2025年6月22日更新事業承継

事業承継と事業譲渡の違いを徹底比較!メリット・デメリットから税金、手続きまで専門家が解説

事業承継と事業譲渡は混同されがちですが、意味や効果は異なります。本記事では【事業承継 事業譲渡】の違いを明確にし、メリットや注意点を比較解説します。最適な選択のための基礎知識を身につけましょう。

目次
  1. 事業承継と事業譲渡の違いとは?
  2. 事業承継と事業譲渡の方法
  3. 事業承継と事業譲渡の注意点
  4. 事業承継と事業譲渡のメリット
  5. 事業承継と事業譲渡はどちらが得か?
  6. 事業承継・事業譲渡を成功させるためのステップと専門家の活用
  7. 事業承継と事業譲渡以外の引き継ぎ方法
  8. 事業承継と事業譲渡に悩んだ際の相談先
  9. 事業承継と事業譲渡の違いまとめ
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事業承継と事業譲渡の違いとは?

事業承継と事業譲渡はどちらも事業を引き継ぐための方法ですが、それぞれの意味や効果には明確な違いがあります。
得られる効果が全く異なるので、事業の引継ぎを検討する際は2つの方法の違いを把握しておくことが重要になります。

ここでは、事業承継と事業譲渡の違いを確認していきます。

事業承継とは?基本的な定義と目的を解説

事業承継とは、会社の経営権や事業、関連する資産などを後継者へ計画的に引き継ぐことです。単に株式を贈与・相続するだけでなく、経営理念やノウハウといった無形の価値も承継の対象となります。会社や事業の存続には、若い世代への引継ぎが必要なため、適切なタイミングで事業承継を行います。

中堅・中小企業は経営者の経営手腕が会社全体の基盤になっていることも多いので、誰を後継者にするかが課題になります。

近年、後継者不足は深刻化しており、多くの企業で事業承継の準備が喫緊の課題となっています。
 

事業譲渡とは?M&A手法としての位置づけと特徴

事業譲渡とは、会社が営む事業の一部または全部を、他の会社へ譲渡するM&Aの手法の一つです。会社法にも規定があり、譲渡する資産や負債、契約などを個別に選択して引き継ぐ点が特徴です。

対象となるのは、工場設備、不動産、知的財産権、従業員、取引契約など多岐にわたります。これらのなかから個別に譲渡あるいは全てを譲渡することも可能です。

株式譲渡と異なり、事業譲渡では会社の経営権(法人格)は元の会社に残り、譲渡後も会社自体は存続します。そのため、特定の事業だけを切り離したい場合や、ノンコア事業を整理したい場合に有効な手段となります。
 

事業承継と事業譲渡の主な違い

事業承継は事業の引継ぎに重きを置いた方法であるのに対し、事業譲渡は事業を第三者に譲渡する方法です。

事業譲渡は事業の清算や売却益の獲得を目的に行われることが多いので、会社の存続が目的の事業承継とは利用シーンが異なります。

事業承継と事業譲渡にはそのほかにもさまざまな違いがあります。下表は法人における事業承継と事業譲渡の主な違いをまとめたものです。

【事業承継と事業譲渡の主な違い】

  事業承継 事業譲渡
経営権 移転する 移転しない
譲渡範囲 会社に属する全ての資産 自由に選択可能
売却益 親族への承継では無償譲渡が多い
有償譲渡なら経営者(株主)が獲得
会社が獲得
主な目的 会社の存続 赤字事業の清算
事業資金の確保

【関連】事業承継の基本知識と成功ポイント!手法別メリット・デメリットも解説

事業承継と事業譲渡の方法

事業承継と事業譲渡はそれぞれいくつかの種類に分けられます。この章では、事業承継方法と事業譲渡方法の違いを解説します。

事業承継の3つの要素

事業承継で引き継がれる要素として、経営権、経営資源、物的資産の3つが挙げられます。
 

経営権の承継 社長の役割を引き継ぐ、後継者を探す、育成など
経営資源の承継 経営理念、信用力、ブランド、独自のノウハウ、技術、人材、人脈など
物的資産の承継 自社株式(自社株)、土地・建物、設備・運転資金、個人の資産など
 
