M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2021年4月22日更新事業承継
会社清算とは?費用や流れ、会社清算の種類をわかりやすく解説
会社の清算とは、会社の解散後に会社の財産を換金する手続きを指します。会社の清算には、通常・特別・任意の計3種類があります。会社の清算時には、清算人としての義務を全うすることや、清算形式が変化する可能性があることに注意しましょう。
会社の清算
会社を持っている経営者にとって、将来遭遇し得る場面といえば「清算」です。
清算とは会社全体を換金する行為であり、主に会社の業績が悪化して解散する、つまり会社を「畳む」際の手続きですので経営者にとってはあまり考えたくないものかもしれません。
しかしいざという時に備えて清算の知識を持っておくことも重要です。今回は、そんな会社の清算について紹介します。
会社の清算とは?会社清算の意味
清算とは、会社を解散した後に会社の財産を換金・分配する手続きです。残った財産をすべて換金して、それらを債権者や株主らに分配する行為を指します。
この財産には債権債務も含まれています。例えば有価証券や土地、建物等の資産を現金化、買掛金等の回収もする必要があります。
こういった清算を完了した後は、株主総会等で決算報告書が審議されます。これが承認されると手続きは完了し、「清算決了」となります。会社を清算すると法人税の支払いが免除され、決算申告が不要になります。
清算の際は、通常「清算人」と呼ばれる代理人が必要です。清算人には、取締役や理事などの社員総会や、評議員会で任命された人間が就く事例が多いです。
この清算人が中心となって、会社の清算を進めていきます。また、清算には通常清算、特別清算、任意清算の計3種類あります。
会社清算の種類
こちらでは、会社清算の種類について解説します。
種類は、以下の3つです。
- 通常清算
- 特別清算
- 任意清算
1つずつ、見ていきましょう。
通常清算
通常清算は、会社の清算の中でも最も一般的な清算方法です。会社清算に迫られた場合は、まずはこの通常清算を検討するのがよいでしょう。
後述しますが、通常清算から途中で特別清算や破産手続き等に移行することも可能です。
通常清算は以下3つの工程があります。
- 清算人の選定
- 官報・個別公告
- 清算手続き完了
それぞれ順を追って説明していきます。
⑴清算人の選定
株式会社が解散すると決まり、清算をするとなればまずは清算人の選任から始まります。ちなみに、清算人の人数は会社によって異なります。
普通の会社であれば、清算人は最低1人選定すれば問題無いです。しかし、監査役会がある株式会社の場合は、清算人が最低でも3人必要となります。
そして1人であれ、3人であれ、その清算人が清算する会社の代表となります。
⑵官報・個別公告
選任が終わった後、清算人はその会社に対する債権を所有している債権者に、債権の詳細を申し出るように官報にて公告します。
さらに、見知っている債権者には個別に催告をしましょう。
官報公告期間は清算人が就任後、2ヶ月以上の間に最低でも1回必要であると言われています。
⑶清算手続き完了
さらに清算人は会社に財産があれば換金し、売掛金等の債権を取り立て、買掛金等の債務を弁済した後に、残余財産があれば株主へ分配することで清算事務を終了します。
その後に決算報告書を作成した後、株主総会での承認を得ると、清算結了となります。
特別清算
さて、さきほどは会社の清算でもっとも一般的な「通常清算」について解説しました。今度は、特別清算という清算の方式について解説していきます。
特別清算は、清算手続きに入った会社が裁判所の監督を受けて債権者集会を開き、債権者の多数決によって会社を清算するという方法です。
- 特別清算と通常清算の違い
- 特別清算と破産の違い
上記の内容について、見ていきましょう。
⑴特別清算と通常清算との違い
通常清算とは違い、特別清算は裁判所が監督する中で清算を実施します。主に解散する会社が資金繰りに行き詰っていたり、債務の完済ができない債務超過の可能性が出てきた場合にこの方法を実行します。
特別清算では、裁判所の監督の下で会社の財産を換金し、その代金で債務を返済していきます。その後もし残った負債があったら、協定案に従って返済します。
