M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2021年5月2日更新会社・事業を売る
企業価値とは?企業価値向上施策、計算方法をわかりやすく解説
M&Aや事業投資を検討あるいは実施する際に、企業価値という用語をよく耳にします。企業価値は事業運営を進めるうえで、知っておくべき概念ともいえるものです。この記事では、企業価値とはどのようなものか、企業価値向上施策、計算方法をわかりやすく解説
企業価値とは
まずはじめに、企業価値とはどのような意味なのかお伝えします。企業価値とは、企業全体の価値を指しており、M&Aや事業・設備投資を進める局面で実行可能かどうかの判断材料として利用します。
企業外部から見ると、企業価値は「株主にとっての価値(株式価値)」と「債権者にとっての価値(負債価値)」の合計になります。
- 企業価値(貸方側)=株式価値+負債価値
上記は貸借対照表の貸方側から見た企業価値ですが、借方側から見ると「事業用資産の価値(事業価値)」と「非事業用資産の価値(非事業価値)」の合計額となります。
- 企業価値(借方側)=事業価値+非事業価値
基本的に、企業外部の関係者(債権者や株主)は前者の式で、企業内部の人物(経営陣など)は後者の式で企業価値を考えます。
資産の中には明確な価値がないものもあります。そのため、評価主体により価値が変動することから、それぞれが求めた企業価値は異なる場合が多くなります。
企業価値と時価総額の違い
企業価値と時価総額はときおり混同されますが、両者は異なる概念です。企業価値が株主に帰属する株式価値と債権者に帰属する負債価値の合計である一方、時価総額は株主に帰属する株主価値を指します。時価総額と株式価値は同一概念です。
- 時価総額=株式価値
- 企業価値=時価総額(株式価値)+負債価値
従って、自己資本比率が100%の会社であれば、理論上は企業価値と時価総額が同額です。理論上という意味は、実際にはそうしたケースが多く見られるからです。
時価総額は、株価と株式数を掛け合わせることで算出できます。株価は政治情勢や有力投資家の発言など企業の価値以外の要因でも変動します。例えば、妥当な株価が1,000円であったとしても、政治情勢などといった外部要因により、短期的に株価が800円下がる場合があります。
- 時価総額=株価×発行済株式総数
以上の点からも、市場株価を基準にする時価総額と企業価値はイコールではありません。市場の変動性に左右される時価総額に加えて、M&Aや事業投資では将来性も考慮したうえで企業価値を算出します。
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企業価値と株式価値の違い
株価算定方法を解説します
企業価値と事業価値の違い
企業価値と事業価値も、似ているようで異なる概念です。「企業価値」は企業全体の価値を表します。しかし、「事業価値」は企業が行う事業の価値を示します。
企業価値には事業の持つ価値だけでなく、事業に関係のない余剰資金や遊休資産の価値も入ります。つまり、企業価値の一部を構成しているのが事業価値です。
- 企業価値=事業価値+非事業価値
M&Aや事業投資の際には、事業価値と企業価値を同一の意味として用いる場合が多くありますが、厳密には上記の違いがあります。
しかし、企業価値の大部分は事業価値が占めていることから(資産ばかり保有して事業を行わない会社は基本的にありません)、M&Aでは事業価値=企業価値として認識しても差し支えない場合が多いです。
企業価値とEVの違い
続いて、「企業価値」と「EV」の違いを説明します。EVの正式名称は「Enterprise Value」で、その直訳は「企業価値」です。しかし、EVは一般的に用いられる企業価値とは若干意味が異なります。
企業価値という用語の意味は、「株式価値(時価総額)+負債価値」もしくは「事業価値+非事業価値」と表します。ところが、「EV」という用語には「株式価値(時価総額)+負債価値−現金および現金同等物」という意味があります。
- EV=株式価値(時価総額)+負債価値−現金および現金同等物
EVは「企業価値」から「現金および現金同等物」を引いた金額であり、なおかつ「評価対象企業の購入時に必要な正味金額」を表しています。EVについて理解するためには、企業購入時に必要な費用を試算することです。
