M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2024年5月17日更新事業承継
事業承継問題の原因と解決法は?事業承継のメリット・デメリットやマッチングを成功させるポイントを解説!
事業承継は多くの中小企業にとって大きな課題です。後継者不在をきっかけとする倒産や廃業するケースが後を絶ちません。本記事では、事業承継問題の原因及び事業承継のメリット・デメリット、中小企業に残された解決法としてM&Aによる事業承継も徹底解説します。
目次
事業承継問題とは
ここでは、事業承継問題に関して理解を深めるために、事業承継に課題を抱える中小企業の動向・2025年問題などを説明します。
事業承継問題に悩む中小企業の動向・背景
日本の中小企業の多くは、事業承継に際して、経営者の高齢化や後継者の不在などの課題を抱えています。近年、これらの課題は深刻化しており、黒字企業であるにも関わらず事業承継できずに廃業に追い込まれてしまうケースが増加中です。
中小企業庁の「2020年版 中小企業白書」によると、調査が開始された1999(平成11)年以降、日本の中小企業の数は減少傾向にあります。このうち、特に小規模企業の減少率が最も高い状況です。
今後も事業承継に関する課題が解消されない場合、事業承継問題に悩まされる企業の廃業が進んで、中小企業の数はますます減少するものとみられます。
2025年問題とは
2025年問題とは、すでに超高齢社会を迎えている日本において、西暦2025(令和7)年以降に団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり、さらに高齢者の比率が上がる中、引退時期を迎える中小企業の経営者が一段と増加することです。
経済産業省によれば、後継者不在など現状の問題を放置すると中小企業の廃業件数が急増し、2015(平成27)〜2025年頃までの10年間の累計で「約650万人の雇用・約22兆円のGDP」が失われる可能性があります。
上記の事態を回避するために、政府は「事業承継税制の制定」「事業承継ガイドラインの制定」「事業承継・引継ぎ支援センターの設置」などの施策を実施中です。
中小企業経営者が抱える事業承継問題
中小企業の経営者は、事業承継問題に直面しています。そもそも、中小企業は経営環境の変化の影響を受けやすいうえに、大企業と比べて会社が長期的に存続するための地盤が固まっていないケースも少なくありません。
このことから、中小企業における事業承継では問題が発生しやすいため、十分な備えを持ったうえで対応すべきです。そこでここでは、中小企業の経営者が抱えがちな事業承継の問題として、以下の項目を取り上げます。
- 後継者不在
- ワンマン経営の弊害
- 従業員・キーマン(後継者)の育成不足
- 経営状況の不安
- 事業承継・M&Aの相談先がいない
- 経営者自身が事業承継を考えていない
- ⑦相続トラブルの発生
①後継者不在
後継者不在は、事業承継において中小企業の経営者の多くが抱える問題です。後継者不在とは、会社を引継ぐべき後継者が不在である状態をさします。中小企業は日本企業の大部分を占めるほど数が多く、全ての中小企業が後継者を確保しているわけではありません。
中小企業では、後継者がいないために事業承継の見とおしが立っていない企業が多いのです。また、後継者を確保できない問題とともに、経営者の高齢化も進行しています。さらには少子化も進んでおり、将来的に会社のリーダーとなる若者の数が減少中です。
こうした状況が、後継者不在問題を深刻化させています。また、価値観の変化も問題を深刻化させている要因の1つです。従来の中小企業では、自身の子供を後継者とするのが主流でしたが、最近では価値観の変化に伴って子どもが会社を引継ぐケースが減少しています。
親の後を必ずしも継がない子ども、子どもに後継ぎを無理強いしない親の増加が、従来の事業承継の主流であった親族内承継を減らしているのです。
②ワンマン経営の弊害
多くの中小企業ではワンマン経営が敷かれており、これに伴う弊害で事業承継が失敗するケースも存在します。ワンマン経営を行う経営者は優れたリーダーシップがあるものの、これは裏を返すと周囲の人間がイエスマンばかりで意見を示す人材がいない状況を生み出しかねません。
特にワンマン経営の弊害が大きくなるタイミングは、経営者が高齢になった後です。仮に経営者が高齢化したことで健康状態が不安定になり判断能力が衰えた場合、事業承継プランの設計自体が困難になります。
