企業の資産やキャッシュフローなどを担保とし、買い手側が金融機関などから資産を調達して買収する方法です。
EBOとLBOとの違いは、EBOは従業員が買収するため自社内ですがLBOは他社など第三者が買収するという点があります。また、EBOは経営の効率化を図ることを目的としていますが、LBOは資本効率の向上を図ることを目的としています。
EBOの手順
EBO(エンプロイーバイアウト)を実際に行うためには次の手順で進めていきます。
- 後継者となる従業員を選ぶ
- 持株の比率を確認する
- 譲渡価格を決める
- 株式譲渡の手続きを行う
後継者となる従業員を選ぶ
経営者としての要素があるかどうか、後継者としての条件を満たしているかが重要になります。ここで問題になるのは年齢です。前経営者と年齢が近いとなるとまたすぐに経営者の交代が発生してしまうからです。
持株の比率を確認する
株主が経営者のみであれば問題ありませんが、複数株主がいる場合には、それぞれがどれくらいの比率で保有しているのかを確認する必要があります。
譲渡価格を決める
算出方法がいろいろとありますので専門家に依頼して株価を算出し、譲渡の交渉をしていきます。
売り手と買い手で価格に差が出て交渉が進まなくなることがありますので株主に客観的な説明をすることが重要です。
株式譲渡の手続きを行う
中小企業の場合、譲渡期限が決められているため注意が必要です。
株主総会などで承認を得られるまでは株式が譲渡されることはありません。
EBOの目的
EBO(エンプロイーバイアウト)の目的には次の2つがあります。「株式の非公開化」と「事業承継」です。ここでは、この2つの目的について解説していきます。
株式の非公開化
1つ目の目的は、「株式の非公開化」です。株式を公開している場合は、TOB(Take-Over Bid:株式公開買付)によって他社から買収を仕掛けられる可能性があるため、TOBを防ぐ目的として株式の非公開化を行う手段として使われています。
非公開化することで、例えば資金調達が市場から出来なくなる可能性がありますが、財務状況などを公開することや決算などを不要にすることができるということもあります。
事業承継
1つ目の目的は、「事業承継」です。昨今においてとくに中小企業の後継者不足はとても大きな問題とされています。
EBOを使って従業員に経営権を引き継ぐことで、事業承継を行うことが可能となります。EBOは従業員が経営権を引き継ぐので、混乱などが起こることは少なくなりますし、今までの企業の経営方針や雰囲気などを刷新することもできます。
EBOのメリット・デメリット
「EBOとMBOとの違い」や「EBOとLBOとの違い」などを解説しましたが、EBO(エンプロイーバイアウト)を使った場合のメリットやデメリットがあります。ここでは、メリット、デメリットについて解説します。
EBOのメリット
EBO(エンプロイーバイアウト)のメリットには、次の3つがあります。順番に解説します。
- 事業承継がスムーズに行える
- 株式の非公開化が可能
- 後継者の選択肢が拡大
事業承継がスムーズに行える
EBOのメリットの1つめは、「事業承継がスムーズに行える」ということです。EBOはその企業に勤めている従業員が株式などを買い取り、事業を引き継ぐため経営方針や社内環境などの雰囲気が一新されるということはほとんどありません。そのため業務の引き継ぎなどもスムーズに行うことが可能です。
例えば、経営権が第三者などに変わった場合は、経営方針なども新しい経営陣に合わせたりすることで環境が大きく変わることがあります。
その結果、反発を受けたり、従業員が離れていってしまう可能性もあり、業務が滞ってしまうなどの問題が発生します。EBOであれば、事業承継がスムーズに行えることで、このような社内の混乱などを回避することができ、営業活動などに問題が起こることを抑えることができます。
株式の非公開化が可能
EBOのメリットの2つめは、「株式の非公開化が可能」ということです。「EBOの目的」でも解説しましたが、TOBによる他社からの買収を防ぐということで使われるケースがあります。
非公開化を実施することで、株主からの要望などが軽減されます。また、経営についての意思疎通や決定がスムーズになることが可能となります。
さらに、上場する場合に必要となる財務状況などの公開、決算などの実施や報告などが不要となるため、人的コストを抑えることができるため、業務の効率化にも貢献することができます。
