M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2025年11月15日更新事業承継
M&Aによる事業承継の課題とは?手法別の解決策と成功のポイントを解説
事業承継は後継者不足や税負担など課題が山積みです。M&Aを含めた手法ごとの課題と、専門家が推奨する具体的な解決策を解説します。円滑な事業承継を実現し、会社の未来を守るための第一歩を踏み出しましょう。
目次
事業承継で直面する主な課題とは?
経営者の高齢化が進む中、多くの中小企業が事業承継の岐路に立たされています。しかし、後継者不足や資金問題など、さまざまな課題から事業承継を断念し、廃業を選ぶ企業も少なくありません。円滑な事業承継には、まず課題の全体像を正確に把握することが不可欠です。本記事では、事業承継の現状から、親族内承継・親族外承継・M&Aといった手法ごとの具体的な課題と解決策までを分かりやすく解説します。
【2024年最新】中小企業の事業承継における課題と現状
はじめに、事業承継の課題と現状を確認します。事業承継の現状を確認すると、さまざまな課題が見えてきます。中小企業庁の資料によると、経営者(60歳以上)の半数以上が廃業を予定していると回答しました。
その中でも個人事業者の廃業予定割合は、7割程度にまで及んでいます。ここからは、経営者が廃業を予定する理由や、事業承継の実施割合に関する現状を紹介します。
廃業を予定する理由
中小企業庁の資料によると、38.2%の経営者が「当初から自身の代で廃業するつもりであった」と回答しています。
また、27.9%の経営者は事業に将来性がないことを廃業理由に挙げているほか、後継者不足を理由とする廃業は合計で28.6%にも及んでいるのです。
事業承継の実施割合(手法別)
事業承継の手法は、親族に引き継ぐ「親族内承継」、従業員や役員などに引き継ぐ「親族外承継(内部昇格)」、そしてM&Aなどを活用する「第三者承継」の3つに大別されます。
東京商工リサーチの「2023年『後継者不在率』調査」によると、事業承継の形態は「内部昇格」が34.2%で最も多く、次いで「子息・子女(親族内承継)」が32.4%でした。かつて主流だった親族内承継は減少傾向にあり、代わりにM&Aを含む第三者承継が20.0%を占めるなど、その重要性を増しています。後継者不在の問題を背景に、今後もM&Aによる事業承継の活用はさらに拡大すると見込まれています。
参考URL:東京商工リサーチ「2023年「後継者不在率」調査」(2024年1月16日)
事業承継の課題(親族内承継)
事業承継の中でも親族内承継で発生する課題は、以下のとおりです。
- 後継者の資質・能力不足
- 相続税・贈与税の負担
- 経営権の分散
- 後継者不足
①後継者の育成|資質や能力不足への対策
後継者の資質や経営能力の不足は、親族内承継における深刻な課題です。この解決には、5〜10年程度の期間を見据えた計画的な後継者育成が不可欠です。経営者が元気なうちから育成を開始し、経営判断に必要な知識やスキル、経験を積ませることが重要となります。社内でのジョブローテーションや、外部の研修・セミナーへの参加などを通じて、体系的に経営者としての能力を養いましょう。時間をかけて育成することで、経営理念や企業文化もしっかりと継承できます。
②相続税・贈与税の負担
親族内承継では、後継者への自社株式の引き継ぎに伴い、高額な相続税や贈与税が発生する可能性があります。この税負担は事業承継後の資金繰りを圧迫する深刻な課題です。
解決策として、計画的な節税対策が効果的です。例えば、役員退職金の支給や不動産の購入などで株価評価を引き下げ、税負担を軽減する方法があります。
さらに、一定要件のもとで贈与税・相続税の納税が猶予・免除される「事業承継税制」の活用も有効です。特に、特例措置を利用するには2027年12月31日までに特例承継計画を都道府県に提出する必要があるため、早期の検討をおすすめします。
③経営権の分散
特に親族内承継や親族外承継では、あらかじめ後継者に自社株式を集中させておかないと、将来的に深刻な問題が発生するリスクがあります。例えば、少数株主から株式買取を要求されるほか、経営者・役員に対して株主代表訴訟を起こされるおそれがあります。
