M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2025年10月28日更新事業承継
中小企業のM&A・事業拡大で使う「のれん分け」とは?フランチャイズとの違い、契約書のポイントを解説
中小企業の多店舗展開や事業承継で注目される「のれん分け」。M&Aやフランチャイズと何が違うのでしょうか?本記事では、のれん分けのメリット・デメリット、契約のポイントをわかりやすく解説します。
目次
のれん分けとは
のれん分けとは、従業員が独立する際に「のれん(屋号)」の使用を許可する仕組みです。のれん(暖簾)は、店頭に吊り下げられた家紋や屋号が書かれている布を指し、「のれん分け」の由来となっています。
のれん分け制度を持つ会社がありますが、独立志向の強い人材を集める良い材料となります。制度自体を設けていなかったとしても、長年働いてくれた従業員に対し「のれん分け」を検討する経営者は少なくありません。
のれん分けをして独立する側は、働いていた会社のブランド力や知名度の使用許可を得ることで、事業がスピーディーに展開できます。
ただし、独立した店舗で質の低いサービスや商品を提供してしまうと、本部全体のブランドイメージが損なわれるリスクがあります。特に地域に根差した中小企業にとって、長年築き上げてきた「のれん(信用)」に傷が付くことは大きな打撃となるため注意が必要です。
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【企業側】のれん分けを導入するメリット・デメリット
のれん分けを検討する企業側は、メリットとデメリットの双方を踏まえた上で実施することが大切です。
のれん分けのメリット
のれん分けには大きく分けて、3つのメリットがあります。
①効率的な多店舗展開
のれん分けは、効率的に多店舗展開を図る上で有効な手段です。優秀かつ自社について熟知している従業員にのれん分けすることで、質を担保した上で多店舗展開を実施できます。
店舗の開店費用などを独立する従業員に負担してもらうことで、本部側の初期投資を大幅に抑えられます。これは、M&Aによる買収のように多額の資金を必要としないため、特に体力に限りがある中小企業にとって大きなメリットといえるでしょう。
②ブランド力の維持・向上
優秀な従業員にのれん分けすれば、ブランド力の維持や向上にもつながります。フランチャイズではブランド力の維持や向上が難しいため、相対的にメリットとなります。
③魅力的な職場環境の構築
将来的なキャリアアップにつながる制度であるため、従業員のモチベーションもアップします。人材不足が顕著な飲食店では、特に魅力的なメリットとなります。
のれん分けのデメリット
メリットの多いのれん分けですが、以下2つのデメリットもあります。
①意図せぬ競争を招く
本部と独立した事業者間で、意図せぬ競争を招くリスクがあります。同一地域内での顧客の取り合いにより、仲違いして裁判沙汰となるケースもあります。のれん分けの際には、後述の「競業避止義務」の設定が不可欠です。
②加盟金やロイヤリティの料率が低い
元従業員との間柄ということもあり、フランチャイズ契約と比べると加盟金やロイヤリティの料率は低い傾向があります。効率的に多店舗展開を行える一方、のれん分けした後に十分な利益を得られない可能性もあります。
近年、中小企業の事業拡大戦略として、のれん分けだけでなくM&Aも積極的に活用されています。既存の会社を買収し傘下に収めることで、人材やノウハウ、顧客基盤を一度に獲得し、迅速な事業エリアの拡大が可能です。
M&Aもご検討したいとお考えの際は、ぜひM&A総合研究所にご相談ください。中堅・中小規模の案件を得意としており、アドバイザーによる専任フルサポートを行っています。
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のれん分けとフランチャイズの主な違い
フランチャイズはのれん分けと同様、多店舗展開を図る手段として用いられています。ここでは、比較されることの多い「のれん分け」と「フランチャイズ」の違いをご説明します。
フランチャイズとは
フランチャイズとは、フランチャイズ加盟者がフランチャイズ本部から商品や看板の使用許可を得た上で、事業を運営する形態です。フランチャイズ契約において、本部側を「フランチャイザー」、加盟者側を「フランチャイジー」と呼びます。
