M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2024年5月28日更新会社・事業を売る
企業買収とは?M&Aとの違い・仕組み・メリットやデメリットをわかりやすく解説
企業買収は今や一般的な経営戦略として扱われており、企業買収を視野に入れて経営をしている企業も少なくありません。本記事では企業買収の目的や仕組み、M&Aとの違いなどをまとめました。買収されると会社にどのような影響をもたらすのか、具体的な事例も紹介しながら解説しています。
目次
企業買収とは?
昨今、M&Aによる企業買収はさまざまな会社が実施を検討しており、「M&A=企業買収」のイメージを持っている経営者の方も少なくありません。しかし、今や企業買収は、ポピュラーな経営戦略の手法となりつつあります。
この企業買収は多様な手法に分かれており、それぞれに異なるメリットやデメリットが存在します。そのため、これらのポイントを十分に踏まえたうえで実施しないと失敗してしまいかねません。そこで今回は、企業買収の目的・手法・メリット/デメリットなどを中心に紹介します。
企業買収の意味
企業買収を文字通り読むと「企業を買収する」となりますが、厳密には企業における議決権の過半数や一部の事業を買い取る行為を意味します。つまり、企業買収とは、対象となる企業の経営権・事業を買収する行為のことです。
M&Aにより企業買収を行うと、買い手となる企業は対象企業の支配権を獲得する一方で、対象企業は買い手となった企業の子会社あるいは完全子会社となります。
なお、M&Aから企業買収を連想する経営者の方も多いですが、M&Aは正確には「Mergers(合併)」と「Acquisitions(買収)」の双方の意味を含む行為です。
広義のM&Aには、企業同士の連携も含まれており資本提携や一部株式譲渡などもM&Aに該当する手法です。M&Aによる企業買収にもさまざまな手法が存在しているため、実施時は自社に最適な手段を選び取る必要があります。
企業買収と合併の違い
買収と合併は一見すると似ているようにも思えますが、合併では経営統合の実施時に当事会社のいずれかが消滅します。買収は、会社法上では株式譲渡や事業譲渡をさす言葉です。株式譲渡は売り手企業が買い手企業の子会社になり、事業譲渡では売り手企業の事業の一部あるいは全部が買い手企業へ譲渡されます。
なお、合併には吸収合併と新設合併の大きく2種類があり、承継先が既存会社であるか新設会社であるかが異なります。
企業買収とM&Aの違い
「買収」と「M&A」はよく使われるビジネス用語ですが、同じものを指しているわけではありません。
「M&A」は「合併と買収」を意味する英語の頭文字をとったもので、その範囲は非常に広いです。合併は、2つ以上の会社が一つになることを指し、買収はある会社が他の会社を所有することを意味します。しかし、「M&A」は買収や合併だけでなく、業務提携や資本提携など、企業間のさまざまな経済活動も含んでいます。
それに対して、「買収」はより具体的なアクションのことです。一つの企業が他の企業を全部または一部買い取ることをさし、その結果として買収した企業が買収された企業の所有権を持つことになります。
つまり「買収」は「M&A」の一部であり、「M&A」は企業間の取引の広範なカテゴリをカバーします。それぞれの状況に合わせて、これらの用語を適切に使い分けましょう。
企業は買収されるとどうなる?
「企業は買収されるといったいどうなってしまうのか」という疑問は、経営陣だけではなく社員や取引先にも生じてきます。企業は買収されると大きく変化することも多いため、事前に知っておくことでスムーズに対応できます。具体的には、以下6つの部分で変化が生じやすいことを理解しておいてください。
- 社風
- 社員の待遇
- 役員の待遇
- 人事制度
- 福利厚生
- 取引先
買収先に重複する職務やポジションがある場合は組織再編成が行われ、一部の社員や役員が影響を受ける可能性があります。新しい所有者が自社の経営陣を導入することもあるため、社風や人事制度、福利厚生、取引先なども変化してくるのが一般的です。急な変化に社内や取引先がとまどわないようにするためにも、事前に説明して必要な引き継ぎを行なっておくことが望まれます。
社内への影響については以下の記事でも解説していますので、参考にしてみてください。
敵対的買収と友好的買収
法的には、どんなに資金があっても相手企業のオーナーが嫌だといえば買収できない仕組みとなっています。企業買収は、買収される側がM&Aを望むか否かによって、M&A取引を敵対的買収と友好的買収とに分けて扱います。
敵対的買収と友好的買収の相違点
企業買収は敵対的買収と友好的買収の2つに分けることができ、買収対象とされた企業の合意が取り付けられないまま、株式取引市場で対象企業の株式が買い集められることを敵対的買収と呼びます。
具体的には、TOB(株式公開買付)と呼ばれる証券取引所を通さない取引で不特定多数の株主から株を買い集める方法、証券取引所で行う取引で株を買い集める方法とがありますが、一般的にTOBを用いることが多いです。
対して、友好的買収は売り手企業の経営陣の同意下で実施されるM&Aをいい、日本で実施される企業買収のほとんどは友好的買収に分類されます。
