2024年6月29日更新会社・事業を売る

【会社を売りたい人へ】会社を売るメリットや高く売る方法など徹底解説!

会社を売りたいの場合、どのような手続きが必要で注意すべき点はなんでしょうか。この記事では、会社を売る目的やメリット・デメリット、注意すべきポイント、会社を売りたい場合のM&Aスキームや手順・必要書類、売却額の決定方法、発生する税金などを解説します。

目次
  1. 会社を売りたいと考える経営者は増加傾向にある?
  2. 会社を売るメリット
  3. 会社を売るデメリット
  4. 会社を売りたい場合に検討するM&A手法・スキーム
  5. 会社を売りたい経営者が注意すべきポイント
  6. 会社を売りたい場合に取る流れ・手順
  7. 会社を売りたいと考える理由
  8. 会社を売る際の相場
  9. 高値で会社を売りたい場合のポイント
  10. 会社を売りたい場合の税金
  11. 会社を売りたい場合に準備する必要書類
  12. 赤字の会社でも売れる?
  13. 会社を売りたい経営者への情報まとめ

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会社を売りたいと考える経営者は増加傾向にある?

中小企業庁 「中小M&A推進計画」の主な取組状況

出典:https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/shigenshuyaku/2022/220621shigenshuyaku02.pdf

近年は、少子化や市場規模の縮小などの理由から、会社を売りたいと考える経営者が年々増加傾向にあります。

中小企業庁「中小M&A推進計画の主な取組状況」によれば、中小M&Aの実施件数は2014年度から2021年度まで増加し続けており、2021年度には、2413件(事業承継・引継ぎセンターと中小企業M&A仲介大手5社の合計)の中小M&Aが成立しました。

M&A仲介会社はほかにもたくさんあるので、実際には2413件より多くの中小M&Aが成立していると考えられます。

中小M&Aが増加傾向にある理由として考えられるのは、近年のM&A実施件数増加で会社売却に対する抵抗感が薄れてきたことや、国や民間の支援体制が整ってきたこと、M&Aが有効な経営戦略手段だと認知されてきたことなどです。

しかしながら、会社を売りたいと思っても、具体的な方法がわからない方もいることでしょう。今回は会社を売りたい経営者やオーナーの方に向けて、さまざまな観点から会社の売却に役立つ情報を詳しく解説します。

会社を売るメリット

ここでは、会社を売るメリットを確認します。主なメリットは、以下の5点です。

①大金が手に入る

会社を売却する最も大きなメリットです。獲得した大金によって、悠々自適な生活を送る可能性も十分にあります。そのために会社を売りたいと考える経営者も少なくありません。

また、従業員に株式を保持させている場合、経営者自身のみならず多くの人が利益を獲得できる可能性もあります。

②事業承継問題を解決できる

後継者不足を理由に、M&Aを活用して会社を売りたいと考える経営者が年々増加しています。後継者不在のまま経営者が引退時期を迎えれば、会社は廃業するしかありません。

廃業するとこれまで培ってきたノウハウなどがなくなってしまうため、長年、会社を経営してきた経営者ほど、やりきれない気持ちになることでしょう。しかし、M&Aで会社を売れば、培ってきたノウハウを残すことができ、従業員も職を失わずに済みます

ただし、社風への不適応を理由に、買収会社が引き継いだ従業員を解雇する事例もあります。 そのため、相手会社の社風や従業員に対する考え方など、対価以外の観点を持ちながら売却することも大切です。

③連帯保証から解放される

大半の中小企業は、金融機関から融資を受ける際に経営者自身が連帯保証を負います。会社を売却(株式譲渡)すれば、負債は買い手に引き継がれるので、連帯保証を解除する申し出も金融機関から了承を得られるでしょう。

④大企業の下でさらなる成長を目指せる

大企業と比べて、中小企業のほとんどは経営資源に乏しいのが実情です。市場規模の縮小や市場環境の変化が激しい現状において、中小企業が自力で十分な利益を獲得するのは困難といえるでしょう。

