2020年3月22日更新事業承継

事業承継に関する税制改正【平成30年度改正】

平成30年度の事業承継税制改正により、中小企業にとって有利に事業承継できるようになりました。この記事では、平成30年度の事業承継税制改正によってどこが変わったのか、事業承継税制を受けるための条件や流れについてわかりやすく解説していきます。

目次
  1. 事業承継に関する税制改正
  2. 事業承継税制とは?制度を改正した背景
  3. 事業承継税制改正で変わった点を解説
  4. 事業承継税制を受けるための条件
  5. 事業承継税制を受ける流れ
  6. 事業承継をする・事業承継税制を使う際の留意点
  7. まとめ
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事業承継に関する税制改正

経営者の高齢化が進むなか、事業承継を考えている、あるいは事業承継の準備を進めている中小企業経営者は多いです。その際に、必ず押さえておきたいことが平成30年度の事業承継税制改正です。

中小企業庁が事業承継税制の改正を決定したことで、経営者にとって有利な条件が増えました。今回は事業承継を考えている経営者向けに、事業承継の税制改正について紹介します。

※関連記事
事業承継税制とは?事業承継税制の要件やメリット・デメリットを解説

事業承継税制とは?制度を改正した背景

そもそも、事業承継税制とはどのような制度なのでしょうか。制度が改正された背景も含めて、この項では事業承継税制について説明していきます。

事業承継税制とは

まず事業承継とは、会社経営を先代経営者から後継者に引き継ぐことをいいます。中小企業の事業承継では相続や、持ち株の贈与を行うことによって会社を引き継ぎますが、その際には贈与税や相続税という税金が発生します。

会社によっては負担になる税金が高額になるため、事業承継の実施を踏みとどまる経営者もいます。このような状況から、事業承継を円滑に行えるよう制定されたのが事業承継税制という制度なのです。

これまで何度か改正されてきた事業承継制度ですが、平成30年1月1日から10年間の時限措置として、「相続税・贈与税が猶予・免除される」という大幅に緩和された措置が創設されました。

事業承継税制が改正された背景

事業承継税制が改正された背景には、経営者の高齢化や後継者不足という深刻な社会問題があります。もし、中小企業が事業承継できないことを理由に廃業を選択した場合、年間20~35万人の雇用が失われます。

日本の全企業のうち99.7%の割合を占めている中小企業は、いわば日本経済活性化の原動力として期待されている存在です。業績の良い会社が廃業することが一番の損失という背景から、次世代へ円滑に事業承継するために創設された税制措置なのです。

参考元:中小企業庁「中小企業の後継者不在が経済に与える影響」
参考元:中小機構「日本を支える中小企業」

事業承継税制改正で変わった点を解説

この項では平成30年度の事業承継税制改正により、どの部分が変わるのか具体的に解説していきます。平成30年度の事業承継税制改正では、以下の点が従来と異なるのでそれぞれ紹介していきます。

  1. 贈与税・相続税が100%猶予・免除
  2. 雇用条件の見直し
  3. 納税猶予が取り消されたときの納税額
  4. 対象者の見直し

①贈与税・相続税が100%猶予・免除

事業承継を実施した際に譲渡、あるいは相続される株式には贈与税や相続税がかかります。これまでは制度の対象となる株式の上限が3分の2までと決まっており、贈与税は100%、相続税は80%免除されていました。

しかし、平成30年度の事業承継税制改正によって全ての株式が対象になりました。それに加えて、贈与税・相続税がともに100%免除されるようになったため、事業承継の際の現金負担がゼロになったのです。

②雇用条件の見直し

これまで事業承継税制を利用した中小企業は、その後5年間は雇用を平均で8割以上維持する必要がありました。さらに、この制限を守れなかった場合は、納税猶予になっていた贈与税・相続税を支払わなければならないペナルティが発生していたのです。

しかし税制改正後は、雇用を8割以上維持できない場合、報告書を知事に提出することで猶予は継続されることになりました。ただし経営悪化などが原因の場合、認定されている支援機関からの助言や指導を受ける必要があります。