敵対的買収は、株式が上場されていない場合は仕掛けることができない方法です。中小企業は株式を証券取引所で公開していないので、敵対的買収は起こりません。
企業買収の最新動向
日本の中小企業庁が提供している「中小M&Aガイドライン」によれば、2025年までに日本全国で約245万人の中小企業や小規模事業の経営者が70歳という一般的な退職年齢を迎える予定です。さらに驚くべきことに、そのうち約127万人は次の経営者をまだ決めていないという状態です。
経営者がいないという事態は、その企業が廃業する可能性を高めます。以前は家族の中から後継者を見つけるのが一般的でしたが、最近の傾向は少し異なります。少子高齢化の影響もあり、後継者が見つからない中小企業の多くが、他の企業や第三者との合併や買収(M&A)を通じて事業を引き継ぐ選択をしています。
企業買収の目的
企業のさらなる成長の実現
企業買収の代表的な目的は、企業のさらなる成長の実現にあります。企業買収により事業領域を拡大し、異なる企業のノウハウ・設備などを取り込んで経営のシナジー効果を獲得すれば、企業がより成長するきっかけを作れます。これと同時に、買収対象企業の人材・シェアなどを獲得できる点も非常に有益です。
企業買収は、新規事業に進出する際にも大いに活用できます。企業買収であれば、新事業に必要なノウハウ・設備・許認可などをまとめて獲得できるため、事業拡大にかかるコストを軽減できる可能性が高いです。さらには、新しいエリアに展開したい際にも、企業買収を利用すれば容易に進められます。
海外進出
最近では、企業の海外進出のために企業買収が活用されるケースも多いです。特定の国・地域に進出するために企業買収を行っている日本企業は、数多く見られます。
これは新規エリアでの事業展開を目的とする企業買収と類似するケースであり、現地企業の買収がその国への進出の足掛かりです。当然ながら、現地企業は現地の習慣・法律・市場動向など経営の必要事項を心得ているため、買収すれば海外進出を効率的に進められます。
経営再建
経営が悪化している企業であれば、経営再建を目的に企業買収を行うケースもあります。これは特に売り手となる企業に多い目的であり、売り手から見れば会社売却に該当する行為です。
たとえ経営状態が悪化し赤字から脱却できない企業であっても、会社売却を行えば買い手企業による新たな資金の投入などを通じて経営再建のめどを立てられます。そして何よりも売り手企業の経営者のメリットとして大きいのは、自分の企業を存続させられる点です。
その一方で買い手企業としても、経営が悪化している企業に投資して収益性を引き上げれば、自社の成長に寄与させることが出来ます。ただし、こうした目的を掲げる企業買収では、特に売り手企業の選び方に注意が必要です。
事業承継
事業承継も、売り手となる企業が企業買収の当事会社となる際に掲げる目的の1つです。もともと事業承継からは、「経営者が自身の子供を後継者として企業を承継させる」パターンを連想する経営者の方が多く見られます。
しかし、近年では中小企業を中心に後継者不在の問題が深刻化しており、後継者がいないために廃業を余儀なくされる企業が増加傾向です。こうした企業にとって企業買収は有効的な手段であり、買い手企業に買収してもらえば企業の存続だけでなく企業の成長までかなえられる可能性があります。
そのため、近年ではM&Aによる企業買収を利用して事業承継を行う企業が増えています。
事業のリスクヘッジ
買収を通じて事業リスクを分散できることも、大きな利点です。私たちは今、VUCA(ブーカ)と呼ばれる時代に生きています。
これは、変動性(Volatility)、不確実性(Uncertainty)、複雑性(Complexity)、曖昧性(Ambiguity)の頭文字を取った言葉で、先の見通しがつかない難しい時代を意味します。この時代では、製品が市場に出てから売れなくなるまでの期間、「プロダクトサイクル」が短くなっています。
このような状況では、事業の多角化を通じてリスクを分散することが非常に重要です。たとえ現在は業績が良い主力事業でも、急激に環境が変わる可能性がありますし、時代の変化によって徐々に衰えていく可能性も考えられます。
早い段階で他の事業を買収し、新たな収益源を確保することは、将来の不確実性に備えるうえで有効な戦略です。これにより、一つの事業がうまくいかなくても他でカバーできるようになり、リスクを抑えることができます。
企業買収をご検討の際は、ぜひM&A総合研究所にお任せください。M&A総合研究所では、豊富なM&Aの知識・経験を持つアドバイザーがM&Aをフルサポートしております。
通常、M&Aによる企業買収には半年〜1年程度の期間が必要とされていますが、M&A総合研究所ではスピーディーなクロージングを目指しており、最短3カ月での成約実績を有している点も強みです。
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企業買収のメリット・デメリット
M&Aによる企業買収を実際に行う際は、メリットとデメリットを十分に把握しておかなければなりません。そこで本章では、企業買収に伴うメリットとデメリットを順番に取り上げます。はじめに紹介するのは、企業買収に伴うメリットです。
企業買収のメリット
