2020年2月16日更新事業承継

従業員承継とは?従業員承継のメリット・デメリット

従業員承継は親族外承継の1つであり、従業員や役員に事業承継を実施することです。従業員承継では後継者育成の手間を削減でき、周囲から受け入れられやすいなどのメリットがあります。しかし、重大なデメリットも存在するため、余裕を持って準備したうえで実施することが大切です。

目次
  1. 従業員承継
  2. 従業員承継とは
  3. 従業員承継のメリット
  4. 従業員承継のデメリット
  5. 従業員承継を成功させるポイント
  6. まとめ
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従業員承継

従業員承継は事業承継における手法であり、経営者が後継者を選ぶときに取り得る選択肢の1つです。しかし、従業員承継にはメリット・デメリットの双方が存在するため、円滑に実施するにはそれぞれを十分に把握しておく必要があります。

今回は、従業員承継の概要やメリット・デメリット、成功させるポイントをわかりやすく解説します。

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従業員承継とは

従業員承継はその名のとおり、自社の従業員や役員に事業を引き継ぐ行為です。かつて事業承継の後継者には経営者の子供や親族が指名されるケースがほとんどでしたが、最近では「子供が親の会社を継ぐ」という価値観を持つ経営者が減少しており、子供が承継を拒むことも珍しくありません。

さらに、たとえ親族であったとしても経営者にふさわしい素質が必ずしも備わっているとは限らず、中には親族を後継者に指名して事業を任せたことで、事業承継後の業績が悪化してしまうケースも存在します。

上記の点を踏まえると、長い年月自社の事業に携わってきた従業員や役員は会社の内情を知り尽くしているため、経営者の素質と覚悟次第ではスムーズに事業承継を済ませられる可能性が高いです。

経営者としても長年ともに働いてきた仲間が後継者になれば安心でき、ノウハウや業務に関する知識の伝達もスムーズに進められるといったメリットがあります。以上のことから従業員承継は、事業承継における有効策の1つとして確立しているのです。

実際に最近は親族内承継の実施件数が減少傾向にある代わりに、従業員承継をはじめとする親族外承継の実施件数が徐々に増加しています。ところが、従業員承継には親族間の承継と異なる側面において注意しておくべき点があるほか、理想的な事業承継を実施するうえで解決しておきたい課題も存在します。

経営者には自社の従業員承継においていかなる課題を解決すべきなのか、あらかじめ把握しておくことが求められています。

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従業員承継のメリット

従業員承継を実施する代表的なメリットは、以下のとおりです。

  1. 後継者育成の手間が省ける
  2. 周囲から理解を得られやすい
  3. 会社の文化を維持できる
それぞれのメリットを順番に見ていきます。

①後継者育成の手間が省ける

従業員承継にある最大のメリットは、後継者育成の手間が省ける点です。仮に親族内承継を選ぶとすると経営者の子供を含めた親族の中から後継者が決定されますが、後継者に必ずしも経営者の素質があるとは限りません。

たとえ経営者の素質があったとしても、これまで自社の経営や業務に関わったことがない人材であれば、会社の経営や業務についてゼロの状態から後継者に教えなければなりません。これは事業を引き継ぐうえで必要不可欠なプロセスであるといえますが、多くの手間や期間が発生するため事業承継が長引く原因にもなります。

実際に親族内承継は長期的視点で考えるべき手法であり、場合によっては10年程度の歳月をかけて実施する会社も存在します。こうした点を踏まえると、従業員承継であらかじめ会社の経営や業務に関する知識を持っている従業員や役員を後継者として選ぶと、後継者育成の手間を大幅に省くことができます。

それに加えて、必ずしもすべての経営者が育成を得意とするわけではありません。中小企業では経営者によるワンマン経営の体制が取られている場合もあり、育成に不慣れであるケースは十分にあり得ます。

あらかじめ会社内の事情などに詳しい従業員であれば、事業や業務に関する知識を持っているほか経験値も積み重ねているため、育成の過程でトラブルが生じたり育成が滞ったりするような事態を避けることが可能です。

