2021年4月29日更新資金調達

事業資金の借り入れを成功させるポイント

事業資金調達方法の中でも、借り入れは法人や個人事業主にとって馴染みのある方法ですが、借り入れするためには審査があります。借り入れを成功させるためには目的の明確化や綿密な返済計画などのポイントが重要となります。

目次
  1. 事業資金の借り入れ
  2. 事業資金の調達方法と種類
  3. 銀行からの事業資金借り入れ
  4. ノンバンクからの事業資金借り入れ
  5. 日本政策金融公庫からの事業資金借り入れ
  6. 事業資金借り入れの注意点とポイント
  7. まとめ

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事業資金の借り入れ

事業運営には、資金繰りを安定させるための運転資金が必要ですし、事業に関係する設備を新調、修理していくための設備資金が必要であり、多額の資金が必要となります。こうした資金を創業間もない時期や資金繰りが苦しいときに、売上のみで工面することは難しいです。

これら運転資金や設備資金を補う目的で、多くの中小企業や個人事業主の方は借り入れによる資金調達を実施しています。しかし、一口に借り入れと言ってもさまざまな機関が融資を実施しています。今回の記事では、事業に必要な資金を借り入れる際の手段やポイントを紹介します。

なお、事業資金の借り入れ先として多くの方が利用されている「銀行」と「日本政策金融公庫」に関しての、特徴やメリット・デメリットを解説します。

事業資金の調達方法と種類

そもそも、事業に必要な資金はさまざまな方法で調達することができ、主に以下の方法が挙げられます。

  1. 投資
  2. 負債
  3. 補助金、助成金

まずは、これらの調達方法について簡単に説明します。

①投資による事業資金の調達

株式会社であれば、投資家から自社の株式に投資してもらう形で事業資金を調達できます。上場企業でなくとも、第三者割当増資やベンチャーキャピタルからの投資による方法であれば、中小企業も利用できます。

第三者割当増資とは、第三者に新株を発行・売却する資金調達方法です。投資による事業資金は返済不要であり、返済による資金繰り悪化の恐れもありません。この点は借り入れと異なり魅力的に見えますが、投資によって事業資金を調達することにはデメリットもあります。

経営に介入され、最悪の場合には会社を乗っ取られるリスクもありますし、そもそも魅力ある会社でなければ投資して貰えないため、確実に事業資金を調達したい場合は不向きです。

②負債による事業資金の調達

負債額を増加させる形で行う事業資金の調達は、企業規模に関係なく広く実施されています。負債による調達には「借り入れ」と「社債の発行」があり、中小企業であっても「少人数私募債」という形で社債を発行することが可能です。

しかし、事業に必要な金額を集めることは困難であり、そのために借り入れが中小企業や個人事業主の方にとっては馴染みある方法となっていますが、銀行や消費者金融・事業者金融などのノンバンク、国の機関など、借り入れ先はさまざまです。

どこから借り入れるかによって金利や審査の条件が異なるため、借入先は慎重に選ぶ必要があります。

負債は返済義務が生じる

借り入れや社債による調達では、必ず返済しなくてはいけません。そのため、毎月の返済や利子の支払いによって、資金繰りが悪化するリスクがありますし、借りるためには融資審査に通過しなくてはなりません。

ただ、審査にさえ通ることができれば中小企業や自営業者でも確実に事業資金を調達できるメリットもあります。また、運転資金の借り入れの際に利用することが多い当座貸越契約(個人でいうところのカードローン)であれば、事業に関係するどのような目的にも利用できることもメリットです。

③補助金・助成金による事業資金の調達

国などからの補助金や助成金も、事業に役立つ調達方法の一つです。近年の景気悪化により、多くの中小企業や個人事業主が苦境に立たされており、その事情をふまえてさまざまな補助金・助成金を交付しています。

条件に合致すれば、数百万円規模で事業資金を調達可能なうえに、返済の必要はありません。ただし、各補助金や助成金ごとに交付対象や交付金額・条件が異なっています。事業のために交付を受ける際には、各制度の概要を把握することが大切です。

ここで、国が交付する補助金の代表例を挙げていきます。

  • 創業・第二創業促進補助金
  • 小規模事業者持続化補助金
  • 事業承継補助金

中小企業や個人事業主の多様なニーズを幅広く網羅しているため、積極的に活用したいものばかりですが、条件を満たさなければならないものもあります。

その場合は、M&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所には知識と経験が豊富なM&Aアドバイザーが、事業承継税制などを活用したM&Aをサポートいたします。ご相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