企業買収のメリットは、異なる企業同士の経営統合により得られるシナジー効果とも言い換えられます。企業買収を行うと、他の企業のノウハウ・技術・人材などさまざまな要素を吸収可能です。これらの経営資源を利用すれば、事業拡大・新事業への参画などが容易に進められます。
企業買収は、財務力の強化にも繋がり、事業資金の充実している企業を買収できれば、資金力が向上するだけでなく資金調達時にかかるコストの軽減も期待できます。企業買収で期待できる主なメリットは、以下の通りです。
売上シナジーの獲得
企業買収を行う際に、自社のビジネスと関連のある企業を選択することで、売上シナジーの獲得を期待できます。売上シナジーは、たとえば売上100の会社が売上50の会社を買収した場合、企業買収後の売上が200や300まで上昇した、というような効果です。
企業買収により「クロスセリングを含む販路の拡大」「営業チャネル・ノウハウの獲得」「ブランド力の活用」「開発力の強化」等が見込まれる場合は、大幅な売上シナジーが期待できます。
コスト削減シナジーの獲得
売上シナジーだけでなく、企業買収を行うことで企業グループ全体としてコストが削減できる場合があります。買収により「仕入れコストの減少」「販売コストの減少」「製造コストの減少」「間接部門コストの減少」等が見込まれる場合は、コスト削減シナジーが期待できます。
リスクを分散できる
企業買収を行う買い手企業のメリットに、事業の多角化によるリスク分散があります。企業買収を通じて複数の事業を同時に運営すれば、買い手企業全体では、ある事業が不調でもほかの好調な事業によりカバーできる可能性が高くなります。
企業グループ全体の利益が安定し極端な赤字が生じにくくなることが、企業買収によるリスク分散効果です。
経営手法の導入による社員の意識改革
買収によって経営手法を導入すれば、業務の無駄を省いて効率化が可能です。また、売り手と買い手の異なる企業文化をうまく融合できれば、社員の意識改革につながります。社員の意識やモチベーションが高まれば、業務の効率があがり生産性の向上にも期待できます。
財務力を強化できる
信用力のある会社同士が企業買収により統合された場合、銀行や投資家からの資金調達が容易になる効果があります。資金調達が容易であれば、資本コストが下がることに繋がるため、将来の収益力の上昇も見込めます。
企業買収のデメリット
企業買収のデメリットには、主に以下の2つが挙げられます。
- 不要なものを承継する可能性がある
- 人材の流出を招く可能性がある
それぞれのデメリットを把握して、自社の企業買収戦略の策定に役立てましょう。
負債・不要な資産・契約を承継する可能性がある
主として企業買収は対象となる企業の経営権を獲得する行為であり、対象となる企業を包括的に承継する行為です。つまり、買い手となる企業は買収対象企業のすべてを引き継ぐため、この中には負債・不要な資産・契約などのネガティブな項目も含まれます。
とりわけ債務に関しては帳簿に記載されていない簿外債務・偶発債務などが懸念材料となり、企業買収時に気付かないまま承継してしまうと後々トラブルに発展する可能性が高いです。これを回避するには、買い手・売り手の両社で協議を重ねて、トラブルの種となる要素を排除しなければなりません。
人材の流出を招く可能性がある
企業買収は異なる企業同士が経営統合する行為であるため、必ずしも従業員が歓迎するとは限りません。異なる企業であれば、理念・風土・ルールなどの企業文化も異なるため、従業員同士で摩擦が発生するリスクは十分に考えられます。
特に売り手となる企業では、買い手となる企業の傘下に入ることを不満に感じる従業員の発生が懸念されます。実際にM&Aによる企業買収を行ったことで、従業員が流出したケースは珍しくありません。
もしも事業の中核を担うような人材が流出してしまえば、想定していたシナジー効果が大幅に低下するおそれがあります。したがって、企業買収への反発が想定される従業員がいる場合には、事前に説得しておくと良いでしょう。
企業買収の成功事例5選
本章では、企業買収の成功事例として以下の5つを取り上げます。
- サコスグループによる親和電気の株式取得(株式譲渡)
- ユーグレナによるLIGUNAとの株式交換
- ジェクシードによるXYEEDの株式取得(第三者割当増資)
- ワットマンによるシナノ・グループのゲームステーション事業の譲受(事業譲渡)
- サンケン電気によるGSユアサへの子会社譲渡(会社分割)
それぞれの事例からポイントをつかんで、自社の企業買収戦略の策定に役立てましょう。
①サコスグループによる親和電気の株式取得(株式譲渡)
2021年1月、株式譲渡により、サコスグループは親和電気の株式すべてを取得すると発表しました。本件企業買収の取引価格は非公開です。買収側のサコスグループは、機械/機器のレンタル・リース業・機械・機器などの輸出入および販売業を展開しています。
対する売却側の親和電気は、名古屋市を拠点に、総合電気設備/資材卸販売業・電気をアクセスとした快適空間・環境商品の開発・関連工事請負業などを手掛けている企業です。
本件企業買収の目的は、グループの成長戦略の達成および中長期的な企業価値向上にあります。
②ユーグレナによるLIGUNAとの株式交換
2021年1月、ユーグレナは、LIGUNAとの間で簡易株式交換を実施すると発表し、株式交換契約を締結しました。本件株式交換では、ユーグレナを株式交換完全親会社、LIGUNAを株式交換完全子会社としています。ユーグレナは、藻類の一種であるミドリムシを中心とした微細藻類に関する研究開発・生産管理・品質管理・販売などを展開している企業です。