経営権の承継は、 社長の役割を後継者へと引き継ぐものです。そのために後継者を探す、あるいは育成することも重要です。経営資源の承継は、会社の経営理念や信用力、ブランド、会社のノウハウや技術、人材や取引先を引き継ぐことになります。これらの引き継ぎが十分にできないと、会社が低迷してしまうリスクが発生します。

物的資産の承継は、株式や事業用不動産の資産、設備や運転資金などを後継者へと引き継ぐものです。物的資産の承継は、基本的に株式を承継することで後継者へと自動で引き継げます。なお、経営者個人が事業用資産を所有し会社に貸している場合は、事業承継の際に移転しておくのがベストです。

承継にあたっては、手続きや税金が発生する可能性もあるため、専門家に相談しながら慎重に進めるようにしましょう。

事業承継の方法

事業承継の方法は主に3種類あります。それぞれにメリット・デメリットが存在しており、会社や経営者が抱えている経営課題に合わせて適切な事業承継方法が選ばれています。

【事業承継方法】

  • 親族内事業承継
  • 親族外事業承継
  • M&Aによる事業承継

親族内事業承継

親族内事業承継は親族に引き継ぐ方法です。主な引継ぎ先は子や兄弟姉妹などであり、子への承継が最も一般的とされています。

親族内事業承継のメリットは後継者育成に時間をかけられることです。後継者が子供の頃から育成に着手できるため、経営者に求められるスキルを身につけやすくなっています。

デメリットは、必ずしも親族内に適任者や事業承継の意思を持つ方がいるとは限らない点です。価値観の多様化により、家業を継ぐことを望まない子弟も増えており、結果として親族内承継が難しくなるケースも少なくありません。また、相続人が複数いる場合、株式や資産の分配でトラブルが生じる可能性も考慮に入れる必要があります。

親族外事業承継

親族外事業承継は親族以外に引き継ぐ方法です。主に社内の人材に引き継ぐ際に使われることが多いです。

親族外事業承継のメリットは、企業文化や経営方針を維持しやすいことです。経営者の理念を理解している役員・従業員であれば方向性が変わることも少なくなり、事業承継による摩擦を抑えやすくなります。

デメリットは後継者候補に資力が必要なことです。経営権を集中させるには大半の株式を引き継ぐ必要がありますが、有償の場合は株式買取資金、無償の場合は贈与税あるいは相続税が必要になります。

M&Aによる事業承継

M&Aによる事業承継は自社株式を第三者に売却・譲渡する方法です。親族や社内に後継者候補がいない場合の事業承継方法として浸透しつつあります。

M&Aによる事業承継のメリットは、後継者候補を社内外の広範囲から探せる点です。親族や従業員に限らず、自社事業とのシナジーが見込める企業や、豊富な経営資源を持つ企業を承継先として選定できます。これにより、資金力や経営ノウハウといった課題を解決し、事業のさらなる成長も期待できます。

デメリットは譲渡先の選定には相応のネットワークが必要なことです。売却益や従業員の引継ぎなどの求める条件が多くなるほど選定の難易度は高くなり、専門家によるマッチング支援などの必要性が増します。

事業譲渡の方法

事業譲渡は全部譲渡と一部譲渡の方法があります。ここではそれぞれの特徴について紹介します。

全部譲渡

全部譲渡は譲渡企業が営む全ての事業を譲受企業に譲渡することを意味します。全ての事業を売却・譲渡したいものの、会社は手放したくない時に利用されています。

譲渡企業は効力発生日(譲渡日)の前日までに株主総会を開催し、特別決議を得る必要があります。

譲受企業は、譲り受ける事業の価値が譲受企業の純資産の1/5を超える場合、株主総会を開催して特別決議を得る必要があります。

親子会社間(親会社が子会社の議決権の90%以上を保有)で行われる場合、全部一部や譲渡譲受側に関係なく子会社側の株式総会の特別決議は不要になります。

一部譲渡

一部譲渡は会社の事業の一部を譲渡することを意味します。採算事業の譲渡・売却による事業資金の確保や、不採算事業の清算による財務状況の健全化などの目的で行われています。