企業を購入するためには、株式を100%購入しなくてはいけないため、時価総額と同じ金額が最低限必要となります。企業を購入する際には債権者に対する負債の返済義務を負うため、負債総額分も必要となります。
上記のとおり、企業価値自体の計算は完了します。しかし、企業価値には現金および現金に準ずる資産も入ります。現金は負債の返済に充てることができるため、実質その分の購入費用は軽減されます。
従って、企業購入時の必要な実質金額は「時価総額+有利子負債−現金および現金同等物」となります。EVは単なる企業価値ではなく、企業購入時の必要な「価格」といえます。
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企業価値の評価方法
場面や評価対象により、企業価値の評価方法は異なります。最適な企業価値を算出するためには、場面や対象に適した評価方法を用いる必要があります。この項では、ファイナンス理論に基づいた企業価値の評価方法を3つ解説します。
動画でも3つの手法を解説しておりますので、ぜひご覧ください。
企業価値の評価方法①:コストアプローチ
コストアプローチとは、企業の「純資産」に着目した企業価値の評価方法です。貸借対照表上の純資産を株式価値として企業価値を計算する「簿価純資産価額法」や、資産と負債を時価評価したうえで算出した時価純資産額を株式価値とする「時価純資産価額法」などがあります。
コストアプローチのメリットは貸借対照表のみであれば、容易に企業価値の算出が可能であり、客観性のある企業価値の算出できるところです。
その一方で、デメリットは企業の将来性を加味することができない点です。コストアプローチは、事業の継続を行わない会社(清算などの局面)または長い社歴を誇る中小企業に適応できる評価方法と言えます。
簿価純資産価額法
簿価純資産価額法では、評価対象企業の資産と負債の帳簿価格に基づいて計算を行います。帳簿上に計上されている資産合計から負債合計を差し引き、算出された純資産額を株式価値とみなします。
- 株式価値=資産(帳簿価格)ー負債(帳簿価格)
簿価純資産価額法には、帳簿上に記載されている数値に着目するため数値の客観性を保てるというメリットがあります。また、帳簿上の資産ー負債=純資産と簡易的な方法で株式価値を算出することが可能です。
時価純資産価額法
時価純資産価額法は、会社の株価を算定する基準日時点での資産および負債の時価を算定し、その差額を株式価値とします。
- 株式価値=資産(時価)ー負債(時価)
時価のある資産は時価で評価し、時価がないものについては基本的に帳簿価格で評価されます。滞留している債権や在庫については、一定の金額まで減額する方法が採られることが多いです。
企業価値の評価方法②:マーケットアプローチ
マーケットアプローチは、市場や類似した会社に焦点を当てた企業価値の評価方法です。数ヶ月にわたる平均株価を利用した「市場株価法」や、類似した会社に関するPERおよびEBITDAを利用した「マルチプル法」があります。
マーケットアプローチのメリットは、客観性に満ちた企業価値を算出できることや、あまり利益を上げていないベンチャー企業に対して評価できる点です。それに対し、デメリットは類似企業や類似取引が見つからない場合に、適切な企業価値の算出が難しくなる点です。
市場株価法
市場株価法とは、過去1ヶ月~6ヶ月程度の市場株価をもとにした平均株価を評価額とする方法です。 市場株価法は、市場で多くの参加者の需給によって形成される株価を平均して求めるので、客観性が高いといえます。
平均値は出来高加重平均(VWAP)や終値平均をとることが多いです。ただし、出来高が極端に少ない銘柄や不自然な株価の動きがある銘柄(風評被害や仕手筋が動いていたり、インサイダーによる情報漏れで株価が上下しているなど)の場合は市場株価法による評価結果が合理的であるとは言えないので、注意が必要です。
マルチプル法
マルチプル法(類似企業比較法)とは、類似した上場企業の評価倍率を元にして、対象となる企業をバリュエーションする方法のことを指します。類似した企業の評価倍率が「マルチプル」であり、具体的には、利益やEBITDA、純資産といった財務指標から算出された倍率のことです。
この倍率に評価対象企業の財務数値(純利益、純資産など)を掛け合わせることで、企業の株主資本価値を算定します。この性質から、マルチプル法には、「類似上場会社法」「類似会社比較法」「倍率法」および「乗数法」などのさまざまな呼び方があります。