ミドリムシの59種類の栄養素を活用し食品販売・化粧品販売を展開しながら、ミドリムシ由来のバイオジェット燃料・バイオディーゼル燃料の研究開発を行っています。一方のLIGUNAは、スキンケア・雑貨・食品の企画開発および通信販売事業などを手掛けています。
本件企業買収の目的は、ユーグレナの直販顧客基盤をはじめとする事業基盤・ブランド力・資金力と、LIGUNAのサステナブルな健康や美容を実現する商品開発力・ブランド力の融合による協業の実現です。
③ジェクシードによるXYEEDの株式取得(第三者割当増資)
2020年12月、ジェクシードは、株式取得および第三者割当増資の引き受けによりXYEEDを子会社化すると発表しました。本件企業買収の金額は1,000万円です。
買収側のジェクシードは、ERPコンサルティング・人事コンサルティング・業務効率化・セキュリティ対策を手掛ける企業です。クラウドストレージ「Box」・AIオペレーター「commubo」・業務自動化RPA「UiPath」の導入支援コンサルティングで得た経験を生かし、企業のテレワーク推進を支援しています。
対する売却側のXYEEDは、教育事業を展開する企業です。本件企業買収の目的は、教育事業の拡大およびグループとしての収益力強化にあります。
④ワットマンによるシナノ・グループのゲームステーション事業の譲受(事業譲渡)
2020年12月、ワットマンは、事業譲渡の手法を用いてシナノ・グループのゲームステーション事業を譲受すると発表しました。本件企業買収の金額は非公開です。
買収側のワットマンは、神奈川県に本社を置く販売事業者です。 以前は家電製品の販売事業を中心としていましたが、現在はリユース・リサイクル事業を主軸としています。
売却側のシナノ・グループは、「TSUTAYA」「Game Station」などのメディアのほか、ウェルネス・不動産事業を展開する企業です。本件企業買収の目的は、神奈川県におけるホビー商材専門店の出店推進にあります。
⑤サンケン電気によるGSユアサへの子会社譲渡(会社分割)
2020年8月、サンケン電気は、吸収分割を採用して、パワーシステム事業のうち社会システム事業を子会社「サンケン電設」に承継させたうえで、サンケン電設の発行済株式すべてをGSユアサに譲渡すると発表しました。本件企業買収の金額は、約48億円です。
買収側のサンケン電気は、埼玉県新座市に本社を置く電気機器メーカーです。電源3社の一角を占めており、3社の中で最も事業規模が大きく中心的存在に位置づけられています。
GSユアサは、ジーエス・ユアサ コーポレーションのグループ企業です。自動車用/産業用各種電池・電源システム・受変電設備・照明機器・紫外線応用機器・その他電気機器の製造・販売を手掛けています。
本件企業買収の目的は、主力の半導体デバイスとパワーモジュールへの経営リソースの集中に伴う、一層の競争力強化・経営効率向上の推進・さらなる企業の成長にあります。
企業買収の失敗事例5選
本章では、「実際に企業買収を行い会社の買収を失敗した」事例を5つ取り上げます。
- のれんの減損処理が巨額に上ったケース
- M&A後に売り手企業で不祥事が発覚したケース
- 新規事業への進出に遅れを取ったケース
- バブル崩壊の影響を受けたケース
- 資金投入のタイミングを誤ったケース
それぞれの事例を順番に詳しく解説します。
①のれんの減損処理が巨額に上ったケース
1つ目は、のれんの減損処理が巨額に上ったことが原因となり失敗に発展した企業買収の事例です。そもそも「のれん」とは、企業買収で買収された企業による将来収益の獲得力を買い手企業が評価したもので、貸借対照表では無形固定資産として計上されます。
もしも企業買収後に対象となった企業の収益力が低下したと判断される場合、のれんの評価を引き下げて損失処理を行わなければなりません。この手続きを、「のれんの減損処理」と呼んでいます。
例えば、買い手企業が売り手企業の全株式を現預金1,000で子会社化したとします。買い手企業の単体仕分けは以下の通りです。
借方 | 貸方 | ||
売り手企業株式 | 1,000 | 現預金 | 1,000 |
一方で、売り手企業の資本金が200、利益剰余金が300だったら、買い手企業の連結仕分けは以下のようになります。
借方 | 貸方 | ||
資本金 利益剰余金 のれん |
200 300 500 |
売り手企業株式 | 1000 |
このように、連結会計では取引価格と売り手企業の資本金や利益剰余金との差額が、のれんとして無形固定資産に計上されます。
国際会計基準(IFRS)では、売り手企業の収益力が低下すると、のれんの額を見直して引き下げなければならず、その引き下げ額が「のれんの減損」です。
過去に巨額ののれんの減損処理を行った企業には、以下のような企業があります。
- 東芝(米原発子企業ウエスチングハウス社の買収で約7,200億円の減損処理(2017年3月期))
- 日本郵政(豪物流子企業トール・ホールディングス社の買収で約4,000億円の減損処理(2017年3月期))
- パナソニック(三洋電機の買収で約2,500億円の減損処理(2012年3月期))