譲渡企業は譲渡する事業が純資産額の1/5超の価値かつ重要な一部の場合、株主総会での特別決議が必要です。重要な一部とは売上高・利益・従業員数等の量的基準が全体の10%を超える場合をさします。

事業承継方法と事業譲渡方法の比較

事業承継は誰に承継するかでメリット・デメリットが大きく変わります。早期から着手できる場合は親族内事業承継が、準備に時間をかけられない場合はM&Aによる事業承継が有効です。

事業譲渡は譲渡先企業を選定して譲渡範囲を決めます。譲渡範囲が決まったら適切な方法で価値を算出して必要に応じて株主総会を開催して2/3以上の賛成を得ることで成立します。

【事業承継方法の比較】

  親族内事業承継 親族外事業承継 M&Aによる事業承継
メリット 後継者育成に時間をかけられる 企業文化や経営方針を
維持しやすい
後継者候補の選択の幅が広い
デメリット 親族内に
後継者候補がいない場合もある
後継者候補に資力が必要 選定にネットワークが必要

【事業譲渡方法の比較】
  全部譲渡 一部譲渡
利用シーン 全ての事業を売却・譲渡しつつも
会社は手放したくない時
事業資金の確保
不採算事業の清算
特別決議の有無 必要
親子会社間(議決権90%以上保有)
の場合、子会社は不要
事業価値が純資産額の1/5超の場合に必要
重要な一部に該当しない場合は不要

【関連】事業承継の3つの方法!準備・手続きと成功のポイントを解説

事業承継と事業譲渡の注意点

事業承継と事業譲渡はそれぞれに注意点があります。事業の引継ぎを検討する際は2つの方法の注意点を把握した上で取り組むことが大切です。

事業承継を進める上で押さえておくべき3つの注意点

まずは事業承継の注意点からみていきます。事業の引継ぎに際し、特に注意しておきたいポイントは下記の3つです。

【事業承継の注意点】

  • 後継者選定が難しい
  • 経営権の集中が難しい
  • 事業の継続が約束されない

後継者選定が難しい

事業承継は親族への承継が一般的とされています。しかし親族内に後継者候補がいないこともあり、その場合は親族外から後継者をみつける必要があります。

親族内に後継者候補がいない主な理由は、子供がいない、子供に会社を継ぐ意思がないなどです。少子高齢化や人口の都市部集中などが影響しており、日本の多くの中堅・中小企業が同様の課題を抱えています。

外部から後継者を見つける場合は、会社の必要な経営者のタイプの検討や能力面・精神面の水準を満たしているかなどの見極めも重要になります。親族内に後継者候補がいない場合は選定が難しくなるでしょう。

経営権の集中が難しい

株式会社の場合、株式の所有率に応じて経営に対する影響力を持ちます。迅速な意思決定のためには後継者に経営権を集中させておくことが望ましいです。

しかし、事業承継の相続人が複数いる場合は、公平な分配のために株式を折半することもあります。株式が分散すると経営権が集中できなくなり、経営上の決定を行う際の意思確認に時間を取られることになります。

後継者に経営権を集中させるためには、ほかの相続人に株式以外の資産を引き継ぐなどの対策が求められます。ケース次第では拒否権付株式や生前贈与、遺言なども検討する必要があります。

