M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2023年2月22日更新事業承継
サーチファンドとは?事例・仕組みやメリット・デメリットを解説!
サーチファンドは、アメリカで誕生した事業承継モデルの1つで、経営者と価値のある企業をつなぎ合わせる投資の1つで、最近は日本でも注目を集めています。
そんなサーチファンドの仕組みやサーチファンドを活用した企業にメリットやデメリットについて解説します。
サーチファンドとは?
サーチファンドとは、会社を買収して経営を行いたい個人が、自分の資金ではなく投資家の出資を受けて、買収対象の企業を探す仕組みのことです。
企業を買収することに成功したら自力で経営を行い企業価値を高めていき、最終的に企業の売却益(キャピタルゲイン)によって、出資してくれた投資家に還元します。
サーチファンドで企業の経営を行いたい個人はサーチャーという呼び方をし、サーチャーが会社や投資家の発掘、支援の要請や企業との交渉などを全て自力で行います。
また、サーチファンドは未公開株式投資(プライベートエクイティ)の1つであり、優秀でやる気のある経営者と価値のある企業をつなぎ合わせる社会的に価値の高い投資です。
アメリカ発祥の事業継承手法
サーチファンドとは、1980年にアメリカのスタンフォードビジネススクールで誕生した事業承継モデルです。
当時は、ビジネススクール卒業生や経営に興味・関心のある若者が経営に挑戦できるチャンスを提供するために始まったものでしたが、少しづつ投資として活用されるようになり、現在では本格的な企業買収としての手段になりました。
最近では、アメリカだけではなく日本でも注目を集め始めており、サーチファンドに投資するための会社も設立されるようになっています。
サーチファンドによって会社経営を行いたい若者(サーチャー)を全面的に支援して企業価値の向上に貢献する「サーチファンドアクセラレーター」という組織も誕生しています。
そのため、日本でも今後、サーチファンドによる企業買収が浸透していくことが予想されています。
サーチファンドと企業間買収との違いは?
企業間売買は、企業を買収する投資家と企業経営者の2者間で取引が行われるのに対して、サーチファンドでは、資金出資を行う投資家と企業経営者に加えて、経営を行いたい若者(サーチャー)の3者間で取引が行われます。
サーチファンドでは、サーチャーが買収対象の企業を探す活動や投資家への資金出資やその他支援の依頼、買収対象企業への説明・説得などを全て自力で行います。
そのため、投資家はどのような企業を買収するのかなどの情報や検討をほとんど行うことなく、サーチャーが見つけてきた企業を買収する形式です。
また、企業間買収では、時期経営者が誰かわからない状態になることが多いですが、サーチファンドでは、時期経営者はサーチャー自身が行うため、企業経営者はどのような人物が経営を引き継ぐのか確認できるため、安心感を与えることが可能です。
サーチファンドの年収は?
サーチファンドによって、サーチャーが買収した企業の経営者として企業価値を向上させている間は、投資家から年収約1,000万円〜1,500万円の給料を受け取ります。
そのため、企業が赤字になった場合でも十分な年収を確保できますが、しっかりと約5年〜7年ほどの期間をかけて買収した時よりも企業価値を高める必要があります。
また、投資家から受け取れる年収に加えて、事業規模の拡大や企業価値の向上に成功した場合には、成功報酬や自社株を取得できる権利(ストックオプション)が付与されます。
サーチファンドによって経営者になることで、起業して経営者になるよりも高い年収が期待できます。
サーチファンドの仕組み
従来のM&Aでは、出資者と譲渡企業の2者間で行われるのに対して、サーチファンドでは、経営者候補と出資者、譲渡企業の3者間で行われることが多いです。
ここでは、どのような仕組みでサーチファンドが行われるのか?や流れなど、サーチファンドの仕組みを4つに分けて解説します。
経営に熱意がある若者が自ら経営したい会社を探す
サーチファンドは、経営に熱意がある若者が、自ら経営したい会社を探すことから始まります。
企業のサーチ活動には、時間やお金が多く必要になってくるので、そこでサーチャーは投資家に「サーチ活動計画書」を提出・プレゼンし、投資家から資金出資をしてもらいます。
そのため、このサーチ段階で投資家から納得がもらえなかった場合は、サーチ自体ができなくなってしまうので、重要なステップです。
