M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2024年1月28日更新会社・事業を売る
M&Aの目的とは?買収側・売却側ごとに目的・メリット・課題・事例を徹底解説
M&Aを活用すれば、さまざまな経営戦略上の目的をスピーディーに達成することが可能です。近年は売り手・買い手問わず多くのM&Aが実施されているので、M&Aを検討する際は他社のM&Aを行った目的や事例を把握しておくと役立ちます。
目次
M&A・買収の目的とは
M&Aによる会社・事業の買収を検討する際は、まず実施する目的を明確化することが大切です。企業がM&Aを行う目的は、事業承継やイグジット、企業の成長戦略、個人の人生戦略などさまざまな内容が考えられます。
もしも目的が不明瞭の場合、M&Aにおけるメリットを最大化できないだけでなく、リスクを負ってしまいM&Aが失敗してしまう可能性も高くなってしまいます。
なぜM&Aでは目的の明確化が大切なのか、M&Aの基礎的事項と目的を明確化する重要性を解説します。
M&Aとは
M&A(読み方:エムアンドエー)は、経営戦略における目的を素早く達成するために有効な手段の1つです。近年では、売り手・買手ともにさまざまな目的でM&Aを活用しています。かつてM&Aは「会社を売り払う」というイメージも強く、大企業が行うものと認識されている時期もありました。
しかし、現在は経営戦略における有効な手段として広く認知されるようになってきており、大企業・中小企業問わず、さまざまな場面で活用されています。もしもM&A実施を検討しているのであれば、他社がどのような目的でM&Aを実施しているのか、事前に知っておくと役立つことが多いです。
狭義と広義のM&A
「M&A」は、企業が合併や買収をすることをさします。「M」は企業同士が一つになる「合併」、「A」は一方の企業が他方を「買収」することを示します。
このような動きをする時は、日本の会社法にもとづいて、正式な手続きを進める必要があります。たとえ会社が大きくなくても、株式会社としては、この法律に沿った方法で動かなければなりません。
また、M&Aには、事業を広げるための資本の提携も含まれます。例えば、異なる企業同士で協力関係を結ぶ「合弁会社」のような形も、M&Aの一部として考えられます。
特に大きな企業は、海外での事業を増やすために、現地の企業と手を組むことがよくあります。これにより、新しい市場への展開をより早く進めることができます。
M&Aの種類
一般的にM&Aは、大きく買収・合併・分割の3つに分類できます。買収とは、買い手が売り手の過半数以上の株式を取得して経営権を掌握すること、あるいは事業を買い取ることです。具体的なスキームとしては、株式譲渡、第三者割当増資、株式交換、株式移転、事業譲渡の5つがあります。
合併とは、複数の会社が1つの法人格に統合する手法で、吸収合併と新設会社の2種類があります。既存会社を存続会社としその他の会社がすべて消滅する方法を吸収合併、新たに会社を設立してすべて承継後にその他の会社が消滅する方法を新設合併と呼びます。
また、分割とは、会社(株式会社や合同会社)が有する権利義務の全部あるいは一部を別の会社へ承継することです。既存する2社が行い一方の会社が引き継ぐ吸収分割と、新設した会社が引き継ぐ新設分割があります。
M&Aに成功すれば経営戦略上の目的を達成できる
何らかの問題を抱えている会社であれば、M&Aは有効な手段の1つとなりますが、M&Aを成功させることは簡単ではありません。
M&Aでは売り手(買手)探し・交渉・契約・デューデリジェンスなどを行う必要があり、一般的には半年~1年程度、長い場合はそれ以上の期間を要します。また、少しの判断ミスで失敗に繋がることも少なくありません。そのため、M&A実施を検討している場合は専門家に相談することをおすすめします。
M&A総合研究所には、専門的な知識や経験が豊富なアドバイザーが多数在籍しており、培ったノウハウを生かしてM&Aをフルサポートいたします。スピーディーなサポートを実践しており、最短3カ月での成約実績も有しています。料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。
無料相談をお受けしておりますので、M&Aをご検討の際はどうぞお気軽にお問い合わせください。
M&Aの買収側における目的
M&Aにおける買収側の主な目的としては、以下の7つが挙げられます。ここでは、実際に行われたM&A事例を紹介しながら、各目的を解説します。