後継者の選択肢が拡大
EBOのメリットの3つめは、「後継者の選択肢が拡大」ということです。後継者不足とされている現代においても後継者には子供であったり孫であったりと親族内での継承が主流の事業承継とされていますが、この場合、後継者候補というのは限られ、優秀な人物を見つけることはなかなか難しい点があります。
しかし、EBOは親族外の事業承継が可能であるため、後継者候補の選択肢を従業員にまで広げることができます。その結果、適切な優秀な人材を見つけることができ、事業承継もスムーズに行うことができます。
EBOのデメリット
EBO(エンプロイーバイアウト)のデメリットには、次の2つがあります。順番に解説します。
- 多額の資金調達が必要
- 全経営者の個人保証も引き継ぐ必要がある
多額の資金調達が必要
EBOのデメリットの1つめは、「多額の資金調達が必要」ということです。EBOを実施するには株式を買い取るための資金を準備しないといけません。会社の規模が大きければ大きいほど株式を買い取るための金額は大きくなるため、従業員が個人資産で資金を準備することはかなり難しいことです。
資金を準備するために金融機関などの融資を利用することがありますが、融資に対しての審査がとても厳しいため、融資を受けることができないケースもあります。この多額の資金調達という難関をクリアしなければ、EBOが失敗に終わってしまいます。
前経営者の個人保証も引き継ぐ必要がある
EBOのデメリットの2つめは、「前経営者の個人保証も引き継ぐ必要がある」ということです。事業を引き継ぐということは、前経営者の個人保証なども全て引き継がなければなりません。
個人保証というのはその対象者の資金能力や信頼度などを担保とされるため、引き継ぎをするのが困難である可能性があります。
EBO成功のためのポイント
株式の譲渡交渉がうまくいかなかったり、資金調達が間に合わなかったりなどEBOが失敗してしまうパターンはいくつもあります。
失敗に終わらないためには、EBOを行う前にさまざまな対策をしておくことが重要となります。EBOを成功させるために次の4つのポイントを紹介します。
株価を明確にする
EBO成功を実現させるためのポイントの1つめは、「株価を明確にする」ということです。非上場企業の場合は、株価は開示されていないので明確な価格を出すことはとても難しいことです。
株主側からすると、買い取り価格はどれくらいなのか、提示された価格は妥当なものなのかなど開示されていないと不安を抱えた状態になります。このような不安を解消させるためにも、正しい企業価値の算定や明確にすることが必要でとても重要なことになります。
M&Aの専門家に相談する
EBO成功を実現させるためのポイントの2つめは、「M&Aの専門家に相談する」ということです。EBOを実現することを進めていくためには、企業の評価や株価の算出、あらゆる手続き、株主との交渉などいろいろなM&Aに関する専門的知識やコツなどが必要になります。
実際のところ、M&Aの専門家のサポートなどがない状態でEBOを成功させることはとても難しく失敗することが多いです。そのためにもEBOの検討時点でM&Aの専門家に相談することでEBOの成功に繋がります。
株主がM&Aに応じる株価の検討や交渉
EBO成功を実現させるためのポイントの3つめは、「株主がM&Aに応じる株価の検討や交渉」ということです。M&Aの専門家に相談して企業の評価価値を正確に算出してもらっても、実際に株主がその株式価値に納得して株式譲渡に応じてくれなければ、EBOは成功しません。成功するための指標の1つとして、株主が得ることのできる株式取得金額です。
株式取得金額を下回る買い取り金額となった場合は、株主は納得しません。すべての株主から株式を買い取ることが出来れば、EBOは確実に成立しますが簡単にはいきません。なので、まずはM&Aの専門知識がある方に相談し、半数以上の株主から買い取ることができるように株価の検討や交渉をすることがEBOの成功に繋がります。
事業計画をしっかりと立てる
EBO成功を実現させるためのポイントの4つめは、「事業計画をしっかりと立てる」ということです。株主に納得してもらいEBOを成功させるためには、前述の株式取得額がいちばん重要なことではありますが、事業計画なども重要です。
