M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2022年12月1日更新事業承継
後継者育成とは?課題、準備、方法・取り組みのポイントを解説
事業承継を実施する経営者にとって、後継者育成は会社の存続に影響を及ぼす重要なプロセスです。しかし、100%成功する保証はないため、緻密に準備してから実施しなければなりません。この記事では、後継者育成を成功させるための課題・ポイントなどを説明します。
後継者育成とは
多くの経営者がいずれ直面する課題の一つに、後継者育成が挙げられます。事業承継を実施する経営者にとって、後継者育成は会社の存続に影響を及ぼす重要なプロセスです。
後継者の手腕は承継後の会社に大きな影響を及ぼすため、後継者育成は熟考して実施する必要があります。今回は、後継者育成を成功させるための課題・準備・ポイントなどを解説します。
後継者育成の必要性
経営者が病気や高齢などを理由に引退することになれば、誰かに会社の経営を任せなければなりません。突然、経営者不在となるような事態に陥れば、場合によっては経営が立ちいかなくなり、会社が解散せざるを得なくなることもあるでしょう。
後継者の選定や育成には、ある程度の時間が必要です。経営者がいなくなってから考えるのではなく、早期の後継者選び・育成を進めておく必要があります。
中小企業庁の事業承継を支援する施策には、後継者育成・支援に関する「中小企業大学校」や「アトツギ甲子園」などもあるので、上手に活用して後継者育成をしておくのもよいでしょう。
後継者育成を怠ると生じる問題
将来の経営者候補となる後継者の育成は、企業にとって重要なプロセスです。企業を存続させるうえで、この後継者育成を怠るとどのような問題が生じるのでしょうか。
売上の減少
企業の商品やサービスだけでなく、現経営者の人柄に魅力を感じてビジネスが成り立っていることもあるでしょう。後継者となる人材が優秀であったとしても、現経営者と同じように実力を発揮できるとは限りません。
経営者が交代すれば、経営方針が変わることもあります。後継者育成を行わなかった場合、経営者の交代で企業イメージが低下し、売上に影響を及ぼすことも考えられるのです。
離職者の増加
現経営者がカリスマ的な存在であった場合、後継者のやり方がなかなか受け入れられない従業員もいるでしょう。経営者が交代すれば、組織の求心力が失われることもあります。
経営者の交代は従業員に大きな影響を与えます。場合によっては、離職者が増える可能性も否定できません。
後継者候補はできるだけ早く選定し、後継者育成は丁寧に時間をかけて行うとよいでしょう。早期に後継者育成を始めれば、従業員への周知も徹底されるため、求心力の低下は防げるでしょう。
倒産の危機
後継者不在により、廃業を考える中小企業の経営者は増加傾向です。東京商工リサーチの調査によると、下記のグラフにあるように、後継者難で倒産した件数は、2013年に234件でしたが、2020年には372件、2021年は381件となっています。
後継者選定・後継者育成は一朝一夕には行えません。早い段階で後継者育成を進めていなければ、事業を続けられないこともあるでしょう。
東京商工リサーチ「後継者難倒産が過去最多の381件、2年連続で増加」2021年
後継者育成における課題
事業承継をスムーズに済ませるためには、実施前に後継者育成における課題を把握しておくことが大切です。ここからは、後継者育成を実施するうえで立ちはだかる課題について、後継者不在、後継者育成プロセスという2つの観点から解説します。
後継者不在の課題
後継者育成は、事業承継を検討する多くの経営者に実施が求められるプロセスです。しかし昨今の日本では、多くの中小企業が後継者不在の課題に悩まされており、廃業に追い込まれるケースもあります。
かつては、経営者の子供を後継者に指名して事業承継を進めるケースが一般的でした。現在では、多様な生き方が実現できるようになっていることから、必ずしも子供が親の事業の承継を了承するとは限りません。
従業員承継を検討する経営者もいますが、多くの中小企業では人手不足にも悩まされており、社内従業員にも後継者に相応しい人材が存在しないケースが多いです。このように、後継者育成の前段階で育成する後継者がいない課題に悩まされる経営者は少なくありません。
最近は政府が中小企業支援制度を推し進めており、後継者確保の支援システムが徐々に普及しつつあります。大企業と比較すると企業規模では劣りますが、中小企業で培われるノウハウ・技術・サービスは社会に欠かせないものです。社会全体の影響を鑑みても、中小企業は重要な存在だといえます。