②周囲から理解を得られやすい

従業員承継では、周囲からの理解を得られやすい点もメリットとして挙げられます。これまで会社に長年尽くしてきた従業員を後継者に指名すれば、他の従業員や親族も納得しやすく、周囲が安心して会社を任せることができるためです。

特に従業員であれば取引先とも日常的に接しているため、取引先からの信用も得られます。そもそも後継者の信用性は承継後の業績に直接的な影響を及ぼしやすい要素であり、仮に従業員が不信感を持ったら経営に支障が生じるほか、取引先が不信感を持てば取引が中止されるおそれもあります。

金融機関に不信感を持たれてしまうと融資が滞ってしまい、最悪のケースでは会社の資金繰りが悪化するだけでなく今後の会社経営が継続できなくなる可能性もあるため、従業員承継では信用性の高い人材を後継者に指名することが求められます。

③会社の文化を維持できる

従業員承継には理念・風土など会社の文化を維持しやすいメリットも存在します。もともと後継者となる従業員は会社の文化に共感したうえで雇用されており、長年働いていれば会社の文化が十分に浸透します。

このような背景があることから、従業員承継では会社の文化が極端に変わるといった事態を避けられるのです。最近では、後継者不在のためにM&Aで事業承継を実施するケースも増えていますが、別の会社や経営陣に経営を委ねることになるため、会社の文化が刷新されてしまう可能性があります。

会社の文化が刷新されると従業員の戸惑いや反発が起こる可能性があるほか、現在の経営者が思い描く経営理念から大きく外れてしまうリスクも生じます。その一方で従業員承継を採用すれば、会社の文化が身につけている従業員が承継することなるため、現在の経営者の理想どおりに事業承継を達成しやすくなります。

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従業員承継のデメリット

ここまでさまざまなメリットを見てきましたが、従業員承継には以下のようなデメリットも存在します。

  1. 大規模な改革が実施できなくなる
  2. 所有と経営の分離が起こるリスクがある
  3. 株式の取得が難しくなる
それぞれのデメリットを順番に見ていきます。

①大規模な改革が実施できなくなる

前述のとおり従業員承継では会社の文化に染まった人材を後継者に指名するため、これまでの経営方針を刷新する大規模な改革を実施できなくなるおそれがあります。後継者の持つ経営理念や信条にも左右されますが、従業員承継では現在の経営者の理念を忠実に受け継いだ後継者が会社を承継することが多いです。

しかし、これまでの方法を忠実に受け継いだ後継者には、経営環境の変化に応じて大胆な改革に着手できるような柔軟な発想を持つ経営者像を期待しにくいです。つまり後継者が取る経営方針には、素質以外に「現在の経営者が後継者にいかなる経営を期待してどれだけの自由裁量を与えるか」も大きく影響します。

最近では経営環境が目まぐるしく変化しており、会社には必要に応じて大胆な施策を講じることのできる経営者が求められているといっても過言ではありません。信用性の高さだけでなく、思い切った改革を実施できる人材を基準にして後継者を選ぶ必要があります。

②所有と経営の分離が起こるリスクがある

従業員承継の実施方法にもよりますが、従業員承継では会社の所有と経営の分離が起こるリスクがあります。もしも現在の経営者が会社の所有権を持ったオーナーであるまま後継者に経営者の地位を譲ってしまうと、当然ですが会社の所有者は依然として前任の経営者が持ち、経営のみが後継者に委ねられる形となります。

実際に経営者を引退しても会社の所有権を譲らない方針を取る経営者は存在しますが、これは裏を返すと「後継者は完全に会社を託されているわけではない」状態を意味します。なぜなら会社の所有権を持っている前経営者は株式を一定以上所持しており、結果的に相応の発言権を有しているためです。

こうした状況に陥ると、従業員からすれば会社の実権が前経営者と後継者の間で分離しているように映り、どちらの意向に従えばいいのか混乱してしまいます。さらには後継者も前経営者の意向をくみ取ってしまうようになり、結果的に独自性を発揮できなくなるおそれがあるのです。

