M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2023年3月2日公開事業承継
M&A仲介での利益相反とは?問題点やメリットをわかりやすく解説!
売り手側企業と買い手側企業の間を取り持ち、交渉をスムーズに行うサポートをしてくれますが、企業双方の利害のバランスを偏らせてしまうこともあります。M&A仲介における利益相反とはどういったものなのかわかりやすく紹介します。
M&Aの仲介業者において、利益相反は切っても切り離せない問題として挙げられます。
M&A仲介は、売り手側企業と買い手側企業の間を取り持ち、交渉をスムーズに行うサポートをしてくれますが、企業双方の利害のバランスを偏らせてしまうこともあります。
本記事では、M&A仲介における利益相反とはどういったものなのか、その問題点やメリットを実際の法律規定を交えてわかりやすく紹介します。
M&Aにおける利益相反とは
M&Aを仲介する上で、仲介業者がリピーターとなりやすい買い手側企業の利益となるように動くことで、売り手側企業と買い手側企業の利害が衝突してしまうといった問題点が挙げられます。
これはM&Aにおける利益相反の例の1つですが、他にもM&Aにおける利益相反は存在します。
このように、M&Aでは売り手側の企業と買い手側の企業は利益相反の状態となる問題点があるため、M&Aの仲介仲介業者を利用する際において注意する必要が複数あります。
利益相反とは
利益相反とは、英語で「Conflict of Interest」と表現され、直訳すると利益の衝突となります。
利益相反とは、わかりやすく言うと、一方にとって利益となる行為が、もう一方からは不利益となる状況のことを指します。
例えば、会社の取締役が個人の利益を追求した取引を行うことが、会社の利益を損なう事態を招く可能性があります。
そういった状態を利益相反と呼び、多くの取引で利益相反が発生する可能性がある問題点があります。
そのため、法律などで利益相反を防止するためのルールが定められています。
顧客の利害の対立
M&A仲介では、売り手側企業と買い手側企業の間に立って交渉を行います。
その性質上、顧客同士の利害の対立が発生し、それによる利益相反が起こり得ます。
そういった点からM&A仲介での利益相反がたびたび問題となっています。
M&A仲介業者とは
M&A仲介業者とは、わかりやすく言うと、売り手側の企業と買い手側の企業の間に立ち、中立の立場としてM&A交渉の仲介や助言を行います。
似たようなことを行ってくれる職種として、ファイナンシャル・アドバイザーがあります。
どちらか一方の立場に寄り添うのではなく、中立かつ客観的立場として両者の間に立って交渉を行う点がM&A仲介業者とファイナンシャル・アドバイザーの違いとなります。
自社の売却や他社の買収を進める際の複雑な手続きや相談先としてM&Aの仲介業者は重宝されています。
M&A仲介は利益相反取引になる?