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銀行からの事業資金借り入れ

ここから、本題である事業資金の借り入れについて解説していきます。事業で必要な運転資金や設備資金は、どこから借り入れるかによって、その成功確率や借り入れ後の資金繰りが左右されます。さきほどもお伝えしましたが、借り入れ先は主に銀行・ノンバンク・国の機関(日本政策金融公庫)があります。

ここでは、これら3つのうち、とくに利用度の高い銀行と日本政策金融公庫の特徴やメリット・デメリットをお伝えしていきます。まずは銀行の特徴やメリット・デメリットを見ていきましょう。

銀行の特徴

個人事業主や中小企業の事業資金借り入れというと、銀行思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。全国各地にある銀行では、事業者向けに融資を行なっています。銀行の特徴としては、比較的低金利である一方で審査は厳しいです。

返済の可能性が低いと判断されてしまうと、多くのケースで融資審査に通過することができません。そのため、銀行から事業資金を借り入れたい場合は、可能な限り業績を改善し、プロパー(信用貸し)ではなく信用保証協会の保証を得ることが大切です。

銀行金利は他の借り入れ手段を用いた場合よりは低く、年末年始のキャンペーンや銀行同士で競合させるなどの工夫すれば、さらに低い金利で事業資金を借り入れることができます。

取引内容を重要視する傾向が強い

一般的に融資審査の厳しい銀行ですが、自行との取引内容を重要視した人情味のある審査を行う傾向が強いです。たとえば、まったく取引をしていない企業と、売上の入金や各種決済を普段から行っている企業とでは、圧倒的に後者のほうが融資を受けやすいです。

近年では、銀行同士の競争が激化しており、メイン取引を行う企業や個人事業主は重宝されます。また、普段から付き合いがあるのに、銀行の本業ともいえる融資で協力できないとなれば銀行としての信頼にも関わってきます。

銀行から借り入れをする際は、普段から取引している銀行に相談することが望ましく、それ以外の銀行に相談する場合は、メイン銀行に切り替えることも可能という気持ちで臨むと期待に応えてくれる可能性が高くなります。

銀行から事業資金を借り入れるメリット

銀行から事業資金を借り入れる最大のメリットは、なんといっても金利の低さであり、中には1%以下の金利で借り入れできる事業者も存在します。その一方で、3%前後の金利で借りることになることもあります。

これは、銀行で「格付け」と呼ばれるランク分けを行っているからであり、そのランクが優良であるほど金利が下がる仕組みとなっているからです。格付けは主に企業の決算で判断され、財務内容が良いほど優良と判断されます。

もちろん、財務内容がそれほど良くなければ低いランクとなり、高金利での融資やお断りといった対応となるのですが、ここで取引内容によって多少の金利引き下げや融資決定となる場合もあります。

銀行から事業資金を借り入れるデメリット

銀行から事業資金を借り入れるに際して、大きなデメリットはないといっても過言ではありません。強いて述べるとすれば、審査が厳しい点です。債務超過で返済能力に乏しい中小企業や個人事業主は、銀行から借り入れできない可能性があります。

また、一概にデメリットだとはいえませんが、書類が煩雑で面倒です。借り入れをするために多くの書類が必要であり、すべて揃わなければ融資を受けることができません。しかし、その書類で説得力のあるものを提出できれば、融資決定となるケースもあります。

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ノンバンクからの事業資金借り入れ

次に、ノンバンクの特徴やメリット・デメリットを見ていきましょう。なお、先にお伝えしておきますが、銀行と日本政策金融公庫は融資までに1ヶ月程度かかることが一般的であり、急な融資には対応できない可能性が高いです。

その一方で、ノンバンクでは最短で数日~1週間の融資も可能となっておりますので、急な資金調達が必要の際はノンバンクの利用をおすすめします。

ノンバンクの特徴

ノンバンクとは、消費者金融や信販会社、事業者金融などの貸金業者をさしており、銀行との大きな違いは預金や為替業務を行わず、融資に特化した会社です。消費者金融や信販会社というと、個人が借りるところというイメージがあります。

しかし、消費者金融や信販会社でも事業性資金の融資を行っているところがあります。また、事業者金融は個人への融資は行わず、事業性資金の融資を専門に行う会社であり、不動産を担保に高額な融資にも対応しています。

ノンバンクから事業資金を借り入れるメリット

ノンバンクから事業資金を借り入れるメリットは、圧倒的に早い融資スピードにあります。さきほどもお伝えしましたが、銀行や日本政策金融公庫では融資までに1ヶ月程度かかるのが一般的です。これに対してノンバンクでは、最短数日という非常に早い融資が可能です。