- 技術力の確保
- 人材の確保
- 企業の成長スピード向上
- 事業内容の多角化
- 事業に関するリスクヘッジ
- 海外への進出
- 競合他社の吸収
①技術力の確保
売り手の持っている技術力やノウハウの取得を目的として、買収が行われるケースは非常に多く見られます。買い手は具体的にどのようなメリットを得られるのか、実際に行われた事例を交えながら紹介します。
技術力の確保を行うメリット
買い手がM&Aによって技術力を確保するメリットとして挙げられるのは、主に以下の2つです。
- 事業の強化
- 技術力の獲得にかかるコストの削減
買い手の既存事業に売り手の技術力が加わることで、事業の強化やさらなる成長が見込めて、新製品の開発や新規マーケットでのスムーズな事業展開などが実現します。
また、技術力でライバル会社に差を付けたいと考える場合、自社でゼロから技術を習得・開発するには時間もコストもかかります。しかし、M&Aによって売り手の技術力を確保できれば、コストだけでなく時間も大幅に削減可能です。
技術力の確保を目指す際の課題
M&Aによって売り手の持つ技術力を得たとしても、買い手は事業強化や事業拡大を実現できるとは限りません。場合によっては想定どおりの効果が得られなかったり、M&Aによって売り手の優秀な人材が流出してしまったりする可能性も考慮しておくことが必要です。
人材流出には、特に注意しておく必要があります。M&Aによって高い技術力を持つ人材が辞めてしまうようなことがあれば、想定した効果を得にくくなるだけでなく、ノウハウが外部に流出する可能性もあります。こうした事態を避けるためには、従業員への対策を講じることが大切です。
技術力の確保を行った事例
技術力の確保を目的に買収を行った代表的な事例としては、2016年のメタップスによるビカムの完全子会社化が挙げられます。
メタップスは、ECサイトや実店舗で利用可能な電子マネーやクレジットカードなどのさまざまな決済サービス提供しており、ビカムが運営しているショッピング検索サイトや保有しているデータフィードマネジメント技術が自社の事業と高いシナジー発揮が見込めると判断しました。
メタップスはビカムの全株式を3億2,000万円で取得しました。完全子会社化によって、マーケティングから決済までのECトータル支援体制を作ることが本件M&Aの大きな目的であり、今後はビカムの技術を活用してさらなる事業領域の拡大・既存事業との連携を図っていくとしています。
②人材の確保
売り手の人材確保を買収の主な目的とするケースもあります。買い手が人材確保で得られるメリットにはどのようなものがあるのか、実際に行われた事例とともに説明します。
人材の確保を行うメリット
買い手側がM&Aによって人材を確保するメリットには、主に以下の3つがあります。
- 既存事業(商品など)やサービス内容の向上
- ノウハウの引継ぎ
- 後継者不在による事業承継問題の解決
高い専門性・ノウハウ・技術を持つ人材をM&Aにより獲得できれば、既存事業(商品など)やサービスに生かせて、質・内容の向上につながります。そのノウハウを今後も引き継いでいけば、事業の発展にも期待できるでしょう。
また、後継者のいない企業にとっては、獲得した人材の中に後継者候補がいる可能性もあり、事業の存続も見込めます。
人材の確保を目指す際の課題
売り手の人材を確保できたとしても、必ずしも自社の文化や理念・環境に合うとは限らず、少なからずM&Aによる人材流出のリスクもあります。
買い手としては、M&Aによって多くの人材が得られても、人材流出・企業文化の違いなどにより想定していたシナジーが発揮されない可能性もある点を考慮しておかなければなりません。シナジーを最大限に発揮させるためにも、従業員に対するケアやM&A後の統合作業を丁寧に行うことが大切です。
人材の確保を行った事例
人材確保・共有を目的とした代表的なM&A事例としては、2016年の小僧寿しによる阪神茶月とスパイシークリエイトの連結子会社化があります。
小僧寿しは持ち帰り寿司の販売事業を展開しており、2012年には阪神茶月より「茶月東日本」を引き継ぎ、東日本エリアで同じく持ち帰り寿司を販売する「茶月」を運営しています。2016に行われたM&Aでは、第三者割当割り当てによって2社の発行株式(茶月は67.8%、スパイシークリエイトは51.3%)を引き受けて連結子会社としました。