③納税猶予が取り消されたときの納税額

また税制改正により、会社を売却・廃業したときや納税猶予が取り消しになったときにも新たな措置が設けられています。これまでは納税猶予が取り消された際は、事業承継時の株価を再計算することで、贈与税・相続税の納税額を算出していました。

しかし平成30年度の税制改正からは、事業承継時と売却・廃業時の株価に差が生じている際は、その差額分を減免してくれます。つまり、経営が悪化して株価が低下した際は、下がった分だけの税金の支払いが免除されるということです。

この改正により、事業承継後に経営が悪化しても経営者の負担が低くなりました。ちなみに税制改正による変更は、直近の子供や孫でなくても、20歳以上の後継者であれば適用されます。

④対象者の見直し

これまでの事業承継税制は、経営者1人から後継者1人への事業承継が対象となっている制度でした。しかし、平成30年度の税制改正により後継者が最大3人まで対象になったため、適用範囲が広がり後継者にかかる税金の負担が減りました。

10%以上の株式を所有しているなど、後継者に関する条件はあります。しかし株式に関しても「経営者が所有している株式のみ」という制限から、「経営者以外が所有している株式」も制度の対象へ変更になっています。

※関連記事
事業承継と経営承継円滑化法

事業承継税制を受けるための条件

事業承継税制は誰でも受けられるものではなく、一定の条件を満たして初めて対象となります。その条件は主に「人の条件」と「会社の条件」に分けられており、これらの条件を満たすことで事業承継税制をスタートできます。

それでは「人の条件」と「会社の条件」に分けて、それぞれの条件を紹介していきます。この条件を満たさなければ、税制も活用できないためしっかり押さえておきましょう。

①人の条件

事業承継税制における人の条件は、さらに「先代経営者」と「後継者」の二つの要件に分けられるためそれぞれ以下に紹介していきます。

先代経営者の要件

先代経営者の要件では「企業の代表だった」、「筆頭株主である」ことが重要です。引退前に社長や代表取締役などの職についていた立場の人であり、なおかつ株式の大半を所有する筆頭株主であれば問題ありません。

後継者の要件

一方で後継者は「企業の代表になる」、「筆頭株主になる」という先代経営者の条件と真逆です。しかし、株式を後継者へ贈与する際には、後継者が3年以上取締役でなければならない点は注意しておきましょう。

ちなみに後継者と聞くと、先代経営者の親族や家族をイメージするかもしれません。しかし、事業税制の対象となる後継者は、血縁関係がなくても問題ありません

②会社の条件

事業承継税制の対象となる会社の条件では、いかに中小企業の条件を満たしているかが重要です。具体的には「資本金、あるいは出資額の総額」か「従業員数」のどちらかの条件を満たす必要があります。

これらの条件は業種ごとに基準が異なるため、以下に業種ごとの各基準を紹介していきます。
 

業種 資本金・出資の総額 従業員数
卸売業 1億円以下 100人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
小売業 5,000万円以下 50人以下
それ以外の業種 3億円以下 300人以下


基本的には一定の数字以下になっていれば条件を満たしますが、従業員数を減らすのは経営者にとっては難しい手段です。しかし、従業員数に比べて資本金は減額しやすいため、事業承継税制を受けるために資本金の額を調整することをおすすめします。

また、資産管理会社などの不動産管理のために設けられた企業は、事業承継税制を受けられないことを覚えておきましょう。

事業承継税制を受ける流れ

ここまでは事業承継税制を受けるための条件を紹介していきました。この項では、特例措置を受ける流れを大まかに説明していきます。

①特例承継計画の策定

特例措置を受けるためには、承継後の5年間の事業計画などについて記載した「特例承継計画」を策定する必要があります。特例承継計画を作る際には会計や税務の知識が必要になってくるため、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

また特例承継計画は、令和5年3月31日までに都道府県知事に提出する必要があるため、事業承継税制を受ける際には早めに対応しておきましょう。

②特例承継計画を提出

特例承継計画を作ったあとは、認定支援機関に提出します。認定支援機関とは中小企業が安心して経営相談ができる、商工会や商工会議所、税理士、弁護士、公認会計士、金融機関など国が認定する公的な支援機関が該当します。