そもそも株式の所有割合が高いほど、経営権が安定します。その一方で、他の人間に株式が渡れば、後継者が経営者に就任したときに立場が不安定になりやすいです。株式を手にした人間が経営者・後継者にとって都合の悪い人物であった場合には、深刻なトラブルを招きかねません。
事前に自社株式の分散防止策を講じておくことで、後継者に株式を集中させやすくなります。経営権を集中させるためには、さまざまな方法があります。具体的には、自社株式の生前贈与・安定株主の導入・遺言の作成などが有効策です。
④後継者不足
中小企業では、後継者不足の課題も深刻化しています。かつては子供が家業を継ぐケースが当然であると捉えられていましたが、現代は子供の自由な職業選択が尊重されています。そのため、子供に事業承継を引き受けてもらえないケースも多いです。
この課題の根本的な解決方法はないため、事業承継では親族外承継やM&Aによる第三者承継の選択肢も検討する必要があります。
事業承継の課題(親族外承継)
次に、事業承継の中でも親族外承継で発生する課題は、以下のとおりです。
- 個人保証の引き継ぎ
- 自社株買い取りのための資金不足
- 後継者候補からの引き継ぎ拒否
①個人保証の引き継ぎ問題と解決策
個人保証の引き継ぎは、親族外承継で最も深刻な課題です。比較的規模の大きい中小企業では、この課題が大きな障壁となりやすいです。個人保証とは、資金調達時に経営者自身が保証人となることです。事業承継の後継者は、経営者の個人保証を引き継ぐのが一般的です。
経営者に個人保証が存在していると、従業員・役員が事業承継を引き受けないトラブルが発生しかねません。特に債務超過企業では、個人保証が大きなリスクとなり得ます。
個人保証に関する課題を解決するには、金融機関と交渉したうえで後継者に引き継ぐ個人保証をなるべく減らすことが大切です。個人保証が残ってしまう場合には、リスクに応じた対価を後継者に付与すると良いです。
②自社株買い取りのための資金不足
親族外承継では後継者に株式を買い取ってもらうケースが一般的ですが、たとえ役員であっても自社株式のすべてを自己資金で買い取ることは困難です。後継者の資金力不足を解決するには、経営者が買取資金の一部を補助すると良いです。
上記のほか、経営者の利益獲得が不可能となりますが、株式を無償で譲渡する選択肢も採用可能です。
③後継者候補からの引き継ぎ拒否
親族内承継と同様に、役員・従業員などの後継者候補から事業承継を引き受けてもらえないケースがあります。そもそも会社経営には倒産・廃業のリスクが存在しており、リスクを背負ってまで事業承継を希望する人は決して多くありません。
親族内承継・親族外承継が困難である場合、M&Aによる第三者承継の実施で課題解決を図れる可能性があります。
事業承継の課題(M&Aによる第三者承継)
最後に、事業承継の中でもM&Aによる第三者承継で発生する課題は、以下のとおりです。
- 買い手探し
- M&Aの費用負担
- 従業員の雇用維持
- 価格交渉
①買い手探し
M&Aによる事業承継では、後継者問題を解決できる一方で、自社に適した買い手を見つけることが大きな課題となります。特に、自社の強みや魅力を客観的に評価し、適切な相手を探し出すのは容易ではありません。
この課題を解決するには、M&A仲介会社やファイナンシャル・アドバイザー(FA)といった専門家の活用が不可欠です。専門家は豊富なネットワークを活かし、全国からシナジー効果が期待できる候補先を探し出してくれます。
また、全国47都道府県に設置されている公的機関「事業承継・引継ぎ支援センター」に相談するのも有効な手段です。中立的な立場でマッチング支援を受けられます。
②M&Aの費用負担
親族内承継・親族外承継と比較すると、M&Aによる第三者承継では、事業承継で発生する費用負担が非常に大きいです。M&Aの専門家に支払う手数料のみで、数百万円〜数千万円程度の費用が発生する場合もあります。
最終的に売却利益の獲得が期待できるならば、短期的に融資を受けるのも効果的です。ただし、M&Aが成立しない場合は、大きな損失につながりかねません。そこでおすすめなのが、事業承継補助金の活用です。事業承継補助金には、M&Aを想定した資金援助もあります。
補助金であるため、返済の心配なく資金調達が可能です。
③従業員の雇用維持
中小企業にとって、従業員の雇用維持は非常に重要な課題です。M&Aによる第三者承継であっても基本的に従業員の雇用は引き継がれますが、M&A取引時は従業員雇用に関する契約事項を念入りに確認すると良いです。
④価格交渉
