2021年8月8日更新事業承継

海外進出のメリットとデメリット

海外進出には、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?本記事では、海外進出による販路開拓・海外向けのプロダクト開発といったメリットのほか、海外進出のコスト・政治リスクといったデメリットを解説します。海外進出を成功させるポイントも併せてまとめました。

目次
  1. 海外進出のメリットとデメリット
  2. 日本企業(大手企業、中小企業)の海外進出
  3. 日本企業の近年の海外進出の傾向と推移
  4. 海外進出のメリット
  5. 海外進出のデメリット
  6. 海外進出する時の課題
  7. 海外進出を成功させるポイントと条件
  8. 海外進出の流れ
  9. 海外進出する時はコンサルや支援に頼むべきか
  10. 海外進出のためのM&A
  11. まとめ

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海外進出のメリットとデメリット

かつての日本では国内市場で利益獲得を目指す企業がほとんどでしたが、近年は大企業を中心に海外進出を図る風潮が広がっています。中小企業にとっても、海外進出はマーケット開拓するうえで重要な戦略の1つです。

とはいえ、海外進出にはどのようなメリット・デメリットがあるのか、把握していない経営者の方も少なくありません。そこで今回は、海外進出のメリットとデメリット、海外進出を成功させるポイントも紹介します。

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日本企業(大手企業、中小企業)の海外進出

はじめに、日本企業に海外進出が必要とされる理由を3つ紹介します。

(1)グローバル競争

国内市場だけをターゲットとしている企業の場合、海外企業との競争に敗れてしまう可能性が高いです。もともと海外企業と比べて、日本企業の技術力は高い傾向にあります。その一方で、世界市場をターゲットとしている海外企業と比べると、日本企業は経営リソースの量で劣っているのが現状です。

製品・サービスの導入後は国内市場において利潤を得られますが、もしもグローバル企業が経営リソースを大量に割いて市場へ参入してきてしまえば日本企業が勝てる見込みは低下します。

したがって、長期的に利益を獲得するためにも、日本企業は海外進出を視野に入れる必要があるのです。今後は、世界規模でビジネスを展開できる企業が勝ち残る時代が訪れます。

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(2)市場規模の縮小

総務省「平成28年版 電気通信白書」内「我が国の人口の推移」https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h28/html/nc111110.html

出典:https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h28/html/nc111110.html

現在の日本では、少子高齢化の進行に伴い人口が減少傾向にあります。総務省の「平成28年版 電気通信白書」によると今後も人口の減少と高齢化率の上昇は継続すると予測されており、市場規模の縮小も続く見込みです。

市場規模が縮小してしまうと、顧客の減少によって企業間の競争が激化します。競争が激化すると、これまでどおりの利益が獲得できなくなるおそれがあるのです。今後も同じように利益を得たければ、さらに広い市場規模を求めて海外進出を検討するべきともいえるでしょう。

市場の大きい海外へ新規参入を狙う場合、クロスボーダーM&Aを実行する企業も多いですが、成功させるには専門的な知識が求められるため、M&Aの専門家の協力を得るのがおすすめです。

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(3)生産拠点を海外に移転

最近では、生産拠点を海外に移転させる目的のもとで海外進出に着手する企業も目立っています。この目的で海外進出を図る場合、ベトナム・タイ・カンボジア・ミャンマー・マレーシア・フィリピンなど東南アジア諸国への進出が目指されるケースが多いです。

上記の国々には経済特区が設けられており、他の国々と比べて人件費や生産コストを抑えやすいです。そのため、税制面での優遇が受けられるほか人件費や生産コストを削減できることを理由として、東南アジア諸国に生産拠点を移転する日本企業が増えています。

日本企業の近年の海外進出の傾向と推移

人口減少に伴う国内需要の減少により、大企業や中小企業という企業規模に関わらず、潜在的な市場規模が見込まれるアジアなどの海外需要を狙うべく、日本企業による海外進出は拡大傾向にあります。

海外進出する日本企業の中には、海外市場において自社の強みを発揮することで、結果的に国内の従業員数を増加させるなど国内事業の活性化を狙っている企業も多いです。

進出国

外務省領事局政策課が発表した「海外在留邦人数調査統計」によると、平成29年10月1日時点で海外に進出している日本企業の数(拠点数)は、75,531です。前年度の実績と比較すると3,711(約5.2%)増加しており、史上最多の数値となっています。

