2022年3月3日更新事業承継

後継者と事業承継の現状・課題|後継者選びのポイントを解説

経営者が事業承継で直面する課題の一つに、後継者問題があります。近年は後継者難による廃業が増加する一方、親族外による事業承継も増えている状況です。今回は事業承継と後継者に関する現状から、後継者選びのポイントや事業承継の方法などを紹介します。

目次
  1. 後継者と事業承継の現状
  2. 後継者と事業承継の現状・課題を解決できない場合のリスク
  3. 事業承継における課題
  4. 事業承継の後継者に必要な要素は?
  5. 事業承継で後継者に引き継ぐ3つの方法
  6. 事業承継の後継者選びのポイント
  7. 後継者と事業承継の現状・課題に関する相談先・制度
  8. 後継者と事業承継の現状・課題まとめ
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後継者と事業承継の現状

後継者と事業承継の現状

経営者がゆくゆくは考えなければならない課題の一つが後継者問題です。近年は会社の、とりわけ中小企業の後継者不足が問題として顕著で、経営者の退任と同時に廃業になってしまうケースも少なくありません。

まずは、日本の中小企業における事業承継と後継者難の現状を把握しましょう。

経営者の年齢と事業承継のピーク

中小企業の経営者における年齢のピークは66歳(図1)で、2016年時点で経営者の平均引退年齢は、小規模事業者は70.5歳、中規模企業が67.7歳です(図2)。また、2020年に数十万の団塊経営者が引退時期にさしかかり、昨今が事業承継のピークといえます。

「中小企業の経営者年齢の分布」「経営者の平均引退年齢の推移」に関するグラフ

出典:https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/shingikai/kihonmondai/2016/download/161128kihonmondai03.pdf

後継者難の現状

また、2016年における日本政策金融公庫総合研究所 「中小企業の事業承継に関するインターネット調査」の結果では、60歳以上における経営者のうち50%超が廃業を予定していることがわかりました。

廃業理由は「当初から自分の代でやめようと思っていた」が最も多く、「事業に将来性がない」「子供に継ぐ意思がない」「子供がいない」「適当な後継者が見つからない」と続きます。後継者難を理由とする廃業が合計で3割近くを占めている現状です。

後継者難と廃業理由について示すグラフ

出典:https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/shingikai/kihonmondai/2016/download/161128kihonmondai03.pdf

事業承継は後継者選びが多様化

後継者難から廃業せざるを得ない企業や事業が増えている中、事業承継では後継者選びを幅広い視野で行う必要があります。

下記図のように、法人経営者における親族内承継の割合は減少し、親族内だけではない従業員および親族外の第三者も含めた「親族外承継」が6割に達しているのです。

現経営者と先代経営者との関係を示すグラフ

出典:https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/shingikai/kihonmondai/2016/download/161128kihonmondai03.pdf

中小企業数の推移

中小企業庁による「2021年版 中小企業白書」を見ると、2009年から2016年における中小企業数の推移は、約63万社へと減っていました。具体的には、7年の間に、小規模の企業数は約62万社、中規模の企業数は約1万社に減っています。

休廃業・解散企業件数の増加

中小企業庁による「2021年版 中小企業白書」を見ると、2020年の休廃業・解散企業件数は、調査が始まってから最も多い4万9,698件でした。

経営者の平均年齢は上昇している状況です。経営者の高齢化が、休廃業・解散企業件数が増えている背景の一因といえます。

新型コロナウイルス感染症流行による中小企業への影響

中小企業庁による「2021年版 中小企業白書・小規模企業白書 概要」を見ると、新型コロナウイルス感染症流行による中小企業への影響として、多くの中小企業が厳しい状況にいます。

ただし、倒産件数は低い水準で、金融支援の拡がりや持続化給付金などの支援策が成果を出していると考えられますが、新型コロナウイルス感染症流行の影響に、引き続き注意を払う必要があるでしょう。

