2025年11月17日更新事業承継

M&A・事業承継における株式の引き継ぎとは?税金対策や種類を徹底解説

事業承継を成功させるには、株式の引き継ぎが不可欠です。しかし、多額の税金が課題となるケースも少なくありません。本記事では、M&Aを含む事業承継の種類や、株式承継に伴う税金負担を軽減する方法、事業承継税制の最新情報を解説します。

目次
  1. 事業承継とは
  2. なぜ株式は後継者に集中させるべきなのか?
  3. 事業承継の種類
  4. M&A・事業承継で株式を引き継ぐ際の注意点
  5. 株式を取得する際の負担軽減策
  6. まとめ
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事業承継とは

事業承継とは

事業承継とは、会社の経営権や資産などを後継者に引き継ぐ行為です。後継者は親族だけでなく、役員・従業員や第三者(M&A)の場合もあります。どれほど優れた経営者でも、年齢や健康上の理由から、いつかは会社を次世代に託す必要があります。
 

後継者の選定と育成の重要性

経営者は自分が引退する時期を考慮して、後継者を探す必要があります。また、会社を引き継いで経営できるよう、教育も実施しなくてはいけません。後継者育成も、経営者の欠かせない仕事になります。

事業承継は企業にとっても、従業員や会社の株主にとっても非常に重要です。経営者が変わると、利益配分のさじ加減、つまり従業員にとってのボーナスや株主にとっての配当などが変わる可能性もあります。企業にとっては、良し悪しは別として業態そのものが変わってしまう可能性も出てきます。

したがって、「誰に」事業承継をするかは大事なポイントとなります。後継者は「会社を継ぎたい」意思があるだけではなく、経営する能力や素質、現在の経営者との関係性も非常に肝心です。

事業承継における株式の重要性

経営者は後継者だけではなく、今後の経営方針や株主への対応等を考えなくてはいけません。事業承継は適当に済ませられるものではなく、前もって綿密な計画が必要となります。どうすれば成功となるのか、何が必要なのかなどを見極めることが大切だといえます。

事業承継においてもう一つ重要となる要素が「株式」です。株式会社の場合、会社の所有権は株式に表されており、株主が会社のオーナーです。つまり、後継者が経営権を安定的に確保するためには、株式の承継が不可欠となります。そのため、事業承継は株式の引き継ぎとほぼ同義であり、会社の未来を左右する重要なプロセスです。

事業承継で課題となる税金問題

ここで問題となるのが、事業承継には相続税や贈与税等の税金がかかる点です。相続や贈与にかかる税金は、親族内で事業承継をした際にも必ず必要になります。その金額は、各企業の評価によって大きく異なります。重要なのは、株の相続や贈与に関する税金を、どこまで抑えられるかです。

課される税金は企業規模によって金額が異なりますが、高額な税金が課されます。事業承継の直後に税金で資産を失ってしまうと、経営の続行が困難になり兼ねません。その結果、経営が安定するまでに時間がかかります。したがって、事業承継における株の引き継ぎは非常に重要です。

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事業承継とは?方法や事業承継税制・補助金、M&Aでの活用について解説
事業承継の株価算定

なぜ株式は後継者に集中させるべきなのか?

株式は経営者の経営権を確立させる重要な要素です。特に非上場の中小企業において、株主総会で通常の普通決議は、過半数の賛成で可決となります。ただし会社の合併などといった重大な特別決議は、3分の2以上の賛成が必要です。

ここでもし後継者が3分の2以上の株式を保有していれば、1人でも特別決議が可決できます。つまり、会社の実質的な経営権を握ることになります。税金の問題はあるものの、事業承継の際はいかにして株式を後継者に集中させるかもキーポイントです。

株式が後継者以外の親族や従業員などに分散してしまうと、後継者の経営権が不安定になります。特に相続が発生した場合、遺留分などにより意図せず株式が分散するリスクがあります。株主が増えると意思決定のプロセスが複雑化し、経営のスピードが落ちるだけでなく、対立が生じれば経営が停滞する恐れさえあります。

後継者が追放されてしまう最悪のケースも起こり得ます。そのため、事業承継で「株式贈与」や「株式譲渡」の際は、株式が他の親族や株主に分散してしまわないよう十分に注意し、できる限り株式の100%が後継者の手元に渡るよう配慮しましょう。