- 富士通(英国ICL社の買収で2,900億円の評価損計上(2007年3月期))
- NTTコミュニケーションズ(ベリオ社の買収で5,000億円の減損処理(2001年9月))
②M&A後に売り手企業で不祥事が発覚したケース
2つ目に取り上げるのは、M&A後に売り手企業で不祥事が発覚したことで失敗に発展した企業買収の事例です。2008年、第一三共はインドの後発医薬品メーカー「ランバクシー」を買収しました。
買収側の第一三共は、日本の大手製薬会社です。武田薬品工業・アステラス製薬・大塚ホールディングス・エーザイと合わせて、国内製薬会社大手5社の1つに数えられています。
本件企業買収の金額は当時の為替レートで約4,900億円と発表され、大規模M&Aとして注目を浴びました。ところが、第一三共は2009年3月期にランバクシー関連で3,500億円以上の特別損失を計上しています。特別損失の原因は、ランバクシーの抱えるトラブルに気が付かなかった点にあります。
この企業買収ではTOBが採用されましたが、TOB期間中に製造器具の洗浄状況・生産管理・品質管理などの記録の問題が改善されていないことを理由に、30種以上の医薬品の米国への輸出を禁止する措置を講じられました。
これにより、ランバクシーの株価は買収価格より70%近く下落してしまい、特別損失を計上しなければならなくなりました。以上の失敗を踏まえて、売り手企業のトラブルを洗い出すためにも、企業買収ではデューデリジェンスを徹底すると良いでしょう。
③新規事業への進出に遅れを取ったケース
3つ目に、新規事業への進出に遅れを取ったことで失敗に発展した企業買収の事例を取り上げます。2014年、アメリカのマイクロソフトは、フィンランドの通信インフラベンダー「ノキア」のデバイス事業を買収しました。当時の買収額は約72億ドルと発表されています。
買収側のマイクロソフトは、ソフトウェアの開発・販売を手掛ける会社で、1975年にビル・ゲイツとポール・アレンにより創業されました。
1985年にはパソコン用OSのWindowsを開発し、1990年にはWindows向けのオフィスソフトとしてMicrosoft Officeを販売するなど、世界的に高い知名度を誇る企業です。
対する売却側のノキアは、従来型の携帯電話の時代に世界トップのシェアを誇っていたメーカーです。本件企業買収の当時、マイクロソフトはスマートフォン事業でApple・Googleなどに大きな遅れを取っていました。
そのため、ノキアの買収によりスマートフォンへの対応を加速化させる狙いがありましたが、買収後もスマートフォン事業の遅れを取り戻せませんでした。
結果的に翌年の2015年にはCEOを変更し、元ノキアの社員を大量にリストラしたうえに約76億ドルの減損損失を計上しています。このように、企業買収ではたとえ買収自体には成功したとしても、その後の業績向上につながらず失敗に発展するおそれがあります。
④バブル崩壊の影響を受けたケース
4つ目に取り上げるのは、バブル崩壊の影響を受けたことで失敗に発展した企業買収の事例です。1989年、三菱地所は、アメリカ・ニューヨークのロックフェラーセンターを買収しました。当時の買収金額は2,200億円と発表されています。
買収側の三菱地所は、日本の不動産ディベロッパーです。グループ内には、丸ビル・新丸ビルなどのオフィスビルの管理を担う「三菱地所プロパティマネジメント」や、住宅事業を担う「三菱地所レジデンス」、設計事業を担う「三菱地所設計」などを擁しています。
本件企業買収はいわゆるバブル時代によく見られた「日本企業による海外資産の買収ケース」の一つです。また本件は、当時アメリカ国民とニューヨーク市民から大きな反感を買っています。
そして、その後のバブル崩壊により、1995年には莫大な負債を抱えた運営企業が破綻しました。買収した物件の大半を放棄した結果として、三菱地所は1,500億円の損失を計上しています。
⑤資金投入のタイミングを誤ったケース
5つ目に、資金投入のタイミングを誤ったことで失敗に発展した企業買収の事例を取り上げます。2002年、アメリカの小売大手「ウォルマート」は、本件企業買収当時、業績不振に悩んでいた西友と資本業務提携を実施しています。
買収側のウォルマートは、アメリカ・アーカンソー州に本部を置く世界最大のスーパーマーケットチェーンであり、売上額で世界最大の企業です。ウォルトン一族による同族経営企業(ファミリー・ビジネス)としても高い知名度を誇っています。
対する売却側の西友は、東京都を拠点としてスーパーマーケットチェーン・ゼネラルマーチャンダイズストア ・スーパーセンターなどを全国展開する企業です。かつては、旧セゾングループの中核的存在に位置づけられていました。
上記の資本業務提携後も西友の業績は改善しなかったため、2008年にウォルマートは約1,000億円を追加投入して西友を完全子会社化しています。これにより、最終的なウォルマートの投資額は2,500億円にもおよびました。
ウォルマートからすると経営再建への見通しを立てていたと考えられますが、2002年に資本業務提携を行った際に完全子会社化していれば買収金額を抑えられたとも推測されています。
企業買収の方法
企業買収の方法はそれぞれ共通点もありますが、厳密にはスキームが大きく異なるため注意して把握する必要があります。企業買収の方法は、主に以下の5つです。
