M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2021年4月22日更新節税
組織再編税制
組織再編税制とは、企業が事業円滑化などのために行う組織再編に対して定められた特別な課税制度です。組織再編税制の対象となる行為には、合併、会社分割、現物出資、現物分配、株式移転、株式交換、スピンオフ、スクイーズアウトが該当します。
組織再編税制とは
M&Aの手法には、さまざまなものがあります。しかし、その手法を大別すると、M&A本来の意味である合併(Mergers)と買収(Acquisitions)の、どちらかに集約して考えることが可能です。
その前者である合併行為に分類されるM&A手法の中には、組織再編行為と呼ばれるものがあります。組織再編行為は単独の企業が行うケース、複数の企業間で行われるケースなど、さらに細分化されますが、その根本は、事業効率性などのために企業が行う、組織編成の組み換えです。
日本の会社法では、それら組織再編のためのM&Aと、買収などのM&Aについて、税制上、区分けして扱うことが規定されています。つまり、企業が行う組織再編行為については、特別な税制が敷かれているのです。これを称して、組織再編税制と呼びます。
この組織再編税制とは、組織再編行為への優遇税制です。ただし、その優遇措置を受けるためには、法令で定められている適格要件を満たしていなければなりません。組織再編に該当するM&A行為、組織再編税制における優遇措置、組織再編の適格要件について、順を追って説明します。
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組織再編税制の対象行為とは
会社法で、組織再編税制の対象として認められている組織再編行為には、以下の7種類があります。
- 合併
- 会社分割
- 現物出資
- 現物分配
- 株式移転
- 株式交換
- スピンオフ
- スクイーズアウト
①合併
2社以上の複数の企業が、統合され1社となるのが組織再編行為である合併です。合併には、吸収合併と新設合併の2種類があります。
吸収合併
吸収合併とは、合併する企業のうちの1社が存続会社となり、残りの企業は存続会社に合流して消滅することになる組織再編行為です。消滅する企業の事業、資産、権利義務、従業員など全てが、存続会社に承継されます。新設合併よりも吸収合併の方が広く行われています。
新設合併
新設合併とは、合併を行う各企業とは別に新たな会社を設立し、合併する企業はそこに合流する組織再編行為です。
つまり、合併する企業はそれぞれ解散措置を取り、存続しません。事業に許認可が必要な場合、存続せず消滅してしまう企業からは引き継げないので、再取得が必要です。
各企業の事業、資産、権利義務、従業員など全てが、新設会社に承継される点は、吸収合併と変わりません。
②会社分割
会社分割を単純に表現すると、1つの会社を2つに分ける組織再編行為です。 分ける場合の線引きは、ある特定の事業部門が切り離されることになりますが、全事業を切り離すケースもあります。会社分割の場合も、吸収分割と新設分割の2種類に分かれます。
吸収分割
吸収分割とは、切り離した一部または全部の事業を、既存の他社が承継する組織再編行為です。形式上は、別のM&A手法である事業譲渡と類似して見えますが、根本部分が異なります。不採算部門を切り離したり、主力事業に集中することなどを目的として行われます。
新設分割
新設分割とは、切り離した一部または全部の事業を、新設する会社が承継する組織再編行為です。この組織再編が行われるケースとしては、企業グループ内における事業再編目的の場合と、他社との共同事業実施を行う場合が考えられます。
③現物出資
現物出資とは、新会社設立時の出資や、既存企業の増資に応じる際、金銭ではない財産をもってそれを行うことです。現物出資もM&Aの手法の1つであり、組織再編にも用いられます。金銭ではない財産とは、いわゆる固定資産がそれに該当するため、現物と呼ばれています。
一見すると、分社型分割と類似していますが、手続きは異なります。会社分割では移転させる事業と資産類は全て紐づいてセットで処理されますが、現物出資では資産を個別に選択して給付することが可能であることがその理由であり、違いです。
④現物分配
現物出資と似た言葉である現物分配ですが、その内容はまた異なります。主に、企業が株主に行う配当や自己株式取得などの際に、金銭以外の資産をもって、これを行うのが現物分配です。厳密にいうと、金銭以外の資産の交付とされているため、負債は含めることができません。
通常のM&Aとしても、企業グループ内で事業を組み換える組織再編としても、意外と用いられている手法です。
⑤株式移転