本件により、東日本エリアの茶月と西日本エリアの茶月、2つの本部を統合させたことで、全国的な展開が可能となり、今後はリブランド開発も効果的に進められるとしています。
さらに、既存ブランド「小僧寿し」を西日本エリアで事業拡大でき、フランチャイズの構築実現などのシナジーも見込んでいます。阪神茶月の代表(伴田昭彦氏)はスパイシークリエイトの代表も務めており、スパイシークリエイトの経営管理は実質的に茶月が担っていました。
スパイシークリエイトは「カレーハウススパイシー」「イタリア料理サンマルコ」「春陽堂」の3つの飲食店ブランドを展開しており、小僧寿しは2社を連結子会社化することで商品開発力強化・ブランドの多様化・人材の共有が図れるとしてM&Aに至りました。
③企業の成長スピード向上
M&Aは企業の成長スピードを向上させる有効な手段であり、これを目的として買収が行われるケースも多いです。具体的にはどのようなメリットが買い手にあるのか、実際に行われた事例とともに解説します。
企業の成長スピードを向上させるメリット
M&Aを活用して企業の成長スピードを向上させるメリットは、主に以下の2つがあります。
- 事業の成長にかかる時間を短縮できる
- 新規事業に参入する場合のコスト・時間を削減できる
自社の事業を成長させるためには時間がかかり、その分のコストも必要です。しかし、M&Aによって他社の既存事業を取得すれば、効率的に事業を成長させることが可能になり、時間とコストを減らせます。
新しい事業分野に進出するとなれば、コストがかかるだけでなく、軌道に乗るまでに相応の時間が不可欠です。M&Aでその分野の企業や事業を取得すれば、スムーズな新規事業参入が可能です。
企業の成長スピード向上を目指す際の課題
人材確保や技術力獲得を目的とした場合と同様に、M&Aによって優秀な人材が流出してしまったり、十分なシナジーが得られなかったりする可能性があります。特に事業の中心となっている人材がM&Aによって辞めてしまうと、スピーディな事業成長が難しくなるだけでなく、かえって低下するケースも考えられます。
シナジーを効果的に発揮させるためには、人材流出リスクを減らし、M&A後の統合作業を計画的かつ丁寧に進めていく必要があります。統合作業には売り手側の協力が必要となる場合も多いので、どのように進めていくかを事前にしっかり協議しておくことが大切です。
企業の成長スピードを向上させた事例
事業の成長スピード向上を目的にM&Aを行った代表的な事例としては、2017年のグリーによる3ミニッツの完全子会社化があります。当時、ゲームやSNS関連事業を主軸とするグリーは成長分野として動画広告を掲げており、インフルエンサーと連動して動画をプロデュースする3ミニッツのノウハウを高く評価していました。
本件M&Aでは、グリーが3ミニッツの全株式を取得して完全子会社化しており、グリーの強みであるスマホを対象とする動画広告分野での成長を目指す見込みです。
④事業内容の多角化
激しく移り変わる市場で生き残るために事業内容の多角化を考える企業も多いですが、そのようなケースでもM&Aは有効な手段の1つです。ここでは、事業内容の多角化を目的としたM&Aの買い手側のメリットや、実際の事例を紹介します。
事業内容を多角化させるメリット
事業の多角化とは、主軸となる事業を1つではなく複数持つ経営戦略のことで、主に以下のようなメリットがあります。
- 収益拡大に期待できる
- 自社を取り巻く環境変化によるリスクを分散できる
- 経営資源を有効に活用できる
M&Aによって新たな事業を取得して主軸となる事業を増やせば、収益増が期待できます。成熟期に入った事業に資金や人材を投入しても大きな成長を見込むのは難しいですが、多角化すれば成長が期待できる新たな事業に資金・人材を有効活用できます。
自社を取り巻く環境は法改正・顧客ニーズの変化などにも大きく影響を受けるため、ときには予測できないような打撃を受けることもあります。このような場合、主軸となる事業が1つしかなければ自社の存続自体も危ぶまれますが、収益の柱となる事業が複数あれば、そのリスクを分散できます。
事業内容の多角化を目指す際の課題
事業を多角化すればさまざまなメリットが期待できますが、M&Aを活用して新規事業を立ち上げるためには多額の資金がかかります。短期的に見れば、マーケティング・製品の開発・販促活動にもコストが必要です。多角化すればコスト削減につながりますが、その反面、経営が非効率になりやすいという面も持ち合わせています。