事業の継続が約束されない

事業承継は会社や事業を存続するための方法ですが、後継者の経営方針次第では引き継いだ事業が廃止されることもあります。

事業を廃止する理由は、後継者の意識の変化によるものもあれば、事業承継後に経営が傾いてやむを得ずというものもあります。

手間をかけて事業承継を行っても、事業の継続が約束されるわけではないことに注意が必要です。

【関連】事業承継に必要な準備期間/心構えとは?適切な承継タイミングなど解説

事業譲渡を実施する際に留意すべき3つの注意点

続いて事業譲渡の注意点をみていきます。売却益の獲得というメリットがある一方で、注意しておくべきポイントもいくつかあります。

【事業譲渡の注意点】

  • 手続きが面倒
  • 競業避止義務の規定がある
  • 売却益に法人税がかかる

手続きが面倒

事業譲渡は譲渡範囲を個別に選択するという特徴から、個別に契約しなければならないという手続きの煩雑さがあります。

譲渡範囲に含まれる事業に関わる従業員・取引先・債権者・債務者等に対して同意を得る必要があるため、会社や事業の規模に比例して手続きの負担も大きくなります。

情報保護の観点から情報公開タイミングが難しいことも相まって、事業譲渡の手続きは問題になることが多いです。

競業避止義務の規定がある

事業譲渡における競業避止義務とは、譲渡企業は譲受企業に対する競業行為をしてはならないという義務のことです。

事業譲渡が行われた後、譲渡企業が培ったノウハウを活用して同一あるいは類似する事業を開始すると、譲受企業にとって競合になる可能性が高いです。

事業譲渡に見込まれていたシナジー効果や利益を生み出すことが難しくなるため、事業譲渡の契約書に競業避止義務が盛り込まれ、譲渡企業は、一定期間内は譲渡事業と同一あるいは類似の事業を行うことが制限されます。

事業譲渡の競業避止義務の期間は会社法で原則20年と定められています。事業の性質などによって期間を延長または短縮できます。

売却益に法人税がかかる

事業譲渡によって譲渡企業が得た売却益(譲渡益)には、法人税等が課税されます。この税金には、法人税、地方法人税、法人住民税、事業税が含まれ、これらの合計実効税率は一般的に30%前後となります。ただし、税制は改正される可能性があるため、常に最新情報を確認することが重要です。

納税は原則として事業譲渡が行われた事業年度の確定申告時に行います。

売却益の資金計画を立てる際は、この税負担を正確に把握し、必要に応じて税理士などの専門家にも相談しましょう。

なお、課税対象となるのは、他の事業損益と通算した後の課税所得です。仮に事業譲渡で利益が出ても、同年度に他の事業で損失があれば相殺できる場合があります。

事業承継と事業譲渡の注意点比較

下表は前述の事業承継と事業譲渡の注意点をまとめたものです。事業の引継ぎに万全を期すためには注意点を押さえておく必要があります。

【事業承継と事業譲渡の注意点比較】

事業承継の注意点 事業譲渡の注意点
後継者選定が難しい
経営権の集中が難しい
事業の継続が約束されない
手続きが面倒
競業避止義務の規定がある
売却益に法人税がかかる

【関連】事業売却でかかる税金

事業承継と事業譲渡のメリット

事業承継と事業譲渡はメリットを把握すると適切な方法を判断しやすくなります。前章では注意点やリスクについて述べましたが、ここではメリットに重点をおいて解説します。

事業承継の5つのメリット

事業承継はいろいろな方法に分けられており、使い分けることでさまざまなメリットを得られます。特に恩恵が大きい物は以下の5点です。

【事業承継のメリット】

  • 従業員や取引先の理解を得やすい
  • 長期的な後継者育成ができる
  • M&Aを活用することで、優秀な人材に引き継ぐことができる
  • 財産など所有と経営が一体化できる
  • M&Aを活用することで、経営の安定化や売却益を得る事ができる

従業員や取引先の理解を得やすい

経営者が変わる際は、関係者に対する説明が必要になります。親族の場合は良い印象を与えやすく心情的にも理解されやすいので、拒絶されることもあまりありません。

万全を期すならば、早期から顔合わせを行っておくとよいでしょう。経営者や後継者の双方の意思で進めていることを示せれば、従業員や取引先が不安を抱くことも少なくなります。

経営者が変わる際は、個人保証の引き継ぎも問題になります。金融機関からの理解を得られていればスムーズに進められます。

長期的な後継者育成ができる

中小企業庁の「経営者のための事業承継マニュアル」によると、後継者育成は5~10年かかるといわれています。これは、必要なスキルやノウハウを身につけるために時間がかかるためです。

