M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2021年5月31日更新事業承継
事業承継における融資制度まとめ!内容や受け方を解説!
事業承継に必要となる費用や資金の貸付を受けられる融資制度についてご説明します。資金の融資制度毎に保証や担保についても解説しますので、事業承継を検討するに際して個人保証や担保の負担が心配な承継者の方は、ぜひ参考にしてください。
目次
事業承継とは
事業承継とは、会社の経営を後継者に引き継ぐことです。廃業が事業や雇用をすべて終了するのに対し、事業承継は社内外の後継者に会社を引き継いで事業を継続します。
得意先および取引先との関係を継続し、従業員の雇用が維持されるだけでなく、組織再編により経営が多角化できるなど、発展的な要素もあることが最大の特徴と言えるでしょう。会社全体を承継させる方法以外に、事業の選択・集中を行い特定の事業のみ一部譲渡する手法も注目されています。
事業承継における融資制度について
中小企業の経営安定や向上のため、中小企業庁をはじめとする信用保証協会や日本政策金融公庫など政府や政府出資の公的機関は様々な支援策を講じています。なかでも事業承継は、後継者不足を要因とする中小企業の大規模廃業の時代への突入が予測されていることから、経済産業省や中小企業庁を中心に政府主導での取り組みが本格化しています。
中小企業庁や保証協会などによる事業承継に関する資金の融資制度は、経営診断やマッチングサービスなどとともに、事業承継を模索する中小企業の支援策として位置づけられています。
資金調達は、事業承継に限らず中小企業にとっては常に大きな課題となっています。資金の融資を受けることで、事業承継のハードルは低くなります。一方で、融資を受けるには経営者の個人保証が必要です。後継者が事業承継を躊躇する大きな原因となっていることから、信用保証協会による信用保証制度の活用および発展が注目されています。
中小企業庁とは
中小企業庁は、経済産業省所轄の下、中小企業庁設置法に基づき設置されている機関です。中小企業の事業活動や経営向上・安定を支援することを任務として、創業から教育、雇用、取引、経営安定、海外展開、再生までさまざまな支援策を講じています。
中小企業庁では、中小企業向けに事業承継に関するガイドラインやマニュアル等を発行して事業承継の理解を促進するほか、事業承継税制や補助金制度などで事業承継の積極的な活用を支援しています。
中小企業庁の補助金制度には、後継者への承継や事業再編等を目的とした「事業承継補助金」、事業再編に伴う経費を補助する「経営資源引継ぎ補助金」などがあります。
信用保証協会とは
信用保証協会は、信用保証協会法に基づき設立された公的機関です。中小企業や小規模事業者の金融円滑化を目的としており、経営者が金融機関に融資を申し込む際に保証協会の信用保証を受けることによって、資金調達をサポートしています。
保証協会の保証とは、企業が金融機関から融資を受ける際、保証協会が資金の債務保証をする制度です。保証制度を利用することにより、金融機関から資金の融資を受けやすくなる、融資枠が拡大するなどのメリットがあります。
保証協会では、中小企業の事業承継に向けた様々な保証制度を用意しています。資金調達のため融資を検討している企業にとっては、必須といえるでしょう。
中小企業が経営の承継のために必要な資金として利用できる「経営承継関連保証制度」のほか、経営者保証を不要にする「事業承継特別保証」、「事業承継サポート保証」や「経営承継準備関連保証」などの事業承継の類型に応じた保証制度があります。
保証協会の保証を受けるに際しては、金融機関や各都道府県等の保証協会が窓口になります。
日本政策金融公庫とは
日本政策金融公庫は、政府100%出資の政策金融機関です。自然災害時に融資や貸付によりセーフティネットとして機能するとともに、新規事業創出や事業再生などの経済成長への貢献、そして民間の金融機関と連携した地域活性化への貢献が主な役割となっています。
また、中小企業事業として、中小企業向けに融資や経営支援サービスを実施しています。企業活力強化を目的とした融資制度のひとつとして、事業の承継を受ける人向けの「事業承継・集約・活性化支援資金」があります。
事業承継・集約・活性化支援資金とは
事業承継・集約・活性化資金は、日本政策金融公庫が行っている融資制度の一つです。地域経済の産業活動の維持・発展を目的として、事業承継を試みる中小企業の資金調達を支援しています。
