M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2025年11月17日更新資金調達
中小企業のM&A・事業承継で活用できる税制優遇とは?節税メリットを解説
後継者不足に悩む多くの中小企業にとって、M&Aは有力な選択肢です。M&Aや事業承継を成功させるには、税制優遇の活用が欠かせません。本記事では、中小企業が使える税制を厳選し、節税メリットをわかりやすく解説します。
目次
中小企業の経営を支える税制優遇の重要性
昨今、後継者不足や市場の変化といった経営課題に直面する中小企業にとって、税制の活用は経営安定化に不可欠です。特にM&Aや事業承継を検討する際には、税負担を軽減する優遇措置の知識が成功の鍵を握ります。
本記事では、中小企業の経営やM&Aに役立つ、以下の税制についてわかりやすく解説します。
- エンジェル税制
- 法人税の軽減措置
- 設備投資に関する税制優遇
- 賃上げ促進税制(旧:所得拡大促進税制)
- 事業承継税制
中小企業に役立つ税制①エンジェル税制
創業したばかりの中小企業(ベンチャー企業)にとって嬉しい税制の一つにエンジェル税制があります。エンジェル税制とは、創立してから一定年数未満の中小企業に対し、投資した投資家に向けて、税制上の優遇措置を実施するものです。
投資家の立場からすると投資にメリットが生じるため、結果的に創業したばかりの中小企業の資金調達も活性化します。エンジェル税制には主に以下の2種類の優遇措置があります。それぞれで受けられる条件が異なるため注意が必要です。
エンジェル税制における優遇措置A
1つ目の優遇措置は「対象となる中小企業への投資額から2,000円を引いた分を、その年の総所得金額から控除する」ものです。この税制措置を受けるためには、以下の3つに当てはまる必要があります。
- 創業してから3年未満
- 新事業活動従事者が2人以上で、総人数の10%以上を占めている
- 一定の期間までのキャッシュフローが赤字
エンジェル税制における優遇措置B
2つ目の優遇措置は「対象となる中小企業への投資額すべてを、その年の株式譲渡益から控除する」ものです。この税制措置を受けるためには、以下の2つに当てはまる必要があります。
- 創業してから10年未満
- 創業してから2年以上経過している場合、試験研究費などが売り上げのうち、一定以上の割合を占めている
それぞれの優遇措置に共通する条件
さらに、エンジェル税制の対象となるためには、それぞれの優遇措置に共通して、以下の条件を満たす必要があります。
- 特定の株主グループからの投資額が全体で約83%を超えない
- 大企業の子会社、グループ傘下の会社など、大企業と特殊な関係を持っていない
- 未登録、未上場の株式会社であり、なおかつ風俗などに該当する会社ではない
控除対象となる投資家の条件
また、控除対象となる投資家にも以下の2つの条件があります。
- 金銭を支払うことで、対象会社の株式を所有している
- 同族会社(親族や家族が経営している会社)の場合、その会社の株式所有割合を計算して、50%以上保有する株主ではない
このように、エンジェル税制を活用するためには、さまざまな条件を満たす必要があります。しかし、創業したばかりの中小企業や経営が安定してきた中小企業にとっては、非常にメリットのある税制です。
法人税の軽減措置|中小企業向けの特例とは
中小企業は、法人税率の軽減措置を受けられます。資本金1億円以下など一定の要件を満たす中小法人の場合、法人税率が次のように軽減されます。
- 所得金額のうち年800万円以下の部分:**15%**
- 所得金額のうち年800万円超の部分:23.2%
この特例により、中小企業は法人税の負担を大きく軽減できます。
また、交際費に関しても優遇措置があります。中小法人は「**年間800万円までの交際費全額**」または「**接待飲食費の50%**」のいずれか有利な方を選択して損金に算入することが可能です。
これらの優遇措置は、資本金1億円以下の中小企業などが対象であり、大企業の完全子会社などは適用対象外となるためご注意ください。
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法人税の税率と計算方法
設備投資で受けられる税制優遇【中小企業投資促進税制など】
中小企業が設備投資を実施した際にも税制優遇措置を活用することが可能です。設備投資を実施した際の税制優遇措置にはさまざまなものがあります。
ここでは、その中から代表的なものを3つご紹介します。他にも中小企業の実情に合わせた税制優遇措置があるため、活用される際は一度調べることをおすすめします。
- 中小企業投資促進税制
- 機械装置導入による固定資産税の軽減
- 商業・サービス業・農林水産業活性化税制
①中小企業投資促進税制
中小企業投資促進税制は、中小企業が特定の設備投資を行った場合に、**取得価額の30%の特別償却**、または**7%の税額控除**(※)のいずれかを選択適用できる制度です。本制度の適用期限は、2025年(令和7年)3月31日までとなっています。
対象となる設備は、機械装置や測定工具、ソフトウェア、一定の貨物自動車など多岐にわたります。IT化や生産性向上を目指す中小企業にとって非常に心強い制度です。
ただし、資本金が3,000万円を超える法人は税額控除を選択できず、中古品や貸付用の設備は対象外となるため注意が必要です。
※税額控除の対象は、資本金3,000万円以下の法人などに限られます。
②機械装置導入による固定資産税の軽減
中小企業の経営能力向上計画に記載されている単品160万円以上の機械装置を導入した場合、固定資産税が軽減されます。
ただし、経営能力を向上させるための機械装置の導入が条件になります。3年度分の固定資産税を半分も軽減してくれるため、大変魅力的な税制です。