早期から後継者候補が決まっていれば、育成に時間をかけることができます。子供の頃から着手していれば覚悟を醸成しやすく、引き継ぐ頃には会社全体を引っ張れるリーダーに育っていることにも期待できます。

M&Aによる事業承継:外部の優秀な人材への引継ぎという選択肢

親族への承継は候補が限定されており、会社を引っ張るだけのスキルが備わっているかは保証されていません。やる気やスキルが伴わないこともあり、状況次第では業績が低下して経営が傾くリスクもあります。

優秀な人材という点を重視するならばM&Aを活用した事業承継が最適です。選定先の制限がないため、会社に有益になる事業承継を実現しやすくなります。

シナジー効果を得られる人材に引き継げれば、業績向上や事業規模の拡大などの展開も期待できます。事業承継を機にM&Aで飛躍的な成長を図れます。

財産など所有と経営が一体化できる

親族への事業承継は無償譲渡が主流のため、財産や株式について所有と経営を一致させやすいです。意思決定を行いやすく、一貫した経営体制を維持しやすいメリットがあります。

なお、有償譲渡の場合は株式の買取資金不足という問題があり、所有と経営を分離する形で事業承継が行われることも増えてきています。

M&Aを活用することで、経営の安定化や売却益を得る事ができる

M&Aを活用した事業承継では第三者に経営を引き継ぎます。大手グループの傘下に入ることができれば、資金や顧客、販路等の経営資源を活用して経営の安定化を期待できます。

またM&Aの場合は売却益の獲得が可能です。事業譲渡は会社が獲得しますが、M&Aを活用した場合は経営者(株主)個人が獲得できます。

売却益に対して課される譲渡所得税は、20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)です。事業譲渡の法人税(約30%)よりも負担が軽いというメリットもあります。

事業譲渡の3つのメリット

事業譲渡はM&A手法の代表的なM&A手法の1つです。事業承継や他のM&A手法と比較した場合のメリットは以下の3つです。

【事業譲渡のメリット】

  • 特定事業のみを売却・譲渡できる
  • 赤字経営で負債を抱えていても譲渡先が見つかりやすい
  • 会社は継続して経営ができる

特定事業のみを売却・譲渡できる

事業譲渡は譲渡企業が譲渡範囲を自由に選択できます。特定の事業のみを売却・譲渡できるので事業再生の手段として幅広く活用されています。

事業の多角化はリスク分散やシナジー効果の創出などの目的で行われています。積極的に新たな分野に進出して飛躍的な企業成長を目指す戦略です。

しかし、利益率の低下や財務リスクの悪化などによる事業失敗のリスクは伴います。一度は必要として拡大した事業も、社会環境の変化などで会社の負担になることも珍しくありません。

負担が大きいあるいは不採算の事業を切り離すことで経営に余裕を持たせ、その時々に重要な事業へリソースを集中できます。

赤字経営で負債を抱えていても譲渡先が見つかりやすい

中堅・中小企業のM&Aで利用される手法に株式譲渡というものがあります。権利義務の包括的な承継ができ手続きが簡便とされていますが、負債を一緒に引き継ぐ欠点もあります。

また、財務諸表からは判断しづらい簿外債務等の問題もあります。譲受企業視点では譲渡企業の簿外債務を引き継ぐ潜在的リスクがあるため、敬遠されて交渉に発展させられないことも多いです。

事業譲渡は、売りたい・買いたい事業のみを売買する手法です。必ずしも負債部分を引き継ぐ必要はないので、譲渡先がみつかりやすい方法です。

会社は継続して経営ができる

事業譲渡は事業を売却・譲渡する方法なので、会社が消滅することも会社の経営権を失うこともありません。譲渡代金を元手に借入金を返済したり、新規の事業資金に活用したりすることも可能です。

一部の事業を清算して残された事業に専念したい時など、経営と法人格を維持したい場合に事業譲渡は最適な方法です。

事業承継と事業譲渡のメリット比較

事業の引継ぎの方法に迷った時はメリットを比較すると自社に適切な方法を検討しやすくなります。この章でご紹介した内容をまとめると下表のようになります。

【事業承継と事業譲渡のメリット比較】

事業承継のメリット 事業譲渡のメリット
従業員や取引先の理解を得やすい
長期的な後継者育成ができる
M&Aを活用して優秀な人材に引き継ぎできる
財産など所有と経営が一体化できる
M&Aを活用して経営の安定化や売却益を得られる
特定事業のみを売却・譲渡できる
負債を抱えていても譲渡先が見つかりやすい
会社は継続して経営ができる

【関連】事業譲渡における競業避止義務

事業承継と事業譲渡はどちらが得か?

