2021年4月27日更新資金調達

ストックオプション税制とは?税制適格/非適格ストックオプションも解説

ストックオプションの効果を最大限活用するためには、税制で定められた適格要件を満たす必要があります。そこで、ここでは、ストックオプションの税制や適格要件について解説していきます。また、税制適格、税制非適格、有償ストックオプションの種類についても解説します。

目次
  1. はじめに
  2. ストックオプションと税制
  3. ストックオプションの種類
  4. ストックオプション税制の適格要件
  5. まとめ
  • 今すぐ買収ニーズを登録する
  • 公認会計士がM&Aをフルサポート まずは無料相談

【※メルマガ限定】プレミアムM&A案件情報、お役立ち情報をお届けします。

はじめに

はじめに

サラリーマンの方も経営者の方も、「ストックオプション」という言葉を一度は耳にした経験があるでしょう。ストックオプションとは、従業員のモチベーションを上げる手段として、多くの企業で活用されています。

また、近年では、退職給付金の代替手段としても利用されています。しかし、ストックオプションを有効活用するためには、税制上の取り扱いについて把握していなければなりません。なぜなら、税制上の取り扱いを把握していなければ、想定していたメリットを享受できない恐れがあるからです。

ストックオプションのメリットを最大限に高めるためには、適格要件を満たす必要があります。また、ストックオプションの適格要件にはさまざまな条件があるため注意が必要です。

この記事では、適格要件を定めたストックオプション税制について詳しく解説します。ストックオプションの活用を検討している方、付与される予定の方は必見です。

※関連記事
ストックオプションとは?行使時の会計処理や仕訳をわかりやすく解説

ストックオプションと税制

ストックオプションと税制

ストックオプションとその税制の概要についてご説明します。

ストックオプションとは

ストックオプションとは、予め定められた価格(権利行使価格)で株式を購入できる権利をさします。

ストックオプションの取得後は、株価が上がるほど、得られるメリットが大きくなります。なせなら、株価と権利行使価格の差が広がるほど、株式売却によって得られる利益が増えるからです。一方、仮に株価が下がったとしても、権利行使しなければ損失は被らずに済みます。

このように、ストックオプションは、社内で働く人の意欲を向上させる目的で活用されます。もしくは、役員退職金の代替手段として用いるケースもあります。

ストックオプションのメリット

ストックオプションを付与されると株式の売買益を獲得できます。一方、ストックオプションを会社側が活用する最も大きなメリットは、従業員のモチベーション向上でしょう。

株価が上がるほど、ストックオプションを保有するメリットが増大します。基本的には、業績が良くなるほど株価は上昇します。そのため、ストックオプションを付与された社員は、株価を上げるために以前より努力するはずです。

したがって、ストックオプションを付与することで、費用をかけずに従業員の意欲向上を図れます。

ストックオプション税制とは

ストックオプション税制とは、ストックオプションの税務の取り扱いについて定められた税制をさします。

通常のストックオプションでは、給与所得と譲渡所得が二重に課税されるため、所持しているだけではメリットがあまりありません。しかし、一定の適格条件を満たせば、税金の支払いタイミングを1回に減らせます。このように、税制の適格要件を満たすものを、税制適格ストックオプションと呼びます。

ストックオプション税制では、適格となるための条件を定めており、ストックオプション制度を活用する際には、税制の内容を確認する必要があります。ストックオプション税制で定められた適格要件については、後ほど詳しく解説します。

※関連記事
ストックオプションと株価の関係性
ストックオプション制度とは?導入の手続きとメリット・デメリット

ストックオプションの種類

ストックオプションの種類

ここでは、ストックオプションの種類について説明します。

①税制適格ストックオプション

先述したように、税制要件を満たす場合は税制適格ストックオプションと呼ばれます。従業員の意欲を上げる目的で用いる際には、税制適格ストックオプションとして設計されるのが一般的です。なお、従業員の意欲を上げる目的で付与されるものは、通常型ストックオプションと呼ばれます。