買収が決まったら資金調達をする
サーチ活動によって、買収対象の企業を見つけることができれば、サーチ資金に加えて買収資金を追加で出資依頼します。
ここでも、サーチした買収対象企業の魅力やその後の経営戦略、出資するメリットなどをしっかりと投資家や買収対象企業の経営者に説明して、納得してもらわなければいけません。
そのため、しっかりと自分で企業価値を高められるための構想や戦略を考えてサーチすることが大切です。
投資先企業を経営して企業の価値を向上させる
サーチファンドによって、企業買収が成功したらサーチャーは経営者として投資先企業を経営して、企業の価値を向上させていきます。
投資資金を回収する
サーチャーが無事、企業価値を向上させることができれば、利益を投資家に還元することで、投資家は投資資金を回収できます。
投資家へ利益を還元する方法として、主に上場や株の売却益(キャピタルゲイン)などが検討されます。
サーチャーは、買収した企業の経営者として就任してからは、投資家からの給与を貰いながら、約5年〜7年の期間をかけて、企業価値を向上させていきます。
そのため、サーチャーは出資してもらった投資家に利益を還元するために、経営に尽力を尽くすことが大切です。
サーチファンドのメリット
サーチファンドは誕生してから20年以上経過している投資方法の1つですが、日本ではあまり浸透していないことから、どのようなメリットがあるのかわからない方が多いです。
また、従来のM&Aとは違い、3者間で取引が行われるため複雑で問題点があると感じてしまう方もいます。
ここでは、サーチファンドを行うメリットについて、主に4つ解説します。
経営未経験でも挑戦可能
サーチファンドによる企業経営は、これまで会社の経営経験がない若者でも挑戦することが可能です。
経営者を目指す場合、組織内で数十年前後の期間をかけて出世するか、起業して経営者になるしか方法がないので、多くの若者にとって経営者になることのハードルはとても高いです。
しかし、サーチファンドを活用することによって、若者(サーチャー)は投資家から資金出資やその他のサポートをしてもらいながら、経営者として活躍できるので、ハードルを下げることが可能です。
能力の高い若者が社会システムやリスクによって活躍できないのは社会にとってもマイナスなことですが、サーチファンドによって効率的に能力の高い若者が経営者として活躍できるのは大きなメリットになります。
後続者を決められる
サーチファンドは、従来のM&Aと違いサーチャーが必ず買収対象企業の次期経営者になるので、明確に次期経営者を決めることができます。
そのため、サーチファンドによって買収される企業の経営者は、次期経営者の価値観や経営方針、人柄や能力、熱意などを就任前に知ることができ、安心して承継することが可能です。
従来のM&Aでは、買収後に企業の経営体制の構築が行われることが多く、M&A交渉の段階では明確に次期経営者が決まっていない状態なので、どのような人物が経営者として活動するのか、納得できる人物なのか、などの情報を知ることが難しいです。
サーチファンドは、サーチャーだけでなく買収対象企業の経営者にもメリットがあります。
成功報酬が高い
サーチャーは、投資家から年収以外にも、企業の事業規模拡大や企業価値の向上に成功した時にもらえる成功報酬があります。
事業規模の拡大に応じて得た利益の約20〜30%の報酬額を受け取れ、大幅な事業規模拡大に成功した場合には、数十億円もの成功報酬が受け取れる可能性があります。
そのため、サーチファンドによって経営者になることができれば、雇われている経営者ではなく起業家のように会社の成長が自分の収入に大きく関係してくるので、モチベーションややる気が高くなりやすいです。
事業の独立性を担保できる
サーチファンドによる企業買収は、事業の独立性を担保することが可能です。
企業間買収では、事業を売却してしまうため事業の独立性がなくなり、社名や社歴なども全て残らなくなってしまう可能性があります。
しかし、サーチファンドは企業間買収ではなくサーチャー個人による買収なので、買収された会社は子会社化することなく、そのままの状態で経営が継承されます。
そのため、事業の独立性を担保したいと考えている経営者には大きなメリットです。
サーチファンドの問題点
サーチファンドによる企業には、数多くのメリットがあることがわかりましたが、それに伴う問題点には何があるのでしょうか?