国別の海外拠点数は、以下のとおりです。

  • 中国:32,349拠点(約43%)
  • 米国:8,606拠点(約11%)
  • インド:4,805拠点(約6.4%)
  • タイ:3,925拠点(約5.2%)
  • インドネシア:1,911拠点(約2.5%)
  • ベトナム:1,816拠点(約2.4%)

進出地域

地域別では、過去10年以上トップに位置する「アジア」が全体の70%を占めています。2位に「北米」が続き、その後はイギリス・フランス・オランダなどの「西欧」が位置している状況です。ここまでの3地域で、全体の97%が占められています。

日本企業が海外進出するうえで、上記の3地域は検討されるでしょう。将来的に海外進出が進む地域としては、「アフリカ」「中米」の2地域が考えられます。前年度比で数字をみると、アフリカは約7.7%・中米は7.4%の伸び率を記録しました。

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海外進出のメリット

この項では、海外進出のメリットとして、以下の7つを詳しく紹介します。

  1. 販路開拓
  2. 原材料費を減らせる
  3. 人件費の安さ
  4. 新規プロダクト開発
  5. 経営資源の集中
  6. 税率の低さによるコスト低減
  7. 取引先企業の海外進出

それぞれのメリットを順番に見ていきましょう。

(1)販路開拓

日本の市場が縮小している一方で、世界全体をみると市場は拡大しています。世界の人口は毎年増加傾向にあり、国際連合人口基金(UNFPA)が発表した「世界人口白書2020」によると、2020年の世界人口は77億9,500万人で、前年度に比べて8,000万人増加しました。

世界人口の増加に伴い、新興国を中心にGDPが右肩上がりの形相を見せているのです。海外市場をメインターゲットに据えれば、日本国内で経営しているときと比べて何倍もの利益を獲得できる可能性があります。

このように販路開拓が実現できる点は、海外進出における最も大きなメリットです。特に東南アジア・アフリカ地域を中心とした新興国では、今後ますます市場が拡大すると推測されています。

目下成長中の新興国市場は、海外進出によって大きなメリットをもたらす存在といえるでしょう。

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(2)原材料費を減らせる

発展途上国は、日本と比べて原材料費が安価な傾向にあります。したがって、発展途上国への海外進出が成功すれば、原材料費の大幅な削減が図れるのです。従来はコスト低減による恩恵が非常に大きいという理由で中国への海外進出が注目されていましたが、近年は経済発展し原材料費が上昇しています。

とはいえ、日本と比べると依然として安価な水準にあることから、現在も多くの日本企業が中国に生産拠点を抱えています。ここで大切な視点は、日本よりも原材料費が低い国に海外進出すればより多くの利益を獲得できるという点です。

単純に原材料費を減らせるという理由のみで海外進出を実行すべきではないものの、大きなメリットを享受できることに違いはありません。

(3)人件費の安さ

人件費の削減は、事業を海外展開する最も大きい理由として挙げられる要素です。とはいえ、これは発展途上国に進出した場合に限ります。先進国の中には日本よりも高い最低賃金を設定している国が見られるのに対して、発展途上国と比較すると日本の最低賃金はトップに位置します。

つまり、発展途上国に進出すると、人件費を抑えられる可能性が高いです。具体的には、アジアなど新興国への海外進出により人件費を20%~30%程度抑えられたという事例も報告されています。

また、日本のある大手IT企業では、インドの優秀な人材を獲得して日本で手掛けていた業務をインドに移管するというプロジェクトを大々的に進めています。

日本では少子化の影響もあることから、海外進出により海外人材の獲得と人件費の抑制を同時に狙う企業が今後ますます増えるでしょう。

(4)新規プロダクト開発

日本と海外では、文化や思想・趣味趣向などが大きく異なります。海外進出により現地のスタッフと意見を交えながら製品を開発すると、日本では獲得できなかった着想やアイデアが生まれやすいです。

海外市場で得たアイデアを活用すれば、日本市場において新たなヒット商品・サービスの展開も狙えます。これは、新たな発想を得たい企業からすると大きなメリットです。

(5)経営資源の集中

日本市場では、ひとつの企業がさまざまな製品・サービスを展開するスタイルが一般的です。その一方で、海外市場では、ひとつの商品・サービスのみを提供する企業も多く存在します。

こうした相違点は、市場規模の違いにより生まれます。日本市場は小さいため、多角化を遂行しなければ十分な利益を得られません。しかし、海外市場は大きいため、ひとつの製品・サービスのみでも十分な利潤を獲得可能です。