そうした状況を踏まえ、大企業の傘下に入るために会社を売るケースが見受けられます。親会社の豊富な経営資源を活かして経営を安定化させ、さらに事業の成長実現を目指せる環境が得られるでしょう。

⑤経営者としての業務から解放される

長年、経営者の重責を担ってきたものの、高齢になると若い時分のような無理はきかなくなります。幸せな老後生活を送るためにも、健康なうちに会社を売却し、経営者としての業務から離れるのもよいでしょう。

会社を売るデメリット

会社を売るデメリットも確認しておきましょう。主なデメリットは以下の6点です。

①競争避止義務によって事業が制限される

事業譲渡の場合、会社法で競争避止義務が定められています。競争避止義務とは、売却した事業と同一の事業を、買い手企業と同一および隣接する市区町村で20年間、行えないというものです。

②事業に拘束されることも

買い手企業は、M&A後、経営統合(PMI=Post Merger Integration)を実施します。経営統合が成功しなければ、M&Aで想定したシナジー効果の創出による業績向上は望めません。買い手にとっては最重要事項ですから、経営統合成功のために売り手経営者にも協力が要請されます。

ロックアップといって、M&A後も一定期間、会社に残り、経営の引き継ぎと共に買い手の経営統合プロセスに協力することがM&Aの条件として契約書で拘束されるものです。

③周囲による偏見や喪失感が生じる

M&Aに関する知識を持たない世間一般からは、会社売却=身売りのようなネガティブなイメージで見られることがあるかもしれません

また、やりがいを持って経営者の責務を行ってきた場合、その立場から離れることで喪失感を覚えるケースもあるようです。

④想定した額の資金を獲得できないおそれ

M&Aの売買価額は、売り手と買い手の交渉によって決まります。したがって、必ずしも売り手の思う希望額に決まるとは限りません。会社売却前にバリュエーション(企業価値評価)を行うことで、自社の適性な売却額を算定できます。

M&A仲介会社に相談する際に、バリュエーションを実施しておくと、現実とかい離しない売却額の想定をしやすくなるはずです。

⑤法的なリスクが伴う

M&Aの最終契約書では「表明保証」という条項があります。これは、M&Aに関して開示している情報に虚偽がないことを当事者として保証するものです。仮に、この表明保証に違反した場合は、相手方は損害賠償請求を行える旨が付帯条件となっています。

⑥人材の流出リスクが伴う

M&Aに対し、特に売り手側の従業員は不安や不満を持つケースがあります。なかには、売り手側経営者にひかれて働いてきたケースもあるでしょう。そのような従業員は、M&A後、買い手企業の社風になじめなかったりすると、退職してしまうケースがあります。

会社を売りたい場合に検討するM&A手法・スキーム

中小企業がM&Aで会社を売る主なスキーム(手法)は、以下の3種です。文字どおり会社を売却するスキームは、株式譲渡です。会社組織を手元に残して事業を売却したいケースでは、事業譲渡か会社分割を選択することになります。それぞれのM&Aスキームの概要を確認しましょう。

①株式譲渡

株式譲渡とは、売り手企業の株式を買収することでその経営権を取得するM&Aスキームです。経営権を得るには最低でも過半数の株式が必要ですが、中小企業では経営者およびその親族や役員で全ての株式を所有しているケースがほとんどなので、全株式を得やすいでしょう。

株式の売買だけで取引が成立するので交渉も行いやすく、手続きも他のM&Aスキームに比べて簡易です。株式譲渡は包括承継であるため、買い手は売り手企業を丸ごと引き継げます。許認可などの再取得の手間がなく便利ですが、負債も引き継がねばなりません。