事業環境の変化に応じて、新製品開発や新事業分野への進出など、柔軟な対応を行う企業は回復が早いです。変化を転機とし、顧客のニーズや自社の強みに注目して事業を見直しましょう。

【関連】社長の引退年齢の現状や課題点とは?M&Aや事業承継を活用するポイントを解説| M&A・事業承継の理解を深める

後継者と事業承継の現状・課題を解決できない場合のリスク

後継者と事業承継の現状・課題を解決できない場合のリスク

この章では、後継者と事業承継の現状や課題を解決できない場合のリスクについて見ていきましょう。

日本経済全体の縮小

中小企業は、日本経済の大部分を占めます。そのため、中小企業の数が減り続ければ、日本経済全体が縮小する可能性があるのです。休廃業・解散件数と経営者の平均年齢は、上昇傾向にあるので、さらなる事業承継対策が必要でしょう。

従業員の雇用・技術やノウハウの消滅

休廃業・解散となれば、従業員の雇用や今まで会社が維持してきた技術やノウハウが、消滅する可能性が高いです。そうなると、日本全体の生産性が下がるでしょう。経営者個人の連帯保証により、個人財産が差し押さえられる懸念もあります。

事業承継における課題

事業承継における課題

この章では、事業承継における課題として、「親族内承継の課題」と「親族外承継の課題」に分けて見ていきましょう。

親族内承継の課題

親族内承継の課題として、経営者としての資質や能力の不足があります。野村総合研究所における「中小企業の事業承継に関する調査」を見ると、この点を課題とする企業が約6割でした。相続税や贈与税の負担を課題と考える中規模企業は約4割でした。

親族外承継の課題

親族外承継の課題として、多くの企業が借入金の個人保証や資産・負債の引継ぎを挙げています。

中規模企業にとっては、借入金の個人保証における引継ぎと後継者における自社株式の買取りが、重要な課題です。親族外継承では、個人保証の引継ぎについて考慮しましょう。

事業承継の後継者に必要な要素は?

事業承継の後継者に必要な要素は?

近年の事業承継は、旧来のように身内を後継者にするとは限りません。会社の後継者に必要な要素は、会社の種類や信条によって、さまざまです。会社の後継者に必要な要素のうち、共通している基本的な要素は「会社全体を見とおす力」といえます。

会社を引き継ぐと決めた後継者にとって何より大事なのは、経営者における視野の広さです。会社の経営者は組織のトップで、従業員とは見える景色も、見えてくるものも違います。

経営者になる以上は、自分の会社全体を隅々まで見とおす力を持つべきです。以下、会社全体を見とおす力を得るために、後継者が具体的に行うべきことを紹介します。

会社全体を隅々まで把握する

従業員と同じ狭い目線を持つのではなく、後継者は経営者と同じ目線に立つために、受け継ぐ会社をくまなく把握することが重要です。会社の資金や制度、売り上げ、債務、システム、製品の特徴、販路、取引先など知るべきことはたくさんあります。

経営者に必要な知識は、前任者から学ぶのも一つの手です。また、最近は後継者向けのセミナーなども充実し、後継者の事業承継をサポートするコンサルティング会社も多くあります。そういったところからアドバイスを得るのも良いでしょう。

ともに働く従業員について理解を深める

会社内の雰囲気や従業員の士気、考えの傾向も把握するべきです。経営者になればともに活動する仲間となり、彼らの士気を左右する立場になります。

受け継ぐ会社の従業員に関して理解を深めれば、経営者になってからのコミュニケーションもスムーズにいくでしょう。

【関連】事業承継を戦略的に行う方法!成功ポイントや事例を解説| M&A・事業承継の理解を深める

事業承継で後継者に引き継ぐ3つの方法

事業承継で後継者に引き継ぐ3つの方法

前任者から後継者に会社を譲り渡す、つまり事業承継の知識を持つことも重要です。事業承継のやり方は複数あり、それぞれやり方が違います。事業承継について知ることは、スムーズに後継者に会社を譲渡するうえで重要です。