中小企業が後継者不在の課題を解決できず廃業を迫られる事態は、企業自体にとっても社会全体にとっても非常に大きな損失です。後継者育成をスムーズに実施するためにも、後継者の確保は早い段階から検討する必要があります。
後継者育成プロセスの課題
後継者不在の課題をクリアすると、次は後継者育成プロセスの課題が立ちはだかります。経営者に必要な能力の育成は、日常的な業務における指導のみでは済ませられません。たとえ業務遂行能力に長けている後継者であったとしても、経営に関するセンス・素質を育成する必要があります。
経営に関するセンス・資質は、日常的な業務とは異なるシチュエーションで育成しなければならず、ときには外部の企業・セミナーを活用する必要性も生じるでしょう。経営者の業務を十分に習得できていても、経営のセンス・素質が身に付いていないケースは多々見られます。
一般的には、経営者の経営権が及ぶ範囲が広いほど後継者は育ちにくいとされています。後継者育成の期間を十分に確保しなかれば、広範囲に及ぶ経営権を持つ経営者のセンス・素質の全てを後継者に受け継げないおそれがある点には注意が必要です。
後継者育成のための準備
後継者育成をスムーズに済ませるには、あらかじめ念入りに準備しつつ早い段階から実施する必要があります。後継者育成のための準備は、以下の手順に沿って進めるとよいでしょう。
- 自社の経営方針を再認識する
- 経営方針に合致した後継者候補の人物像を検討する
- 人物像に該当する後継者候補を選出する
- 後継者候補を見極めながら、最適な育成計画を作成する
- 育成計画を実施して状況を観察する
上記の手順で準備することで、後継者育成プロセスをスムーズに実施できる可能性が高いです。多少の手間や時間はかかりますが、念入りな準備が後継者育成を迅速に済ませるポイントの一つといえます。
後継者不在の場合にはM&Aの活用が有効策
多くの中小企業では、そもそも親族や社内従業員の中で後継者に相応しい人材が存在しない状況が目立っています。こうした状況を受け、最近はM&Aによる第三者への事業承継の実施件数が増加中です。
M&Aによる事業承継では、自社の後継者候補を外部から幅広く探せます。親族内承継や従業員承継と比べて、十分に吟味して後継者候補を選べるうえに、後継者育成にかかる時間・手間を削減できるでしょう。
適任の後継者をスピーディーに見つけるには、M&A仲介会社への相談がおすすめです。M&A総合研究所には、M&Aによる事業承継に関する知識や経験が豊富なM&Aアドバイザーが多数在籍しております。
さまざまな業種で豊富な成約実績を持っており、独自ネットワークを活用して最適な相手先をお探しいたします。料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。
無料相談をお受けしておりますので、M&Aをご検討の際はどうぞお気軽にお問い合わせください。
後継者育成のポイント
ここからは、後継者育成のポイントを社内・社外という2つのシチュエーションに分けて解説していきます。
社内編
はじめに、社内における後継者育成のポイントは、以下のとおりです。
- 社員として業務を経験させる
- 経営に参加させる
- 経営者による直接指導
①社員として業務を経験させる
後継者を育成するときは、何よりもまず社員として会社の業務を経験させることが大切です。一人前の経営者に育てるには、会社の業務内容・各部門のローテーションの仕組みなどを把握させておく必要があります。
それに加えて、社内で用いられる知識・専門用語を学習させることも必要不可欠です。社員として経験を積ませることは、他の社員に後継者として認知させるうえでも大切なプロセスといえます。
後継者を突然経営に参加させる形を取れば、部下となる社員からの心証を悪くさせるおそれがあります。あらかじめ社員として働かせておくことで、社員からの反発の可能性も低くなるでしょう。他の社員と現場で協働させることで、連帯感や信頼の獲得も期待できます。
②経営に参加させる
業務を経験させてスキルが身に付いたら、後継者を経営に参加させるとよいでしょう。業務スキルと経営スキルは性質が異なっており、業務を経験させるだけでは、一人前の経営者に育てられません。
本人の潜在能力にも左右されますが、実際に経験させないと経営スキルの経験値を積ませることは不可能です。経営に参加させることで、後継者は以下のメリットを獲得できます。
- 経験値を獲得できる
- 経営に関するセンス・素質を磨ける
- 知識量を増やせる
大勢の社員の上に立つ経験をさせることで、リーダーシップ・責任感・使命感などを身に付けさせることも可能です。経営に参加させるプロセスは、経営者が指導役となって後継者に直接指導できる貴重なタイミングでもあります。