M&Aの仲介は、売り手側企業と買い手側企業それぞれの代理人としてそれぞれの利害のために動く関係上、M&A仲介が利益相反取引になるといった問題点が指摘されることがあります。
- 利益相反と言われる理由
- 利益相反はなぜ問題視される理由
利益相反と言われる理由
M&Aの仲介は、売り手側企業と買い手側企業の双方と契約して、M&Aに関するサポートやアドバイスを行いM&Aを成立させることで利益を得ます。
前提として、売り手側の企業は自社を1円でも高く売りたいと考え、買い手側の企業は1円でも安く買いたいと考えるため、その点で利害の対立が起こってしますため、双方に有利になるアドバイスは理論的にできません。
そのため、M&Aの仲介は利益相反と言われてしまいます。
利益相反が問題視される理由
M&Aの仲介業者にとって、基本的には一度きりの付き合いとなる売り手側の企業より、リピートが期待できる買い手側企業の利益を優先した方がメリットが大きいためです。
もちろん、双方の利益を平等に考えてサポートやアドバイスを行うことが求められます。
しかし、M&Aの仲介業者としてはM&Aを成立させないと報酬を得ることができないため、M&A経験が多い企業や豊富な資金力を持つ大企業といった、リピートの期待できる企業の利益が優遇される点が問題視されています。
M&A仲介・利益相反取引のメリット
M&Aの仲介業者を利用することは、売り手側企業と買い手側企業の利害関係から利益相反取引になりやすい問題点があります。
しかし、もちろん利用によるメリットもあるため、その点についてわかりやすく紹介します。
- メリット①売却の成功率が高くなる
- メリット②スムーズな取引ができる
- メリット③決断がしやすい
売却の成功率が高くなる
M&Aの交渉では、売り手側の企業は自社を1円でも高く売りたいと考え、買い手側の企業は1円でも安く買いたいと考えるため、まずその点で両者の利害の対立が起こります。
そのため、両者が取引において長い付き合いの企業同士であったとしても交渉が決裂してしまうことも起こり得ます。
M&Aの仲介業者は、両者の利害関係を中立的な立場で調整してくれるため、条件の落とし所を探り、交渉の成功率を高めることができます。
スムーズな取引ができる
M&Aの仲介業者は、M&Aの候補先の選定から企業の評価などマッチング前の相談だけでなく、その後の相手先との交渉や最終的な契約の締結までM&Aにおけるすべてのプロセスのサポートを行ってくれます。
売り手側企業と買い手側企業の間に仲介業者が入ることで、両者と密接なコミュニケーションをとりつつ、中立的な立場で両者の利害バランスの調整を行ってくれます。
そのため、情報の整理や伝達が早く、M&Aの検討から成立までの取引をスムーズに進めることができます。
決断がしやすい
M&Aの交渉は、広範囲における様々な事柄の取り決めが必要となります。
例えば、買収価格の決定や株価交渉、譲渡後の社員の処遇や経営権の引き継ぎなど、検討しなければいけない内容は多岐に渡ります。
また、会社法や各種税法など関連する法律も数多く、契約成立後を見据えた契約書や覚書などの作成も膨大です。
そういったM&Aに関する法律や会計、税務などの専門的な知識とやM&A交渉経験が豊富な仲介業者が間に入ることによって、それぞれの取り決めの意味やそのリスクを仲介業者から教えてもらいつつ進めていくことで、決断がしやすくなります。
M&Aの利益相反取引の問題点
M&A交渉を進めていく上で、仲介業者の利用は様々なメリットを期待できるとともに、利益相反取引になりやすい問題点も有します。
では、実際にM&Aの利益相反取引の問題点とはどういった内容なのか、以下の3つの問題点に絞ってわかりやすく紹介します。
- 問題点①買い手側が有利な金額になりやすい
- 問題点②リピートの期待できる買い手側が優遇されることがある
- 問題点③売り手側の交渉戦略が漏れる可能性がある
買い手側が有利な金額になりやすい
M&Aの仲介業者は、売り手側の企業と買い手側の企業のそれぞれと契約を結び、マッチングから契約を成立させることで、成功報酬として手数料をそれぞれの企業から得ます。
売り手側の企業または買い手側の企業のどちらか一方と契約するM&Aアドバイザーなどとは違い、両者と契約するM&Aの仲介業者にとっては、M&Aが成立するかどうかが最重要です。
そのため、M&Aの仲介業者は、売り手側の企業に最も高い値段を付けた買い手ではなく、M&A経験が多い企業や豊富な資金力を持つ大企業といった、取引の容易な買い手側企業の優遇が起こり得ます。
そのため、M&Aの仲介業者を利用する場合、売り手側企業より、買い手側企業にとって有利な金額になりやすい傾向があります。