手続き面の簡便さから、中小企業のM&Aでは、最も多く採用されているM&Aスキームです。

②事業譲渡

事業譲渡とは、売り手企業の事業とそれに関連する資産や権利義務などを選別して売買するM&Aスキームです。両者の合意は必要ですが、売り手企業は売りたいものだけを、買い手企業は買いたいものだけを取引できます。

そのように事業譲渡は個別承継であるため、買い手は不要な資産や負債の引き継ぎを避けられるのがメリットです。売り手は、事業の選択と集中が実現します。その反面、取引先との契約や従業員との労働契約は、全て個別に相手の同意を取り、新たに契約し直さねばなりません。

許認可も引き継げないため、新たに申請・取得が必要です。事業譲渡の実施にあたっては、買い手は手続き面が煩雑な点は覚悟しなければなりません。また、株式譲渡や会社分割では発生しない消費税が、買い手に課せられます。

③会社分割

会社分割とは、売り手企業の事業部門を丸ごと買い手企業が承継するM&Aスキームです。丸ごととは、該当事業部門に関連する資産、権利義務、許認可、組織、人材など全てを包括承継することを意味します(業種によっては引き継げない許認可もあります)。

一見、事業譲渡と類似して見えますが、個別承継の事業譲渡と違って、包括承継の会社分割では煩雑な手続きは発生しません。会社分割は、対価に買い手側の株式を用いることが可能なので、その場合、買い手は現金を用意せずにM&Aを実施できます。

会社法の定める組織再編行為でもある会社分割は、会社法で示されている要件を満たせば適格会社分割と見なされ、税法上の優遇措置を得ることも可能です。

以上のように、M&Aでは各スキームごとに特徴があり、それぞれが持つメリット・デメリットも踏まえてスキームの選択をする必要があります。M&Aの経験がない中小企業にとって、自社単独でその検討・決断をするのは難しいので、M&A仲介会社など専門家を活用しましょう。

相談先となるM&A仲介会社選びでお悩みでしたら、M&A総合研究所にご連絡ください。M&A総合研究所には、M&Aの知識・経験ともに豊富なアドバイザーが多数在籍しており、案件ごとに専任となってM&A・会社売却をフルサポートいたします。

料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。随時、無料相談をお受けしていますので、M&A・会社売却をご検討の際は、お気軽にお問い合わせください。

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会社を売りたい経営者が注意すべきポイント

会社を売りたい場合に、最低限、注意しておきたいこととして以下の2つがあります。それぞれの内容を確認しておきましょう。

会社売却のタイミング

情報の漏えい

会社を売る、つまりM&Aの検討は双方の企業にとって最重要の機密情報です。仮にその情報が外部に漏えいした場合、以下のような事態が想定されます。

  • M&Aの実施に不安・反発を持った従業員が流出(退職)
  • M&Aの実施に不快感を持った取引先が契約解除
  • M&Aの買い手は人材や取引先の獲得を目的の場合もあり、人材流出・取引先減少は魅力が薄れる
  • 情報管理ができない会社と烙印を押されM&Aが破談

以上のような事態を招かないためにも、会社を売る際には、成約し発表できる段階になるまで徹底した情報管理が必要です。

資金の無駄な流出

非上場の中小企業の場合、経営成績よりも目先の資金繰りに重点を置いてしまう傾向があります。顕著な例としては、出費の中でも納税額を抑えるために、保険の加入や固定資産の購入を必要以上に行うケースです。

節税策は悪いことではありませんが、そのために必要性の低い保険金や減価償却費(固定資産)の積み上げを行うのは、良い経営とはいえません。おそらくは、買い手からもあまり評価は受けないでしょう。

無駄な保険加入や固定資産購入を行うのならば、もっと有用な投資を行って業績向上を図る方が、買い手からも良い評価が得られるはずです。

会社を売りたい場合に取る流れ・手順

会社を売りたい場合の流れは以下のとおりです。各プロセスの概要を解説します。 

①仲介業者に相談〜仲介契約締結

会社売買の手続きは複雑なので、自社のみでプロセスを完結するのは困難です。会社を売る際には、まずM&A仲介会社などの専門家を相談しましょう。相談後、売る意思が固まれば、仲介業者と正式に契約を締結します。