ひとつの製品・サービスに経営資源を集中すると、提供する価値の品質向上が目指せます。経営資源の量が多いうえに製品価値の品質が高い海外企業には、日本企業は太刀打ちできません。ところが、日本企業も海外進出すれば、同様のメリットを享受できます。

(6)税率の低さによるコスト低減

海外市場に目を向けると、日本よりも税率の低い国が多いです。こうした国に海外進出すれば、税率の低さによるコスト低減のメリットを享受できます。コストが低減すると、最終的に多くの利益を手元に残せる可能性があるのです。

世界には、外国企業向けに税制上の優遇制度(経済特区)を設定している国も存在します。経済特区とは、外貨を誘致すべく外国企業を税制面で優遇している地域のことです。このような国・地域に海外進出すれば、さらなるコスト削減も実現できる可能性があります。

(7)取引先企業の海外進出

取引先企業が海外進出するため、これに追従する形で海外進出を果たすという事例もあります。もともと海外進出する計画はなかったにも関わらず、取引先企業との関係維持のために、海外進出せざるを得ない企業も一定数報告されているのです。

考え方次第ではありますが、いつか海外進出をしたいと思っていた企業からすると、後押しとなるひとつのきっかけです。ただし、海外進出の際は、取引先企業のいいなりになっていないか慎重に検討する必要があります。

海外進出のデメリット

次に、海外進出のデメリットとして以下の5つを紹介します。

  1. 人材管理
  2. 莫大なコスト
  3. 政治リスク
  4. 為替レートの変動
  5. 文化や制度の違い

それぞれのデメリットを順番に見ていきましょう。

(1)人材管理

海外進出には、人材管理のデメリットが伴います。文化・言語・慣習が違う現地人の雇用は、想像以上に困難です。

例えば、現地人の雇用では、平然と遅刻したり、雇用してすぐに辞職したりするトラブルも見受けられます。海外進出する際には、従業員と密にコミュニケーションを取りながら、自社の方向性を理解してもらうことが重要です。

これにより人材管理におけるトラブルを回避できますが、上記に挙げた配慮・ケアには多くのコストがかかります。もともと海外の労働市場は、日本に比べると流動的です。日本では当たり前の終身雇用や年功序列といった制度・暗黙のルールが敷かれた国は珍しく、人材の定着率は決して高くありません。

そのため、たとえ十分に配慮していても、現地人の転職・人材流出などが起こる可能性については事前に把握しておきましょう。また、海外進出に伴いM&Aを実施する場合には、相手企業の人材管理の方法・人材の質などの見極めも重要です。

(2)莫大なコスト

海外進出の最も大きなデメリットは、莫大なコストにあります。海外進出には、まず現地調査のために莫大なコストがかかります。具体的にいうと、現地の市場・顧客の需要・競合他社の存在などの情報収集に加えて、現地視察などにも多額のコストがかかるのです。

また、海外進出を実行するとなると、法人設立費用・通訳依頼料・事務所家賃・設備費用などさまざまなコストが追加で発生します。注意すべきなのは、たとえ多額のコストを払ったとしても海外進出が成功するとは限らないという点です。

実際に日本企業のメルカリ(フリマアプリ運営)は、日本市場では成功を収めているものの、アメリカでの失敗を理由に甚大な損出を計上しています。事業拡大のために海外進出しましたが、結果として赤字を招いてしまったのです。

資金力に乏しい中小企業からすると、莫大なコストの存在はなおさら大きなデメリットです。このデメリットのために、海外進出を諦める企業も多く存在します。

(3)政治リスク

新興国・発展途上国には、人件費が安いというメリットがある一方で政治情勢・治安が不安定というデメリットもあります。海外進出した企業の中には、現地の政府に退去を求められた機関も報告されているのです。

極端な話ですが、突然戦争が発生したりデモが勃発したりすれば、ビジネスどころではなくなります。海外進出には、こうしたデメリットが内在している点も認識しておかなくてはいけません。メリットとデメリットの双方を天秤にかけつつ海外展開の意思決定を行いましょう。

(4)為替レートの変動

発展途上国や新興国での海外進出では、政治・経済の変化により証券市場・為替市場が混乱し為替が急激に変動するというリスクがあります。為替レートが変動すると、利益額が減少するおそれもあるのです。

