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2021年5月1日更新会社・事業を売る
持分法とは?持分法の仕訳と適用範囲をわかりやすく解説
関連会社に対して適用する持分法は、仕訳の処理面で連結法と大きく異なります。持分法の適用範囲、仕訳、持分法と連結法の違い、持分法における未実現利益の処理について解説します。
持分法と連結法
持分法について気になりお調べかと思います。
M&Aを実施すると会社の組織構造が複雑となり、それに伴い会計処理も複雑となりますよね。
グループ会社化が進むと、連結会社や関連会社が増え、それぞれ異なる会計処理が必要となるはずです。
そこで役立つのが持分法と連結法。
しかし、持分法と連結法は、それぞれ似ている様で用いる場面や特徴、会計処理が異なります。
この記事では、持分法の概要と適用範囲、連結法との違いについて分かりやすくお伝えします。
まずは、持分法とはどのようなものかというところから確認しておきましょう。
持分法とは
持分法とは、関連会社の当期純利益のうち投資会社側が保有する持ち株比率に応じた金額を、投資会社側の損益に加減算する会計処理です。
さらに噛み砕いて説明すると、意思決定を支配できる程ではないものの、一定程度の影響を与える事が出来る会社に対して適用する会計処理を指します。ちなみに、持分法を適用する関連会社を、「持分法適用会社」と呼びます。
グループ会社内にて、一定以上の株式保有により相手企業の経営権を掌握できる場合、相手企業は連結子会社という扱いです。そのため、連結子会社に対しては、連結法と呼ばれる会計処理が適用されます。
会計基準上、原則他社の議決権を50%超を保有していれば連結会社の関係となります。
持分法と連結法は、用いる対象が異なるので注意しましょう。
持分法と連結法のような知識はM&Aを行ううえで重要になりますが、経営者個人で学ぶのにはかなりの労力と時間が必要です。ですから、不安な人は専門家の力を借りるようにしましょう。
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持分法の適用範囲
次に、持分法の適用範囲をお伝えします。
「持分法は関連会社に適用される」と聞いても、関連会社の範囲が分からない人も多いでしょう。
まず、持分法の適用範囲を決める際は、原則として連結会社は除外します。
連結会社を除外した中から、影響力基準を用いて持分法の適用範囲を決定します。影響力基準とは、その名の通り相手会社に重大な影響を与える事が可能か否かで、持分法の適用範囲を判断するのです。
影響力基準に基づくと、下記要件のいずれかを満たす会社が持分法の適用範囲となります。
- 議決権のうち20%以上50%未満を保有している
- 議決権の保有割合が15%以上20%未満であるものの、財務や事業の方針決定に対して多大な影響を及ぼす事が可能である
- 自己と「緊密な者」および「同意している者」と合算して議決権のうち20%超を保有する
上記の2と3については、各々さらに条件が設定されています。
- 2及び3の詳細な条件(下記5つの条件のうち、いずれかを満たす)
- 役員または使用人、もしくは財務や事業の方針決定に関して影響を及ぼす事が出来る者が代表取締役などに就任している
- 重要な融資を実施している
- 重要な技術提供を行なっている
- 重要な販売や仕入その他営業もしくは事業上の取引がある
- 財務や事業方針の決定に対して、重大な影響を及ぼす事が出来ると推察できる事実が存在する
20%以上の議決権を保有している場合には、一定以上の影響力を及ぼす事が可能である為、その事実のみで持分法の適用範囲に入ります。
議決権の保有以外に影響力を与え得る事実があれば、保有割合が20%未満でも持分法の適用範囲に入ります。
持分法の適用範囲の判定は複雑ですので、不安であれば専門家に相談することをオススメします。
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持分法の仕訳
次に、持分法を適用した場合の仕訳について解説します。
持分法を適用した時点では仕訳は発生しませんが、関連会社が利益を獲得した際には仕訳が必要です。
持分法適用会社が利益を獲得した場合、投資会社側は「関連会社の当期純利益×持ち株比率」分だけ損益を計上します。
損益を計上すると同時に、その金額分だけ関連会社株式の簿価を増減させる会計処理を行います。
文章だけでは分かりづらいので、以下の具体例を用いて解説します。
- 関連会社A社は当期純利益を1,000獲得した
- 投資会社側はA社株式の10%を保有している