これからサーチファンドに挑戦してみたい方やサーチファンドについて気になっている方は、メリットだけでなく問題点についてもしっかりと理解しておくことが大切です。
ここでは、サーチファンドの問題点を主に3つ解説します。
経営する人材の能力に依存してしまう
サーチファンドは、買収後サーチャーが会社の経営を行うので、買収した企業の経営はサーチャーの能力に大きく依存することが多いです。
実際に、企業経営を行うサーチャーにとっては、経験を積みながら実際に経営活動が行えるので、大きなメリットです。
しかし、投資家にとってはリスクがあり、投資に対して抵抗を覚える場合があります。
さらに、買収する企業の選定もサーチャーが行っているので、投資家はほとんど投資に関与することがなくサーチャーのことを信用するしかありません。
サーチャーは能力は高いものの経営経験はほとんどない若者であることが多いので、信用することに対しても少し不安感を覚える投資家はいます。
そのため、サーチファンドは投資家にとっては問題点のある投資です。
期待利回りが低いと投資されない
サーチファンドは、経営をしたいサーチャーに投資家が資金出資やその他の支援をすることによって企業を買収します。
そのため、サーチャーが買収対象企業を投資したいと考えていても、投資家が期待利回りが低いと判断してしまうと、買収対象企業に投資されることがなく、サーチファンドが成立ないことがあります。
サーチファンドでは、投資家から買収するための資金以外にも買収対象企業を探すための資金も出資してもらうので、買収対象企業を探すための資金は調達することができても、肝心の買収するための資金を調達できなければ意味がありません。
また、買収対象企業を探す活動は基本的に約2年前後の期間をかけて行われ、期間内に買収対象企業を見つけて投資家や買収先企業を納得させなければ、サーチファンドは打ち切られてしまいます。
どれだけ能力がある方でも投資家や買収先企業にうまく説明して納得させられなければ先に進めないので、従来のM&Aと比べるとサーチャーには難易度が高い部分があることが問題点です。
サーチファンドの認知度が低い
サーチファンドは日本国内において認知度が低く、実際にサーチファンドを行ったことのある方も多くありません。
そのため、投資家や企業経営者がサーチファンドを知らないことも多く、経営者になりたい若者がサーチファンドを活用したい場合は、投資家にしっかりとサーチファンドの魅力な仕組み、概要などの情報を説明して、納得してもらう必要があります。
また、説明が不十分であったり投資家に納得してもらえなかった場合には、資金出資やその他支援などの交渉が成立せずに、サーチファンドによる企業経営が行えなくなってしまう可能性も高いです。
サーチファンドの事例
サーチファンドによって事業継承を行なった事例には、どのような会社や状況が背景にあったのでしょうか。
ここでは、実際に日本でサーチファンドを行った会社の事例を、主に2つ紹介します。
塩見組
1つ目の事例は株式会社塩見組です。
株式会社塩見組は、福岡県北九州市で1955年に創業した土木工事を行う会社です。
創業から約68年もの社歴と実績がありましたが、後継者不在や事業の低迷に悩んでいたため、サーチファンドを活用して事業継承を行いました。
事業を継承した渡邊謙次(わたなべけんじ)さんは、家業の印刷会社を10年間勤めたのち、経営の知識や能力を高めることを目的にアメリカのMBA留学を行なっています。
そのため、株式会社塩見組はサーチファンドによって、能力が高い人材を後継者として就任させることに成功しました。
また、株式会社塩見組のサーチファンドは国内初の事例です。
キャスリンク
2つ目の事例は、株式会社キャスリンクです。
株式会社キャスリンクは、広島県広島市に拠点を置く産業用機器や電気装置の設計・製造・組立を行う会社です。
設計や製造に関する高い技術力や知識を持っている会社でしたが、経営に課題を抱えている状態で、売上や事業を拡大していくことが厳しい状況でした。
そのため、株式会社キャスリンクは会社の経営課題を解決するためにサーチファンドによる事業継承を目指しました。
経営者転職を目指すのであればサーチファンドを検討してみよう
現在勤めている会社を退職して独立や起業をして経営者転職を目指している方は多くいますが、実際に独立や起業を行い経営者として転職を成功している方や生計を立てることができる方は少ないです。
実際に、経営者として活動を始めていても、十分な利益を得ることができず廃業してしまったり、資金が足りずに挫折してしまうことも少なくありません。
しかし、経営者として転職する方法には、自分で起業する以外にもサーチファンドを活用するという方法があります。
経営者として転職するという価値観やサーチファンドを活用することに対して積極的でない方は多いですが、経営者を目指しているのであれば、とても効果的な方法です。
そのため、経営者転職を目指す場合は、サーチファンドによる起業を検討してみることをおすすめします。
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。