収益拡大のためにM&Aを活用して新規事業を始めたとしても、思っていたような効果が得られず、かえって損失につながる可能性も考慮しておく必要があります。
事業内容を多角化させた事例
M&Aを活用して事業の多角化を成功させた企業としては、楽天グループが有名です。楽天はインターネットショッピングサイト「楽天市場」を核として、金融(クレジットカード、証券、銀行)、旅行、電子書籍、プロスポーツなど、さまざまな事業を展開しています。
楽天が行った異業種とのM&A事例を挙げると、2003年のマイトリップ・ネット買収(後の楽天トラベル)や、同じく2003年に行ったDJLディレクトSFG証券の子会社化(後の楽天証券)、翌2004年のあおぞらカードの完全子会社化(後の楽天カード)などがあります。
2010年にはイーバンク銀行を関連子会社化して「楽天銀行」に商号変更し、これによって金融各部門の事業が整い、現在の楽天の基盤が確立しました。
⑤事業に関するリスクヘッジ
M&Aの活用は、事業のリスクヘッジにも効果的です。それでは、具体的にどのようなメリットがあるのか、事例と併せて解説します。
リスクヘッジを行うメリット
新規事業への参入を検討している場合、M&Aによって他社の既存事業を獲得すれば、リスクを軽減できます。新規事業を始める際は、資金や人材の確保だけでなく、収益化できるまでの時間も見越しておかなければなりません。必ず軌道に乗るとは限らないため、これらがすべて無駄になるリスクもあります。
しかし、M&Aによって収益化している他社の事業を取得すれば、リスクを大幅に軽減することができるうえに、スムーズな市場参入が可能です。
リスクヘッジを目指す際の課題
新規事業へのリスクヘッジを目的にM&Aを行う場合、注意すべきなのは企業文化の違いや人材流出の可能性があることです。同業種であっても企業文化は違う部分が多いため、異業種を買収して融合させるまでには相応の時間が求められます。
M&Aによる人材流出リスクをゼロにするのは非常に難しいため、少なからず離職者が発生することも考慮しておかなければなりません。もしも多くの人材が流出してしまったりM&A後の統合作業がうまくいかなかったりすれば、最悪の場合は事業が失敗に終わる可能性もあります。
リスクヘッジを行った事例
リスクヘッジを取りつつ新規事業へ参入して成功した事例としては、楽天によるイーバンクの買収が挙げられます。現在、イーバンクは楽天銀行に商号変更されており、楽天の完全子会社となっていますが、楽天は金融業界へ参入するために数回に分けてM&Aを行っています。
まず2008年にイーバンクと資本業務提携を結び、翌2009年には保有していた全優先株式(66万6,000株)を普通株式に転換して連結子会社化しています。この時点で楽天の議決権は48.69%になりました。2010年にはイーバンクを完全子会社化するために、TOBを実施したのちに簡易株式交換を行いました(商号変更も2010年)。
楽天銀行は、2020年には預金残高が5兆円を超えるなど大きく成長しており、楽天が行ったM&Aは新規事業への参入リスクを軽減できた成功事例といえます。
⑥海外への進出
企業が海外進出を検討した場合、コストや人材確保などさまざまな障壁がありますが、M&Aを活用することでこうしたリスクを軽減できます。
海外進出を行うメリット
M&Aを活用して海外進出した場合、得られるメリットとしては主に以下2点があります。
- 事業エリア・シェア拡大が実現できる
- 人件費や原材料費などのコストを削減できる
海外へ事業エリアを広げることで、売上の向上や市場でのシェア拡大が期待できます。日本から自社の人材や原材料などをすべて持ち出す場合、もちろん多くの費用がかかりますが、現地の企業や事業を獲得すれば人材だけでなく原材料の仕入れルートの確保も可能です。
進出エリアが発展途上国などの場合、日本に比べ人件費が安くなる傾向にあるので、技術やノウハウを持つ優秀な人材を獲得する機会も増やせます。
海外進出を目指す際の課題
M&Aによる海外進出はメリットが多いですが、日本とは言語・文化が異なるため、コミュニケーションがうまくとれないケースも少なくありません。そうなれば、新規雇用や従業員の管理も難しくなるので、どのように人材管理を行うかが課題です。
国により法規制も違うために事前の調査や準備は慎重に行わなければならず、急な為替レートの変動で利益を大きく損なう可能性も考えられます。進出エリアによっては政治情勢も大きく影響します。テロ・紛争によって当該国での事業継続が難しくなる場合があることも考慮しておかなければなりません。