フランチャイジー側は、本部からブランド力などを使わせてもらう対価として、定期的にロイヤリティを支払います。
フランチャイズとのれん分けは多店舗展開を図る手段
多店舗展開を図る手段として、フランチャイズとのれん分けは非常に類似した手法です。一見すると類似するフランチャイズとのれん分けですが、両者にはいくつかの違いがあります。
対象者に違いあり
フランチャイズは全くの第三者を対象とする一方で、のれん分けでは従業員や親族を対象としています。のれん分けの場合、ある一定の勤務年数が条件とされていることがあります。
加盟店側の自由度
フランチャイズでは、本店の経営管理に従う必要があるので、加盟店側は自由に経営できません。一方、のれん分けでは、最低限の決まりさえ遵守すれば、独立者は比較的自由に経営ができます。
また、フランチャイズの場合には加盟店の売上げ・注文・月次請求・問い合わせなど多岐に渡る項目において管理が必要となります。同じ多店舗展開でも、M&Aを活用すれば新たな管理システム導入や本部負担も最低限に抑える可能性があります。
M&Aは売買契約次第とも言え、交渉の際は専門家に依頼するのがおすすめです。M&A総合研究所にはM&Aに関する知識・経験が豊富なアドバイザーが在籍しており、これまで培ってきたノウハウを生かしてM&Aをフルサポートいたします。
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参考:フランチャイズ契約におけるロイヤリティの仕組み
フランチャイズ契約では、加盟店側は本部にロイヤリティを支払います。フランチャイズのロイヤリティには、いくつかの課金方法があります。この項では、ロイヤリティの課金方法を3種類お伝えします。
①定額方式
定額方式とは、ロイヤリティの金額が毎月一定となる方式です。売上高に関係なくロイヤリティの金額は変わらないため、より多くの売上高を獲得した方が加盟店にとって有利です。
定額方式の導入には、加盟店の経営努力を促せるメリットがあります。非常にシンプルなロイヤリティの課金方式であり、導入しやすいです。業種などにより違いはあるものの、月額数万円〜十数万円程度のロイヤリティが一般的です。
②売上歩合方式
売上歩合方式とは、売上高のうち一定割合をロイヤリティ料とする方式であり、最も活用されている課金形態です。売上高が多いほど、パーセンテージを低く設定する企業もあります。売上高の増加に伴いロイヤリティの金額も多くなるので、フランチャイズの本部側に有利な方式です。
③利益分配方式
利益分配方式とは、売上総利益の金額に基づいてロイヤリティの金額が算出される方法です。売上高に応じて料率が変動する点が特徴であり、ロイヤリティ率は30%〜60%程度となります。
本部と加盟店で、給与を支払っても残った利益を分配し合うシステムです。利益分配方式は、特にコンビニエンスストアで用いられる手法です。
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のれん分けにおける加盟金・ロイヤリティの決め方
のれん分けにおける加盟金やロイヤリティの相場は、業界別や企業ごとに異なります。業界別の明確な相場を示すことは困難なため、ここでは加盟金やロイヤリティを決める際の判断材料をお伝えします。
⑴同業他社の水準
のれん分けを実施する企業は近年増加しており、同業他社の水準が重要となっています。同業他社と比べてロイヤリティや加盟料が高い場合、のれん分けされた側のモチベーションが低下する恐れがあります。
モチベーションの低下は本社にとってもデメリットとなるので、同業他社を意識して価格設定しましょう。
⑵本部と独立者の収益性
のれん分けにおいては、本部と独立者それぞれの収益性も重要です。本部だけがもうかっていると独立者のモチベーションが低下しますし、独立者のみがもうかっていると本部がのれん分けするメリットがなくなります。両者がバランス良く収益を分配し合って初めて、のれん分けのメリットが生み出されます。
⑶対価の妥当性
中小企業のM&A・事業承継とのれん分け
中小企業において、のれん分けは事業承継の選択肢としても注目されています。ここでは、M&Aとの違いや、どちらの手法を選ぶべきかについて解説します。
事業承継手法としての「のれん分け」