以下は、主な3つのパターンにおける事業承継を紹介します。

会社を売買する事業承継

前任者の会社を後継者が買収する形での事業承継です。会社の株式を後継者が買収する形になるので、相応の資金力を持つ必要があります。

加えて売り手となった前任者の売却益には税金が発生します。後述する2つの手法とは違い、売り手に税金が発生する方法なので、事前に把握しましょう。

買収のプロセスとしては、会社の株式を一括で売買する方法が一般的です。しかし、年月をかけて少しずつ株式の売買を進める方法もあります。後継者の資金力に不安がある場合や、育成を長期的に進めたい場合は、この手法が有効的です。

会社を生前贈与する事業承継

前任者が健在のうちに、会社を後継者に贈与する方法です。贈与であるため、株式を受け取った後継者に贈与税が発生します。この場合、贈与税の算出方法は2種類あるので注意しましょう。

暦年課税制度

1つ目は贈与・受取者の制限がなく、1年間ごとに贈与金額の合計に税金がかかる「暦年課税制度」です。金額によって税率が変わる点が特徴で、通常の贈与税と同様に110万円以下の財産であれば贈与税はかかりません。

それ以上の金額なら、一定の金額ごとに税率が上がっていきます。控除もありますが、会社ほど規模が大きい場合は、ある程度税金が大きくなるのは覚悟しましょう。

相続時精算課税制

2つ目は「相続時精算課税制」で、一定金額の財産を先に相続する方法です。2,500万円までなら非課税になるため、ある程度の大金における贈与に向いています。しかし、2,500万円を超える贈与の場合は、20%の贈与税が発生するので気をつけてください。

会社の株式を相続で受け継ぐ事業承継

後継者が実子もしくは親族であった場合、前任者の死亡時に株式の相続といった形で事業承継を実施する方法です。ある意味スタンダードともいえる方法で、相続の形なので相続税が発生します。

株式の金額は必然的に大金となる場合が多く、相続税も一定以上の高額になる可能性があるので要注意です。とはいえ相続税には納税猶予があり、一定期間であれば納税を待ってくれます。ただし、納税猶予期間の5年以内は、雇用の80%を維持しなければなりません。

雇用を維持し続けるためには、後継者の経営手腕が問われます。ちなみにこの納税猶予は贈与税でも発生するので、税理士や弁護士とよく相談しましょう。被相続者が複数いる場合は、株式の譲渡が複数に分散する必要があるので、事前の協議が重要です。

【関連】事業承継税制による相続税の負担軽減方法を徹底解説| M&A・事業承継の理解を深める

事業承継の後継者選びのポイント

事業承継の後継者選びのポイント

後継者選びで重要なのは個々の能力はもちろん、後継者に指名する相手がどういう立場なのかも重要です。後継者の指名は、いうなれば経営者の気持ち一つですが、誰を選択するかによって注意点が変わります。

ここでは、親族、従業員、第三者を後継者に指名した場合の注意点を見ていきましょう。

親族

経営者の子供や親族を後継者に指名するパターンです。親のものは子供に引き継がせたいと考えるのは一般的で、前任者の親族であれば内外での信頼も得やすいでしょう。

経営者の子供を後継者に据える場合は、長期的に育成できるため、経営者として成長させやすいのもメリットです。

このパターンでは、会社の所有と経営が分離するリスクも少ないため、事業承継もスムーズに進みます。しかし、後継者といっても才能が前任者と同等ではない場合もあり、必ずしも親族が経営者となることが前向きとは限りません。

相続の形で会社を事業承継させる場合、複数の相続人が発生する可能性もあります。そうなると、後継者の決定が困難になる恐れもあるので要注意です。

従業員

親族内に適任者がいない場合、会社の従業員から後継者を指名するケースもあります。従業員を後継者とするメリットは、下記です。

  • 社内から後継者を指名するため、心情的に受け入れやすい
  • 会社のシステムを理解しているので経営者育成をある程度省ける
しかし、社内の雰囲気が競争的だった場合、1人の従業員を後継者に指名すると心情的に受け入れられない声が挙がる恐れもあります。従業員に会社の株式を買収または税金を支払えるだけの資金力を持たせるのも難しいです。