中小企業事業の融資対象となる「中小企業」とは、日本政策金融公庫が定める基準に従い、業種別に定める資本金および従業員数の要件を満たす必要があります。中小企業の基準を満たさない場合は、小規模企業や個人事業を対象とした国民生活事業で実施している事業承継・集約・活性化支援資金を検討しましょう。
【融資の概要(中小企業事業)】
対象者 | 融資限度額 | 融資期間 (据置期間) |
---|---|---|
経済的または社会的に有用な事業や企業を 承継・集約化する者 |
7億2000万円 | 設置資金:20年以内 (2年以内) 運転資金:7年以内 (2年以内) |
融資を受けた資金の使い道は、事業承継計画、事業承継または事業の実施に必要となる設備や長期運転のための費用に限定されています。例えば、現経営者が後継者やその候補者とともに事業承継計画を策定するため、経営的な課題を洗い出す目的でコンサルティングサービスを利用する際の費用に資金を使うことができます。
その他、事業承継を機に事業転換や経営の多角化に取り組むため、必要な設備を導入したり人員を増員して教育研修を実施するための費用や、反対に経営の安定化のために事業を集約するための費用などに、資金を使えます。
事業承継における融資制度の内容・条件
中小企業が事業承継に向けて資金を計画的に準備している例は多くありません。そのため、事業承継のために資金調達が必要となるケースがほとんどでしょう。
中小企業庁の補助金制度をはじめ、事業承継には公的機関や民間の金融機関による様々な融資制度があります。公的機関の融資制度は低利で返済期間も余裕があるなど、中小企業にとってメリットが高いものとなっています。
ここでは、事業承継に必要な資金、日本政策金融公庫の融資制度の内容と融資を受けるための条件を説明します。
円滑な事業承継のために必要となる資金
事業承継計画の立案から承継後の経営安定まで、事業承継には数多くのステップがあり、各ステップに応じた様々な資金が必要となります。資金の融資を受けるにあたり、円滑な事業承継のために必要となる資金について事前に把握しておきましょう。
事業承継のために必要となる主な資金には、以下の①から④の資金があります。
①後継者が相続等で分散した自社株式や事業用資産を買い取るための資金
中小企業の場合、自社株式が旧経営者に集中している場合もありますが、相続等によって親族や役員に分散している場合も往々にしてあります。事業承継を行うには、事業のために必要な資産とともに一定の割合以上の自社株式を後継者に集中させる必要が生じます。
②後継者が相続や贈与によって自社株式や事業用資産を取得した場合の納税資金
事業を承継するため分散している自社株式や事業用資産を買い取る際には、後継者が所得税や不動産取得税、登録免許税、固定資産税など様々な税金が生じます。株式の譲渡の場合、譲渡所得に対して15.315%の所得税と5%の住民税、合計20.315%の税金を負担しなくてはなりません。
③役員や従業員が株式や事業の一部を買い取って事業の承継を行うための資金
役員や従業員が旧経営者から事業を承継する社内承継の場合、旧経営者やその親族が保有している自社株式の譲渡を受けるほか、事業の一部を買い取る方法で事業承継することもあります。この場合、株式取得や事業買収の資金が必要になります。
④経営者の交代により信用状況が悪化し、銀行の借入条件や取引先の支払条件が厳しくなった場合
大企業と異なり、中小企業の場合は旧経営者個人の信用力で金融機関等との関係が成り立っているケースも多くあります。経営者の交代によって与信が悪化し、金融機関からの借入条件が変更になったり、取引先に対する支払条件が厳しくなることでキャッシュフローを見直さくてはならなくなることもあります。
必要な資金に対する低利融資と信用保証
会社や事業の承継者は、日本政策金融公庫や沖縄振興開発金融公庫による融資制度を活用することにより、事業承継に必要な資金を低利で調達することができます。また、信用保証協会の保証とは別枠の保証も受けられます。
ここでは、日本政策金融公庫の融資制度の内容と信用保証について説明します。
低利融資
日本政策金融公庫の融資が受けられるのは、事業を承継する会社や個人が以下の①および②のいずれかに該当する場合となります。
①融資が受けられる場合
日本政策金融公庫の融資が受けられる具体的な条件を以下に記載します。
会社又は個人事業主が後継者不在などにより事業継続が困難となっている会社から事業や株式の譲渡などにより事業を承継する場合
後継者不足による中小企業の大倒産時代の到来が予測されていることから、政府や自治体はその対策に本格的に乗り出しています。公的機関である日本政策金融公庫による融資を受ける条件の一つに、後継者がおらず事業継続の危機に直面している企業から事業承継することが含まれています。