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事業承継の種類

事業承継では、誰に引き継ぎするかで、その内容や成功のポイントが異なります。

相続での事業承継

経営者が亡くなってから事業承継する、「相続」または「遺贈」と呼ばれる方法があります。基本的には遺言状に基づいて遺産の分配等を実施します。よって遺言状は必須です。しかし遺言状がない場合には、対象となる相続人同士での協議に基づいて決定されます。

一般的に相続による事業承継では、経営者が指定した後継者に会社を承継できます。事業だけではなく、個人の資産を引き継がせたい場合には、相続による事業承継がベストです。会社と株は切っても切り離せないため、これは、株の引き継ぎについても同様です。事業承継では、自社株についても指定した後継者に引き継ぎます。

しかし一方で、相続による事業承継には、予測が立てられないデメリットもあります。経営者がいつ亡くなるのか、誰を後継者にしようとしているのかは経営者次第です。経営者自身が、いつ亡くなってもいいように遺言状を準備していたとしても、企業の内・外環境は刻一刻と変化します。

現在の業績や株の発行数等が、遺言状の内容と違う際には適用外となる可能性があります。よって、経営者が相続を選択した際には、定期的に書き換えが必要です。また、相続で必要になる税金は相続税です。自社株の評価額に応じて、相続税の額は大きく変動します。

そのため経営者は、基本的に自社の評価を下げて、事業承継したいと考えます。相続は、圧倒的にリスクの高い事業承継の方法です。したがって経営者が健康であるならば、可能な限り生前での事業承継が好ましいでしょう。

生前での事業承継

上述のとおり、事業承継を実施する際には、生前での引き継ぎが好ましいです。後継者には経営する能力や資質が問われるため、精神面や技術面などに関し、準備期間が必要となります。なお、特に自社株の相続には、高額な税金が必要になります。税金対策のうえでも、経営者が生きているうちに事業承継の対策を始めましょう。

生前での事業承継のメリットは、タイミングを測れる点にあります。自社株の評価が下がっているときに引き継げば、最小限の税金で事業承継を実施できます。生前での事業承継は比較的利用されている方法です。後継者の教育期間も多くを確保でき、従業員に対しても引き継ぎや新しい経営に向けての準備期間が確保できます。

M&Aによる第三者への事業承継

M&A(企業の合併・買収)による事業承継は、親族や社内に後継者が見つからない場合に有効な選択肢として、近年活用が広がっています。M&A仲介会社などを通じて第三者に会社を譲渡する方法で、これにより後継者不在問題を解決できます。また、株式譲渡の対価として、オーナー経営者は創業者利益を得られるというメリットもあります。

一般的な相続では、後継者に会社を継ぐ意思がないケースがあります。そのため、双方の意思が一致しない場合には、事業承継を遂行できません。しかしM&Aでは、企業を買いたいと考えている相手との取引になるため、双方の意思が一致した状態で事業承継ができます

M&Aを活用するのであれば、自社株の評価が低い時期に事業承継する必要はありません。会社を売却するわけですから、会社は可能な限り高い金額で売却したいと考えます。したがって自社の評価は、なるべく高める対策を実施します。

そうすれば納得できる金額で売却できるうえ、事業承継した後は承継会社が責任を持って経営してくれるでしょう。つまり従業員を路頭に迷わせることなく事業承継が実現できる可能性が高いというわけです。

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M&A・事業承継で株式を引き継ぐ際の注意点

事業承継における株式の引き継ぎを円滑に進めるためには、いくつかの重要な注意点があります。

株式の評価額を正確に把握する

株式の引き継ぎには贈与税や相続税、あるいは譲渡所得税がかかります。これらの税額は株式の評価額に基づいて計算されるため、まずは自社株の価値を正確に算定することが不可欠です。特に非上場株式の評価は複雑なため、税理士などの専門家に依頼することをおすすめします。
 

株式譲渡契約書を適切に作成する

株式を譲渡する際は、譲渡価格、譲渡日、その他の条件を明記した「株式譲渡契約書」を作成する必要があります。口約束での譲渡は、後々のトラブルの原因となります。契約書の内容に不備がないよう、弁護士などの専門家のレビューを受けることが望ましいです。
 

他の株主との関係性に配慮する

後継者以外の株主がいる場合、その関係性にも配慮が必要です。株式の集中を進める過程で、他の株主から株式を買い取る交渉が必要になることもあります。強引な進め方は反発を招きかねないため、丁寧な説明と合意形成を心がけましょう。
 