昨今はM&A仲介会社も増加傾向にあり、選択に迷うかもしれません。そのような場合は、M&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所では、M&Aに豊富な知識と経験を持つアドバイザーが、相談時からクロージングまで会社売却・M&Aを徹底サポートいたします。

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②会社を売りたい相手先探し

M&A仲介会社が、売りたい値段などの条件をもとに買い手候補を探してくれます。具体的には、匿名で売り手の情報をまとめたノンネームシートを作成し、買い手候補を募る方法が一般的です。興味を示す相手が現れたら秘密保持契約を結び、情報を開示して交渉が始まります。

③会社を売りたい相手先との交渉

買い手候補が見つかったら、買い手との交渉段階に入ります。 交渉の内容は下記のとおりです。M&A仲介会社に業務を依頼している場合、交渉はM&A仲介会社が代行します。

  • 売り手と買い手の確定
  • 株式譲渡事業譲渡などの取引形式
  • 現金や株式などの支払い方法
  • クロージングの見通し時期
  • 従業員の雇用維持条件
  • デューデリジェンスにおける調査内容や対応などの概要
  • 独占交渉権


交渉の過程では、必ずトップ面談が行われます。トップ面談で確認するのは、経営ビジョン、会社を売りたい・買いたいと至った経緯、社風、人物像などです。大筋で条件に合意できたら、基本合意書を締結します。基本合意書は合意内容の確認書であり、法的拘束力はありません。

④デューデリジェンスの実施

基本合意書締結後、デューデリジェンスが実施されます。デューデリジェンスとは、財務・税務・法務・労務・IT・事業などの分野ごとに士業などの専門家を起用し、売り手企業を調査することです。

買い手側は多額の費用をかけて買収を行うため、売り手側に問題点はないか、買収リスクはどの程度なのかをデューデリジェンスで調査し、その結果をもとにM&A実行の可否や価額の妥当性を判断します。

デューデリジェンスは買い手側にとって非常な重要な工程であり、売り手側は追加資料の提出など協力を求められた場合は誠実に対応しなければなりません。

⑤会社を売りたい相手先との売買契約締結

デューデリジェンス後、最終交渉が行われ、ここで合意となれば、最終契約書を締結しす。最終契約書の内容にはいくつかのポイントがありますが、特に注意すべきなのが表面保証です。表面保証では、開示した内容が正しいことを相手側に表明・保証します。

売り手側が表面保証する一般的な内容は、以下のようなものです。表明保証に違反すると損害賠償請求を提訴されかねません。十分に注意しましょう。

  • 取締役会の承認を含めM&Aの手続きを終えている
  • 支払い不能・銀行取引停止などの破綻状態ではない
  • 買い手が認知していない潜在株式が存在しない
  • 決算を粉飾していない
  • 必要とされる行政手続きを終えている
  • 法令違反を犯していない
  • 公租公課について滞納していない
  • 担保権の設定が株式にない
  • 買い手と共有した情報が真実である
  • デューデリジェンス後に資産や負債などが変化していない

⑥クロージング

クロージングとは、売り手側の経営権(M&A対象の経営権)を買い手側へ移転させ、対価の決済を行うM&Aの最終工程です。必要手続きはM&Aのスキームによって異なりますが、クロージングを行う前提条件として最終契約で取り決めたクロージング条項を売り手側が満たしている必要があります。

前提条件のなかには行政での手続きが含まれる場合もあるので、通常は最終契約締結日からクロージング実行日までは一定期間(1か月程度)を空けることが多いです。そして、クロージングが完了すればM&A契約の効力が法的に認められることとなります。