会社が株主から自社株式や事業用資産を買い取る場合
第三者承継(M&A)により事業承継が行われる場合、旧経営者や親族、役員等から自社株式や事業用資産を買い取るには税金の負担も含めてまとまった費用が必要となることから、融資を受ける条件となっています。
後継者である個人事業主が、事業用資産を買い取る場合
最近は個人によるM&Aも増えています。法人によるM&Aの場合と同様、個人事業主が事業用資産を買い取って事業承継する場合も融資の対象となっています。
経営承継円滑化法に基づく認定を受けた会社の代表者個人が自社株式や事業用資産の買い取りや相続税や贈与税の納税などを行う場合
親族や社員等による社内承継によって経営者が交代し、新たな代表者が個人で自社株式や事業用資産を買い取ったり、相続や贈与を受けて納税義務を負う場合も融資の対象となります。ただしこの場合、予め経営承継円滑化法に基づく認定を受けることが条件となっています。
承継者円滑化法とは
経営承継円滑化法は、中小企業の事業承継を総合的に支援することを目的としています。
この法律に基づく認定を受けることで、日本政策金融公庫の事業承継・集約・活性化資金をはじめとする金融機関による様々な事業承継に関する資金の融資を受けることができるようになります。
②融資の条件〈株式会社日本政策金融公庫(中小企業事業)の場合〉
日本政策金融公庫が中小企業事業で行う融資の条件は、以下のとおりです。
融資限度額:7億2千万円(うち運転資金4億8千万円)
中小事業においては、日本政策金融公庫の融資限度額は7億2千万円、そのうち運転資金に充てられるのは4億8千万円です。
融資利率:通常1.21%の基準利率が適用されるところ0.81%の特別利率①を適用
融資利率は、通常1.21%の基準利率が適用されるところ、0.81%の特別利率①が適用されます。融資金額が大きい場合はかなりの割引になるでしょう。
信用保証
経営承継円滑化法に基づく認定を受けると、事業承継に関する資金を金融機関から借入れる際に、通常の信用保証協会の保証とは別枠が適用されます。
信用保証協会の別枠とは
信用保証協会の通常の保証枠とは別に適用される別枠は、以下の図のとおりです。別枠の適用を受けると、通常の保証枠が2倍に拡大されることになりますので、認定を受けることを積極的に検討しましょう。
事業承継における融資制度の受け方
事業承継における融資制度を受けるためには、まずは経営承継円滑化法に基づく認定を受ける必要があります。ここでは、認定を受けるための具体的な手続きと記載事項について説明します。
事業承継円滑化法に基づく認定手続きについて
ここでは、経営承継円滑化法に基づく認定を取得するための手続きを説明します。
会社または事業の後継者は、所定の申請書と添付書類をそろえて申請先に提出します。申請先は、主たる事務所の所在地を管轄する都道府県です。本社が東京にある会社の場合、東京都産業労働局が窓口になります。
認定の申請に関する問い合わせは、各都道府県の窓口のほか、経済産業局や中小企業庁でも受け付けています。なお、東京都の場合、認定の審査に2カ月前後かかりますので、資金不足とならないよう余裕をもって申請しましょう。
認定申請書に記載する主な事項
認定申請書の主な記載事項は、以下の2点です。
①事業承継を行うこととなった原因
事業承継を行うこととなった原因には、代表者の死亡・退任や事業譲渡について記載します。
②事業活動の継続に支障を生じさせる主な事由
事業活動に支障を生じさせる主な事由には、第三者が保有する株式や事業用資産などの取得に関する事項、売上減少が見込まれる事項、金融機関との取引上の支障に関する事項などを記載します。
事業承継・集約・活性化支援資金の融資内容・手続き方法
経営承継円滑化法に基づく認定を受けたら、次は日本政策金融公庫に資金の融資を申請します。日本政策金融公庫の事業承継に関する融資制度として、事業承継・集約・活性化支援資金があります。ここでは、中小企業事業の資金融資について具体的な内容および手続きを説明します。
融資限度額について
日本政策金融公庫の中小企業事業で受けられる融資限度額は、7億2千万円です。実際に、中小企業が貸付を受けた資金の平均額は、1億円となっています。中小企業の事業承継としては、十分な資金の融資を受けられるでしょう。
なお、小規模企業や個人事業主を主な対象とする国民生活事業では、融資限度額は7200万円(運転資金は4800万円)となっています。
融資利率について
融資利率は、融資を受ける期間や担保の有無を含む信用リスクによって異なりますが、上限は3%に設定されています。