為替は、例えば1ドル100円から1ドル110円と10円変動するだけでも非常に多くの影響を及ぼします。また、世界という視点では、デフォルト(債務不履行)により国全体の経済が破綻してしまうケースも決して珍しくありません。

こうしたトラブルは、契約時点で為替レートを固定することで、ある程度は回避可能です。ただし海外進出する業種・業態によっては、外資比率が決められていたり現地従業員の外国人比率に規制が設けられていたりするケースもあるため、情報収集を十分に行うようにしましょう。

(5)文化や制度の違い

文化や制度の違いから、思わぬトラブルが発生するというデメリットもあります。日本では問題ない行動であっても、海外では無礼な行為だとみなされるケースは少なくありません。

いちど現地市場で反感を買ってしまうと、今後その市場でビジネスを展開できなくなるおそれがあります。海外進出する際には、事前に現地の文化や風習などを把握しておくことが大切です。文化や風習などの把握は、デメリット回避だけでなく、市場開拓の手がかりを掴むことにもつながります。

以下の記事では、経営に関して発生しがちな課題について紹介していますので、収益の向上を目指している経営者の方は併せて確認しておきましょう。

【関連】経営の課題

海外進出する時の課題

ここでは、海外進出する時の課題として、「情報不足」「商慣習」「言語」という3つの観点から紹介します。

情報不足の問題

海外進出では、言語や文化に関する課題を聞いたことがある経営者の方も多いと思いますが、最も大きな課題は情報です。

進出する国でビジネスを成功させられるのか事前に把握できなければ、元も子もありません。もちろん実際に海外展開してから判明する課題もありますが、全く把握していないとリスクが非常に高いです。

あらかじめ進出する国のビジネスや市場規模などについて情報を集める必要があります。ここで集める情報は、以下の2種類です。

  • 国際機関などが提供している統計情報などの定量的なデータ
  • 現地の人の意識や趣向がわかる定性的なデータ

これら2つのデータをしっかりと見極めながら自社のビジネスと照らし合わせることが、海外進出の成功に向けた第1歩です。現地の情報を得るためには、ときには現地調査なども必要となります。

予備調査のみでも何百万円もの資金が必要になるケースもありますが、事前にできる限りの情報を集めておくと後の成功につながります。実際に大企業であっても、現地の情報や競合製品の情報などを十分に収集しなかったことが原因で海外進出に失敗してしまったケースが報告されているのです。

商習慣の問題

先ほど述べたビジネスに関する情報には、この商習慣も含まれます。国ごとに独自の商習慣がありますが、中にはビジネスに対する考えた方が日本と大きく異なる国も存在するのです。

例えば、ミーティングの進め方・商談時の交渉方法のほか、さらに細かい所でいうとメールなどの連絡に要する返答時間などの違いを理解する必要があります。現地の商習慣を知らずに海外進出をしてしまうと、日本の商習慣を押しつけてしまう可能性が高いです。

日本の商習慣が悪いわけではありませんが、海外でビジネスする際には現地の商習慣を意識しながら取り組まなければ、進出以前にトラブルを引き起こす原因となります。

言語の問題

最後に、一般的な課題である言語についてです。現地の言語は、いうまでもなく現地の人とコミュニケーションを取る際に非常に重要となります。世界には日本語が話せる国・地域はほとんど存在しないため、基本的には英語でのコミュニケーションが必要です。

日常会話程度であれば英語を話せる日本人も増えていますが、ビジネスの場で通用する英語となると非常に高い英語力が求められます。現地の言語でコミュニケーションせざるを得ないシーンも発生しますが、こうした場合には通訳を雇うと良いでしょう。

いずれにしても、ビジネスの場では、自社の考え・製品・商品を的確に伝えることが重要です。先ほど述べた商習慣の違いも相まって、流暢に会話できる人がいなければ、そもそも海外進出は難しいといえます。

海外でビジネスを展開するうえで、言語の壁は避けてとおれない問題であるため、準備しておくことが非常に大切です。

【関連】海外進出の課題とは?方法や手順、クロスボーダーM&Aを活用した海外進出

海外進出を成功させるポイントと条件

次に、海外進出を成功させるポイントをお伝えします。ここでお伝えするポイントを実践すればメリットを最大限に発揮できるでしょう。

(1)海外向けにローカライズ

最も重要なポイントは、海外向けにローカライズすることです。日本市場とグローバル市場では、マーケティング方法・人材管理・成長戦略などがすべて異なるため、これらを現地向けにカスタマイズする必要があります。