株式移転は、新たに持株会社を設立する場合に用いられる組織再編手法です。1つ以上の会社が、それらの親会社になる持株会社を設立する際に、各会社の株主はそれまで保有していた株式を持株会社に渡す代わりに、新たに持株会社の株式交付を受けます。
各社の事業形態を維持したまま経営統合ができるため、昨今よく用いられている手法です。
⑥株式交換
資本関係がなかった会社間において、一方を親会社、他方を子会社にする際に用いられる手法の1つとして株式交換があります。仮にA社がB社の完全子会社になるとした場合、A社の株主は所有しているA社株式をB社に全て渡します。その代わりにB社よりB社株式が交付されます。
B社の株主構成には、旧A社の株主が加わったことになります。そして、B社はA社の全株式を取得したので、2社間は100%親子会社の関係です。
⑦スピンオフ
スピンオフとは、企業の中にある特定の事業部門を切り出して新設会社を興した場合や、すでに存在する完全子会社について、その株式全てを自社の株主に現物配当し、独立した会社とする組織再編行為です。会社同士の資本関係は完全に断たれます。
2017(平成29)年の税制改正より、新たな組織再編税制として加えられました。
⑧スクイーズアウト
M&Aにおける特例的な手法として2005(平成17)年に認可されたのが、大株主による少数株主所有の株式強制取得手続きであるスクイーズアウトです。2017(平成29)年の税制改正によって、組織再編税制の対象に認められました。
MBO実施を受けた上場企業が上場を廃止する場合や、中小企業などで諸事情により少数株主が複数いて意思決定に支障がある場合などで行われます。中小企業で意思決定に不都合があるケースとしては、M&Aを実施したい場合も該当するでしょう。
また、組織再編行為は企業グループ内だけの話ではありません。M&Aである組織再編行為実施にあたっては、M&Aの専門家を交えて実施するのがおすすめです。
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組織再編税制の内容
組織再編税制とは、企業が組織再編を行った時に、税制上で定める適格要件を満たしていれば、適用が認められる例外的な優遇措置税制のことです。具体的には、法人税に直結する取得資産と、繰越欠損金の取り扱いに関する特例になります。
①取得資産の計上処理
組織再編税制の特例の1つは、組織再編行為によって取得・移転されることになった資産を、会計上どう取り扱うかという点です。この点について、結果的にはほぼ同じではあるのですが、各組織再編行為によって、内容の解釈が異なります。それぞれを分けて説明します。
合併、会社分割、現物出資、スピンオフの場合
通常、資産が移転された場合、移転後にその価値を時価で算定し直します。そして、その資産の移転前の簿価と比較して、時価が上回っている価額分が譲渡益です。この譲渡益に対して法人税が課税されます。
しかし、適格要件を満たした組織再編行為である合併、会社分割、現物出資、スピンオフにおける移転資産については、その移転後も時価算定は行わず、簿価価額を引き継いでよいことになっています。
つまり、移転資産の譲渡損益の計上が繰り延べられることになり、実質的に法人税の課税はありません。
現物分配、株式移転、株式交換、スクイーズアウトの場合
取得した資産に関して、簿価と時価との差額算定を行って、それを計上しなければならないのは前述したとおりです。しかし、適格要件を満たした組織再編行為である現物分配、株式移転、株式交換、スクイーズアウトにおいては、取得資産の差額算定を計上しなくてよいこととなっています。
結果的に、取得した資産に関して法人税が課されることはありません。
②合併における繰越欠損金の特例
組織再編行為の中で合併の場合のみに認められている組織再編税制の特例が、繰越欠損金の取り扱いです。一定の制限はあるものの、合併で消滅することになる会社が持っていた繰越欠損金を、合併会社が引き継ぐことが認められています。
これにより、合併の場合は法人税の節税効果が見込まれることになるのです。
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組織再編税制の適格要件
組織再編税制における適格要件を、具体的に見ていきましょう。ただし、組織再編税制の適格要件の内容は、組織再編を行った会社と、組織再編によって成立した新たな会社との資本関係の違いによって、以下の4パターンに分かれています。
- 完全支配関係の場合
- 完全ではない支配関係の場合
- 支配関係が全くない場合
- スピンオフの場合
①完全支配関係の組織再編税制適格要件
完全支配関係とは、親会社が子会社の全株式を所有しているケースです。この場合の組織再編税制適格要件は、以下の3つになります。
- 金銭等不交付要件
- 株式継続保有要件
- 案分型要件(分割型分割のみ)