また、税制適格ストックオプションに認められると株式の売却時にのみ課税が発生します。具体的には、売却時の株価と権利行使価格の差額分が譲渡所得と見なされます。

さらに、譲渡所得に対して、所得金額とは無関係に20.315%の税率で課税されます。イメージ的には、通常の株式取引と同じです。つまり、どれだけ譲渡所得が高額であっても、一定の税率で課税が生じます。

一方、税制非適格ストックオプションでは課税のタイミングが2回あります。加えて、適格税制ストックオプションと比べると、税率の面でも不利な仕組みです。よって、基本的には、税制の適格要件を満たすようにストックオプションを設計することが望ましいでしょう。

②税制非適格ストックオプション

税制適格ストックオプションに対し、ストックオプション税制の適格要件をクリアしていないものを税制非適格ストックオプションといいます。

退職金制度の代替目的で利用する場合は、権利行使価額を極めて低い金額に設定します。極めて低い価格といっても、基本的には一株あたり1円に設定されます。よって、ストックオプションの保有者は、「権利行使時の株価×持ち株数の金額分」の利益を獲得可能です。

なお、退職金制度の代替目的で付与されるものは、株式報酬型ストックオプションと呼ばれます。株式報酬型とする場合、必然的に税制適格要件を満たせません。なぜなら適格要件の一つに、「権利行使価額は、契約締結時の株価以上」という条件があるためです。

加えて、税制非適格ストックオプションでは、売却時と権利行使時の2度も課税が発生します。権利行使時には、行使時の株価と権利行使価格の差額が給与所得と見なされます。

また、給与所得は、累進課税によって課税されます。つまり、差額が大きいほど、発生する税負担も大きくなります。その際の税率は、最高で55%にも上り、税金によって半分程度も失ってしまいます。加えて、株式の売却時に獲得した譲渡所得に対しても、20.315%の税金が生じます。

つまり、税制非適格ストックオプションでは二重で税金が課されます。税制適格ストックオプションと比べると、圧倒的に取り分が減ってしまうため注意が必要です。

③有償ストックオプション

有償ストックオプションとは、付与者がお金を支払った上で、ストックオプションを受け取る制度のことで、近年活用件数が急増しています。

本来無料で交付されるストックオプションを、有償で買い取る点はデメリットとなりますが、有償ストックオプションには、税金面で大きなメリットがあるため、知っておいて損はないでしょう。具体的には、課税のタイミングが株式売却時のみとなり、権利行使時点では課税されません。

つまり、お金を払う代わりに無条件で税制適格ストックオプションの恩恵を得られます

※関連記事
税制適格ストックオプションとは?メリットや有償・非適格との違い

ストックオプション税制の適格要件

ストックオプション税制の適格要件

ストックオプションを交付する場合は、税制適格要件をクリアする必要があります。ここでは、ストックオプション税制で定められた適格要件を解説します。

①取得者の適格要件

取得者の適格要件には、以下の要件があります。

  • 交付対象者
  • 株式の保有数

交付対象者

交付対象者は、自社もしくは関連会社で働く人であることが要件です。つまり、自社やその子会社の役職員、および株主が付与対象者でなくてはならず、無関係の第三者に交付した場合は適用外です。

株式の保有数

付与が決定した時点で、自社株式のうち、持ち株数が3分の1を超えていないことも要件の一つです。ただし、公開会社の場合には10分の1となります。

②発行内容・行使の適格要件

発行内容・行使の適格要件には以下のものが該当します。

  • 権利行使の期間
  • 権利行使価格
  • 年間の権利行使価格制限
  • 譲渡制限
  • 発行方法

発行方法

税制適格ストックオプションは、企業の役員などの労働対価として無償で付与するものをいいます。したがって、税制適格ストックオプションとなるためには、無償で交付しなければなりません

譲渡制限

ストックオプションは他人に譲渡できません。つまり、他人名義で行使した場合でも税制適格とはなりません。

権利行使の期間

権利行使期間は、ストックオプション付与の決定後2年から10年までの間に権利行使する必要があります。

権利行使価格

税制適格ストックオプションとなるためには、権利行使価格が契約締結時の株価以上になるように考慮しなくてはなりません。そのため、株式報酬型のストックオプションは税制非適格となるのです。