このときに、日本での成功体験に固執してしまうと、海外進出に失敗します。これまでの価値観・成功体験を一度すべて捨てたうえで、新鮮な考え方のもとで海外進出を図ると良いでしょう。

(2)現地市場のニーズに合致する商品

海外進出を行う際は、最初から現地市場向けの商品を開発・提供する姿勢が大切です。海外市場は、日本市場とは趣向・ライフスタイルなどが全く異なります。

そのため、日本で成功した商品を海外に持っていったとしても、売れる可能性は低いです。反対に、最初から現地市場のニーズに合致する商品を提供すると、成功する可能性が高まります。

海外進出するうえで、「現地志向」は非常に重要な考え方です。現地志向の実践によって、海外展開のメリットが最大化されます。

(3)現地企業との連携

海外進出は、当事会社からすると未知の市場をゼロから開拓する行為といえます。多くの時間やコストがかかるうえに、失敗するリスクが高いです。

そのため、はじめに現地企業と連携して、海外進出のリスクを低減しましょう。連携により、リスクの低減だけでなく、スピーディーな事業展開も実現できます。

現地企業との連携方法には、さまざまな方法があります。例えば、マスターフランチャイズ契約・アライアンス・M&Aなどが代表的な連携方法です。

海外進出の流れ

ここでは、海外進出の具体的な流れを以下の手順に分けて紹介します。

  1. 海外進出の目的の明確化
  2. 情報収集
  3. 市場調査
  4. 現地視察
  5. 現地展示会に出展
  6. 海外進出のための予算計画の策定
  7. 資金調達
  8. 海外現地法人の設立

それぞれの項目を順番に把握しておいて、自社の経営戦略に活かしましょう。

(1)海外進出の目的の明確化

海外進出は、競争力の強化・市場規模の拡大・生産拠点の移転などを目的に実施される行為です。海外進出を検討する際は、まずこれらのうちいずれの目的を掲げて行うのかハッキリさせておきましょう。

これと同時に、いかなるメリットの獲得を期待して行うのかも明確化させておくと良いです。海外進出する理由や最終的な目的をいつでも再確認できるようにしておくと、本来の目的を見失わずに済みます。

(2)情報収集

次に、海外進出の候補先となる国・地域に関する情報を収集します。これにより、自社の経営戦略において課題となる要素が見えてくるのです。

なお、海外進出の候補先が決まっていない場合には、「どの国に進出すると目的を達成できるのか?(メリットを最大化できるのか?)」という視点で検討を始めると良いでしょう。

(3)市場調査

自社の海外事業を成功させるうえで大切なのは、対象国の法規制・規格に適合したモノ・サービスを販売することです。そのうえで、現地のユーザーの需要・生活スタイル・趣味や趣向などに合致したマーケティングを実施する必要があります。

そのため、たとえ自社のモノ・サービスが国内で成功を収めていたとしても、海外でも同じように成功するとは限りません。むしろ自国でのノウハウはまったく通用しないというスタンスでいた方が改善策を講じやすいです。

こうした事情を踏まえて、対象国に受け入れてもらいやすいモノ・サービスを開発すべく、念入りに市場調査を実施してください。

(4)現地視察

海外進出するうえで、対象国を実際に自身の目でしっかり見ておくことは非常に重要です。海外進出における現地視察の訪問先としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 同業他社
  • 市場(店舗)
  • 公的機関(JETRO・現地政府高官など)
  • 教育機関
  • 不動産(レンタルオフィス)
  • 現地のコンサルタント・会計士などの専門家
  • 知人

このように、訪問先候補はさまざまあるため、現地視察は必要に応じて複数回行うと良いでしょう。進出先の検討段階だけでなく、海外進出が決定した後も引き続き現地視察を行う企業が多いです。

もしもスムーズに現地視察を進めたいという場合、現地の専門家に相談・依頼して、各訪問先にアポイントを取ってもらうと効率的です。場合によっては、専門家の現地ネットワークから新しい訪問先を提案してもらえるケースもあります。

(5)現地展示会に出展

海外進出するうえで現地の展示会を利用すると、現地のマーケット感覚を味わいつつ市場調査も行えるため非常に効率的です。そのため、海外進出までの時間・コストが限られている企業からすると、大きなメリットのあるイベントだといえます。

(6)海外進出のための予算計画の策定

予算計画を策定すると、海外進出を成功させるための行動内容がハッキリします。簡単にいうと、海外進出の目的を達成するために、「何を・どのように・どれくらい」行うべきなのかが明確化されるのです。