事業承継と事業譲渡の注意点やメリットについてみてきましたが、事業の引継ぎ方法としてはどちらが得なのでしょうか。この章では、赤字経営の場合とリスクに着目しながら解説します。

赤字経営の際は事業譲渡が選ばれやすい

赤字経営の際は、負債を親族や社員に承継することを躊躇することも少なくありません。事業承継はなるべく綺麗な状態で託したいと考える経営者が多く、最終的に事業譲渡を選択するケースが多くなっています。

事業譲渡は事業の価値に応じた売却益を獲得できます。中核事業を手放したとしても負債を清算することができれば、これまでに培ったノウハウを活用して再スタートを切ることも可能です。

互いにニーズが一致する譲渡先と巡り合えれば、不採算事業を切り離すことも不可能ではありません。自社にとっては不採算でも、相手次第では有益な事業であることも少なくないためです。

事業譲渡のリスク

前述した内容だけだと事業譲渡はメリットばかりで万能な方法にみえますが、一定のリスクも伴います。

主なリスクは取引先の契約引継ぎができない可能性があることです。個別に同意を得る必要がある他、担当者が変わることで契約を打ち切られてしまう恐れもあります。

特に中堅・中小企業の場合は経営者との信頼関係で契約が続いていることも少なくなく、事業譲渡を機会に契約解除になるケースも珍しくありません。

譲渡する規模が一定以上の場合、株主総会の特別決議を得る必要もあり、取引を実現させるまでの手間・コストがかかる問題もあります。

事業承継と事業譲渡はどちらも万能な方法ではないため、会社の状況や抱えている課題を考慮しながら検討することが大切です。その際はメリットや注意点、リスクを把握していると効率的に準備を進めやすくなります。

事業承継ではなく事業譲渡を選ぶ理由

債務超過の企業である場合、親族や従業員に事業承継をしていいものか悩むケースもあるかもしれません。このような場合は、事業譲渡がおすすめです。事業譲渡であれば、売り手は資金を獲得できるうえ、会社が培ってきたノウハウや技術を継続的に伝えていくことも可能です。

赤字や債務超過を抱えた企業であっても、第三者から見ると大きな価値や魅力を持っているケースも少なくありません。また事業譲渡であれば、従業員の雇用も継続でき、債権者への通知・公告なしに手続きが完了できるなどのメリットもあります。

事業承継・事業譲渡を成功させるためのステップと専門家の活用

事業承継や事業譲渡を円滑に進め、期待する成果を得るためには、計画的な準備と適切な専門家の活用が鍵となります。ここでは、それぞれの基本的な進め方と、専門家を選ぶ際のポイントについて解説します。

事業承継をスムーズに進めるためのステップ

事業承継は長期的な視点で取り組むべき重要な経営課題です。以下に主なステップを示します。
 

現状把握と事業承継の必要性の認識

まず、自社の経営状況、財務状況、強み・弱み、そして事業承継における課題(後継者候補の有無、相続税対策など)を正確に把握します。その上で、事業承継の必要性と目的を明確にします。

後継者の選定と育成計画の策定

親族内、親族外(役員・従業員)、M&Aによる第三者など、誰に事業を引き継ぐのかを検討し、後継者候補を選定します。候補者が決まれば、経営者としての知識・スキルを習得させるための育成計画を策定し、実行に移します。