認定支援機関に所見を記載してもらい、作成した特例承継計画が有効だと認定されたうえで各都道府県庁に提出します。

③贈与・承継の実行

各都道府県庁に特例承継計画を提出したあとは、事前に計画された贈与・承継を実行します。
 

④事業承継税制の認定申請

贈与・承継が完了したあとは、事業承継税制の認定申請を行います。認定申請は都道府県知事に対して行い、申請期限は相続開始後8カ月以内、または贈与をした年の翌年1月15日となっています。

事業承継税制の認定申請は「贈与・承継を実行したあとに行う」点と、「認定申請には期限がある」ことを覚えておきましょう。

⑤税務署への申告

事業承継税制の認定を受けたあとは、猶予を受けたことを税務署に申告する必要があります。相続と贈与の場合で必要な書類が異なるため以下に紹介しますが、その他の書類が必要なケースもあるため税務署で確認しましょう。

  • 贈与の場合:贈与税申告書等、認定書の写し
  • 相続の場合:相続税申告書等、認定書の写し

※関連記事
相続税申告における提出書類

事業承継をする・事業承継税制を使う際の留意点

事業承継を実施する際に、事業承継税制を活用できないケースもあるため、これからお伝えする留意点は必ず押さえておきましょう。この項では、事業承継税制を使う際の留意点についてお伝えします。

①報告書と届出書の提出

事業承継税制を使うと5年間は毎年、都道府県知事に「年次報告書」、税務署長に「継続届出書」を提出しなければならない決まりがあります。6年目以降は都道府県知事への提出は不要となり、税務署長への提出を3年に1度行わなければなりません。

この報告書と届出書の提出を一度でも失念すると、猶予された税金を全て支払わなければならないため注意する必要があります。

②専門家の協力

事業承継税制を活用する際には、専門家の協力を得ることをおすすめします。また事業承継税制を使うときだけではなく、事業承継を実施する際にも専門家のサポートを受けた方がリスクを負う可能性が下がります。

事業承継には株式の譲渡や後継者の育成、各種手続きなどさまざまなプロセスがあり、中長期的に取り組まなければなりません。加えて、事業承継税制改正に伴い、これまでの税制との変更点が発生しています。

そもそも、事業承継税制は比較的新しい税制であるため、熟知している人もまだ少ないです。よりスムーズに事業承継を実施、もしくは有効的に事業承継税制を活用するためにも、専門家の協力は必要不可欠です。

③専門家選びは慎重に

事業承継や事業承継税制に関して有効的なアドバイスができるのは、税理士事務所や税務・会計業務に強いM&A仲介会社です。特に、事業承継税制の活用には専門的な知識が必要です。

しかし、税理士事務所やM&A仲介業者といっても、得意分野や専門業界が異なります。税理士においては、技量によって節税効果がかなり変わることも珍しくないため、実績を確認しておく必要があります。

またM&A仲介業者も税務に長けているかどうかで、税務面でのサポートをどれだけ遂行できるかが異なります。相談する専門家を選ぶ際には、事業承継税制改正を熟知し、把握しているかどうかも見極めておく必要があります。

ただし、アドバイザーに依頼する際には費用がかかるため、自社の状況を検討したうえで経験豊富なアドバイザーに業務を依頼しましょう。これらを踏まえて、もしM&Aによる事業承継を検討している際にはM&A総合研究所までお気軽にお問い合わせください。

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まとめ

近年、政府は日本の経済を支える中小企業を重要視しており、平成30年度の事業承継税制改正も中小企業が事業承継を実施しやすくするための施策です。中小企業の経営者にとっても、これまで培った技術やノウハウを失う廃業の選択はデメリットだといえます。

改正された事業承継税制を活かし、理想的な事業承継を達成しましょう。それでは最後に、今回の記事の要点をまとめると下記になります。

・事業承継税制とは
→事業承継を円滑に行えるよう制定された制度

・事業承継税制改正で変わった点
→贈与税・相続税が100%猶予・免除、雇用条件の見直し、税猶予が取り消されたときの納税額、対象者の見直し

・事業承継税制を受けるための条件
→人の条件と会社の条件

・事業承継税制活用時の留意点
→報告書と届出書の提出、専門家の協力

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