また、仮に達成できなかったとしても、この問題を改善するための検証につなげられます。予算計画の具体的な策定方法としては、まず中長期的な達成目標を策定したうえで、これを達成するために必要な行動計画を立てていくとスムーズです。

(7)資金調達

予算計画を策定できたら、次は計画で使う資金を調達します。資金調達の代表的な方法は、以下のとおりです。

  • 金融機関の融資
  • 国の助成金・補助金の活用
  • 現地企業とのジョイントベンチャー
  • ベンチャーキャピタルの出資
  • 株式上場
  • M&Aの実施

自社で取れる選択肢を採用し、資金調達を成功させましょう。資金調達の方法は、以下の記事で詳しく解説しております。M&Aの際に活用できる方法もまとめておりますので、ぜひ参考にしてください。

【関連】資金調達の方法

(8)海外現地法人の設立

資金調達が済んだら、いよいよ海外に現地法人を設立します。ここでは子会社のほか、支店や駐在員事務所など、各ケースによりさまざまな形態の現地法人が設立されるのです。

とはいえ、いかなる形態を採用するとしても、法人登記をはじめ現地での手続きが求められます。ここで取るべき手続きには統一の基準が存在しないため、対象国の現地ルールに従って進めてください。

もともと法人登記を済ませるには専門知識が必要となるうえに、英語や現地の言語での対応が求められるケースもあります。多くの場合、経営者のみで手続きを進めていくのは非常に難しく、現実的ではありません。

こうしたトラブルを解決するには、現地の登記代行企業などの専門家に手続きを依頼するのがベストです。必要に応じて、現地のコンサルタント・会計士などから紹介を受けるとスムーズです。

海外進出する時はコンサルや支援に頼むべきか

海外進出を会社の一大事業として掲げるのであれば、それ相応のリソース(いわゆるモノ・カネ・ヒト)が必要となります。そして企業の海外進出に対する深い見識があるコンサルタントを雇い、サポートを依頼するのがベストです。

ただし、コンサルタントを雇うにもそれ相応のカネが必要となるため、まずは海外進出に対してどれだけの予算が取れるのかを知り、予算次第でコンサルタントを雇うかどうか判断すると良いでしょう。

【関連】 M&Aコンサルタントとは?アドバイザリーとの違いや資格、業務内容を解説

海外進出のためのM&A

最近では、自社のみで現地に法人を設立するのではなく、海外企業とM&Aを行って海外進出を実現する日本企業も増加中です。こうした海外企業とのM&Aを、クロスボーダーM&Aと呼びます。

クロスボーダーM&Aでは海外企業と統合が図れるため、効率的かつスピーディーな海外進出が可能となります。その一方で、通常の海外進出とは異なる専門知識・手続きが求められるため、海外進出およびM&Aに長けた専門家からサポートを受ける必要があるのです。

海外進出に伴いクロスボーダーM&Aの実施をお考えでしたら、M&A総合研究所までご相談ください。M&A総合研究所では、M&Aに関する専門知識・経験が豊富なアドバイザーによるフルサポートを行っております。

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【関連】クロスボーダーM&Aを成功させるには

まとめ

本記事では、海外進出のメリットとデメリットを紹介しました。日本企業が海外進出すると、さまざまなメリットを獲得できます。販路開拓・海外向けのプロダクト開発など、日本市場では得られないメリットばかりです。

その一方で、海外進出のコスト・政治リスクなどデメリットも存在します。海外進出を検討する際は、海外展開に必要な考え方・ポイントを理解しておきましょう。要点をまとめると、下記になります。

・日本企業に海外進出が必要な理由
→グローバル競争に勝てない、市場規模が縮小する、生産拠点を海外に移転する

・海外進出のメリット
→販路開拓を実現できる、原材料費や人件費を減らせる、日本では得られない発想を得られる、特定の商品・サービスに集中できる、税率の低さによるコスト低減

・海外進出のデメリット
→人材管理が難しい、海外進出に莫大なコストがかかる、政治リスクの存在、為替レートの変動、文化や制度の違い

・海外進出を成功させるポイント
→考え方を大幅に変更する、最初から現地市場向けの商品を開発する、現地企業と連携する

・海外進出の流れ
→海外進出の目的の明確化、情報収集、市場調査、現地視察、現地展示会に出展、海外進出のための予算計画の策定、資金調達、海外現地法人の設立

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