事業売却と社員

事業売却によって売り手側の社員(従業員)の雇用関係はどうなるのかは、その社員(従業員)だけではなく、売り手側・買い手側の企業にも大きく影響します。今回は事業売却による社員(従業員)への影響や社員(従業員)の処遇などの注意点を解説します。

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2020年2月28日更新

目次
  1. 事業売却と社員
  2. 事業売却の意味と目的
  3. 事業売却における社員の重要性
  4. 事業売却による社員の処遇
  5. 社員のケアに関する注意点
  6. まとめ

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事業売却と社員

会社を経営していくうえでは、さまざまな意思決定が必要となります。事業売却は会社存続に関わる大きな意思決定の1つです。

近年は企業規模に関係なく、多くの企業が事業売却を行っています。事業売却を実施すると、周囲の環境が少なからず変化しますが、特に、売り手側の社員にとって事業売却による影響は大きいです。

事業売却によって、売り手側の社員は、自分の処遇や雇用関係はどうなるのか、リストラされないかなどといったさまざまな不安を抱くため、仕事のモチベーションにも大きく影響します。また、買い手側の企業にとっても、事業売却後に自社の社員となる売り手側の社員のモチベーションはとても重要です。

そこで今回は、事業売却と社員の関係性や処遇などの注意点についてお伝えします。事業売却を検討中の経営者の方必見です。

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事業売却の意味と目的

そもそも、事業売却とは自社で運営している事業の一部を切り離し、他社に売却することをさします。事業売却はM&Aにより行われることも多く、具体的な方法として、事業譲渡や会社分割があります。

また、広い意味では会社の全てを売却することを事業売却と呼ぶ場合もあります。事業売却を行う目的としては、以下のものがあります。

  1. 不採算事業の売却による財務状況の改善
  2. 後継者不足による廃業の回避
  3. 社員の雇用継続の確保

不採算事業を売却することによって、財務状況の改善を図ることができるうえに、主力事業に集中できるようになります。不採算事業の売却は、主に大企業で行われることが多いです。

また、中小企業が事業売却する背景として、中小企業全体における後継者不足の問題の深刻化があります。現在、多くの中小企業では後継者不足に陥っています。後継者不足の結果、黒字にもかかわらず廃業してしまう中小企業も少なくありません。

しかし廃業してしまうと、社員は退職を余儀なくされ職を失ってしまいます。中小企業では、社員が比較的少人数であることもあり、経営者と社員との間の信頼関係がとても強い企業が多いことから、社員の雇用をできる限り継続するために、事業売却によって事業の存続を図る会社が増えています。

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M&Aによる会社売却・事業売却

事業売却における社員の重要性

売り手・買い手企業の双方にとって、売り手側の社員の存在は非常に重要です。ここでは、売り手・買い手それぞれの視点から、売り手側の社員の重要性をお伝えします。

①売り手側における社員の重要性

売り手側の経営者にとって、これまで頑張ってくれた社員は大切にしたいものです。また、長く勤務している社員は、結果として、自社の事業について精通し優秀なスキルを持っていることが往々にしてあります。このことから、多くの経営者は、企業と当該社員の双方にとって、雇用が維持されることを期待しています。

これは、特に中小企業に顕著な傾向です。中小企業の事業売却では、「譲渡金額」と同じ、もしくはそれ以上に「社員の雇用維持」を重視します。社員の雇用を確保する目的で、事業売却を行う場合も多いのです。

②買い手側における社員の重要性

一方で買い手側は、最終的には利益獲得を目的として事業を買収します。買収した事業で収益をあげるためには、優秀な社員が欠かせません。どんなに秀逸なビジネスモデルでも、それを実行できる人材がいなければ意味がありません。

したがって、事業買収の際には、買い手側は、売り手側の社員も積極的に受け入れたいと希望するのが一般的です。買い手側にとっても、M&Aを成功に導くうえで売り手側の社員の存在は欠かせません。

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事業売却による社員の処遇

事業売却が行われると、社員はどのような処遇を受けるかみていきましょう。事業売却で用いる手法によって従業員の処遇は異なるため、事業売却の主な手法別に社員の処遇を説明します。なお、事業売却の主な手法とは以下のとおりです。

  1. 株式譲渡
  2. 事業譲渡
  3. 会社分割

①株式譲渡の場合

株式譲渡とは、自社の株式を他社に売却するM&Aの手法です。中小企業のM&Aでは、全株式を売却し、経営権を完全に手放すケースがほとんどです。そのため、事業売却というよりも会社売却と呼ぶのが正しいです。株式譲渡では株主が変わるのみで、会社の中身は何も変化しません。

株式譲渡の場合、基本的には社員の雇用は自動的に譲渡先の企業に引き継がれますが、引き継がれた後、買い手側によって従業員が解雇される可能性は少なからずあります。

したがって、契約時点で社員の雇用の継続について、買い手先と何かしらの契約を定めておくと雇用が維持される可能性が高まります。

②事業譲渡の場合

事業譲渡とは、会社の中から一部の事業や資産等を切り離して、第三者に売却する手法です。事業売却の際には、この手法を用いるケースがほとんどです。事業売却といえば、一般的に事業譲渡を意味します。