帝国データバンクの調査(2024年)によると、日本全国の企業のうち後継者不在率は52.8%にのぼり、多くの中小企業が事業承継問題を抱えています。親族内に後継者が見つからない場合、長年勤務し、経営理念や技術を熟知した従業員への「のれん分け」は、有力な事業承継(従業員承継)の選択肢となります。経営者の想いを受け継ぎつつ、事業を存続させられる点が大きなメリットです。
M&A(株式譲渡・事業譲渡)との比較
のれん分けが内部(従業員)への承継であるのに対し、M&Aは外部の第三者(他社)へ事業を引き継ぐ手法です。M&Aでは、株式譲渡や事業譲渡といった方法で会社の経営権や事業そのものを売却します。これにより、オーナー経営者はまとまった創業者利益を得られる一方、企業文化や従業員の処遇が大きく変わる可能性があります。のれん分けは、M&Aに比べて企業文化の維持がしやすい点が特徴です。
のれん分けとM&A、どちらを選ぶべきか
どちらの手法が最適かは、企業の状況によって異なります。
【のれん分けが適しているケース】
- 信頼できる従業員に事業を任せたい
- 企業文化やブランドイメージを維持したい
- 低コストで多店舗展開を進めたい
【M&Aが適しているケース】
- 後継者候補が社内にいない
- オーナー経営者が引退し、まとまった資金を得たい
- 他社のリソースを活用して、さらなる事業成長を目指したい
自社の目的や課題を明確にし、最適な承継・拡大戦略を検討することが重要です。
トラブル防止!のれん分け契約書に必須の3項目
フランチャイズとは違って親しい関係間で行うのれん分けですが、後々のトラブルを避けるためにも、契約書の作成は必須です。のれん分けの契約書に、下記の内容は最低限盛り込みましょう。
⑴のれん分けの違約金
重大な契約違反や中途解約が発生した場合に備えて、違約金を設定しましょう。従業員との間に違約金を設定することをシビアと考える方もいるでしょうが、親しい間柄であっても契約違反が生じる恐れはあります。
違約金を設定することで契約違反を抑止する効果があるため、かえってトラブルが生じるリスクを低減できます。フランチャイズ契約では一般的な契約ですが、のれん分けでも違約金は設定した方が良いでしょう。
⑵競業避止義務
競業避止義務とは、本家と同一の事業を同一地域で実施しない旨を約束する契約です。本部とのれん分けされた側が同一地域内で同種の事業を行うと、顧客を奪い合う事態となります。顧客の奪い合いに発展した結果、両者の関係が悪化する恐れもあります。
競業避止義務を設定しつつ、違反した場合の違約金も同時に定めておくと良いでしょう。厳しすぎる義務を設定すると、のれん分けされた側の自由な経営を制限する恐れがあります。ある程度の自由を担保した上で、禁止する事業範囲や場所を設定することが大切です。
⑶保証金の規定
保証金とは、債務を担保する目的でのれん分けの際に、独立者が本部に支払う現金です。保証金を受け取っておけば、独立した事業者がロイヤリティ(毎月の上納金)を支払えなくなった際に、債務の弁済に充てることが可能です。
ロイヤリティを受け取る契約形態であれば、リスクを避けるために保証金は受け取りましょう。
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まとめ
本記事では、中小企業の事業拡大や事業承継の手法として注目される「のれん分け」について、メリット・デメリットからフランチャイズとの違い、契約書のポイントまで解説しました。のれん分けは、優秀な従業員に事業を任せることで、低コストかつ質の高い多店舗展開を実現できる有効な手段です。
要点をまとめると、下記になります。
【のれん分けとは?】
- 従業員が独立する際に、のれん(屋号)の使用を許す仕組み
【のれん分けのメリット】
- 効率的な多店舗展開、ブランド力の維持・向上、魅力的な職場環境の構築
【のれん分けのデメリット】
- 意図せぬ競争を招く、加盟金やロイヤリティの料率が低い
【フランチャイズとのれん分けの違い】
- 対象者や自由度に違いがある
【フランチャイズのロイヤリティ】
- 定額方式、売上歩合方式、利益分配方式
【業界別のれん分けと相場】
- 同業他社の水準、本部と独立者の収益性、対価の妥当性
【のれん分けの契約書に記載すべき内容】
- 違約金、競業避止義務、保証金の規定
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。