貸付金額が4億円以下の場合は特別利率が、4億円を超える場合は基準利率が適用されます。特別利率は基準利率と比較して3割から7割程度低利に抑えられています。融資利率は、契約日時点のものが適用されます。令和2年6月1日実施の利率では、貸付期間が5年以内の場合で基準利率が1.11%、特別利率が0.30%から0.71%と低利になっています。
ただし、特別利率の適用を受けるには、後継者不在で事業承継が困難な企業から承継を受けること、付加価値向上計画を作成して新たな雇用が見込まれることなど、一定の条件を満たす必要があります。万一、返済期限までに返済できなかった場合は、8.9%の遅延損害金が適用されます。
なお、国民生活事業の場合は適用される利率が異なります。
返済期間について
日本政策金融公庫は、中小企業事業の融資制度として長期事業資金を融資しており、短期の運転資金は取り扱っていません。そのため、事業承継・集約・活性化支援資金の融資制度においても、返済期間は設備資金が20年以内、運転資金が7年以内(いずれも利息分のみ返還する据置期間は2年以内)と余裕のある設定となっています。
なお、国民生活事業の場合は、設備資金の返済期間は10年以内となっています。
担保保証について
日本政策金融公庫から資金の貸付を受けるにあたり、担保設定の有無や担保の種類などについては、融資案件毎に相談のうえ決定されます。ただし、一定の要件に該当する場合には、経営者の個人保証が求められます。
融資の申込先について
事業承継・集約・活性化支援資金は直接貸付となっています。融資の申込は、日本政策金融公庫の各支店にある中小企業事業が窓口となります。
事業承継の際に役立つその他の資金確保のコツ
ここまで、中小企業庁をはじめとする公的機関による事業承継の支援策について説明しました。事業承継にかかる資金の調達方法として、公的機関の融資制度の利用の検討する価値は大きいといえます。
ただし、融資を受けるまでの手続きが煩雑で、審査の結果よっては融資を受けられないこともあるため、資金不足により事業承継を断念せざるを得ないケースもあります。
しかし、事業承継に際して資金を確保する方法は、融資だけではありません。ここでは、事業承継の際に役立つその他の資金確保のコツを説明します。
①相続税・贈与税の負担を減らす事業承継税制
事業相続税制を活用することにより、事業承継により後継者に譲渡または相続されるすべての株式について、贈与税や相続税が免除されます。
ただし、事業相続税制の適用を受けるには細かな要件を満たさなくてはならないほか、特例承継計画に認定や都道府県知事への返事報告書の提出、税務署への申告と継続届出書の提出などの手続をきちんと行う必要があります。
経営承継円滑化法に基づく認定や融資制度の調査・申請に加え、事業相続税制の申請・報告など、事業承継に際して後継者が対応すべき事項は多岐にわたります。事業承継を検討する場合は、信頼できる専門家に依頼するのが成功への近道です。
M&A総合研究所では、M&Aの知識・実績豊富なアドバイザーが専任に就き、丁寧にフルサポートいたします。
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②後継予定者への報酬を増額する
融資など他の方法での資金を調達が難しい場合の手段として、後継予定者への報酬を増額する方法もあります。
経営者は、後継予定者を計画的に選任して早い段階から徐々に経営に関与させるとともに、後継予定者への報酬を増額していきます。これによって、後継予定者は増額された報酬を元手に会社の株式や事業用資産を買い取ることができます。
③後継者が旧経営者に借り入れを行う
後継者が旧経営者から事業承継のための資金を借り入れることによって、分割払いで会社または事業の譲渡を受けるのと同様の効果を得ることができます。一度に資金を準備できなくても、堅実的な返済計画を立てることによって後継者の買入条件を満たした事業承継が可能になります。
まとめ
株式や事業用資産の取得や税金の負担など、事業承継には多額の資金が必要になります。事業承継を検討する場合は、融資制度を活用して無理のない資金計画をたてましょう。
融資を受ける場合の流れを以下まとめます。
- 事業承継に必要となる資金を把握する
- 融資制度の適用条件を満たしているか確認する
- 経営承継円滑化法に基づく認定を受ける
- 融資を申請する
- 融資以外の方法による資金確保についても検討する
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