以下の動画で弊社M&Aアドバイザーが計算例を用いてマルチプル法について解説しておりますので、是非ご覧ください。
企業価値の評価方法③:インカムアプローチ
インカムアプローチとは、企業が将来的に得られる収益やキャッシュフローに着目する企業価値の評価方法です。当期純利益の現在価値を用いる「収益還元法」やフリーキャッシュフローの現在価値を用いる「DCF法」があります。
この評価方法のメリットは将来性の加味が可能なため、多様な局面に利用できるところです。一方、この評価方法には、恣意性や主観性が企業価値に加味されやすいというデメリットも伴います。インカムアプローチは、M&Aもしくは事業投資などさまざまな局面で利用できる評価方法です。
収益還元法
収益還元法とは、企業が将来生み出すであろう収益を現在価値に変換して企業価値を評価するものです。収益還元法による企業価値算出式は次の通りです。
- 企業価値=平均収益÷資本還元率
DCF法
DCF法とは、企業が将来的に生み出すフリーキャッシュフローの期待値を割引率で割り引いて、現在の企業価値を算出する方法です。フリーキャッシュフローとは、最終的に「債権者と株主に分配可能なキャッシュフロー」のことです。
フリーキャッシュフローという言葉は、しばしば株主に分配可能なキャッシュフローのみを指す場合もあり、混同されがちですので注意しましょう。
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DCF法による企業価値の算定
企業価値の算定方法
M&Aや事業投資の際は、公平性の担保を目的にDCF法や純資産価額法という評価方法を用いて、企業価値を算出することが多いです。
しかし、算出するためには専門的な知識が必要になるため、専門家に依頼することをおすすめします。
M&A総合研究所では、M&Aに豊富な知識と経験を持つアドバイザーがM&Aをフルサポートいたします。
料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談をお受けしておりますので、お気軽にお問い合わせください。
企業価値を高める方法
最後に、企業価値を高める代表的な方法を3つお伝えします。有利な条件でM&Aを実施するためには、企業価値の向上は不可欠なので、理解しておきましょう。
企業価値を高める方法①:収益力の向上
収益力の向上は、最も効果的に企業価値を高められる方法です。経営戦略およびビジネスモデルの検証、営業体制の強化により、売上高や利益増大を図る施策が有効です。
アウトソーシングならびに生産管理の徹底を図ることで、費用の圧縮方法や企業価値の上昇に効果的です。まずはじめに、収益力の向上に取り組みましょう。
企業価値を高める方法②:財務の改善
財務状況の改善は企業価値の向上につながります。負債の比率を増やすことで、財務レバレッジ効果や負債利用の節税効果につながり、企業価値は向上します。しっかりと理解するには、ファイナンスの専門知識が求められますので割愛しますが、負債の活用により企業価値を高められます。
企業価値を高める方法③:投資効率性の向上
企業価値を高めるためには、投資効率性の向上も不可欠です。つまり、無駄な資産を保有しなければ企業価値は高まります。回転率の悪い在庫や遊休資産といった無駄な資産を減らすことで、投資効率性は向上するでしょう。投資効率性が向上することで、企業価値は高まります。その結果、M&Aの買い手の印象が改善されるかもしれません。
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会社を売りたい
M&Aの成功を左右する企業価値
まとめ
今回は、企業価値とはどのようなものかお伝えしました。企業価値についての理解はM&Aや事業投資に役に立つので、ぜひ参考にしてください。
本記事の要点をまとめると、下記になります。
・企業価値とは?
→株式価値+負債価値
・時価総額とは?
→株式価値
・時価総額とは?
→株価×発行済株式総数
・EVとは?
企業価値ー現金および現金同等物
・ファイナンス理論に基づいた企業価値の評価方法とは?
→コストアプローチ、インカムアプローチ、マーケットアプローチの3つ
・企業価値を高める主な方法とは?
→収益力の向上、財務の改善、投資効率性の向上の3つ
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。