また、ワンマン経営が敷かれている会社は、正常な判断力が衰えている状態にも関わらず、経営者に対して意見を示す人間がいない環境でしょう。そのため、後継者の選定はおろか、事業承継自体を行えないまま経営者が亡くなり、結果的に会社が窮地に立たされる可能性が高いです。
③従業員・キーマン(後継者)の育成不足
従業員・キーマン(後継者)の育成不足も、事業承継における深刻な問題の1つです。事業承継を円滑に成功させるためには、従業員およびキーマン(後継者)に対して自社の事業に関するさまざまな知識・技術を身につけさせる必要があります。
しかし、多くの中小企業では人材の育成にかける時間が不足しており、育成が円滑に進んでいない状況です。特に後継者の育成には、5〜10年程度の期間が必要とされています。高齢の経営者には体調悪化のリスクもあるため、余裕を持ったスケジュールで育成を進めることが必要です。
④経営状況の不安
たとえ自社にふさわしい後継者が見つかったとしても、自社に魅力を感じてもらえないと事業承継に結びつかないケースも多いです。たとえば、経営状況や先行きに不安が見られる場合は、後継者に事業承継を拒否されてしまう可能性があります。
なお、後継者側としても、事業承継に伴い発生するリスクの存在を把握しておくことが必要です。具体例を挙げると、事業承継では金融機関の個人保証や負債なども後継者に引継がれる場合が多く、後継者としてはリスクを背負うことになります。
⑤事業承継・M&Aの相談先がいない
周囲に相談先がいないために、事業承継できずに廃業してしまう中小企業も存在します。事業承継の知識を持たない経営者としては、周囲に相談先を見つけられないとプロセスを進められません。これに対して、M&Aによる事業承継もサポートする相談先を見つけられれば、急速に自社の事業承継問題の解決を図れます。
⑥経営者自身が事業承継を考えていない
健康面に不安がある経営者よりも、その不安がない経営者ほど、事業承継の検討や準備を先送りにしている傾向があります。いくら自身の体調に自信があったとしても、年齢を重ねるにつれ、健康面の突然のトラブルの可能性は高まるものです。
事故や災害に遭うリスクもゼロとは言い切れません。少なくとも60歳前後の時点では、事業承継について一考すべきでしょう。
⑦相続トラブルの発生
ビジネスの継承と遺産の相続は密接に結びついています。後継者を決定するプロセスやビジネスの引き継ぎには、遺産の問題が発生するリスクが存在します。これにより、現在のビジネスオーナーが引退を決断するのをためらうことがあります。
例えば、複数の家族メンバーが後継者候補となる場合や、ビジネスの後継者を会社内外から選ぶ場合、家族間で問題が起こる可能性があります。こうした潜在的な問題を予想すると、ビジネスの引き継ぎを遅らせるか、または避けることを選ぶかもしれません。
事業承継問題を解決できなかった場合の3つのリスク
事業承継ができずに経営者が引退時期を迎えた場合、会社は廃業です。その場合には、以下のようなリスクが伴います。
- 多額の廃業費用の支払い
- 従業員の雇用先喪失
- 自社製品・技術の消滅
多額の廃業費用の支払い
会社の廃業時には、以下のような出費(廃業費用)が避けられません。手元の資金で足りない場合、個人財産の処分をしたり、廃業後も返済を続けたりする必要があります。
- 事業用資産の廃棄処分(設備、機械類、原材料、在庫品など)
- 原状復帰工事(事務所が賃貸の場合)
- 廃業(解散)手続きなどの手数料
- 従業員への退職金
- 借入金の完済
従業員の雇用先喪失
会社が廃業すれば、従業員は解雇されます。同じような労働条件の仕事が見つかるかどうかは予断を許しません。すぐに新たな仕事が見つからなければ、従業員の家族も路頭に迷うことになります。
自社製品・技術の消滅
会社が廃業となれば、自社で長年、手掛けてきた製品・技術・サービス・ノウハウなどは失われます。地域経済にとって残念なばかりではなく、取引先や顧客は、製品やサービスを得られなくなり、迷惑を被るのは明らかです。
事業承継問題の解決方法と問題点
事業承継問題の解決は、後継者を定めることから始まります。後継者を立場別に分類すると以下の3種です。
- 親族
- 従業員
- 第三者
第三者を後継者にするとは、M&Aによる事業承継のことです。それぞれの事業承継方法における問題点も合わせて説明します。