M&Aによる価格交渉は、雇用維持と同様に重要な課題です。事業承継時になるべく高い価格で売却するには、会社の磨き上げが必要不可欠です。会社の磨き上げとは、自社の企業価値を高める戦略です。具体的には、ノウハウ・技術力など無形資産価値の向上が目指されます。
さらには余分な在庫・資産などの処分も、企業価値向上につながる施策です。
M&Aによる事業承継を成功に導くポイント
M&Aによる事業承継を円滑に進め、成功確率を高めるためには、いくつかの重要なポイントがあります。
企業価値評価(バリュエーション)を適切に行う
自社の価値を客観的に把握することは、M&Aの出発点です。企業価値評価(バリュエーション)を通じて、適正な売却価格の目安を知り、交渉の土台を固めることが重要です。専門家に依頼し、収益性、資産、将来性などを多角的に分析してもらいましょう。
M&Aの専門家(仲介会社・FA)を選定する
M&Aは法務、税務、財務など専門知識が不可欠なプロセスです。自社の規模や業種、希望する条件に合った実績豊富なM&A仲介会社やFA(ファイナンシャル・アドバイザー)を選定することが成功の鍵を握ります。複数の専門家と面談し、信頼できるパートナーを見つけましょう。
デューデリジェンス(DD)への備え
デューデリジェンス(買収監査)は、買い手企業が売り手企業の価値やリスクを詳細に調査するプロセスです。この段階で問題が見つかると、交渉が不利になったり、破談になったりする可能性があります。事前に財務諸表や契約書などの資料を整理し、想定される質問への準備を整えておくことが大切です。
事業承継の課題解決を目指す相談先
事業承継にまつわる課題のスムーズな解決を目指すには、専門家への相談がベストです。中小企業庁作成の事業承継マニュアルでは、課題ごとの相談先を以下のとおり紹介しています。
| 後継者育成の課題 | 中小企業大学校 |
| 税負担の課題 | 税理士 |
| 後継者不足の課題 | 事業引継ぎ支援センター |
| 個人保証の課題 | 金融機関・独立行政法人 中小企業基盤整備機構 |
| 資金調達(株式買取)の課題 | 金融機関・信用保証協会 |
上記のほか、M&Aによる第三者承継の実施を検討する場合は、M&Aの専門家に相談するのもおすすめです。
仲介会社のほか、M&A業務に強い税理士・公認会計士・弁護士などの専門家に相談すれば、M&Aによる事業承継の課題を解決できる可能性が高まります。
M&Aによる事業承継をご検討の際は、ぜひM&A総合研究所にお任せください。M&A総合研究所には、専門的な知識や経験が豊富なアドバイザーが多数在籍しており、培ったノウハウを活かしてM&Aによる事業承継をフルサポートいたします。
料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です。(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)相談料は無料となっておりますので、M&Aによる事業承継に不安がある場合にはお気軽にご相談ください。
まとめ
今回は、手法ごとに事業承継の課題について解説しました。事業承継の実施時には、深刻な課題に悩まされる経営者が多いです。円滑な事業承継を実現するには、さまざまな課題を着実に解決していくことが求められます。
課題解決を目指すには事業引継ぎ支援センターをはじめ、さまざまな専門家を必要に応じて使い分けると良いです。要点をまとめると、以下のとおりです。
・事業承継の現状
→経営者(60歳以上)の半数以上が廃業を予定している
・廃業を予定する理由
→28.6%は後継者不足を理由としている
・事業承継の実施割合
→35.6%の割合で従業員承継、もしくは社外の人物への承継が実施されている
・事業承継の課題(親族内承継)
→後継者の資質や能力不足、相続税や贈与税の負担、後継者不足
・事業承継の課題(親族外承継)
→個人保証の引き継ぎ、自社株買い取りのための資金不足、後継者候補からの引き継ぎ拒否
・事業承継の課題(M&Aによる第三者承継)
→買い手探し、M&Aの費用負担、従業員の雇用維持、価格交渉
・事業承継の課題解決を目指す相談先
→中小企業大学校、税理士、事業引継ぎ支援センター、金融機関、中小機構、信用保証協会、M&A仲介会社
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。