裁判所の監督を受けて清算をする点が、通常清算と大きく異なる部分です。
加えて特別清算を後に清算人が協定案を作成、債権者集会において出席債権者の過半数+総債権額の3分の2以上の同意を得て可決した協定案に従って返済する点も異なっています。
⑵特別清算と破産との違い
特別清算は、一見すると破産にも近いように感じるかもしれませんが、「特別清算」と「破産」は全くの別物です。 破産は事業継続が困難だと判断した時に、裁判所の関与を受けながら会社更生法や民事再生法、破産申請等の法律に沿って処理される手続きです。
つまり、自己破産とは「返済が不可能だ」と表明する行為です。
対して特別清算は、返済を前提に、しっかりと計画的に完済を目指して実施するための行為です。返済を前提にしていない破産とは大きく異なります。
また、破産は個人でも法人でも可能な手続きですが、清算は株式会社にのみ認められている点も大きな違いです。
任意清算
さて、会社清算には3つの種類があるとご案内してきましたが、この項はその最後の精算方法である「任意清算」について解説していきます。
任意精算はこれまで解説してきた通常清算や特別清算とは少々趣が違います。
まず注意しておきたいのが、任意清算をすることが可能な会社は、無限責任社員の財産が会社債務の引当てとなる合名会社・合資会社にのみ限られています。
任意清算は定款の定めや全社員からの同意によって、残余財産の処分が可能なのが特徴です。
任意清算の流れとしては、定款における存続期間の満了や解散事由が発生した際に、まず会社の全社員から清算への同意を得ます。
その後に解散の登記申請、財産目録や貸借対照表の作成、債権の保護手続きといった諸手続きを完了させます。
そこから債権の回収や弁済、残余財産の分配などをしてから清算決了となります。
また、任意清算では清算人を会社内に置かずに社外の人間が担当するという点も特徴です。
会社清算のスケジュールと流れ
この項では、会社清算のスケジュール(流れ)を解説します。
- 清算人の選定
- 財産の換価と債権の回収
- 債務弁済と残余財産の分配
- 清算結了登記
4つのステップをご説明します。
⑴清算人の選任
まず初めに、株主総会決議にて清算人を選任します。
基本的に清算人は、社内取締役の中から選任・または弁護士が就任するケースが一般的です。状況に応じて、従業員の中から清算人を選任する事も出来ます。
会社によっては、定款で予め清算人を定めているケースもあります。
原則清算人は1人で問題ありませんが、監査役会設置会社では清算人を3人以上選任しなくてはいけません。
⑵清算人の登記
清算人を選任したら、解散・清算人に関する清算登記を実施します。
清算人登記に際しては、株主総会の議事録や定款の原本証明、清算人の就任承諾等が必要です。
⑶財産の換価と債権の回収
清算人登記が完了したら、解散に関して官報で公告します。帳簿上の債権者に対しては、個別に債権申し出の通知を行わなくてはいけません。
公告や個別通知を実施したら、会社内にある財産の換価を行います。財産の換価とは、売却等により資産を現金化する手続きを指します。
財産の換価と並行して、未回収の債権を忘れずに回収します。ここで注意しておきたいのが、換価方法です。
というのも、廃業した会社の資産を別個でバラバラに分解して処分しようとすると、価値が下がってしまうケースが多いです。
それぞれの財産を、事業の一部として魅力を感じてくれるような、事業の文脈を理解してくれる同業他社や取引先などに事業譲渡の打診してみるのがよいでしょう。
⑷債務弁済と残余財産の分配
債権回収や財産の換価を終えたら、債務弁済と残余財産分配の流れに入ります。まず、債権者に対して債権を弁済することが最優先となります。
債権者への弁済は、債権の申し出期間が終了した後ではなくては実施できません。債務弁済を行なっても会社内に財産が残った場合には、株主に残余財産を分配します。
原則持ち株数に応じて残余財産を均等に分配しますが、種類株式や属人的株式の定めがある場合は異なる割合で分配します。
通常清算であっても、この時点で全ての負債を支払いきれないことが判明した場合には「特別清算」や「破産」の申立てをすることになります。
⑸清算結了登記