親族への事業承継
現経営者の子どもなど親族を後継者とする事業承継において、経営権の承継=会社株式の譲渡は、相続か贈与で行われます。現経営者の死亡時に相続人である後継者が株式を相続で取得するか、現経営者が後継者に株式を生前贈与(無償譲渡)するかのどちらかです。
親族内承継では、以下のような問題点があります。税務は税理士、法務は弁護士に相談するのが得策です。
- 株式の評価額次第では、後継屋に多額の相続税・贈与税が課せられる可能性がある
- 複数の相続人がいる場合、会社の株式が分散してしまう可能性がある
- 生前贈与で後継者が全株式を取得しても、他に相続人がいる場合、遺留分侵害額請求を受ける可能性がある
親族への事業承継のメリット
親族への事業承継は、ほかの方法と比較すると後継者選びがスムーズに進みやすく、すでに候補者が決まっている場合は、早いタイミングで事業承継の準備に取りかかれます。また、従業員や取引先などの理解を得やすいのも親族への事業承継のメリットです。
ほかにも、後継者教育を柔軟に行える、相続で資産を承継できるなど、数多くのメリットがあります。ただし、中小企業の場合は後継者候補自体が見つからないケースが多いことも事実です。
親族への事業承継のデメリット
現在の経営者の親族が必ず経営者の資質を持っているとは限りません。実際、安易に親族への事業承継を行い、経営が傾いてしまうことも珍しくありません。また、引き継いでくれると勝手に思い込んでいたものの、本人に全くその意思がなかったなどということもよくあるケースです。
また、反対に経営者になる意思を持つ親族が複数いる場合にも注意が必要です。後継者争いが発生してしまうこともあるので、後継者を選んだ際には、そのほかの相続人に対するフォローも忘れてはなりません。さらに、保証債務の承継や多額になる可能性のある相続税負担など、さまざまなデメリットがあります。
親族外への事業承継
次に、親族外への事業承継のメリット・デメリットを紹介します。
親族外への事業承継のメリット
親族外への事業承継の最大のメリットは、会社のシステムや企業特有の環境、歴史を熟知している点です。共に働いてきた仲間だからこそ、経営理念や仕事に対する姿勢が共有しやすいでしょう。信頼関係もすでに構築されていることが多いので、承継後に大きな問題が発生しにくいのも大きなメリットです。
また、親族への事業承継と比べて広い選択肢から後継者を見極められます。さらに、親族への事業承継と同じように早めに後継者を決められれば、経営のノウハウを学ぶ時間を十分に取れます。
親族外への事業承継のデメリット
親族外への事業承継で最大の壁となるのが資金面です。上場していない株式を譲るには相当な資金が必要です。株式の取得資金を金融機関から融資を受けたり、会社の債務保証を金融機関から求められたり、後継者への経済的負担はかなりのものです。そのため、後継者本人は意欲があっても、家族の反対にあい破談になるケースもよくあることです。
また、そもそも社長になりたいという意欲がある社員が全くいないこともあります。特に前任の経営者がワンマンであった場合によくあるケースです。
親族外への事業承継は、文字通り親族以外の人物を後継者にすることです。広義に考えれば、さまざまな人物が候補に含まれますが、一般的な中小企業では役員や従業員への承継を指すケースが多いです。
経営者としての能力を高い人材を見極められ、社内をよく知る役員や従業員であれば、経営方針などの文化を含めて引き継げるので、経営の一貫性が保ちやすいといえます。ただし、社内での派閥争いなどのおそれがあるので、スキルや手腕以外の面も考慮することが必要です。
M&Aによる第三者への事業承継
親族や社内に後継者候補がいない場合の事業承継方法として、近年、クローズアップされているのがM&Aによる事業承継です。会社を売却することにはなりますが、その買い手が後継者(新たな経営者)となることで、事業承継が実現し会社は存続します。
従来、M&Aは大企業が行うイメージでしたが、昨今は中小企業が、事業承継手段として積極的に用いるようになってきました。M&Aによる事業承継の問題点は、思っているような後継者(売却先)が、希望するタイミングで見つかるかどうかの保証はない点です。
M&Aによる第三者への事業承継のメリット
