M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2021年4月24日更新会社・事業を売る
事業譲渡における消費税
事業譲渡の際に譲受側企業にて負担する主な税金は消費税です。消費税額は譲渡価格総額に課税されるのではなく、課税資産と非課税資産とに仕分け後、課税資産総額に対して課税を受けます。消費税額算出のための課税資産と非課税資産の内訳と計算方法を説明します。
事業譲渡とは
会社が行っている事業の全部、または一部を切り離し、他の会社との間で売買するM&A手法が事業譲渡です。株式譲渡によって、会社を丸ごと売却するよりも手続きが複雑になるデメリットはあるものの、事業や資産を個別に切り離して売買できるのはメリットとされています。
また、会社を手放さず存続させられる点も有用と考えられているポイントです。会社の規模に比例して手続きが複雑化、煩雑化する傾向があるので、手続きが簡素化しやすい中小企業のM&Aにおいて活用される場合が多いのが実態です。
事業譲渡は、場合により営業譲渡ともいわれていますが、いずれにしても、会社間の金銭での売買取引になります。したがって、そこに必ず待っているのが課税です。事業譲渡では、譲渡側企業と譲受側企業それぞれ別種類の課税を受けます。まずは、その内容から見ていきましょう。
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事業譲渡で支払う税金①法人税
事業譲渡で譲渡側企業に発生する税金は法人税です。その場合、譲渡価格全額が課税対象ではありません。譲渡した資産の総額を譲渡価格が上回った分については、譲渡益と見なされます。この譲渡益が法人税の課税対象である課税所得として算入され、法人税率が掛け合わされます。
これを逆にいえば、譲渡価格が譲渡資産総額と同等以下なら譲渡益は発生せず、事業譲渡において法人税が生じることもなくなります。なお、法人税が課税される場合は、必然的に事業税、地方法人税、法人住民税も課税されます。
それら法人税の全てを合わせた実効税率は、2019(令和元)年12月現在、約31~35%となっています。
事業譲渡で支払う税金②消費税
一方で、事業譲渡の譲受側企業が負担する税金には消費税があります。この消費税は、一般における商取引、つまりは一般消費者が買物をするときと同様の課税と納税の関係です。すなわち、資産を売却する立場である事業譲渡側企業が、譲渡価格に消費税を加えて譲受側に請求します。
事業譲受側企業は、請求に沿って消費税を加えた譲渡代金を支払うのです。この支払いを受け消費税を預かった事業譲渡側企業が後日、この消費税を税務署に納付することになります。ただし、一般消費者の買物とは大きな相違点があります。
事業譲渡において売却される資産には、消費税の課税資産と非課税資産が混在しています。したがって、この消費税の課税資産と非課税資産を仕分けし、課税資産分の消費税を算出する必要があるのです。課税資産と非課税資産の詳細については、次項で取り上げます。
このような税金面のことだけにとどまらず、事業譲渡を進めるうえでは他にも煩雑な手続きが数多く噴出します。それらを抜かりなくスムーズに進めるためには、M&A仲介会社のようなM&A専門家に依頼するのがおすすめです。
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消費税の課税資産と非課税資産
ここでは、消費税の課税資産と非課税資産の内訳について具体的に見ていきましょう。その前に、なぜ消費税が非課税になるものが定められているかについて言及しておきます。これは、消費税法において定められた法令です。
それによると、「消費税とは消費に負担を求める税という性格であり、課税の対象としてなじまないもの、あるいは社会政策的配慮を働かせ、消費税の課税をしない非課税取引を定める」とされています。
(1)課税資産
まず、事業譲渡の際に消費税が課税されることになる資産から見ていきましょう。資産の種別と、その具体例は以下のとおりです。
- 土地以外の有形固定資産:建物、施設、設備、車両運搬具、器具備品、機械装置、専門工具類、船舶など
- 無形固定資産:ソフトウェア、特許権、意匠権、商標権、漁業権など
- 棚卸資産:企業が販売目的で保有する商品や製品、およびその原材料や仕掛品などで、一般に在庫とも呼ばれるもの
- のれん代(営業権):譲渡価格が譲渡資産総額を上回った場合の差額分
有形固定資産のうち、土地は例外的に非課税であることを忘れないでください。また、棚卸品(在庫品)は、事業譲渡側企業においても正確に数を把握しきれていない場合もあるため、算定には時間と労力が伴います。