また、銀行や日本政策金融公庫と比べて、融資に必要となる書類が少ないこともメリットです。必要な書類が多いことで、借りる側はその準備に時間がかかり、それが融資までの期間を長くしている要因にもなります。

逆に、書類が少ないことで借り入れする側もすぐに用意できますので、このことも融資スピードに特化したノンバンクならではのメリットであるといえます。

将来性を重視した審査を行う

ノンバンクでは、銀行のようにこれまでの業績から会社の信頼度を判断するのではなく、将来性に重きを置いた審査を行います。そのため、将来性を認められることができれば、赤字や債務超過の状態となっていても資金調達できる可能性があります。

また、後述しますがノンバンクは高金利であることがデメリットです。しかし、金利が高いことで受けられる融資もあります。ノンバンクに限ったことではありませんが、融資をして得た利息は収入となり、その中の一部はリスクに備えるための引当金に充てられます。

高金利で多くの利息を得られるノンバンクでは、低金利な銀行や日本政策金融公庫よりも多くの引当金を用意することができます。そのため、不良債権となるリスクの高い会社に対しても融資を行うことができるため、借りる側にしてみると借りやすい先ということになります。

ノンバンクから事業資金を借り入れるデメリット

ノンバンクで事業資金を借り入れる最大のデメリットは、金利です。金利が高くなると、比較的少額な金額を借り入れても発生する利息は多くなります。それが、その後の資金繰りを圧迫してしまう可能性があります。

また、会社が借り入れを行った場合、決算書にその内容を記載することになりますが、ノンバンクからの借り入れがあることで銀行や日本政策金融公庫での印象が悪くなってしまう可能性もあります。ノンバンクからの借り入れは、高金利による資金繰りの悪化を招くだけが問題ではありません。

急な資金調達が必要となってノンバンクを利用した場合、計画性が乏しい経営をしていると判断されやすくなります。銀行は過去の業績を重視した審査をしますが、将来性も見ていないわけではありません。とくに将来性に不安がある場合には、融資不可となる可能性が高いです。

ノンバンクから資金調達する際は、こうしたデメリットについてきちんと把握しておくことが大切です。

日本政策金融公庫からの事業資金借り入れ

最後に、国の機関である日本政策金融公庫の特徴やメリット・デメリットを見ていきましょう。

日本政策金融公庫の特徴

日本政策金融公庫は、国が全額出資している金融機関であり、社会の需要に合致するさまざまな資金提供を実施しています。中小企業や自営業者向けに多様な借り入れ制度を提供しており、中には商工会議所と連携した融資制度もあります。

日本政策金融公庫は、銀行では融資ができない案件に対しても積極的に融資を行っており、創業資金や業績が悪化している企業・個人事業主などでも借りられる可能性があります。また、低金利で借りられることも魅力です。

日本政策金融公庫は国の金融機関ということもあり、利益を求めておらず、あくまでも資金の円滑化を目的に活動しています。場合によっては、株式会社で利益を求める銀行では考えられないほどの低金利で借りられることもあります。

ただし、日本政策金融公庫の融資財源は国民の税金ですので、だれでもどんな理由でも借りられるほど甘いわけではありません。

日本政策金融公庫から事業資金を借り入れるメリット

日本政策金融公庫から借り入れるメリットは、銀行よりも借り入れできる可能性が高い点です。日本政策金融公庫の融資審査では、銀行と同様にこれまでの業況を見るのですが、それよりも将来性を重要視して融資の判断を行います。

また、経営者の人間性も審査の対象となり、誠実な対応や書類の完成度が借り入れできるかを左右します。そのため、銀行に融資を断られた事業者でも借り入れできる場合があり、さらに保証人や担保が不要で借り入れできるケースがある点です。

無担保無保証で借り入れできる点は、事業者にとって非常に魅力的なメリットです。しかし、制度によっては担保提供したほうが低金利となりますので、借り入れする金額や資金繰りを考慮して選択すると良いでしょう。

長期返済や元金据え置きも可能

利用する融資制度にもよりますが、日本政策金融公庫からの借り入れは長期返済や元金の据え置きも可能です。その一部をご紹介します。

融資制度 融資期間 据置期間
一般貸付 設備資金:10年以内
特定設備資金:20年以内
運転資金:7年以内
設備資金・特定設備資金:2年以内
運転資金:1年以内
取引企業倒産対応資金 運転資金:8年以内 3年以内
事業承継・集約・活性化支援資金 設備資金:20年以内
運転資金:7年以内
設備資金:2年以内
運転資金:2年以内
出典:日本政策金融公庫融資制度一覧より抜粋(2020年1月現在)