昨今は管理体制のIT化が盛んになっているため、その流れに乗りたいと考えている中小企業には活用したい方法だといえます。
③商業・サービス業・農林水産業活性化税制
こちらは商業・サービス業・農林水産業向けの税制です。この税制は、商業・サービス業・農林水産業のいずれかに属する中小企業が、器具製品、建物に付属する設備などの取得や制作をした場合、取得価額から30%の特別償却か7%の税額控除を受けられるというものです。
しかし、この税制では、アドバイス機関(商工会や都道府県中小企業団体中央会など)からアドバイスを受けているうえで、青色申告をしている中小企業が対象となります。したがって、アドバイス機関からアドバイスを受けていることを証明する書類が必要です。
【2024年最新】雇用促進税制は廃止|後継制度も確認
記事執筆時点で紹介されている「雇用促進税制」は、**2016年度(平成28年度)の税制改正により廃止されています。**
現在は、雇用に関する支援策として、税制優遇ではなく助成金の制度が中心となっています。例えば、特定の地域で求職者を雇い入れた場合に受給できる「地域雇用開発助成金」などが存在します。
最新の雇用関連支援策については、厚生労働省やハローワークの公式サイトで確認するか、社会保険労務士などの専門家へ相談することをおすすめします。
賃上げ促進税制(旧:所得拡大促進税制)の仕組みと要件
所得拡大促進税制は、2022年度(令和4年度)の税制改正で「**賃上げ促進税制**」へ改組・強化されました。この制度は、従業員の給与を増やした中小企業に対して、増加額の一部を法人税額(または所得税額)から控除するものです。適用期間は2024年4月1日から2027年3月31日までに開始する事業年度です。
中小企業向けの制度では、前年度より給与支給総額を1.5%以上増加させると、増加額の15%が税額控除されます。さらに、2.5%以上増加させると控除率が30%に引き上げられるなど、賃上げ率に応じた上乗せ措置が設けられています。
控除額の上限は法人税額の20%ですが、要件を満たすことで従業員の待遇改善と節税を両立できる、非常にメリットの大きい制度です。
賃上げ促進税制の適用を受ける際の注意点
賃上げ促進税制の適用を受けるには、法人税の確定申告書に、控除額の計算に関する明細書を添付する必要があります。
この明細書には、控除の対象となる雇用者給与等支給額や比較対象となる金額、控除額の計算過程などを詳細に記載します。
適用要件の判定や控除額の計算は複雑なため、税理士などの専門家に相談しながら進めるのが確実です。申告漏れや計算ミスがないよう、専門家のサポートを得て適切に活用しましょう。
M&A・事業承継で特に重要な「事業承継税制」
中小企業のM&Aや事業承継において、最も活用を検討すべき制度の一つが「事業承継税制」です。この制度をうまく活用することで、後継者の税負担を大幅に軽減できます。
事業承継税制(特例措置)とは?
事業承継税制(特例措置)とは、後継者が非上場会社の株式等を先代経営者から贈与または相続により取得した場合、一定の要件を満たすことで、その株式等にかかる贈与税や相続税の納税が100%猶予・免除される制度です。
この特例措置の適用を受けるには、2026年3月31日までに「特例承継計画」を都道府県に提出し、2027年12月31日までに贈与・相続を完了させる必要があります。
納税が猶予・免除される対象
この制度の対象となるのは、会社の議決権株式総数のうち最大で3分の2までとされていましたが、特例措置では**全株式が対象**となります。
猶予された贈与税は、贈与者である先代経営者が死亡した際に免除され、相続税の課税対象に切り替わります。その後、猶予された相続税は、後継者が死亡するなどの一定の事由が発生した際に全額免除されます。
事業承継税制の適用を受けるための主な要件
事業承継税制の適用を受けるには、会社、先代経営者(贈与者)、後継者(受贈者)それぞれに細かい要件が定められています。主な要件は以下の通りです。
- 会社の要件:中小企業であること、資産管理会社でないことなど
- 先代経営者の要件:会社の代表権を有していたことがあること、贈与時に代表者でないことなど
- 後継者の要件:贈与時に18歳以上で、役員就任から3年以上経過していることなど
これらの要件は複雑なため、M&Aや事業承継を検討する際は、税理士などの専門家に相談し、計画的に準備を進めることが重要です。
税制優遇の活用で中小企業のM&A・事業承継を有利に進めよう
中小企業が活用できる税制は、いずれも魅力的な税制ばかりですが、適用条件が面倒なものになっています。そのため、活用しようと思った際に「条件を満たしていないが故に活用できない」とならないよう前もって税制について知っておく必要があります。
要点をまとめると下記になります。
・エンジェル税制
→創立してから一定年数未満の中小企業に対し、投資した投資家に向けて、税制上の優遇措置を実施するもの
・法人税率の優遇
→受けられる中小企業は資本金1億円以下の企業に限られており、大企業のグループ傘下や子会社は該当しない
・設備投資を実施した際の税制優遇措置
→中小企業投資促進税制、機械装置導入による固定資産税の軽減、商業・サービス業・農林水産業活性化税制
・雇用促進税制
→2名以上を採用、総人数の10%以上増加させた雇用を遂行した中小企業において活用できる
・所得拡大促進税制
→従業員給与の増額分の内、10%が税額控除として認められる
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立命館大学卒業後、地方銀行にて中堅中小企業を担当。ファイナンス、ビジネスマッチング等に従事した後、本部専門部署にて事業承継支援を専門として実績を積む。
その後、大手M&A仲介会社において、事業承継や戦略的な成長を目的としたM&Aを業種・規模問わず、多数成約に導く。
M&A総合研究所では、製造業や建設業、不動産業など幅広い業種を担当。