海外進出を行った事例
海外進出の手段としてM&Aを活用するケースは非常に多く見られますが、ここでは日本たばこ産業(JT)の事例を紹介します。
日本たばこ産業は、1999年にアメリカのRJRナビスコ社を約78億円で買収しています。当時のレートで約9,400億円の巨額なM&Aでしたが、これによって海外たばこの販売数量を10倍以上に伸ばすことに成功しました。
2007年にはイギリスのギャラハー社、2012年にはベルギー大手のグリソン社を買収するなど、積極的にクロスボーダーM&Aを活用して事業を拡大し、グローバル化に成功しています。
⑦競合他社の吸収
自社の競合相手をM&Aによって吸収するケースもあります。ライバル会社を買収することで得られる具体的なメリットにはどのようなものがあるのか、事例を交えて解説します。
競合他社の吸収を行うメリット
それまでシェアを奪い合っていたライバル会社をM&Aで吸収するメリットには、主に以下の2つがあります。
- 市場シェアの拡大が見込める
- ノウハウの共有やコスト削減による利益拡大が見込める
まず競合他社を吸収すれば、他社が占めていた市場シェアもそのまま獲得できます。両社のノウハウや技術を共有することで新たな分野や商品に生かせるほか、間接部門を統合すればコストも削減でき、経営の効率化や利益拡大も見込めます。
競合他社の吸収を目指す際の課題
競合他社を吸収すると経営の効率化が図れるため、シナジーは得やすいです。しかし、買収される側に心理的な抵抗が生まれやすく、キーマンとなる人材が離職したり士気が下がったりする可能性も少なくありません。
ライバル関係にあれば、売り手がM&Aを嫌がることも考えられます。この状況で買収するとなれば、敵対的買収を仕掛けることになり、TOB(株式公開買い付け)を用いることが基本です。
その場合は市場株価よりも価格を高く提示する必要があるので、多額の資金を事前に用意しておかなければなりません。
競合他社の吸収を行った事例
競合他社を買収した代表的な事例としては、2003年の楽天によるマイトリップ・ネットの完全子会社化があります。
マイトリップ・ネットは「旅の窓口」という国内最大級の宿泊予約サイトを運営していました。当時は楽天も総合旅行サイト「楽天トラベル」を運営していましたが、シェアは圧倒的にマイトリップ・ネットが上回っている状態でした。
買収価格は323億円と巨額でしたが、この買収により楽天は宿泊予約サイト市場でのシェアを一気に伸ばしています。
最適なM&A相手探しは簡単ではない
M&Aが成功すれば多くのメリットを見込めますが、そのためには目的に沿った相手を見つけることが重要です。しかし、最適なM&A相手を独力で見つけることは簡単なことではありません。
M&A先をお探しの際は、ぜひM&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所は独自ネットワークを活用して、ニーズに合ったM&A相手先企業をご提案いたします。M&Aの知識・実績豊富なアドバイザーが専任につき、ご相談からクロージングまで丁寧にサポートいたします。
料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。相談料は無料となっておりますので、M&Aをご検討の際はどうぞお気軽にご相談ください。
M&Aの売却側における目的
ここからは、M&Aを実施する具体的な目的を紹介します。M&Aにおける売り手側・売却する際の代表的な目的は、以下のとおりです。
- 事業承継の実現
- コア事業への集中
- 創業者利益の確保
- 企業(事業)の存続
- 個人保証・債務からの解放
それぞれの目的を順番に紹介します。
①事業承継の実現
M&Aによって事業を売却すれば、廃業せずに事業を継続することが可能です。廃業を回避することで、廃業費用の削減や従業員の雇用の確保も可能です。
これまで自社が蓄積してきたノウハウ・技術が売却先企業で継続的に使用されるため、無駄になりません。ノウハウ・技術は使い続けることで発展が促され、社会に大きなイノベーションをもたらす可能性もあります。より良い社会を実現させるためにも、ノウハウ・技術の承継は重要です。
M&Aを活用すれば廃業を回避できる
事業承継を目的とするM&Aを実施すれば、従業員の雇用を維持しノウハウ・技術を発展させながら、後継者問題を解決する目的を達成できます。M&Aにより会社・事業を売却すれば、創業者は売却利益を獲得することも可能です