- 株式譲渡
- 株式交換
- 第三者割当増資
- 事業譲渡
- 会社分割
それぞれの方法を順番に紹介します。
①株式譲渡
株式譲渡は、M&Aによる企業買収で最も活用されている方法です。株式譲渡とは、その名の通り株式の3分の2以上を取得し経営権を獲得することで、対象企業を買収する方法をさします。
株式譲渡は株式譲渡契約の締結を完了させれば即座に実行できるため、公的機関をとおさずスピーディーに手続きを進められます。手続き自体も簡略であるため多くの企業で使用されていますが、包括的承継を行うために売り手の内情に大きく左右されやすい点がデメリットです。
②株式交換
株式交換は株式譲渡と類似する手法ですが、株式交換では「対象企業の株式を100%取得して完全子会社化することが目的として掲げられる」点において相違が見られます。株式交換では、株式譲渡と異なり株主総会を開催しなければなりません。
とはいえ、一定条件を満たせば企業同士の合意のみで済ませられるため、比較的スピーディーに手続きを進められます。株式譲渡との大きな違いは、株式譲渡では現金のみが対価となるのに対して、株式交換では対価として株式の交付が可能である点も代表的です。
そのため、現金の用意ができない企業でも株式交換は実行できます。
③第三者割当増資
第三者割当増資とは、厳密には買収ではなく増資に類する方法です。第三者割当増資は、「対象となる企業における株式の新株を引き受ける権利を特定の第三者に与える」形式で実行されます。
主に第三者割当増資は売り手となる企業の資金を増やしたい場合に採用される方法であり、売買ではないことから課税は発生しない点が特徴的です。
④事業譲渡
事業譲渡とは、企業内の事業の一部あるいは全てを譲渡する方法のことです。事業譲渡は、株式譲渡などとは違って、契約の範囲内で承継するものを選択できます。不要な資産・契約・簿外債務などの負債をあらかじめ取り除いたうえで、事業を承継することが可能です。
とはいえ、事業譲渡では、取引先や従業員との契約・許認可の取り直し・不動産の移転といった必要な手続きが多くスキームが非常に煩雑です。企業買収では法人税が課されるのが一般的ですが、事業譲渡では資産の売買として取り扱われるため消費税が課税されます。
⑤会社分割
会社分割は、企業における事業の権利義務のすべてあるいは一部を分割し別の企業に承継させる方法をさします。この点は事業譲渡と共通していますが、会社分割は事業譲渡と異なり吸収分割と新設分割の2つの手法に分かれる点が特徴的です。
このうち吸収分割は既存の企業に事業を吸収させる方法であるのに対して、新設分割は新たに設立した企業に事業を吸収させる方法をさします。後者は企業単体でも実施可能です。会社分割は株式譲渡と同じく包括的な承継を行う方法であり、不要な資産・負債などは事前に取り除けません。
企業買収の価格
本章では、企業買収の価格を取り上げます。実際に企業買収を行う際にまず行われるのは、売り手となる企業のおおよその売却価格を決めるためのバリュエーションです。
バリュエーションとは
バリュエーションとは、企業価値を算定するプロセスのことです。バリュエーションでは、主としてコストアプローチ・インカムアプローチ・マーケットアプローチなどの手法が採用されます。
このプロセスでは会計・財務など多様な専門知識が求められるため、M&A仲介会社・会計士事務所など外部の専門家に依頼すると良いでしょう。なお、バリュエーションにより企業価値を算定しても、それがそのまま売却価格に設定されるわけではありません。
条件交渉による価格の決定
企業買収は企業の取引であり、もちろん交渉の場が設けられます。最終的な売却価格は、交渉の場で決められる仕組みです。交渉では、売り手企業であれば少しでも高く売却価格を付けたい心理が、買い手企業であれば少しでも安く売却価格を付けたい心理が働きます。そのため、交渉の場ではお互いの企業が納得できる結果になるまで交渉が行われます。
理想的な売却価格がある場合、売り手・買い手を問わず、交渉により実現を目指さなければなりません。条件を押し付け合ってしまうと交渉が難航するため、ときには譲歩する姿勢も大切です。
M&A総合研究所では、企業買収に関する経験が豊富なアドバイザーが在籍しており、M&Aによる企業買収をご相談からクロージングまで丁寧にサポートいたします。M&Aによる企業買収では一般的に完了までに1年程度の期間が必要となることが多いですが、M&A総合研究所では最短3カ月での成約実績を有しています。
相談料は無料となっておりますので、M&Aによる企業買収を検討している場合には、買い手・売り手を問わずお気軽にお問い合わせください。
企業買収費用の目安
企業買収においては、買収価格に加え、仲介会社への手数料やデューデリジェンス費用などが必要となります。買収規模や売り手企業の価値によって買収価格が異なりますので、仲介手数料の費用体系を確認することを忘れずに行いましょう。
企業買収の相場
企業買収の相場価格は、規模や見えない価値などによって変動します。スモールM&Aの場合、取引価格は数百万円から1億円となります。中小企業の買収では数千万円から100億円、大企業同士のM&Aでは10億円以上が相場といえるでしょう。買収時には、価格がさらに低くなることもあります。