年間の権利行使価格制限

権利行使価格の合計は1,200万円未満に抑える必要があります。年間1,200万円を超えると、適格税制の資格を失うことになります。万が一、1,200万円を超える権利行使を年間で一度でも実施した場合は、税制適格の対象から除外されます。

③その他の税制適格要件

①取得者の適格要件②発行内容・行使の適格要件以外にも、下記の税制適格要件があります。

  • 証券会社と契約している
  • 会社法に違反しない形での付与
  • 株式売却時に必要な書類を提出
これまで見てきたように、ストックオプション税制の適格要件は設定が細かいです。導入する際はきちんと把握しておきましょう。

※関連記事
ストックオプションでかかる税金

まとめ

まとめ

今回は、ストックオプション税制について解説しました。ストックオプションとは、予め定められた権利行使価格で、自社株を買える権利をさします。

従業員のモチベーションを向上させる手段として、ストックオプションは大変有用ですが、ストックオプションを従業員に交付する際には、税制適格要件をクリアすることが大前提です。税制適格か否かで、ストックオプションによって得られる利益は大きく異なります。

なお近年は、有償ストックオプションを活用する事例も増えています。有償ストックオプションの活用により、税制面で大きなメリットを得ることも可能です。有償ストックオプション制度を活用する際には、必ずストックオプション税制を参照しましょう。

要点をまとめると下記になります。

・ストックオプションとは
→予め定められた価格で株式を購入できる権利

・ストックオプションの交付側のメリット
→従業員のモチベーション向上

・ストックオプションの保有側のメリット
→株式の売却による利益獲得

・ストックオプション税制とは
→ストックオプションの税務の取り扱いを定めた税制

・ストックオプションの種類
→税制適格ストックオプション、税制非適格ストックオプション、有償ストックオプション

・ストックオプション税制の適格要件
→取得者の要件、発行内容・行使の要件、その他の要件

M&A・事業承継のご相談なら24時間対応のM&A総合研究所

M&A・事業承継のご相談は成約するまで無料の「譲渡企業様完全成功報酬制」のM&A総合研究所にご相談ください。
M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴をご紹介します。

M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴

  1. 譲渡企業様完全成功報酬!
  2. 最短49日、平均6.6ヶ月のスピード成約(2022年9月期実績)
  3. 上場の信頼感と豊富な実績
  4. 譲受企業専門部署による強いマッチング力
>>M&A総合研究所の強みの詳細はこちら

M&A総合研究所は、M&Aに関する知識・経験が豊富なM&Aアドバイザーによって、相談から成約に至るまで丁寧なサポートを提供しています。
また、独自のAIマッチングシステムおよび企業データベースを保有しており、オンライン上でのマッチングを活用しながら、圧倒的スピード感のあるM&Aを実現しています。
相談も無料ですので、まずはお気軽にご相談ください。

>>【※国内最安値水準】M&A仲介サービスはこちら

【※メルマガ限定】プレミアムM&A案件情報、お役立ち情報をお届けします。

あなたにおすすめの記事

M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!

M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!

近年はM&Aが経営戦略として注目されており、実施件数も年々増加しています。M&Aの特徴はそれぞれ異なるため、自社の目的にあった手法を選択することが重要です。この記事では、M&am...

買収とは?用語の意味やメリット・デメリット、M&A手法、買収防衛策も解説

買収とは?用語の意味やメリット・デメリット、M&A手法、買収防衛策も解説

買収には、友好的買収と敵対的買収とがあります。また、買収に用いられるM&Aスキーム(手法)は実にさまざまです。本記事では、買収の意味や行われる目的、メリット・デメリット、買収のプロセスや...

現在価値とは?計算方法や割引率、キャッシュフローとの関係をわかりやすく解説

現在価値とは?計算方法や割引率、キャッシュフローとの関係をわかりやすく解説

M&Aや投資の意思決定するうえでは、今後得られる利益の現時点での価値を表す指標「現在価値」についての理解が必要です。今の記事では、現在価値とはどのようなものか、計算方法や割引率、キャッシ...

株価算定方法とは?非上場企業の活用場面、必要費用、手続きの流れを解説

株価算定方法とは?非上場企業の活用場面、必要費用、手続きの流れを解説

株価算定方法は多くの種類があり、それぞれ活用する場面や特徴が異なります。この記事では、マーケットアプローチ、インカムアプローチ、コストアプローチといった株価算定方法の種類、株価算定のプロセス、株...