しっかりと事業計画を立てて進めていかなければ、成功することも成功せず、株主も納得はしてくれません。M&Aの専門知識がある方にサポートに入ってもらい、事業計画をしっかりと立てることがポイントとなります。
実際に実施されたEBOの事例
EBOを成功させるにはなかなか難しい方法ではありますが、ここでは実際にEBOを実施された企業のうち3社についてどのようにEBOを成功させたのか事例を紹介します。
ユニゾホールディングス
ユニゾホールディングスでの事例は、上場企業として初めてEBOに成功した企業の事例です。
2020年4月に実行、成立を発表し、6月には上場廃止になりました。資金不足というEBOではいちばん難しい課題に向き合った企業です。米国の投資ファンドから支援を受ける形で資金を用意することができたため、EBOを成立することができました。譲渡金額は約2,056億円です。
EBOを実施した目的は「経営権の外部流出を避けること」でした。過去にHISからTOBを仕掛けられたことがあり、そのときは経営陣の意見が合わなかったため不成立となりましたが、そのためにEBOによって目的を果たすことを目指しました。これがユニゾンホールディングスの事例となります。
シックスアパート
シックスアパートでの事例は、経営陣と従業員で持株会社「シックスアパートホールティングス株式会社」を設立させて、EBOを実施し成功した企業の事例です。親会社であったインフォコムから全株式を買い取り、会社の独立を成功させました。
2016年6月に実行、成功しています。EBOを実施した目的は、経営などのスリム化や迅速な意志疎通を実現させるためです。シックスアパートは米国企業であったので、米国市場への返り咲きやさらなる海外展開を狙っていたことからEBOを活用したのです。事業承継もスムーズに行うことができ、これがシックスアパートの事例となります。
ラクオリア創薬
ラクオリア創薬の事例は元々はファイザー中央研究所という米国のファイザー社の研究所でした。しかし、コスト削減という目的でファイザー中央研究所を閉鎖するということになってしまい、これを阻止するために所長を筆頭に職員が協力して、EBOを実現させて会社の存続を守りましたという事例です。
2008年2月からラクオリア製薬と名前を変えて、事業をスタートさせて、2011年には上場を実現しました。これがラクオリア創薬の事例となります。
EBOのまとめ
EBOを実現させるための秘訣としては、正しい企業価値の評価と公正な取引です。これを実現させるためには、M&Aの専門知識などが必要不可欠であり、M&Aの専門知識を持たない自社だけの人間で実行することは難しく、ほとんど失敗することとなります。
EBOを成功させている企業の事例でも公正な取引は重要となっています。確実に成功させるためにも、M&Aに関する知識を持つ専門家からのサポートを受けることが重要であり、最大のポイントとなります。
M&A・事業承継のご相談なら24時間対応のM&A総合研究所
M&A・事業承継のご相談は成約するまで無料の「譲渡企業様完全成功報酬制」のM&A総合研究所にご相談ください。
M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴をご紹介します。
M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴
- 譲渡企業様完全成功報酬!
- 最短49日、平均6.6ヶ月のスピード成約(2022年9月期実績)
- 上場の信頼感と豊富な実績
- 譲受企業専門部署による強いマッチング力
M&A総合研究所は、M&Aに関する知識・経験が豊富なM&Aアドバイザーによって、相談から成約に至るまで丁寧なサポートを提供しています。
また、独自のAIマッチングシステムおよび企業データベースを保有しており、オンライン上でのマッチングを活用しながら、圧倒的スピード感のあるM&Aを実現しています。
相談も無料ですので、まずはお気軽にご相談ください。
あなたにおすすめの記事
M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
近年はM&Aが経営戦略として注目されており、実施件数も年々増加しています。M&Aの特徴はそれぞれ異なるため、自社の目的にあった手法を選択することが重要です。この記事では、M&am...