プロの観点から言えば、取引先、顧客、従業員、市場シェア、技術・ノウハウ、将来的な利益などを理解しておくことが、企業の買収価値を左右するポイントの一つです。
費用の種類
企業買収には、仲介手数料やデューデリジェンス費用などの費用がかかります。仲介手数料は、M&A仲介会社(専門家)に依頼して買収を進める際に必要な費用で、報酬体系は費用によって異なります。
デューデリジェンス費用は、デューデリジェンスの際に専門家に支払う費用で、調査内容によっては多額の費用が発生することも多いです。デューデリジェンスは必ず実施するべきで、怠ると買収後にトラブルが発生する可能性もあります。
買収費用の計算の仕方
企業価値を算定するためには、主に以下の3つの方法があります。
- 時価純資産法
- 類似会社比較法
- DCF法
コストアプローチとして時価純資産法があり、売り手企業の資産を時価で評価し、そこから負債の時価総額を差し引いた金額を用いることが一般的です。
マーケットアプローチとして類似会社比較法があり、買収先企業と規模が似ていて業種が同じ上場企業を選定し、その企業の株価をもとに企業価値を算定します。インカムアプローチとしてDCF法があり、売り手企業の事業計画をもとに将来のキャッシュフローを予測し、それを現在価値に割り引いて企業価値評価額を算定します。
企業買収の流れ
企業買収をするには、8つのステップをクリアすることが必要です。
- 買収目的の明確化
- M&A仲介会社との契約。プラットフォームへの登録
- 買収相手の選定
- トップ面談・条件面の交渉
- 基本合意書の締結
- デューデリジェンスの実施
- 最終的な契約の締結
- 最終契約書の作成・クロージング
①買収目的を明確にする
買収を行う際には、その目的を明確にしておく必要があります。こうすることで、具体的な狙いを絞り込むことができ、時間や労力を無駄にせずに成功を収めることが可能です。M&Aの目的と戦略を明確にし、より良い結果を導くことを心がけましょう。
②M&A仲介会社との契約、プラットフォームの登録
買収を実行するにあたり、専門的な知識が必要となり、経営陣や従業員だけでは困難であることから、一般的にはM&A仲介会社のプラットフォームに登録したり、アドバイザーと契約を結んだりして専門家と共に買収先を選定・交渉・契約の締結へと進むことが推奨されます。
しかし、プラットフォームやアドバイザーごとに得意分野や専門領域が異なるため、選ぶ際には注意が必要です。売り手や買い手側の手数料・買収に必要な期間・サポート体制が整っているかもしれないので、その点も慎重に検討しましょう。
③買収相手を選定
M&Aの目的・戦略が明確になり、プラットフォームやアドバイザーの登録・契約が完了したら、次は具体的な買収先企業の選定に入ります。買収対象の選定は、「買い手が積極的に選定する」のか、「売り手やプラットフォームが持ち込む案件」なのかで異なります。
バイヤーが積極的に選定する場合、対象業種、エリア、規模、取得予定価格など、長いリストが作成されます。その後、買い手が求める事業規模や条件などを踏まえて選定を進め、5~8社程度のショートリストが完成します。
ショートリストの中から、獲得成功の可能性や得られるシナジー効果(相乗効果)を考慮して優先順位をつけ、選定を進めていくことが通例です。売り手やプラットフォームが持ち込んだ案件の場合、ノンネームシートのチェックから作業が始まります。
ノンネームシートとは、社名を特定せずに、その会社の業種、事業規模、売却理由などを書き込む書類です。利害関係のある会社がある場合は、その後開示された情報を漏らさないことを約束する「秘密保持契約」が結ばれます。
その後、販売会社の情報を詳細な情報を記載した文書(インフォメーション・メモランダム)で開示し、この情報をもとに次のステップに進むかどうかを決定します。
④トップ面談・条件面の交渉
候補買収先が見つかったら、売り手側企業との話し合いを行う前に、簡易バリュエーションを実施します。これは、対象企業の本来の企業価値を算出するために、収益性や資産または負債の価値を評価するものです。
買い手側の簡易バリュエーションが完了したら、売り手側と買い手側のトップ面談が開始されます。この面談では、買収条件の交渉ではなく、両社の経営理念や業務内容などを共有することを目的としています。トップ面談が終わると、簡易バリュエーションをもとにした価格交渉など具体的な交渉が行われます。
⑤基本合意書の締結
交渉がおおむね合意に至った場合、双方が捺印する基本合意書には、買収のスケジュール・守秘義務・独占交渉権・法的拘束力などが記載されます。買い手側にとって重要なのは、独占交渉権であり、売り手側が他の買い手と交渉を行うことを禁止する権利です。
これにより、他の企業からの交渉妨害を回避できます。基本合意書の作成は必須ではありませんが、買収をスムーズに進めるためには推奨されます。
⑥デューデリジェンス実施
基本合意書の締結後には、売り手企業に対してデューデリジェンスを実施する必要があります。デューデリジェンスとは、今まで入手した情報との整合性を検証し、隠れたリスクを特定し、対策を立案し、シナジー効果を検討するために売り手側の詳細調査を行うことです。
財務・法務・ビジネス・税務・ITなど、幅広い分野でデューデリジェンスが必要であり、専門分野も必要なため、ファイナンシャルアドバイザリー(FAS)会社に依頼する必要があります。デューデリジェンスを実施することで、後から多額の簿外債務の発見や偶発債務の発見などのリスクを回避できます。