ここで獲得した資金を活用して、新たなビジネスを始めることもできます。リタイアを検討する場合は、引退後の生活資金に充てることも可能です。このように事業承継を目的としたM&Aでは、売り手に多くのメリットがもたらされるため、事業承継を目的にM&Aを活用するケースが増えています。
②コア事業への集中
中小企業は大企業と比べて、資金・人材・技術・ノウハウ・設備などの経営資源が限られています。なので、効率的な事業運営を行うためには、「選択と集中」の考えが必要です。
必要なものや重要度の選択を行い、収益性や業績が良好な「コア事業」に資源を集中的に投入します。例えば、企業戦略で特定の事業を継承する実益が乏しいと判断した場合、その事業を換金し、コア事業に資金投入を行うケースなどがあります。
この場合、資金だけでなく人材・技術・ノウハウ・設備などの経営資源も、コア事業に集中的な投入が可能です。したがって、M&Aはコア事業にも良い影響を与える可能性があります。コア事業への集中の観点からも、経営戦略の1つとしてM&Aを念頭に置いておくと良いでしょう。
資金調達を目的としたM&Aも多い
資金調達を目的に、M&Aによって事業を売却する場合もあります。コア事業に集中するためや、新事業の開拓・不採算事業の改善などのために資金調達を行うことも少なくありません。
後者のケースでは、コア事業への集中と異なり、業績の良い事業の売却も視野に入れます。前向きな理由ではなく、業績が振るわずに資金繰りが難しくなったためにM&Aを活用することもあります。
しかし、自社の主力である事業を売却してしまうと、企業の収入源がなくなり経営が行き詰ってしまう可能性があります。資金調達を目的としたM&Aを実施する場合、どの事業を売却するべきなのかしっかりと見極めることが大切です。
③創業者利益の確保
創業者利益の獲得を目的として、M&Aで自社または事業を売却するケースも多くみられます。株式譲渡の場合は、創業者(株主)が対価を得ます。事業譲渡の場合は会社がM&Aの対価(現金)を受け取り、創業者は対価の一部を退職金として受け取ることが可能です。
いずれにしても、まとまった資金を獲得できるので、引退後の生活費に充てたり新たな事業の資金にしたりと自由に使用できます。
④企業(事業)の存続
市場は近年激しく変化しており、資源の限られる中小企業が長く生き残っていくことは厳しい環境になっています。企業がどれほど優れた技術・人材・ノウハウを持っていたとしても、経営資源の豊富な大企業に模倣されてしまえば、業績が向上しません。
資源の豊富な大企業の影響により、中小企業が厳しい状況に立たされるのは事実です。例えば、地方に大型スーパーができてしまい、小規模のスーパーが衰退してしまうといったケースで、このような状況がさまざまな業種に起きているのが日本の現状です。
こういった場合に有効策として考えられるのが、生き残りを目的とした大企業に加わるM&Aの実施です。大企業の傘下となることで、豊富な経営資源が得られます。ブランド力や知名度が活用され、企業・事業を存続できる可能性が飛躍的に高まります。
⑤個人保証・債務からの解放
中小企業が資金繰りをする場合、ほとんどのケースで金融機関からの融資を活用します。融資の審査を通りやすくするうえで、経営者個人の連帯保証や、経営者の個人資産の担保差し入れなどを用いるケースが一般的です。
こうした個人保証や債務の存在は、精神的負担が非常に大きいです。会社売却で株式譲渡を用いる場合は包括承継となるため、買収側が債務は引き継ぎます。そのため、個人補償や債務からの解放を目的としてM&Aを行うケースも比較的多いです。
⑥投資回収・現金化のための時間短縮
通常、事業への投資から資金を回収し、さらに利益を上げるためには、非常に多くの時間が必要です。しかし、さまざまな理由から、当初の計画よりも早く資金を回収したい事業者も存在します。
このような状況で、M&Aを利用すると、現有資産を現金化するだけでなく、将来得られる利益も考慮した価格で売買が行われるため、投資資金の回収と将来の利益の一部を早めに現金化することが可能です。
通常であればもっと先になる資金回収と利益獲得のタイミングを短縮できるため、M&Aによる売却を目指す事業者も多くいます。
M&A・買収の目的(その他)
ここまで紹介したほかに、M&A・買収を実施する目的には以下のようなものも存在します。
- 企業再生