⑦PMI

M&Aの手続きはクロージングを以て完了となりますが、統合後にスムーズな事業運営を行いシナジー効果の最大化を目指すためにはPMIと呼ばれる統合プロセスが必要です。

PMIでは買い手側と売り手側の経営・業務・意識のすべてを統合させる必要があります。PMIがうまくいかなければM&Aに期待していた効果を得られなくなるため、慎重かつ丁寧に行わなければなりませんが、特に難しいといわれているのは意識面の統合です。

意識面の統合が失敗すれば人材の流出につなが可能性もあるため、買い手側だけでなく売り手側も協力してPMIを進めていく必要があります。

会社を売りたいと考える理由

経営者が、会社を売りたい理由はさまざまあります。その中でも代表的な理由は、以下の5点です。

①後継者不足

近年、中小企業の後継者不在問題が指摘されています。 後継者の代表格であった経営者の子どもが、少子化と価値観の多様化の影響により、親の後を継がないケースが増えてきました。高齢になった経営者は事業承継ができず、引退時は廃業するしかありません。  

この問題の解決手段として行われるようになってきているのが、M&Aでの事業承継です。会社を売ることで、その買い手が後継者(新たな経営者)となって事業承継が実現し、廃業を免れます。

②資金が欲しい

会社を売却すると、対価を獲得できます。多額の負債を抱えている状態でもなければ、相応の売却益を得られるでしょう。会社の売却で多額の現金を得ることを目的に、事業を立ち上げる起業家もいます。

③「選択と集中」による経営戦略実現

「選択と集中」とは、収益性の低い事業を売却し、主力事業に集中する経営方針です。 経営資源が限られている中小企業にとって、「選択と集中」の考え方は不可欠です。この場合は、会社ではなく一部の事業を売ることで、その戦略を実現します。

④連帯保証・債務から解放されたい

日本の中小企業の多くは、運転資金を金融機関から借入する際、経営者が連帯保証(個人保証)や個人資産の担保差し入れを行っています。会社が負債を抱えたうえ、経営者が個人保証も負うのは、かなりの精神的負担といえるでしょう。

M&Aの株式譲渡によって会社を売却すれば、株式譲渡は包括承継ですから、負債も買い手に引き継がれます。これにより、個人保証や担保差し入れを解消する金融機関との話し合いも可能になり、精神的負担も解消されるでしょう。

⑤従業員の雇用を維持したい

後継者不在や経営難などで廃業危機にある会社を売却できれば、会社は廃業を免れ存続します。廃業していれば従業員は解雇となるところでしたが、会社が存続することで従業員の雇用も継続され、その生活は守られるのです。

会社を売る際の相場

会社を売る場合、自社が売れる値段は特に気になることでしょう。ここでは、4つの方法を紹介します。

①最も簡易的な方法

手っ取り早く値段を知りたい場合、以下の計算式でおおよその価額を把握できます。

  • 純資産額+営業利益×年数(3~5)  

ただし、以降に紹介する方法と比べると正確さに欠けます。 

②DCF(Discounted Cash Flow)法

将来的なフリーキャッシュフローを用いて適正価額を算出します。主に大企業が会社を売るケースで多用される計算方法です。将来性を加味できる点から、多くのM&Aで活用されています。ただし、予測は算出者によってずれがあり、価額が変動しやすい点がデメリットです。

 

③修正時価純資産法

貸借対照表の資産・負債を時価に変換して算出した時価純資産額をもとに会社の値段を計算する方法です。財務諸表をもとにするので算出しやすい点がメリットといえます。

しかし、在庫や売上債権を正確に反映できないので、不正確な値段となる恐れがあることと、将来の収益性を加味していない点がデメリットです。

④類似会社比較法

評価対象の企業と類似する上場企業の財務指標をもとに会社の値段を計算する方法です。この方法には、公平かつ市場の需要を反映した値段を算出できるメリットがあります。比較的信頼度の高い方法なので、企業の規模を問わずに会社を売りたい際には便利な計算方法です。