そして、何よりも前経営者が株式の所有を継続していると、後継者の発言権の効力が低下してしまい、安定した経営の妨げとなってしまうため注意が必要です。

③株式の取得が難しくなる

法人が事業承継を実施するときには何らかの形で後継者に株式を取得させなければなりませんが、このときに株式の取得がスムーズに実施できない可能性があります。従業員承継では、現在の経営者は遺言書をしたためて株式を相続させるほか、贈与もしくは売買による譲渡という手法を採用して株式を取得させます。

ただし、相続や贈与を実施するには親族への遺留分を考慮しなければなりません。ここで財産の大半が株式であるときには、後継者に事業承継で必要な分の株式を譲渡してしまうことで親族への遺留分を犯してしまうおそれがあり、このときに親族が遺留分減殺請求を実施すればせっかく譲渡した株式が分散してしまいます。

また、売買による譲渡を採用する場合には、従業員の資金力が問われることになります。会社の経営権を引き継げるだけの株式を取得するには多くの資金が必要となるため、場合によっては役員クラスの従業員でも資金準備が困難となります。現在の経営者としては、資金的な問題も考慮しておくことが大切です。

M&Aによる第三者への事業承継が増加する背景

ここまで従業員承継にあるデメリットを紹介しましたが、M&Aによる第三者への事業承継が増加する背景には、前述した従業員承継に潜むリスクも関係しています。それに加えて中小企業を中心に、経営者の高齢化や後継者不足といった問題が深刻化していることも、M&Aによる事業承継を後押しする要因の1つです。

M&Aを活用して事業承継すれば第三者に会社を託すことになるため、後継者不足を解決したうえで従業員承継では難しい大規模な改革の実施が望めます。それだけでなくM&Aでは、会社そのものを売却することになるため、売却利益を引退後の生活資金に充てることも可能です。

ところがM&Aにもデメリットが存在しており、とりわけ重大なのは「煩雑なプロセスを取る必要がある」点です。M&Aでは、売却価格の算出や買収監査といったプロセスで会計や税務の専門的な知識が求められるほか、さまざまな契約を結ぶため法的リスクも考慮しなければなりません。

以上のことからM&Aによる事業承継を検討したら、専門家に協力を仰ぐことをおすすめします。もしも専門家選びでお悩みでしたら、M&A総合研究所にお任せください。M&A総合研究所には専門的な知識や経験が豊富な専門家が在籍しており、培ってきたノウハウを活かして事業承継を手厚くサポートいたします。

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従業員承継を成功させるポイント

これまでに紹介したデメリットも踏まえて、従業員承継を成功させるポイントは以下のとおりです。

  1. 後継者となる人材は慎重に検討する
  2. 事業承継計画を策定する
  3. 株式取得には複数の手法を活用する
  4. 専門家の協力を得る
それぞれのポイントを順番に見ていきます。

①後継者となる人材は慎重に検討する

従業員承継であっても、人選は慎重に検討すべきです。経営者の立場からすれば優秀に見える人材でも、従業員の立場からすれば何らかの問題を抱えているケースも存在します。経営者は俯瞰的に会社を見て従業員をまとめる必要があるため、周りの人間と協調してリーダーシップを発揮できる人材がふさわしいです。

従って、単純に自身が気に入った人材を後継者に指名するのではなく、会社の今後や従業員を託すに足りる人材を選択することが大切です。もちろん次期経営者には相当のプレッシャーがかかるため、最適な人材が見つかったときには、十分に説明して気持ちに寄り添うことが求められます。

たとえ社長命令だとしても、簡単に受け入れられるものではなく時間をかけて悩むケースも多いですが、承諾が取れていると判断してそのまま事業承継計画を進めることは避け、多少の時間をかけてでも本人から確実な承諾を得ることが大切です。