ここまで説明した2つの方法よりも広い範囲から後継者が選べるのがまずメリットです。また、親族内外への事業承継が不可能な場合、M&Aを選ばないとなると、現経営者が引退する時期に会社も廃業となります。すると、長年にわたり会社に尽くしてくれた従業員も解雇するしかありません。M&Aを選択することで、雇用を守ることができ、従業員の人生を守れます。
また、金融機関から借り入れて土地や設備を購入する場合、経営者が保証人になることが多く、その債務保証を後継者に負わせたくない考えから廃業を選ぶ経営者も少なくありません。M&Aでは、一般的には債務も含めて売却可能です。
M&Aによる第三者への事業承継のデメリット
従来の会社に何のゆかりもない経営者を招くので、これまでに培ってきた企業風土にすぐに馴染むのは困難です。また、新しい経営方針や企業文化は従来の社員にとってはストレスになる可能性も考えられます。
M&Aには専門のアドバイザーの存在が必須です。M&Aには成立までに多くのプロセスがあり、相応の時間がかかります。早々に買い手が見つかればよいですが、戦略を誤ると最悪の場合買い手が現れないということも考えられます。
事業承継問題と相続上の留意点
本章では、事業承継問題と相続上の留意点を解説します。それぞれの手法に見られる留意点を把握し、事業承継の成功につなげましょう。
親族内事業承継における遺留分
自分の事業を特定の家族メンバーに引き継がせたいと思う場合、遺言書を作成することが一つの方法です。ですが、遺言書を残す際には、「遺留分」という考慮すべき点があります。法律では、特定の人々(配偶者、子ども、直系の親など)が遺産を受け取る権利を持つことが定められています。これを遺留分と呼び、彼らが少なくとも受け取ることができる遺産の一部のことです。
したがって、遺言書によってどの家族にどれだけの遺産を引き継がせるかを決めていたとしても、遺留分の権利を持つ家族メンバーが、その最低限保証された遺産額に満たないと主張することがあります。その場合、遺産を受け取る側は、金銭としてその差額を支払う義務があります。
社内事業承継・M&A後の相続税
企業を社内の後継者に引き継ぐ場合や、他の企業とM&Aを行う場合、現在の経営者は企業の売却から利益を得ることができます。この売却利益は資産を増やす大きなメリットですが、その一方で、相続税が増える可能性に注意が必要です。
具体的には、今後相続税がどれくらいかかるかを見積もり、遺産をどのように分けるのか、税金を払うための資金をどうやって準備するのかを考えることが大切です。さらに、国が提供している税制上の優遇措置を活用することも検討しましょう。
事業承継問題の解決に向けた8つの準備
事業承継の実施に際して、さまざまな対策を講じておかなければなりません。入念に対策を立てたうえで計画を進めないと、選択を誤ってしまったり、最悪の場合では事業承継が頓挫してしまったりするおそれがあります。
こうした事態に陥らないためにも、専門家と協議したうえで事業承継対策を練っておきましょう。本章では、事業承継対策の指針となる以下のポイントを取り上げます。
- 早期のタイミングでの検討
- 経営上の問題点の解消
- 経営理念・ノウハウの継承
- 資産の継承
- 経営者の意志の明示
- 公的制度の活用
- 優遇税制の活用
- M&Aにおける相手先企業とのマッチング
①早期のタイミングでの検討
ビジネスを次の世代に引き継ぐ際には、新しいリーダーの育成、お金の問題、また税金の対策など、しっかりと計画して時間をかける必要があります。
急に健康の問題が起きたときに、計画がなければビジネスを止めることもあるため、早いうちに計画を立てましょう。新しいリーダーとしっかり話し合い、プロの意見も取り入れて、スムーズな引き継ぎの準備をすることが大切です。
②経営上の問題点の解消
ビジネスを次の世代に引き継ぐ考えがあるなら、まず現在の経営や財務の状態をしっかり確認しましょう。問題やリスクが何かを早く知ることで、解決策をすぐに考えたり、対策を立てたりすることができます。
③経営理念・ノウハウの継承
事業承継を進めるうえで後継者を選定できた場合、いかに経営理念・技術を継承していくかが非常に重要なポイントです。このポイントは、事業承継の中核に位置する部分といっても過言ではありません。
多くの中小企業では、経営理念が明確化されていないうえに、業務に必要なノウハウもマニュアル化されていない企業が多く、後継者への共有が非常に難しい状態です。このように体制が整っていなければ、後継者のポテンシャルの引き上げは困難だといえます。
以上の点を踏まえて、経営理念・ノウハウの継承に取り組むとよいでしょう。