金銭等不交付要件とは、組織再編行為実施の際に、消滅する会社の株主などへの対価を金銭で支払っていないことです。通常、株式交付によって対価とします。株式継続保有要件とは、組織再編行為後も、親会社が変わらずに、子会社の全株式を所有していることです。
分割型分割の組織再編の場合にのみ必要な適格要件として、案分型要件があります。分割型分割とは、事業分割を横並びで行う組織再編です。案分型要件が意味するのは、分割会社の株主が所有している株式の割合に応じて、被分割会社の株式を交付していることになります。
②完全ではない支配関係の組織再編税制適格要件
完全ではない支配関係とは、親会社が所有する子会社の株式比率が50%超100%未満のケースです。この場合の組織再編税制適格要件は、完全支配関係のものよりも2つ増え、以下の5つになります。
- 金銭等不交付要件
- 株式継続保有要件
- 案分型要件(分割型分割のみ)
- 事業移転要件
- 事業継続要件
新たに増えた組織再編税制適格要件の事業移転要件とは、組織再編によって事業が移転された会社において、移転前にその事業に従事していた社員の80%以上が移籍し、継続して業務に従事することが見込まれることです。
事業継続要件とは、組織再編によって移転された主要な事業が、移転を受けた会社側においても継続して行われていることが見込まれることをさしています。
③支配関係が全くない場合の組織再編税制適格要件
支配関係が全くないということは、資本関係が全くないことです。つまり、グループ企業ではない外部の会社との間で行う共同事業の際に実施する組織再編に対する組織再編税制適格要件も定められています。このケースの組織再編税制適格要件は最も多く、以下の7種類です。
- 金銭等不交付要件
- 株式継続保有要件
- 案分型要件(分割型分割のみ)
- 事業移転要件
- 事業継続要件
- 事業関連性要件
- 特定役員引継要件または事業規模要件
まず、このケースでの株式継続保有要件とは、組織再編で設立された会社の株式80%以上を、交付を受けた株主が継続保有する見込みであることです。支配関係がないので、適格要件の意味合いが変わっています。
また、新たに増えた組織再編税制適格要件の事業関連性要件とは、組織再編を実施した企業間において事業の関連性が認められることです。そして、もう1つの組織再編税制適格要件は、2つのうちどちらか1つだけを満たしていればよいことになっています。
特定役員引継要件とは、組織再編を行った双方の会社の役員のそれぞれ1名以上が、組織再編で設立された会社でも役員となり、経営に参画する要件のことです。双方経営参画要件という言われ方がされる場合もあります。
事業規模要件とは、合併法人と被合併法人の売上金額、従業者数などの規模を比較した時、その比率が約5倍を超えないことです。こちらも、同等規模要件と言われる場合があります。
④スピンオフの組織再編税制適格要件
組織再編行為の中でもスピンオフは、元の会社から事業を切り出されて設立された、独立した会社です。したがって、組織再編税制適格要件は、前項までに述べた内容とは一部が異なります。スピンオフの組織再編税制適格要件は、以下の7つです。
- 金銭等不交付要件
- 案分型要件
- 事業移転要件
- 事業継続要件
- 新設要件
- 継続非支配要件
- 中枢継続要件
前項までの3パターンの中になかった組織再編税制適格要件としては、新設要件、継続非支配要件、中枢継続要件の3つがあります。新設要件とは、その会社が新規設立された理由が、分割した会社が行っていた事業を独立して行うためであることです。
継続非支配要件とは、新設された会社が現状のまま他の者に支配されない見込みであることを意味します。そして、中枢継続要件とは、事業を分割した会社の役員または重要な従業員1名以上が、新設会社の特定役員になることです。
特定役員とは、社長、副社長、代表取締役、代表執行役、専務取締役、常務取締役、またはこれらに準ずる立場に就くことをさします。
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まとめ
組織再編を実施するのであれば、節税が可能となる適格組織再編を行うべきです。組織再編行為ごとに異なる組織再編税制適格要件をよく念頭に入れ、非適格とならないように準備を進めることが肝要でしょう。本記事の要点は以下のとおりです。
・組織再編税制とは
→的確な組織再編実施時に認められている税制優遇措置
・組織再編税制の対象となる組織再編行為
→合併、会社分割、現物出資、現物分配、株式移転、株式交換、スピンオフ、スクイーズアウト
。組織再編税制の内容
→取得資産と繰越欠損金の取り扱いに関する特例
・組織再編税制の適格要件
→企業間の支配関係の状況などにより適格要件は異なるが最大で7要件が必要
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