②事業承継計画を策定する

後継者となる人材が決まったら、事業承継計画を策定することが大切です。たとえ優れた素質を持つ従業員や役員を後継者とする場合であっても、経営者に就任して即座に実力を発揮することはできません。後継者が一人前の経営者として活躍するためには、準備期間が必要です。

大まかな計画としては、事前に後継者として周知させたうえで、1年目は取締役として社内の役員や従業員と交流させる期間を設けると良いです。2年目以降は常務や副社長に昇進させて、取引先回りや金融機関との交渉を担わせます。このように経営者に就任するまでに段階を作ることで、準備を固めることができます。

③株式取得には複数の手法を活用する

前述のとおり後継者に株式を取得させるときには、相続・贈与・売買による譲渡などの手法が採用されますが、実際にはいずれか1つのみではなく3つの手法を組み合わせて実施することが一般的です。

例えば、贈与税が非課税となる範囲内で贈与しつつ、残りの株式は売買により取得させるなど複数の手法を組み合わせることで、効率的に株式を後継者に移行できます。経営者親族の遺留分に留意する場合には、売買による譲渡を中心に実施することが推奨されますが、後継者の資金力を考慮すると難しいケースも多いです。

こうした状況ではあらかじめ後継者を役員に昇格させて役員報酬を支払い資金を蓄えさせるなどして、現在の経営者側からサポートしていくことも求められますが、ここで中途半端に株式を後継者に取得させたままにしておくと、前述した所有と経営の分離が起こるおそれがあります。

これにより後継者による安定的な経営が妨げられてしまうため、なるべく株式はすべて承継させると良いです。後継者の成長に合わせて段階を踏んで株式を取得させる方法もありますが、後々のトラブルを避けるためにも最終的には後継者にすべての株式を取得させることが大切です。

④専門家の協力を得る

従業員承継だけでなく、事業承継を実施するときには専門家の協力を得ると良いです。なぜなら事業承継は長期的な視点に基づいて実施すべき行為であり、後継者の選定・事業承継計画の策定・株式の引き継ぎなどさまざまなプロセスを済ませる必要があるためです。

膨大なプロセスが求められる事業承継を経営者のみで実施することは非効率的であるだけでなく、専門的な知識が必要となる場面もあるため非常に困難です。最近では、事業承継のサポートを包括的に実施するコンサルティング会社や税理士事務所・弁護士事務所・投資ファンドなどが増えています。

上記の企業や機関などは事業承継のノウハウに長けている専門家が多く在籍しているため、非常に役立つ存在であるといえます。とはいえ「なるべく費用を抑えて事業承継を済ませたい」場合に最適な相談先は、M&A総合研究所です。

M&A仲介会社であるM&A総合研究所には、公認会計士をはじめとする事業承継の専門知識や経験が豊富な専門スタッフが多数在籍しており、自社にとって最適な事業承継を実施するために手厚くサポートいたします。

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まとめ

かつては親族内承継の手法を採用するケースがほとんどだった事業承継ですが、最近では従業員承継を実施する経営者も多いです。ただし従業員承継では、メリットがあるほか深刻なデメリットも存在するため事前に把握しておく必要があります。

いうなれば、現代は「子供が親の会社を継ぐ」ことが当然ではなくなり、事業承継の方法を自由に選択できる時代です。専門家の協力を得ながら従業員承継のメリット・デメリットを意識しつつ、自社にとって最適な方法で事業承継を済ませると良いです。

要点をまとめると、以下のとおりです。

・従業員承継とは
→自社の従業員や役員に事業を引き継ぐこと

・従業員承継のメリット
→後継者育成の手間が省ける、周囲から理解を得られやすい、会社の文化を維持できる

・従業員承継のデメリット
→大規模な改革が実施できなくなる、所有と経営の分離が起こるリスクがある、株式の取得が難しくなる

・従業員承継を成功させるポイント
→後継者となる人材は慎重に検討する、事業承継計画を策定する、株式取得には複数の手法を活用する、専門家の協力を得る

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