買収とは?用語の意味やメリット・デメリット、M&A手法、買収防衛策も解説
買収には、友好的買収と敵対的買収とがあります。また、買収に用いられるM&Aスキーム(手法)は実にさまざまです。本記事では、買収の意味や行われる目的、メリット・デメリット、買収のプロセスや...
現在価値とは?計算方法や割引率、キャッシュフローとの関係をわかりやすく解説
M&Aや投資の意思決定するうえでは、今後得られる利益の現時点での価値を表す指標「現在価値」についての理解が必要です。今の記事では、現在価値とはどのようなものか、計算方法や割引率、キャッシ...
株価算定方法とは?非上場企業の活用場面、必要費用、手続きの流れを解説
株価算定方法は多くの種類があり、それぞれ活用する場面や特徴が異なります。この記事では、マーケットアプローチ、インカムアプローチ、コストアプローチといった株価算定方法の種類、株価算定のプロセス、株...
赤字になったら会社はつぶれる?赤字経営のメリット・デメリット、赤字決算について解説
法人税を節税するために、赤字経営をわざと行う会社も存在します。しかし、会社は赤字だからといって、必ず倒産する訳ではありません。逆に黒字でも倒産するリスクがあります。赤字経営のメリット・デメリット...
関連する記事
会社分割すると従業員の契約はどうなる?労働契約承継法や保護制度を徹底解説!
多くの企業が会社分割を検討しておりますが、トラブルに発展しないように従業員への対応に配慮する必要があります。今回は会社分割を検討している企業に向けて、会社分割における従業員の契約や手続きの流れな...
M&AにおけるITデューデリジェンス(ITDD)を解説!目的や調査項目は?
ITデューデリジェンス(ITDD)はM&Aにおいて欠かせず、明確な目的を踏まえた対応が求められます。今回はM&Aを検討している企業に向けて、ITデューデリジェンス(ITDD)につ...
人事デューデリジェンス(人事DD)とは?目的から調査項目まで徹底解説!
M&Aを実施する際に人事デューデリジェンス(人事DD)は重要です。丁寧に手続きを進めないとM&Aで高い効果は得られません。今回はM&Aを検討している企業に向けて、人事デュ...
二段階買収の手続き方法を徹底チェック!目的やメリット・注意点は?
二段階買収(Two-Tier Takeover Strategy)は、買収側が売却側の少数株主から株式を買い集める際に有益な手法です。当記事では、実施目的や手法、メリットやデメリット、過去事例や...
事業承継の相談先はどこがいい?選び方から注意点まで徹底チェック!
近年は中小企業の経営者の高齢化に伴い、積極的に事業承継を行って生き残りを図る企業が増えています。 事業承継には複雑な手続きが多いため、信頼できる相談先の選択が重要です。そこで本記事では事業...
M&A後の退職金や給与はどうなる?節税方法や注意点まで徹底チェック!
M&Aで退職金を活用すると、節税効果が得られます。当記事では、退職金を利用したM&Aの節税方法やメリット、注意点を交えながら、退職金の扱い方や税務について解説します。従業員や役員...
M&Aにおける人事DDの目的や調査範囲を徹底チェック!費用・注意点は?
人事DD(デューデリジェンス)は、買収側がM&Aの実施後に受ける損失を最小限に抑えるために必要な調査です。当記事では、調査が行われる目的や調査範囲、かかる費用や注意点を踏まえながら、人事...
100日プランとは?PMIの概要・重要性・策定のポイントまで徹底解説!
M&Aを実施する際にはPMIの工程が重要となり、100日プランはPMIの成功に大きな役割を果たします。今回はM&Aを検討している企業に向けて、100日プランの概要・重要性・策定の...
管工事会社の事業承継の動向や事例を徹底解説!メリットや費用相場・注意点は?
管工事会社業界は将来的な需要増加が見込める半面、人材不足や後継者不在といった問題が深刻です。当記事では、過去の事例を取り上げながら、管工事会社(管工事業界)の事業承継について解説します。事業承継...
株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。