債務弁済や残余財産の分配を終え、決算報告の承認を得たら、清算結了登記を実施する流れとなります。清算結了の登記には、株主名簿や決算報告書、株主総会議事録が必要です。
残余財産の決定後、株主へ分配ができるなら清算をするため、決算報告書を作った上で株主総会を開きます。
決算報告が承認されてしまうと会社は消滅するので、清算結了の登記は決算報告承認から14日以内に行う必要があります。
- 登記申請書 … 清算人は申請者となる
- 株主総会議事録 1通
- 委任状 … 代理人が申請する場合に必要となる
- 印鑑カードが交付されていれば返納する
上記のものが必要となってきます。登記簿謄本は、税務官庁への異動届けに添付しなければなりませんので、必要な数だけ用意しましょう。
- 税務署用
- 都道府県税事務所用
- 市町村用
清算結了の登記が終われば、登記簿謄本を添付した異動届出書を提出しなければなりません。異動届出書は、残余財産の確定と確定日、清算結了と結了日を記載してください。
これらの清算結了を終えて確定申告や異動届を提出したら、清算手続きのスケジュールは完了します。
なお、清算事務が1年を超える場合は、1年を区切りにして清算事務年度を順次繰越します。
⑹清算に要する期間は?
以上(1)~(5)の解散から清算にかかる期間は、最低でも2か月間です。会社は解散後、官報公告で解散の事実を公示しなければなりません。
そして公告掲載から2ヶ月間は清算結了できないことが法律で決まっています。そのため、最低でも2か月間の時間が、あるいはそれ以上の時間が必要となってきます。
さらに補足すると、清算人は清算結了時から10年間、清算会社の帳簿及び清算に関する重要書類を保存する義務が発生します。清算人以外が保存する場合は、裁判所に保存者の選任の申立てをしましょう。
会社清算の費用と料金
この項では、会社清算の費用(料金)をお伝えします。会社清算において費用が発生する手続きは、「清算人の選任登記」や「清算結了の登記」の2つあります。
清算人の選任登記には、費用が9,000円かかります。一方で清算結了の登記では、費用が2,000円かかります。
つまり会社清算の手続き(流れ)では、合計で11,000円の費用を要します。
上記はあくまで自力で清算の流れを進める場合に要する費用であり、専門家に依頼する場合はさらに費用が高くなります。
清算登記手続きを司法書士に依頼する場合、約5〜6万円程度の料金が発生します。つまり司法書士に清算手続きを依頼する際は、依頼料金が加算され、合計で7万円程度の費用が発生します。
解散手続き全体で考えた場合、解散登記や官報公告により、プラス6〜7万円程度の費用がかかります。清算手続きを自力で行うか司法書士に依頼するかによって、必要となる費用(料金)は全く異なるのでご注意ください。
会社清算の税務
この項では、会社清算の税務について解説します。
解散登記を実行した際、期首から解散日までの法人税や消費税、地方税等を確定申告する必要があります。基本的には解散年度の確定申告のみで十分ですが、解散日から残余財産が確定するまで期間が空くケースもあります。
残余財産が確定するまでは、解散日翌日から一年ごとに清算事業年度の申告が必要となります。加えて清算が完了した時点で、残余財産確定事業年度の申告も必要です。
解散する際は、何度か確定申告が必要となるので注意しなくてはいけません。
「残余財産確定事業年度」や「清算事業年度」では、通常通り法人税を計算します。利益が発生すれば通常通り法人税を納税し、赤字の際は法人税の均等割のみ納税します。
基本的な税務に関しては以上となりますが、清算事業年度の税務に関しては、注意点があります。
清算事業年度に元経営者からの借入金が残っている場合、借入金に関して債務免除益を計上するケースがあります。
債務免除益を計上した結果、事業を営んでいなくても税務上黒字になります。繰越欠損金を用いても黒字であれば、通常通り法人税が発生します。
清算寺の税務は、特殊な状況となる為注意しましょう。
債務超過会社の会社清算方法
この項では、債務超過会社の会社清算方法をご説明します。債務超過とは、企業の負債総額が資産総額を上回る状態を指します。
債務超過会社の清算は、特別清算もしくは破産のいずれかの方法を用います。