④資産の継承
事業承継は相続の側面を持つ行為であるため、経営理念・ノウハウだけでなく資産の継承に関しても考慮しておく必要があります。最も重要で後継者が経営者になる際に必要不可欠な資産が株式であり、経営者の権限を決定づける資産です。
株式は、相続・贈与・買収などの形式で後継者に譲渡されます。このうち、相続・贈与では税金が発生する可能性があり、買収では後継者の資金力が問われるのは避けられません。株式は早期の段階で後継者に譲渡を完了させるのが理想ですが、後継者の状況を鑑みて判断しましょう。
また、株式以外の資産に関しても後継者に相続しやすいよう配慮しておくのがおすすめです。相続した資産はそのまま後継者が使えるため、会社の設備なども後継者の手元に残るよう配慮します。ただし、親族を後継者に据えた場合、他の親族からの心証は問題になりやすいです。
後継者に偏った形で相続を行うと、他の親族における遺留分の財産が脅かされてしまうおそれがあり、他の親族から不満が発生する可能性があります。後継者がトラブルに見舞われる可能性も十分に想定されるため、経営者は他の親族に対する配慮を忘れないようにしましょう。
⑤経営者の意志の明示
事業承継は長い時間をかけて行いますが、「後継者を誰にするか」「いかなる形で事業承継を行うか」などの場面で、経営者の意思を明示する必要があります。
事業承継は経営者と後継者のほか、会社の役員・株主・従業員・取引先など多くの人間が関わる行為であるため、意思を周知させるタイミングも重要です。また、万が一に備えて事業承継や相続の内容を明記した遺言書も用意しておくと効果的でしょう。
もしも突然、経営者が亡くなった際に事業承継に関する意向がわからない状態に陥ってしまうと、経営者が意図しない形で事業承継が進んでしまう可能性があります。
このときに、たとえ後継者が決まっていたとしても、相続などのプロセスで新たな問題が生じるかもしれません。そのため、事業承継を行う場合は、あらかじめ経営者の意志を明示しておくとよいでしょう。
⑥公的制度の活用
事業承継問題は国全体で解決すべき課題とされており、事業承継に必要となる費用を確保するために活用できる公的な補助金制度があります。代表的な制度は、中小企業庁が設けた「事業承継・引継ぎ補助金」です。
事業承継・引継ぎ補助金では、要件を満たせば最大で数百万円もの補助金を受けられます。事業承継を契機に新たな取り組みを行うような場合は、補助金を受けることが可能です。
⑦優遇税制の活用
事業承継における資金面でのサポートの一環として、政府による特例が設けられています。これは、「事業承継税制」と呼ばれており、条件を満たせば、事業承継で生じる贈与税や相続税が猶予・免除可能です。
事業承継税制の問題点
事業承継税制には、「事業承継時にかかる税金の納付が猶予され、さらに一定の条件を満たすとその納付が免除される」という大きなメリットがあります。しかし、いくつかの問題点・デメリットも存在します。
事業承継税制の主な問題点・デメリットは次の4つです。
- 特例措置の適用期限がある: この税制には適用期限が設定されています
- 特例承継計画の提出と認定申請が必要: 一定の要件を満たしているか確認するために、特例承継計画の提出と認定申請が必要です
- 認定後も定期的な報告が必要: 一定の要件を継続して満たしているか確認するために、都道府県や税務署への定期的な報告が求められます
- 免除を受けるための条件: 免除を受けるには、原則として後継者が死亡するか、一定期間経過後に次の後継者に事業承継税制の適用を受ける贈与を行う必要があります
⑧M&Aにおける相手先企業とのマッチング
M&Aを行う際は、自社にふさわしい相手企業を探すマッチングのプロセスも大切です。このプロセスでは、相手先業の経営方針、自社従業員の雇用に関する方針(雇用を継続したいかどうか)、見込まれるシナジー効果などを考慮するとよいでしょう。
自社にふさわしい相手先企業を十分に検討するには1~2社の候補では難しいため、M&Aアドバイザーに相談し、複数の候補を得ることも効果的です。
また、マッチングのプロセスだけでなく、実際にM&Aを進める際は、法務・税務・会計などの高い専門知識が求められるため、少しでも不安な点があれば、早期にM&Aアドバイザーに相談することをおすすめします。
M&A専門家の選び方とは