赤字になったら会社はつぶれる?赤字経営のメリット・デメリット、赤字決算について解説

赤字になったら会社はつぶれる?赤字経営のメリット・デメリット、赤字決算について解説

法人税を節税するために、赤字経営をわざと行う会社も存在します。しかし、会社は赤字だからといって、必ず倒産する訳ではありません。逆に黒字でも倒産するリスクがあります。赤字経営のメリット・デメリット...

関連する記事

事業再構築補助金はM&Aでも利用できる?要件や活用方法・補助額まで徹底解説!

事業再構築補助金はM&Aでも利用できる?要件や活用方法・補助額まで徹底解説!

事業再構築補助金は要件を満たせば、中小企業や中堅企業に補助金を支給する制度です。中にはM&Aを実施するときに制度を利用する企業も存在します。この記事ではM&Aを実施しても事業再構...

DDSとは?DESとの違いや手順・活用方法・メリット・デメリットまで解説!

DDSとは?DESとの違いや手順・活用方法・メリット・デメリットまで解説!

企業再建手法の1つとして注目されているDDS。そんなDDSとよく似た言葉にDESがありますが、それぞれの違いは何なのかを本記事で解説していきます。またDDSを実施する手順や活用方法、メリットやデ...

CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)とは?メリット・デメリットを解説!

CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)とは?メリット・デメリットを解説!

ベンチャー企業へ投資をするCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)。VC(ベンチャーキャピタル)と混同されがちなCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)とは何なのか、活用するメリット・デメリ...

エンジェル投資家について徹底解説!メリットやデメリット・探し方は?

エンジェル投資家について徹底解説!メリットやデメリット・探し方は?

企業がイグジット(上場、ハイバリエーションでの売却)をした際のキャピタルゲインを目的とした投資を行うエンジェル投資家。返済義務がない投資をメインとしているエンジェル投資家について知らない人も多い...

シード期とは?定義やスタートアップの資金調達方法・成功のポイントを解説!

シード期とは?定義やスタートアップの資金調達方法・成功のポイントを解説!

成長していく過程においてIPOやM&Aを活用することも重要ですが、具体的にどのようなポイントを抑えれば良いのでしょうか。 この記事では、シード期の定義やスタートアップの資金調達方法・成...

M&Aにおけるエスクローの意味とは?メリット・デメリットについて紹介!

M&Aにおけるエスクローの意味とは?メリット・デメリットについて紹介!

日本のM&Aでは、活用されているケースは少ないとされている仲介サービス「エスクロー」があります。海外では多く活用されていますが、この「エスクロー」とはどういう意味なのでしょうか。ここでは...

投資銀行のM&Aにおける役割とは?部門ごとの業務内容や違いを解説!

投資銀行のM&Aにおける役割とは?部門ごとの業務内容や違いを解説!

投資銀行は銀行の一種ではないと聞くと、驚かれる方が多いかもしれません。投資銀行は、銀行業ではなく証券業に分類されます。本記事では、投資銀行の概要、投資銀行がM&Aにおける役割、投資銀行の4大業務...

スケールメリットが経営に与える効果は?意味や仕組みを具体例に徹底解説!

スケールメリットが経営に与える効果は?意味や仕組みを具体例に徹底解説!

スケールメリットとは、同種の業種やサービスが多く集まることで単体よりも大きな成果を生み出せることです。会社経営を行う際、不必要な経費を活用しているケースが多いです。このような課題を解決できるスケ...

株式分割とは何?仕組みやメリット・デメリットなどをわかりやすく解説!

株式分割とは何?仕組みやメリット・デメリットなどをわかりやすく解説!

株式分割とは、1株をいくつかに分割して、発行済みの株式枚数を増やすことです。株式分割には企業側、投資家側にメリット・デメリットが存在します。理解していないとトラブルに発展する可能性があります。そ...

M&Aコラム
人気の記事
最新の記事

【※メルマガ限定】プレミアムM&A案件情報、お役立ち情報をお届けします。

ご相談はこちら
(秘密厳守)