2つの方法を比べてみると、破産には倒産というネガティブなイメージが伴う一方で、特別清算には特段ネガティブなイメージが付いていません。手続き面でも、特別清算の方がメリットは大きいです。
破産は裁判所が選任した破産管財人の下で、経営者の裁量なく実施される方法です。
他方特別清算では、会社が選任した清算人が自主的にスケジュールを進行できる為、取引先との関係を維持した上で清算出来ます。
費用や時間面でも特別清算の方が有利である為、基本的に債務超過会社には特別清算を適用した方が良いでしょう。
様々な面でメリットのある方法ですが、株式会社にのみ適用できます。
債務超過会社を登記上個人で営んでいる場合、破産手続きしか適用出来ません。
会社清算の注意点
会社の清算には注意すべき点があります。そもそも、この手の手続きは分かりにくいかと思います。
しかし、会社の清算の時に特定のミスを犯してしまうと、賠償責任が発生する恐れや、会社の精算が滞ってしまう可能性があります。
ですので、事前に会社の清算に関する注意点をしっかり理解しておきましょう。
ここでは、会社の清算の注意点をそれぞれ詳しく紹介します。
⑴清算人の義務を怠らない
会社が通常清算・特別清算を実施する時には清算人を置きます。その清算人には3つの義務があり、これを遵守しなければいけません。義務は以下の通りになります。
- 現務の完結
- 債権の取立てと弁済
- 残余財産の分配
万が一、清算人がこの3つの義務を怠っていまい、会社に損害を与えてしまう事態になると、その清算人が賠償の責任を負わなくてはならないと法律で決まっています。
なので、清算人の人選は非常に重要です。
清算人には、会社を清算する実務を最後までやり通せる責任感、債権の取り立て・弁済などの経理的な作業を確実に処理できるスキルが求められます。
このような知識や業務に精通している人物を慎重に選んで清算人に据えましょう。
⑵専門家の助力を得る
会社の清算をする際には、なるべく専門家(弁護士、司法書士など)の助力を得ましょう。 先述したように会社の清算には様々な方法があり、その手続きも場合によって大きく異なります。
また、通常清算と決定したものが特別清算することになり、さらに転じて破産へと変化していく可能性もあります。
したがって、ルールに反する事があれば清算人に賠償責任が発生するリスクもあります。
スムーズかつノーリスクな清算を実現するためにも、専門家のアドバイスを依頼するのがおすすめです。
弁護士事務所や司法書士事務所には、このような会社の清算を専門的に行う事務所もあります。会社の清算を考えている際には、一度連絡を取って相談してみるのもおすすめです。
また、最近は清算するような状況になった際にM&Aを行うことも一つの手段として確立しつつあります。
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⑶清算形式が変わる可能性もある
清算の過程において何らかの問題が発覚したら、清算形式が変わる可能性もあります。
例えば、(2)の項でも例示しましたが「通常清算と決まっていた清算プロセスが特別清算に切り替わる」というような事態です。先程お伝えしたように、通常清算では債権の取り立てや弁済、残余財産の分配といったものが過程に含まれています。
しかし、この過程の中で清算の遂行に著しい支障をきたしている事由があった場合や債務超過の疑いが見つかってしまった場合は、特別清算への移行が法律に定められています。
つまり、会社が自力で清算するのが難しいと判断した場合は、裁判所が監督役になります。 しかし、この特別清算でさえもスムーズに進むとは限りません。
特別清算を開始しても債権者の同意が得られない場合、もしくは特別清算によることが債権者の利益に反してしまうと判断される事態になった場合には、裁判所は破産手続きをするかどうか決定しなければなりません。
特別清算は失敗すると破産になってしまうリスクを孕んでいるということです。
まとめ
会社の清算について様々な情報を紹介しました。
会社にとって、清算は考えたくない手続きの一つではありますが、万が一の時も考え知識を身につけておきましょう。
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