第三者

親族内、社内に後継者として適任の人物がいないときは、第三者を後継者として招聘する場合があります。大企業で新たに社長が就任する際に多いパターンです。

第三者を後継者にする場合、後継者候補を広く求められるので、より良い人材を発見できる可能性が高くなります。すでに一定の実績を持つ人物を後継者にできれば、育成の手間がかなり省けます。有能な後継者を獲得しやすいのは、最大のメリットです。

一方、第三者が経営を引き継いだ場合、その立ち位置は「雇われ社長」の形になるケースが多く、以下のデメリットも見られます。

  • 従業員の受け入れがスムーズにいくとは限らない
  • 本人のモチベーションによってパフォーマンスが変わる可能性がある
  • 会社の所有と経営が最も分離する可能性が高い

第三者は良くも悪くも部外者なので、後継者として招く場合は入念に下準備を進めましょう。M&Aは売買契約次第ともいえ、交渉の際は専門家に依頼するのがおすすめです。

第三者、またはM&Aによる事業承継をご検討の際は、M&A総合研究所へご相談ください。M&A総合研究所では、M&Aの豊富な知識と経験を持つM&Aアドバイザーが、丁寧に案件をフルサポートいたします。

料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です。(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります。)無料相談を行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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【関連】跡取りがいない会社のM&Aを成功させるには?M&A相談先の選び方や後継者不足問題を解説| M&A・事業承継の理解を深める

後継者と事業承継の現状・課題に関する相談先・制度

後継者と事業承継の現状・課題に関する相談先・制度

この章では、後継者と事業承継の現状や課題に関する相談先・制度について見ていきましょう。

事業承継・引継ぎ支援センター

後継者がいない中小企業者や、経営資源を引き継ぐ意欲のある中小企業者へ、課題解決へのサポートや情報提供などを実施するのが、事業承継・引継ぎ支援センターです。経済産業省や各都道府県の商工会議所が行っています。

後継者不在のケースでは、第三者に対するM&Aのマッチングサポートなども手掛けています。

事業承継・引継ぎ補助金

事業承継やM&A(事業再編や事業統合などを含む)をきっかけとした経営革新など、後継者の新しい挑戦をサポートする補助金が、事業承継・引継ぎ補助金です。

中小企業が事業承継やM&Aにより経営革新などを実施するケースで、設備投資・販路拡大などに必要とする経費を支援します。補助金の上限は、経営革新などは250~500万円以内(上乗せ額200万円以内)で、補助率の上限は経費の半分です。

M&Aや事業承継の専門家

事業承継をしっかりとサポートする専門家や機関は、他にも数多くあるので下記に示しました。

  • 税理士
  • 公認会計士
  • 弁護士
  • 中小企業診断士
  • 商工会議所・商工会
  • 金融機関
  • 認定経営革新等支援機関
  • 公的機関

専門家を上手に活用して、スムーズに事業承継を進めてください。

後継者と事業承継の現状・課題まとめ

後継者と事業承継の現状・課題まとめ

本記事では、後継者に関することを紹介しました。中小企業にとって、後継者選びは非常に重要な部分なので、しっかり対策を立てたうえで実施しましょう。要点をまとめると下記になります。

・事業承継と後継者の現状
→後継者難に直面する企業の増加、身内ではない従業員や第三者を含めた「親族外承継」が6割に達している

・会社の後継者に必要な要素
→会社全体を見とおす力

・後継者が会社を受け継ぐ前にすべきこと
→会社全体を隅々まで把握する、ともに働く従業員についても理解を深めておく

・後継者を誰にするか
→親族、従業員、第三者の3パターンがあり、注意点やメリット・デメリットが異なる

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