- グループ内再編
それぞれの目的を順番に見ていきます。
①企業再生
資金や人材などの経営資源不足によって経営難に陥った企業を再生させる目的で、M&Aによる売却が活用されることもあります。実際に、早期再生や私的・法的再生の段階にある企業の再生を目的としたM&Aは数多く実施されています。
例えば、経済や社会への影響が大きい企業や技術・ブランド力の高い企業が倒産してしまえば、経済・社会全体に大きな損失を与えかねません。経済・社会全体に損失が及ばなかったとしても、地域に根ざした商業施設が倒産してしまえば、地域住民の生活に大きな影響を与えることは避けられません
企業の倒産は社会に少なからず悪影響を及ぼすおそれがあるため、企業再生を目的にM&Aが実施されるケースは少なくないのです。
企業再生を目的としたM&Aは買い手側にもメリットがある
企業再生を目的としたM&Aには、買い手側でもメリットが期待できます。買い手側は、企業・事業の再生の使命感のみで購入を決めるわけではありません。買い手側も自社に対するメリットを見極めたうえでM&A実施を決めています。
買い手側のメリットとしては、買収後に経営を再生できれば、所有していたブランド力を駆使し、大きな利益を生み出せる可能性があることです。
そのほか、自社の得意分野に関連するビジネス以外は、なるべくM&Aを活用し買収する戦略を取る企業もいます。しかし、このような目的でM&Aを実施する場合、会社の将来的なビジョンも見据えて取り組む必要があります。
具体的には、倒産しそうな企業をいかに立て直して収益構造を変化させて利益を生み出していくのか見通しを立てなければならず、高度な経営判断スキルが求められます。企業再生を目的とするM&Aに買い手側として関わる際は、自社の今後を見据えて支援してくれる専門家の協力を得ることが大切です。
②グループ内再編
M&Aは、グループ企業全体における経営効率化や収益向上などをスピーディーに図る目的で活用されるケースもあります。さらには、株主構成の再編を目的にM&Aが活用されることも少なくありません。
例えば、自社グループの子会社にグループ外の少数派株主がいる場合、その少数派株主に親会社の株主になってもらうなどの方法がありす。あるいは、締め出し子会社に対する持株比率を100%にするなどの方法をとります。
このような方法を用いると、子会社経営における外部からの口出しを防いで経営の機動性を高めることが可能です。グループ内再編成を目的としたM&Aは近年活発になっています。
最近では、メガバンクが持株会社のもとで事業ごとにグループ内で再編成を行った事例や、ソニーがグループ会社の100%子会社化を実施する動きが見られます。
M&A・買収の目的と類型の関係性
M&Aにはさまざまな類型があり、どのような目的でM&Aを行うのか、どのような効果を期待するのかによって選択すべき類型も変わります。本章では、買い手側の視点から見たM&Aの類型と主な目的を解説します。
買い手側から見た場合、M&Aの類型には主に以下の5つがあります。ここからは各類型の特徴を紹介します。
- 水平統合型M&A
- 垂直統合型M&A
- 新市場・新製品追求型M&A
- 周辺事業拡大型M&A
- 多角化型M&A
①水平統合型M&A
主に、主軸事業における市場シェアや事業エリアの拡大を目的として行われ、同業種の企業を対象として実施されるM&Aの類型です。スケールメリットによる経営(事業)効率や生産性の向上、知名度アップなどの効果を見込めます。
②垂直統合型M&A
企業体制の強化や事業の効率性アップを図るため、バリューチェーンの川上あるいは川下へ進出することを目的として行われるM&Aの類型です。例えば、自動車メーカーが部品を作る会社をM&Aで買収するケースなど、バリューチェーンの中で自社とは段階の違う会社とM&Aを行います。
③新市場・新製品追求型M&A
自社と事業または扱う商品が異なる会社を対象として行うM&Aであり、自社の既存商品を新たな市場に投入したり、自社の既存顧客に対して新商品を投入したりすることを主な目的とします。
スピーディな海外市場への参入を実現するために、海外の企業や事業をM&Aで取得するケースもこの類型に該当します。
④周辺事業拡大型M&A
自社の主軸事業またはそれに関する機能の補完を主な目的として行うM&Aのことです。例えば、EC事業を主軸とする会社が自社内で運送手段を持っていない場合、M&Aで運送会社を買収し補完するケースがこれに該当します。