株式を取得する際の負担軽減策

株式を取得する際の負担軽減策

事業承継には株が大きく影響します。後継者に経営権を譲渡する際には、自社の株を3分2以上取得してもらう必要があります。株を移動させて経営権が移転でき、税金の金額に悩む状態はまだよい方です。

相続や贈与でなく、買い取ることによって株を取得する場合、費用が高額になりすぎて、経営権の移転すらできない状況も実際にはあります。株を取得する際に、金融機関等から融資を受ける後継者も珍しくありません。

昨今では金銭的なリスクを背負うのを拒否する後継者が多く、これが中小企業の廃業原因の一つにもなっています。こうした状況を受け、後継者の負担を軽減するために事業承継税制の特例措置が設けられました。

この特例措置を利用すれば、事業承継をスムーズに進めることが可能になります。ただし、対象は非上場の中小企業に限られるため、該当しない企業は自社株の評価を下げるなどの対策が必要です。

事業承継税制を活用する

事業承継税制は、後継者の税負担を軽減し、事業承継を円滑化するための制度です。特に、現行の特例措置は非常に大きなメリットがあります。この特例の適用を受けるには、**2026年3月31日までに「特例承継計画」を都道府県に提出**し、**2027年12月31日までに贈与または相続を実行**する必要があります。

この特例措置では、後継者が非上場株式を贈与または相続で取得した際にかかる贈与税・相続税の全額が、一定の要件を満たすことで納税猶予され、最終的には免除されます。


しかしながら、すべての中小企業の株式について特例が認められるわけではありません。企業の規模などといった会社の条件、人の条件、報告の義務などが定められています。

また、納税猶予が取り消されてしまった場合は、猶予された税金をすべて支払わなければならないため、注意が必要です。事業承継税制を受けるには、いくつかの条件クリアと特例承継計画の策定も必要なので、詳しい専門家に相談することをおすすめします。

自社株の評価を下げる対策

事業承継税制の活用以外にも、後継者の株取得時の負担を減らす方法があります。自社株の評価をできるだけ下げて事業承継を実施すれば、最悪の事態は回避できます。自社株の評価を下げるとは、企業の中にある資金を減らす対策のことです。

多額の退職金を支払う

具体的な自社株対策として、「退職金の支払い」があげられます。できるだけ退職者に対して多額の退職金を支払うことで、企業内の資金を減らす方法です。そうすれば企業の資金が一気になくなり、自動的に会社の評価が下がります。その結果、自社株の値段も下がります。

不動産の購入

さらに不動産の購入も、自社株対策では有効です。退職金と同様に不動産の購入により、会社のお金が減り、その結果株の評価も下がります。しかし、不動産を購入すると固定資産税が発生する点には注意したうえで、自社株対策を実施しましょう。

生命保険への加入

同様に、生命保険への加入も自社株対策では有効です。上記のとおり、株の評価を下げるためには、とにかくお金を減らすのが重要です。企業の資産が少ないと、企業価値が低いとみなされます。その結果、事業承継時の自社株の価値が下がります。

後継者としてはなるべく事業承継にお金をかけたくありません。ただし無理に実施すると、税務署等から指摘を受ける可能性があります。利益獲得のためにそれほど必要でない費用の支出は、後に必ず発覚します。あくまでも、常識の範囲内で社内の資金を減らしましょう

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事業承継税制とは?事業承継税制の要件やメリット・デメリットを解説
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まとめ

まとめ

事業承継と株は、非常に深い関わりを持っています。株がないと投資を集めることも、資金調達をすることもできません。株は企業とお金を結びつけてくれる重要な役割を果たし、後継者の実質的な実権にもなるものです。

事業承継では経営者にはもちろん、後継者にも株に関する知識が必要です。M&Aを用いて事業承継する際も同様です。少ない税金で事業承継する方法を、しっかり学んでおきましょう。要点をまとめると下記になります。

・事業承継とは
→第三者が会社を引き継いで、その後経営する行為

・事業承継の種類
→相続での事業承継、生前での事業承継、M&Aでの事業承継

・株式を取得する際の負担軽減策
→事業承継税制の活用、自社株の評価を下げる

・事業承継税制とは
→事業承継を円滑に行えるよう制定された制度で、相続税・贈与税が猶予・免除される

・自社株の評価の下げ方
→退職金の支払い、不動産の購入、生命保険への加入

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