上記例の場合、投資会社側は1,000×10%=100の損益を「持分法による投資損益」として計上します。損益計上と同時に、損益と同額である100だけ関連会社株式の簿価を「投資勘定」として加算するのです。
つまり持分法を用いた場合の仕訳は下記となります。
- (借方)投資勘定 100 / (貸方)持分法による投資損益 100
この持分法の仕訳を基に、損益計算書や貸借対照表を作成するという形になるでしょう。
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持分法と連結法の違い
関連会社には持分法が適用される一方で、連結会社には連結法が適用されます。
この項では、持分法と連結法の最も大きな違いである仕訳を解説します。
連結法では、下記の通り2回仕訳が発生します。
(1)支配権獲得時
持分法とは違い、連結法では支配権を獲得した時点で仕訳が発生します。
借方に連結会社の純資産を計上し、貸方には「投資勘定」と「非支配株主持分」を計上します。投資勘定は連結会社の純資産のうち親会社の持分を指し、非支配株主持分は親会社の持分に帰属しない金額です。
例えば連結会社の純資産(全額資本金とする)が1,000であり、親会社が50%の持ち株比率となるケースを考えます。
この場合の仕訳は下記の通りです。
- (借方)資本金 1,000 / (貸方)投資勘定 500、非支配株主持分 500
以上が支配権獲得時の仕訳となります。
(2)利益発生時
利益発生時の仕訳も、持分法とは異なります。
連結法では、親会社の持分ではない部分(非支配株主持分)を振り替えるのです。こちらも理解を深める為に、具体例を用いて解説しますね。
例えば、連結会社の当期純利益が1,000、親会社の連結会社に対する持ち株比率は60%とします。
連結会社の利益のうち親会社の利益は60%(600)であり、残りの40%(400)は非支配株主持分です。連結法では非支配株主持分(400)を振り替える為に、借方に非支配株主損益、貸方に非支配株主持分をそれぞれ計上します。
つまり連結法における、利益発生時の仕訳は下記になります。
- (借方)非支配株主損益 400 / (貸方)非支配株主持分 400
持分法における未実現利益の処理
最後に、持分法における未実現利益の処理を解説します。
未実現利益とは、連結グループ会社間の内部取引で生じた利益のうち、期末までに実現しない利益です。連結会社と持分法適用会社の間に未実現利益が生じている場合には、個別に会計処理する必要があります。
未実現利益の処理は応用論点である為、要点のみ解説します。
(1)ダウンストリーム(持分法適用会社が買い手側)
持分法適用会社が買い手側となっているケースを、ダウンストリームと呼びます。
原則的には持分に相当する金額のみ消去する決まりですが、非連結子会社に未実現利益が発生している場合には例外的に全額消去します。
(2)アップストリーム(持分法適用会社が売り手側)
アップストリームとは、持分法適用会社が売り手側となるケースです。
基本的には、持分法適用会社に対する連結会社の持分に相当する金額を消去します。買い手側が他の持分法適用会社である場合には、少々注意が必要です。
つまり売り手と買い手双方が、持分法適用会社であるケースです。
この場合には、買い手側と売り手側の持分比率を乗じた持分の相当額を消去します。
以上が持分法における未実現利益の会計処理となります。
さらに詳しく知りたい方は、「持分法会計に関する実務指針」を確認してください。
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まとめ
今回は、持分法に関して基本的な知識をお伝えしました。
関連会社に対して適用する持分法は、仕訳の処理面で連結法と大きく異なります。
影響力基準により持分法の適用範囲を判断しますが、判断基準が複雑である為、専門家(公認会計士)に相談しましょう。
持分法適用会社の関係する取引にて未実現利益が生じた場合には、未実現利益を会計規則に則って処理する必要があります。
ダウンストリーム(持分法適用会社が買い手側)とアップストリーム(持分法適用会社が売り手側)で処理方法が異なる為、予め確認しておかなくてはいけません。さらに、持分法の処理を解説してきましたが、持分法の会計処理には非常に高度な専門知識が必要であり、一朝一夕で使いこなせるものではないのです。
経営者の方自身で適用を試みるよりは、公認会計士等の専門家に業務を依頼する方が効率的です。
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