⑤多角化型M&A
自社と事業分野(市場)・扱う商品が異なる会社を対象として行い、他業種とのM&Aによって事業分野(市場)と商品の両方で新規領域を目指します。主に、成長分野への新規参入やリスク分散のための事業多角化を目的とする場合に用いられることが多いです。
M&A・買収の目的と実施を決める基準
M&Aを実施する場合、達成したい目標・実施する基準の比較検討が大切です。M&Aは非常に有効的な経営戦略であることは確かですが、必ずしもM&Aのみが最善策であるとは限らないケースもあります。
M&A以外の策を採用した方が経営戦略として最良である場合も勿論あります。例えば、「資金調達」を目的とした場合、資金調達を目的としてM&Aを実施するケースもあります。
しかし、資金調達の手段は、M&Aだけではありません。新しい金融機関を探して融資を受ける方が簡単でスピーディーに資金を調達できるうえに、高い確率で資金調達を実現できます。事業の多角化に関しても、M&Aで会社を買収せずとも、既存の従業員の努力で達成できる場合も少なくありません。
M&Aの実施は目的とリスクを照らし合わせて決める
M&A実施は経営戦略として有効な手段ではありますが、M&Aを活用した経営戦略には必ずリスクが伴います。そのため、自社にとって最適なM&A手法を用いること、事前準備をしっかりと行うことが大切です。
M&Aの案件探し・必要資金の準備・交渉力など多くの手間と時間がかかります。長引いてしまえばM&Aに1年半以上の期間がかかることもあります。最も考慮するべき点は、M&A成功率は決して高くないことです。
M&Aの成功率は約30%とされており、失敗に終わる場合も多いです。M&Aが無事に成立したとしても、考えていたような効果が生まれず、かえって経営が傾いてしまう場合もあります。M&Aの実施を検討している場合、メリットとリスクを照らし合わせておくことが大切です。具体的な検討事項は以下のとおりです。
- どんな利益を求めているのか
- M&Aでなければ解決できない問題なのか
- 成功する見込みはあるのか
このような観点から、しっかりとM&Aを分析しましょう。実施前の段階でしっかりと分析・具体的な目標を立てておくことで、より具体的な経営計画を作成できます。
M&A・買収の目的達成には専門家の協力が必要
M&Aで目的達成を目指すならば、M&Aに関する知識が豊富な専門家に相談しましょう。頼りになるのは、M&A仲介会社・M&Aアドバイザリー会社・弁護士・税理士・公認会計士などです。良心的な会社では、M&Aが必要ないと判断されれば、M&A以外の解決策に関してもアドバイスしてもらえます。
もしもM&Aの実施が決まったら、デューデリジェンスのような法務・財務・税務などの専門的な知識が問われる場面もあり、自社のみでプロセスを完了させるのは困難です。そのほか、M&A手法の検討・従業員の労務関係・リスクの有無などを検討しなければならず、いずれも専門的知識が必要とされます。
M&A専門家を選ぶときの注意点
M&Aの実施には専門的な知識・時間・手間などが必要となるため、専門家に相談することをおすすめします。
しかし、専門家のサポート依頼を出した場合に発生する報酬は、相談先によって大きく異なります。専門家の手腕にも大きな差が見られるため、M&Aを確実に成功させるためには、実績や報酬の設定などを念入りに確認したうえで依頼することが大切です。
M&Aをご検討されている経営者様は、ぜひ一度M&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所には、経験豊富なアドバイザーが多数在籍しており、ご相談からクロージングまで専任フルサポートを行っています。
料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。相談料は無料となっておりますので、M&A実施に不安を感じている場合にはお気軽にご相談ください。
M&A・買収の目的まとめ
M&Aを実施する目的は会社の状況や経営戦略によってさまざまです。変化の激しい現代において、M&Aは経営戦略上の目的を達成するための手段として有効的といえます。しかし、M&Aの専門性が高く、注意しなければならない点やリスクも多いです。
M&Aの実施による目的達成を目指す際は、専門家の意見を交えながら慎重に検討することをおすすめします。
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。