しかし、指標になる株価が市場環境の影響を受けやすいデメリットがあります。また、類似する上場企業が見つからねければ計算自体ができません。

高値で会社を売りたい場合のポイント

会社売却の際、誰しも高額で取引したいと考えるものですが、高値で会社を売るにはどうすべきなのでしょうか。ここでは、高値での会社売却を実現させるポイントを紹介します。

優先順位の明確化

会社売却時の希望条件がすべて叶う相手先は、そう簡単にみつかるものではありません。また、M&Aの候補先企業がみつかっても、交渉時には互いの折り合える点を探さなければ、M&A成立は難しくなります。

候補先探しや交渉をスムーズに進めるためには、事前に希望条件の優先順位を明確にしておくことが重要です。売却価額・従業員の雇用維持などの希望条件のうち、譲れない条件はなにか、譲歩できる範囲はどこまでかなどを明確にしておくと交渉時に判断しやすくなります。

株式収集

中小企業ではオーナー経営者が株式をすべて保有していることも多いですが、株式が分散している場合は会社売却を行う前に集約するほうがスムーズに進めやすくなります。

というのは、株式が分散している場合、ほかの株主が反対すれば会社売却が困難になったり、買い手側は希望する議決権(株式)が取得できなかったりする可能性があるためです。

会社売却をスムーズに進めるためにもできるだけ株式を集約しておく必要がありますが、特に株券を発行している場合は現物(株券)を集めなければならないため早めに対応しておくようにしましょう。

属人性の排除

中小企業の場合、経営者個人がノウハウを有していたり、知識・スキルのある従業員が限られていたりすることも多いです。属人性の高い会社は、その担当者がいなくなれば事業が円滑に進まなくなることも考えられるため、会社売却時にネックとなる可能性があります。

買い手側はM&A後の事業運営を考えて買収可否を判断するため、属人性はできる限り排除しておくことも会社売却を成功させるポイントです。

本業の競争力強化

一般的にM&Aでは、将来的な収益力やシナジー効果も考慮されます。独自のノウハウや高度な専門的技術などを強化すれば、売りたい値段で会社を売れる可能性が高まるでしょう。会社を高く売りたいなら、自社の強みを伸ばすことが大切です。

強化した強みは、会社を売却する際に営業権(のれん)として金額に換算したうえで評価されます。その結果、売りたい値段で会社を売却できる可能性が高いです。

経営強化への理解獲得

会社の現状を調査・把握し、それを利害関係者に公表するのも大切です。公表により、会社に対する信頼度を高められます

経営体制の総点検

経営体制を点検すれば、効率的に本業の競争力を強化できるようになります。会社の中にある、不要な資産や在庫などは可能な限り処分しましょう。無駄な要素が多いと、業績が良くても売りたい値段で売れない可能性が生じます。

訴訟などのトラブルも、マイナス評価となるので解決しておきましょう。

仲介業者の協力

仲介業者の協力も、会社の値段を引き上げる重要な要素です。そもそもM&Aにおいて、会社の値段は交渉の場で決定されます。交渉を有利に進めるためには専門的な知識や経験も必要になるため、M&A仲介会社などの専門家にサポートを依頼しましょう。

信頼できるM&A仲介会社をお探しでしたら、M&A総合研究所にご連絡ください。M&A総合研究所には、M&Aの知識・実績豊富なアドバイザーが多数在籍しており、相談時からクロージングまで会社売却・M&Aをフルサポートいたします。

料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。随時、無料相談をお受けしておりますので、会社売却・M&Aをご検討の際は、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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会社を売りたい場合の税金

会社を売買すると税金の支払い義務が発生します。ここでは、以下のM&Aスキームにおける税金を確認しましょう。

①株式譲渡の税金

株式譲渡を実施した際、個人の売り手は所得税と住民税を分離課税で支払います。売却代金から諸費用を引いた譲渡所得に20.315%(所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%)の税率で課税です。復興特別所得税は2037(平成19)年までの時限税になります。