据置期間と返済期間の合計で融資期間を超えることはできませんが、たとえば多くの事業者が利用できる一般貸付で運転資金を借り入れた場合、元金を1年据え置きし、その後に6年かけて返済していくことが可能です。

なお、上記表にありますように、日本政策金融公庫では事業承継に関係する資金も借り入れすることができます。しかし、事業承継だけでも専門的な知識や手間、時間が必要であり、それに加えて資金調達も行うとなれば経営者だけではスムーズに進めていくことは難しいです。

事業承継などのM&Aと資金調達を同時に行いたい場合は、ぜひM&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所には経験豊富なアドバイザーが在籍しており、M&Aだけでなく資金調達についてもサポートさせていただきます。

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日本政策金融公庫から事業資金を借り入れるデメリット

日本政策金融公庫は国の機関であるため、銀行よりも資金を調達するまでに時間がかかります。また、提出しなければならない書類も多く、面談時の印象など融資決定の判断となる要素も多いです。

ですが、それを補うだけの魅力がありますので、ぜひとも利用したい金融機関であることに変わりありません。

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事業資金借り入れの注意点とポイント

ここで、事業運転資金を借り入れる際のポイントを紹介します。なお、今回は銀行と日本政策金融公庫に共通するポイントを解説します。

①借り入れ目的の明確化

借り入れをする目的が明確でなければ、事業資金を融資してもらうことはできません。そのため、「とりあえず資金が必要」や「とにかく資金がたくさん欲しい」といった理由では、どこも貸してくれません。「仕入れ費用が増加した」「売り上げ増加を図る」といった目的を明確に伝えましょう。

また、後述する返済財源にも関係しますが、借り入れた資金によってどのような効果があるかも説明する必要があり、それによって融資する側が納得してはじめて、事業資金の借り入れに成功します。

②返済期間の計画をしっかり立てる

借り入れを行う際に「なんとなく◯◯年以内に返済する」といっても、その借り入れに計画性はありません。借り入れの種類や利益計画に基づき、根拠を持たせた計画を立てる必要があります。また、再び借り入れを実施する見込みがあれば、再度借り入れる時点までにある程度借り入れ残高を減らすことが大切です。

返済期間の計画は、無理のない範囲で長期的な目線で策定することが望ましいです。

③返済財源を明確に示す

融資を実行する側は、返済の見込みがある相手にしかお金を出さないため、返済見込みがある旨を示すことが必須です。利益目標や担保の返済財源を、数字的な根拠を持たせたうえで明確に示す必要があります。

そのためには、ご自身で返済の可能性を事前にシミュレーションしてみることが大事です。返済財源を考え、何年以内に確実に返済できるかシミュレーションすることで、融資担当者に根拠ある説明をできますし、借りる側としても今後の資金繰りを考えることができます。

あくまで融資する側もビジネスのため、確実に返済できる相手にしかお金を出しません。借り入れた資金の必要性を訴え、それによって確実な返済財源を確保できると証明するか、もしくは業績改善に取り組み、借り入れ可能性を高くしましょう。

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まとめ

今回は、事業資金の借り入れに関して解説しました。事業資金調達方法の中でも、借り入れは企業や個人事業主にとって馴染みのある方法ですが、返済によって資金繰りが悪化するリスクには注意しなくてはいけません。

銀行や日本政策金融公庫が主な借り入れ先となりますが、確実に返済できる旨を示すことが大切であり、それに伴って綿密な計画を立てる事が不可欠です。また、借入先によって借り入れできる可能性を高くする方法は少し違いますので、それぞれのポイントを押さえておくことも大事です。

最後に、この記事の要点をまとめると下記になります。

  • 事業資金調達方法は「投資」「負債」「補助金・助成金」の3つ
  • 銀行からの事業資金借り入れのメリット→金利が低い、人情味ある審査
  • 銀行からの事業資金借り入れのデメリット→審査が厳しい、必要書類が多い
  • ノンバンクからの事業資金借り入れのメリット→融資スピードが早い、必要書類が少ない、借りやすい
  • ノンバンクからの事業資金借り入れのデメリット→金利が高い、銀行や日本政策金融公庫の印象が悪くなる
  • 日本政策金融公庫からの事業資金借り入れのメリット→借り入れの可能性が高い、無担保無保証人が可能
  • 日本政策金融公庫からの事業資金借り入れのデメリット→資金調達まで時間がかかる、必要書類が多い
  • 事業資金を借り入れる際のポイント→「借り入れ目的の明確化」「返済期間の計画をしっかり立てる」「返済財源を明確に示す」

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