事業承継計画の策定と実行

具体的な承継方法(株式譲渡、生前贈与など)、スケジュール、資金計画、関係者への説明などを盛り込んだ事業承継計画を策定します。税理士や弁護士、M&Aアドバイザーなどの専門家と連携しながら、計画を実行に移していきます。実行後も、新体制の安定化に向けてフォローアップが必要です。
 

事業譲渡を成功に導くためのステップ

事業譲渡は、適切な相手先を見つけ、双方にとってメリットのある条件で契約を締結することが重要です。
 

譲渡目的の明確化と準備

なぜ事業譲渡を行うのか(ノンコア事業の整理、資金調達、後継者問題の解決など)、目的を明確にします。その上で、譲渡対象事業の強みや魅力を整理し、企業価値評価の準備(財務諸表の整備など)を進めます。
 

譲渡先の選定と交渉

M&A仲介会社や金融機関などを通じて、譲渡先の候補企業を探します。候補先が見つかれば、秘密保持契約を締結した上で情報開示を行い、条件交渉を進めます。価格だけでなく、従業員の処遇や事業の継続性なども重要な交渉ポイントです。
 

契約締結とクロージング

基本的な条件について合意に至れば、基本合意書を締結します。その後、買収監査(デューデリジェンス)を経て、最終的な事業譲渡契約を締結します。契約に基づき、資産の移転や対価の支払いが行われ、事業譲渡が完了(クロージング)します。

専門家(M&A仲介会社など)選びのポイント

事業承継や事業譲渡は専門的な知識や経験が不可欠です。信頼できる専門家を選ぶことが成功の鍵となります。
 

実績と専門性

自社の業種や規模、希望するスキーム(事業承継の種類や事業譲渡の形態)において、豊富な実績と高い専門性を持っているかを確認します。過去の成功事例や、担当アドバイザーの経験も重要な判断材料です。
 

料金体系の透明性

相談料、着手金、中間金、成功報酬など、料金体系が明確で、事前に十分な説明があるかを確認します。特に成功報酬の算定根拠はしっかりと理解しておく必要があります。
 

コミュニケーションと相性

担当アドバイザーとのコミュニケーションが円滑に取れ、信頼関係を築けるかどうかも重要です。親身になって相談に乗ってくれるか、自社の状況や意向を的確に理解してくれるかなど、相性を見極めましょう。複数の専門家と面談し、比較検討することをおすすめします。

事業承継と事業譲渡以外の引き継ぎ方法

会社の承継方法にはいくつかの方法がありますが、ここでは「会社分割」と「株式譲渡」という二つの方法をご紹介します。

「会社分割」とは、事業の一部を新しい子会社や兄弟会社として切り離し、別の会社に引き継がせる方法です。例えば、会社が不採算な事業を持っている場合、それを切り離すことで会社全体をスリム化できます。

これによって、得意な事業と苦手な事業をはっきりさせ、事業を選択し集中することが可能です。事業を譲渡する際には通常、取引先や契約先の同意が必要ですが、会社分割の場合はすべての契約を引き継ぐことができるので、個別の手続きは不要です。

一方、「株式譲渡」とは、会社の経営者が自分の株を別の会社に譲る方法で、これによってその会社を子会社化できます。この方法では、法人そのものを引き継ぐので、資産や負債、知的財産、許認可などはそのまま引き継ぐことが可能です。

株式とお金を交換するだけで事業全体を引き受けることができるため、非常に簡便であり、M&A(合併・買収)でよく使われています。

事業承継と事業譲渡に悩んだ際の相談先

事業の引継ぎ方の相談はM&A仲介会社がおすすめです。M&A・事業承継の専門家として相談・仲介業務に取り組んでいるので、専門的知見からのアドバイスを受けられます。

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事業承継と事業譲渡の違いまとめ

事業承継と事業譲渡は各々に特徴があり適切な利用シーンが違います。事業の引継ぎを検討する際は、2つの違いを把握したうえで準備に取り組むことが大切です。

早期から専門家に相談すると準備を計画的に進めやすくなり、さまざまな可能性を模索することも可能になります。特にM&A仲介会社は事業の引継ぎに関するプロフェッショナルなので精度の高いサポートが期待できます。
 

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