法人の売り手に課されるのは、法人税です。法人税には、法人税・法人住民税・法人事業税・特別法人事業税の4種類があります。これらの税率を総合的に勘案した実効税率は、2022(令和4)年8月現在、約31%です。

法人税は、会社の全損益を通算した利益額に課されるので、株式譲渡益単体への課税はありません。通算後、赤字であれば課税を受けないことになります。

②事業譲渡の税金

事業譲渡では、売り手企業に法人税が課されます。課税内容は株式譲渡と同様です。譲渡対象に消費税課税資産が含まれている場合、買い手に消費税が発生します。消費税は、譲渡対価と合わせて売り手に渡し、税務署への納付を担当するのは売り手企業です。

消費税課税資産とは、土地を除く固定資産(建物、設備、機械類など)、無形資産(ソフトウェア、特許権、商標権など)、棚卸資産(在庫、原材料など)、のれんなどが該当します。

③会社分割の税金

会社分割は包括承継であるため、消費税は発生しません。会社分割は、会社法で定める組織再編行為です。会社法で規定されている要件を満たすと適格会社分割と見なされ、税制上の優遇措置を受け、実質的に課税を受けません。非適格会社分割の場合は、分割会社(売り手)が課税されます。

会社を売りたい場合に準備する必要書類

会社を売りたい場合、必要最低限、準備しなければならい書類を、取得先ごとに紹介します。まず、税務署から取得する書類は以下のとおりです。

  • 納税証明書(法人税・法人住民税・法人事業税・消費税)
  • 土地・建物の固定資産評価証明書

次に、法務局から取得する書類は以下のとおりです。
  • 会社商業登記簿謄本
  • 土地・建物の登記簿謄本
  • 印鑑証明書(法人・代表者各1通)

役所から取得する書類もあります。
  • 経営者個人の印鑑証明書
  • 経営者個人の住民票
  • マイナンバーカード、運転免許証などの経営者個人の顔写真つき身分証明書の写し

赤字の会社でも売れる?

結論から言えば、赤字の会社でも多くの売却例はあります。具体的には、以下のようなケースです。

  • 参入障壁が高い業種の企業
  • 特許権、特殊技術など独自ノウハウを持っている企業
  • 優秀な人材がいる企業
  • 他にない特殊な設備を有している企業
  • 赤字の原因が社会情勢など外部による場合
  • 役員報酬など改善できる固定費の削減で赤字が解消できる場合
  • 赤字から脱却できる手段を買い手が有している場合

会社を売りたい経営者への情報まとめ

会社を売る際には、さまざまな事柄を考慮しなければいけません。多角的な視野を持って、利益が最大になる方法を実践しましょう。ただし、単独で会社売却をせいこうさせるのは至難の業です。M&A仲介会社など専門家の起用をおすすめします。

本記事の概要は以下のとおりです。
・会社を売りたい理由
→後継者不足、「選択と集中」に必要な資金獲得、連帯保証・債務からの解放、従業員の雇用維持

・会社を売る方法 
→株式譲渡、事業譲渡、会社分割など

・会社を売る値段の決定方法 
→DCF法、修正時価純資産法、類似会社比較法など

・売りたい値段で会社を売る方法 
→本業の競争力強化、経営強化への理解獲得、経営体制の総点検、仲介業者の協力

・会社を売るメリット 
→大金の獲得、事業承継問題の解決、連帯保証からの解放、さらなる成長の実現

・会社を売るデメリット 
→競争避止義務、事業に拘束される、周囲による偏見・経営者の喪失感、想定した資金を獲得できない、法的なリスク、人材の流出リスク

・会社を売る際に生じる税金
→所得税や消費税、法人税など

・注意点
→情報の漏えい、資金の無駄な流出

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