⑦契約締結
デューデリジェンスの結果から明らかな事実やリスクを踏まえ、基本合意書で定められた条件を再検討し、買収価格やその他の条件を正式に決定します。売買双方が条件面で合意した上で、最終契約書(株式譲渡契約などを含む)を締結します。この最終契約書には、買収価格・表明保証・解除条項などが記載されています。
⑧最終契約書の作成・クロージング
最終契約書を締結する段階では、代金の決済や資産の受け渡し、会社代表印の引き渡しなど、決済関係の手続きは行われず、クロージングとなります。ただし、クロージングで行われる作業はスキームによって異なるので、注意が必要です。
企業買収における主体の属性
企業買収を行う主体は、「ストラテジック・バイヤー」と「ファイナンシャル・バイヤー」の2つに分けることが可能です。「ストラテジック・バイヤー」は同業他社の事業会社であることが多く、シナジー効果を生じさせることを目的に企業買収を行います。
「ファイナンシャル・バイヤー」は主に投資ファンドです。金銭的リターンを得るために、企業買収を行い、対象会社の株式価値を引き上げて株式を売却します。両者から同時に買収提案を受ける場合、シナジー効果を買収金額に織り込めるストラテジック・バイヤーのほうがより高い金額を提示できるといわれています。
一方で、ファイナンシャル・バイヤーの強みは、LBOスキームを活用して金融機関から低コストで融資を受けられる点です。
企業買収を成功させるポイント
最後に企業買収を成功させるポイントについて、マッチング面と手続き面の2つに分けて取り上げます。企業買収におけるマッチングの成功ポイントは、主に以下の通りです。
- 信頼感やネットワークの広さをもとに専門家を選ぶ
- シナジー効果の大きさを検討したうえで相手企業を選ぶ
- 相手企業と信頼関係が構築できるかどうか慎重に吟味する
次に、企業買収で必要な手続きを円滑に済ませるポイントとして、以下の項目を紹介します。
- 企業買収の目的をはっきり定める
- デューデリジェンスを徹底する
- 経営統合(PMI)を怠らない
- 自社の経営環境や経営資源を再確認して戦略を策定する
- 専門性の高さでアドバイザーを選ぶ
- 自社に潜むリスクは専門家と早急に共有する
これらのポイントを実践することで、買い手・売り手を問わず企業買収の成功確率を高められます。
ここからは、特に大切な3つのポイントを順番に解説します。
企業買収の目的をはっきり定める
まず、企業買収の目的を明確にすることが基本です。目的がはっきりしていないと、目先の情報に振り回されて買収する企業を正しく選べなくなります。
目的が曖昧なまま買収を進めると、買収自体が目的になってしまい、期待していたシナジー効果を得られないことも少なくありません。M&A仲介のアドバイザーなど、専門家の意見を聞きながら、自社の目的をしっかりと確認しておきましょう。
デューデリジェンスを徹底する
望み通りの買収先が見つかっても、適正な価格で買収できなければ効果は薄れ、失敗に終わる可能性があります。また、後から予想外の債務が発覚すると、企業買収自体が問題に直面することになりかねません。
こうした事態を避けるためには、事前に弁護士や公認会計士、税理士などの専門家の力を借りて、買収規模に応じた適切なデューデリジェンス(買収監査)を行うことが重要です。
経営統合を怠らない
当然ながら、M&Aは最終契約を締結しただけでは終わりません。両社の統合作業を行い、業務が円滑に進み、期待していたシナジー効果が出て初めて成功と言えます。
そのためには、買収プロセスと並行して、買収後の統合に必要な計画をあらかじめ綿密に立てておくことが重要です。
企業買収まとめ
従来の企業買収に対しては「会社を売る」行為にネガティブな印象を抱く経営者の方が多く見られましたが、最近では企業買収をはじめとするM&Aの実施が一般化しており、日本でも多くの企業で行われています。
現在、さまざまなメディアで大企業・有名企業が企業買収を行って事業の拡大を実現した旨のニュースが報じられています。とはいえ、企業買収には多くの方法があるため、それぞれのメリット・デメリットを踏まえて実施しなければなりません。
理想的な企業買収を実現するには交渉力も必要となるため、専門家であるM&A総合研究所にお任せください。今回の記事をまとめると、以下の通りです。
・企業買収
→企業の経営権や事業を買収すること
・企業買収の目的
→企業のさらなる成長の実現、海外進出、経営再建、事業承継
・企業買収のメリット
→他の企業のノウハウ/技術/人材などさまざまな要素を吸収できる、資金力が向上する、資金調達時にかかるコストの軽減も期待できる など
・企業買収のデメリット
→不要なものを承継する可能性がある、人材の流出を招く可能性がある
・企業買収の方法
→株式譲渡、株式交換、第三者割当増資、事業譲渡、会社分割
・企業買収の価格
→バリュエーションによる企業価値算定後に交渉で決定する
・企業買収を成功させるポイント
→信頼感やネットワークの広さをもとに専門家を選ぶ、自社の経営環境や経営資源を再確認して戦略を策定する など
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