リピートの期待できる買い手側が優遇されることがある
M&Aの仲介業者は、M&Aが成立することによる成功報酬として利益を得ることができるため、数多くのM&Aを成立させる必要があります。
そのため、売り手側の企業より自社のリピートが期待できる買い手側の企業が優遇されることがあります。
一般的に、売り手側の企業ではM&Aは一度しか行われませんが、買い手側企業は複数の買収案件を取り扱うことが多くあります。
また、買い手側の企業同士であっても、リピートの可能性が高いM&A経験が多い企業や豊富な資金力を持つ大企業と、リピートの可能性が低い企業が競っていたとします。
その際、例え提示価格が後者の方が高かったとしてもリピートの可能性が高い企業を優先する可能性もあります。
こういった、リピートの期待できる買い手側企業を優遇することで、売り手側企業との利害バランスが崩れることも起こり得ます。
売り手側の交渉戦略が漏れる可能性がある
M&Aの仲介業者を利用する場合、売り手側企業の交渉戦略などの情報が買い手側企業に漏れ、価格交渉が不利になる可能性があります。
例えば、売り手側企業がM&Aの仲介業者に売却可能最低額を伝えていた場合、その情報が買い手側企業に漏れてしまうことで、その額以上で自社を売却することができる機会を逃すことになり得ます。
また、競合している買い手側企業がいないなど、交渉の上で売り手側にとって不利な情報が買い手側企業に伝わることで、価格交渉で売り手側が不利になる場面も起こり得ます。
法律による利益相反規定とは
利益相反についてどのように法律で規定されているかについて、以下の3つの法律ごとにわかりやすく紹介します。
- 民法
- 会社法
- 宅地建物取引業法
民法
民法第108条(自己契約及び双方代理等)には、利益相反規定についての条文があります。
民法において、物品の売買や契約といった法律行為での「自己契約」や「双方代理」は、原則的に認められていません。
自己契約とは、同一の法律行為について、相手方の代理人になることを指します。
わかりやすく例えると、AがBに物品を売る時に、BがAの代理人として売買を進行するようなケースを想定します。
この時、BはAの代理人と同時に買い手でもあるため、実質的には代理人の意味を成していません。
双方代理とは、同一の法律行為について、双方の当事者それぞれの代理人になることを指します。
わかりやすく例えると、AとBの売買契約において、CがAとB双方の代理人を兼ねるケースを想定します。
この場合、Cが代理人として契約の当事者双方に関与することによって、一方の当事者に有利になるように契約を進めることが可能となります。
「自己契約」も「双方代理」も、無制限にこれを認めてしまうことで、当事者の利害バランスを不当に崩すことに繋がりかねないため、認められていません。
ただし、「債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為」については、例外的に認められることもあります。
会社法
会社法第356条(競業及び利益相反取引の制限)には、利益相反取引について規定されています。
この法律によると、取締役による会社との利益相反取引は、株主総会において承認を必要とすると規定されています。
会社法における利益相反取引の例をわかりやすく紹介します。
- 会社から取締役への贈与
- 取締役と会社の間で行われる売買契約
- 取締役と第三者の間の債務を会社が保証するまたは引き受ける契約
宅地建物取引業法
宅地建物取引業法には、利益相反取引についての規定はありません。
不動産取引において、不動産の売主と買主の間に立って仲介を行うこと(双方仲介・両手仲介)は、代理行為ではないため、民法第108条に規定されている双方代理には当たらないとされています。
これは、不動産取引における意思決定は、その仲介を不動産会社が行なった場合でも当事者が行うことができるため、利益相反が生じないと考えられているからです。
M&A仲介の利益相反を理解してM&Aを進めよう!
今回は、M&A仲介における利益相反とはどういったものなのか、その問題点やメリットを実際の法律規定を交えてわかりやすく紹介させていただきました。
紹介した通り、M&A仲介における利益相反は、売り手側の企業の利害バランスを損なうことにも繋がりかねません。
しかし、利益相反はデメリットだけでなく、ある面ではメリットとなりうるものもあります。
大切なのは、M&A仲介の利益相反をしっかりと理解してM&A交渉を進めていくことです。
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。