中小企業がM&Aによる事業承継を行う際は、専門家のサポートを受けるのが一般的です。最近では、コンサルティング会社、税理士・会計士・弁護士事務所、M&A仲介会社などの機関が事業承継支援を手掛けています。
経営者の中には、「M&A=会社を商品として安易に売り買いする」というネガティブイメージの捉えている方もいます。しかし、現在のビジネスシーンでは、M&Aによる事業承継を会社を存続させるための1つの手法として積極的に活用するケースが増加中です。
実際に後継者不在で廃業危機に陥った中小企業がM&Aで存続できたケースは多く報告されており、万が一の事態を回避するうえで、経営者の選択肢としてM&Aを入れておくとよいでしょう。しかしながら、M&Aは決して簡単に成功させられる取引ではありません。
M&Aでは、交渉条件で折り合いがつかなかったり、理想的な買い手が見つからなかったりする可能性も十分に想定されます。M&Aを成功させるには、自社の価値の正しい理解や、異業種を含めた各種業界の動向把握などが大切です。
また、M&Aを実行するには、専門的な知識(財務・税務・法務など)も必要であり、M&Aによる事業承継を経営者のみで進めるのは非常に困難だといえます。自社に適したパートナーと組んで戦略を策定していくのが、M&Aを成功させる秘訣です。
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事業承継問題の解決を図った成功・失敗事例
実際に事業承継を行った企業を把握しておくと、自社における計画策定に役立つ可能性が高いです。そこで本章では、事業承継の成功・失敗事例を取り上げ紹介します。
成功事例2選
まずは、成功事例として以下の2件を取り上げます。それぞれの事例からポイントを把握し、自社の計画策定に役立てましょう。
- M&Aによる事業承継の成功事例
- 早期に後継者教育を行った成功事例
①M&Aによる事業承継の成功事例
かねてよりA社では、経営者自身の子どもへの事業承継を検討していましたが、急逝により計画はかないませんでした。そこで、A社の経営者は、M&Aによる事業承継の実行を決断します。
これにより、M&Aにおける買い手企業の経営者が新たな社長としてA社に赴任しましたが、M&A後も前経営者が会長として残ったために従業員・取引先・顧客などに悪影響を及ぼすことなく事業を存続させられました。
②早期に後継者教育を行った成功事例
B社もかねてより経営者自身の子どもへの事業承継を計画していましたが、後継者の経営手腕・能力には不安な点が存在したため、10年間にわたる徹底した後継者教育を実施しました。
具体的には、経営者としての業務はもちろん、人事・会計・現場業務・営業に至るまで会社の業務全般を伝達しました。こうした徹底的な教育によって統括力を身につけた後継者は、事業承継後のB社の業績を向上させています。
失敗事例
一般的に「事業承継の失敗」とは、事業承継を実施したにも関わらず問題が生じてしまった状態をさしており、事業承継の実行有無に関する問題ではありません。まずは、事業承継の主な失敗事例として、以下の2つを取り上げます。
- 経営能力のない人材を後継者に据えてしまう
- 先代経営者が依然として権力を持ってしまう
事業承継は多くの時間と手間のかかる行為であり、後継者の選定・育成・相続対策・経営資源の移譲・相続に関する手続きなど、さまざまなプロセスを完了させる必要があります。これらのプロセスを遂行するには、5〜10年程度の期間が必要です。
特に、相続対策の手続き・経営基盤の円滑な移譲では専門的に高度な知識が必要となる場面があり、事業承継を経営者のみで取り組むのは非常に困難です。しかし、認識が甘いために、十分な知識を持たないまま社内の人材のみで事業承継を行おうとする会社も見られます。
こうした会社は事業承継におけるプロセスの実行が不十分であったり、後継者の育成が中途半端であったりするケースが多く、事業承継後に経営状態が悪化する可能性が高いです。事業承継の問題を避けるには、専門家にサポートを依頼するのをおすすめします。
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事業承継問題のまとめ
事業承継問題は中小企業を中心に深刻化している一方で、最近では問題を解消すべくM&Aなどの新たな手法も誕生しています。昨今の潮流を入念に踏まえて取り組んでいくことが、事業承継を成功させる秘訣です。
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