事業譲渡では、資産・負債に関する全ての契約を、買い手側が売り手側と事業売却後に個別に締結し直す必要があります。もちろん、社員との雇用契約も例外ではありません。事業売却の際に、買い手側は社員1人1人と雇用契約を新規で締結します。

この場合でも、売り手側の社員は、自分自身で雇用先を選ぶ権利が保証されています。しかし裏を返せば、買い手側にも雇う社員を選ぶ権利があります。つまり、売り手側の社員は、事業売却によって職を失うおそれがあります。

社員の雇用を維持するためには、買い手側と契約書であらかじめ確約しておくことが大切です。とはいえ、前述の通り、買い手側にとって売り手側の社員の存在は貴重であることから、大半の事業売却では、全ての社員が買い手側に引き継がれるのが一般的です。

③会社分割の場合

会社分割も一部の事業を他社に移転する手法の1つですが、厳密には、組織再編を目的として使われるM&Aの手法です。ただし、事業売却の手法として用いられる場合もあります。

事業譲渡と会社分割には、いくつかの相違点があります。特に、大きく異なるのが社員の取り扱いです。事業譲渡では、買い手企業が売り手側の社員と個別に雇用契約を結び直す必要がありました。しかし、会社分割では、個別に契約を結ぶ必要はありません。

基本的には、事業売却に伴い社員も自動で引き継がれます。買い手側は、優秀な社員を失うリスクを減らすことができます。また売り手側は、社員の雇用を確実に維持できます。社員の処遇に限定すると、非常にメリットの大きい事業売却手法です。

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社員のケアに関する注意点

最後に、事業売却の際、社員のケアについて注意すべきポイントとして、以下の3つをご紹介します。

  1. 社員に事業売却を伝えるタイミング
  2. 事業売却後に社員が受ける影響
  3. 社員の処遇に関する契約

①社員に事業売却を伝えるタイミング

どのタイミングで社員に事業売却を伝えるかは、非常に重要です。タイミングを間違えると、社員に不信感が生じたり、外部に情報が漏えいするおそれもあります。情報が漏えいすると企業の信用問題となり、最悪の場合は、事業売却自体が白紙になるおそれもあります。

つまり、タイミング次第では、今後の会社経営に大きな支障をきたすおそれがあります。

では、どのタイミングで伝えるのがベストなのでしょうか?買い手側は事業売却の契約が正式に締結された後に初めて売り手側の社員と接触します。よって、最終契約前に何らかの形で、社員に伝えるのがベストです。突然知らされると、社員の間に不信感が募るからです。

しかし、早いほど良いというわけではありません。最終契約が締結されるまでの間に、買い手側が合意した条件を撤回することも十分に考えられるため、仮に社員の処遇に関して合意しても、最終契約の時点で変わる可能性は十分あります。

そのため、社員に対しては、最終契約の直前に事業売却を行うことを伝えることをおすすめします。しかし、具体的な処遇などについては最終契約の締結後に説明するようにしましょう。

事業売却の成功には、社員に対して適切なタイミング、かつ、適切な内容で情報提供することが不可欠です。

②事業売却後に社員が受ける影響

事業売却は、社員にとっても非常に大きな出来事です。最終契約の前後で知らされることが一般的ですが、多くの社員は少なからず動揺します。自身の雇用が継続されるのか、買い手先企業になじめるのかといった不安を抱きます。

事業売却の実施を伝えたら、できる限り従業員の不安を取り除く努力をしましょう。また、事業売却によって社員にもたらされるメリットを最大限伝えましょう。

事業売却では、自社よりも規模の大きい企業とM&Aを実施することが多い傾向にあるため、事業売却後、給与や福利厚生などの社員の待遇は以前より良くなる可能性があります。このようなメリットを従業員に伝えるなどして不安を取り除きつつ、同時に売却後の勤務意欲を上げることが重要です。

③社員の処遇に関する契約

前述のとおり、買い手先においても社員の処遇が必ず維持されるとは限りません。一旦、買い手先に引き継がれたとしても、すぐにリストラされたり、給与が下がる可能性があります。

そのため、事業売却の際には、従業員の処遇についても買い手先との契約で定めておくことが非常に重要です。なお、社員の処遇に関して取り決めるタイミングとしては、「基本合意書の締結」と「最終契約」の両者で行うのが一般的です。

このタイミングで確約を取り付けることで、社員の雇用環境を確保することができます。

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まとめ

円滑な社員の承継は、売り手・買い手双方にとって事業売却を成功させるうえで不可欠ですので、社員のケアを大切にしましょう。今回の要点をまとめると以下のとおりです。

・事業売却における社員の重要性
→売り手側:買い手先での雇用維持
 買い手側:優秀な人材の引き継ぎ

・事業売却による社員の処遇
→株式譲渡:自動的に雇用を移転
 事業譲渡:個別に雇用契約を結び直す
 会社分割:自動的に雇用を移転

・社員のケアに関する注意点
→①社員に事業売却を伝えるタイミング
 ②事業売却後に社員が受ける影響
 ③従業員の処遇に関する契約

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