のれんの数字で着目したいのは、事業譲渡側企業における譲渡益に該当する数字が、譲受側企業にとってはのれん代の金額となることです。こののれん代の具体的な意味合いは、事業における独自のノウハウやブランド、顧客との取引関係といった無形の資産の評価額といえます。
貸借対照表に載せられる資産とは異なりますが、その事業への将来への期待値といってもいいでしょう。また、のれん代を別途数値化する方法として、営業利益や経常利益の3~5年分を算出し、のれん代とすることもあります。
(2)非課税資産
事業譲渡において消費税が非課税扱いとなる資産と、その具体例を以下に記します。
- 土地:有形固定資産の中の非課税となる例外措置
- 有価証券:株式、債券、手形、小切手など
- 債権:売掛金等、貸付金など
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消費税の具体的な計算方法
事業譲渡における消費税の課税資産と非課税資産について、おさらいとして具体的な計算例を掲示します。消費税率は、2019(令和元)年12月現在の10%を適用して計算を行います。
【例:事業譲渡価格2億円の内訳】
- 建物:5,000万円
- 棚卸資産2,000万円
- 有価証券:2,000万円
- のれん代:3,000万円
- 土地:3,000万円
- 債権:3,000万円
- 特許権:2,000万円
上記の例の場合、消費税の課税対象資産は、建物、棚卸資産、のれん代、特許権が該当します。一方で、消費税が非課税措置となる資産は、有価証券、土地、債権です。したがって、建物、棚卸資産、のれん代、特許権の和を求め、それに消費税率を掛け合わせて消費税額を算出します。
- 課税資産額=5,000万円+2,000万円+3,000万円+2,000万円=1億2,000万円
- 消費税額=1億2,000万円×10%(消費税率)=1,200万円
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消費税に関して注意すべきポイント
事業譲受側企業としては、事業譲渡費用に加えて消費税分の現金も用意しなければなりません。それ相応の出費負担です。そして、その支払い消費税の金額に影響を及ばす可能性のある注意事項が3点あります。いざというときに備えて、心に留めておいてください。
(1)のれん代が上がると消費税も上がる
非上場の中小企業が事業譲渡を行う際の事業譲渡価格は、純資産額にのれん代を加えた金額で決定されることが多い傾向にあります。のれん代は、上述したように営業利益、または経常利益の3~5年分で算出するのが通例です。
例えば、営業利益が大きかったり、事業のノウハウやブランド力が高評価である場合には、のれん代も必然的に高額になり、その結果、消費税額の高騰化を招きます。これが、のれん代の評価については一考の余地があるといわれるゆえんです。
したがって、できるなら、そのあたりの事情も理解し合える事業譲渡企業を探したいところでしょう。
(2)棚卸資産の不確実性が高い
事業内容によっては、棚卸資産は毎日変動する企業もあります。事業譲渡契約において、先に棚卸資産の額を決めていても、最終的な事業譲渡の日に棚卸を実施したところ、価格が変動してしまうことは実際に発生している事実です。
つまり、消費税の想定についても、それはあくまで見込み値でしかなく、最終的な消費税の支払額も変動すると考えておくしかありません。準備する資金も余裕をもっておくべきです。
(3)消費税率の変動に注意
2019(令和元)年10月から消費税率は8%から10%に上乗せされました。現在のところ、政府から消費税率の再アップの話は出ていません。しかし、法的にはいつでも上げることができるのが消費税率です。
何の前触れもなく上がることはないにしても、消費税の負担額が事業譲渡を行うかどうかの判断材料の1つになるときが来るかもしれません。
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まとめ
事業譲渡における消費税のポイントは、課税資産と非課税資産を知り、その仕分けをきちんと行うことが大前提です。そのうえで、懸念されるのれん代の問題と、棚卸資産の把握にどう対策を立てるかという点が担当者としての責務といえるでしょう。
本記事の要点は下記のとおりです。
- 事業譲渡で支払う税金は、譲渡側企業が法人税、譲受側企業が消費税
- 消費税の課税資産は有形固定資産、無形固定資産、棚卸資産、のれん代
- 固定資産である土地は、例外的な非課税資産
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。