経営者自ら会社を経営するノウハウを指南しつつ、将来のビジョンや現段階での課題への向き合い方を共有することで、理想的な後継者育成の実現を目指せます。
③経営者による直接指導
現経営者による直接指導を行うのも後継者育成には有効です。経営の引き継ぎとして一定期間設け、現在の経営状況や将来の事業計画、業界・市場動向に加え、経営者としての心構え・経営理念・ノウハウなどを直接伝えるのです。
社内で行う後継者育成は、ここで紹介した順に行っていくのが効果的です。これらを全て行うには相当の期間が必要となるため、早期に後継者育成に取りかかれない場合は、状況に応じて進めるとよいでしょう。
社外編
最後に、社外における後継者育成のポイントを解説します。
- 外部の企業で働かせる
- セミナー・講習会に参加させる
①外部の企業で働かせる
社内での経験と併せて、後継者を外部の企業で働かせることも有効策です。例えば、社内で働かせる前後の段階で、数年間にわたり外部の企業に就職させたり、海外に留学させたりする方法が取られます。
後継者に自社の経験のみを積ませると、経営者としての視野を狭めるおそれがあります。結果として、複雑化する時代を見通す視野を身に付けられない可能性もあるため、できるだけ複数の企業で経験を積ませるとよいでしょう。
他社において自社と異なる経営方法や知識を学ばせれば、経営に必要な素養を豊かにさせることが可能です。海外で学ばせることで、国際情勢の習得も可能です。
このように後継者が外部から新しい人脈・情報・ノウハウ・思想を取り入れることで、会社が成長するきっかけとなる可能性も期待できます。後継者のみならず会社自体の成長にも直結するプロセスといえるでしょう。
②セミナー・講習会に参加させる
最近では、経営者・後継者向けにセミナー・講習会などのイベントが盛んに開催されています。社内教育と平行して、こうしたイベントに参加させることも、後継者を育成するうえで役立ちます。
上記のようなイベントでは、新たなビジネススタイルや経営に必要な基礎知識などを学ばせることが可能です。他の参加者とのコネクションも築かせられるため、新たな人脈の開拓も期待できます。
前任の経営者とは異なり、後継者は人脈や知識などが乏しいため、後継者に自身の強みを構築させるうえでも非常に有効といえるでしょう。
後継者育成のまとめ
事業承継を実施する経営者にとって、後継者育成は会社の存続に影響を及ぼす重要なプロセスです。後継者育成は100%成功するという保証はないため、入念に準備したうえで実施する必要があります。
後継者を確保できたら、社内・社外という2つの側面から育成を検討するとよいでしょう。要点をまとめると、以下のとおりです。
・後継者育成とは
→会社の存続に影響を及ぼす重要なプロセス
・後継者育成における課題
→後継者不在の課題と後継者育成プロセスの課題に分けられる
・後継者育成のための準備
→自社の経営方針を再認識する段階から開始して手順に沿って念入りに準備する
・後継者育成のポイント(社内編)
→社員として業務を経験させる、経営に参加させる、経営者による直接指導
・後継者育成のポイント(社外編)
→外部の企業で働かせる、セミナー・講習会に参加させる
M&A・事業承継のご相談なら24時間対応のM&A総合研究所
M&A・事業承継のご相談は成約するまで無料の「譲渡企業様完全成功報酬制」のM&A総合研究所にご相談ください。
M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴をご紹介します。
M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴
- 譲渡企業様完全成功報酬!
- 最短49日、平均6.6ヶ月のスピード成約(2022年9月期実績)
- 上場の信頼感と豊富な実績
- 譲受企業専門部署による強いマッチング力
M&A総合研究所は、M&Aに関する知識・経験が豊富なM&Aアドバイザーによって、相談から成約に至るまで丁寧なサポートを提供しています。
また、独自のAIマッチングシステムおよび企業データベースを保有しており、オンライン上でのマッチングを活用しながら、圧倒的スピード感のあるM&Aを実現しています。
相談も無料ですので、まずはお気軽にご相談ください。
あなたにおすすめの記事
M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
近年はM&Aが経営戦略として注目されており、実施件数も年々増加しています。M&Aの特徴はそれぞれ異なるため、自社の目的にあった手法を選択することが重要です。この記事では、M&am...
買収とは?用語の意味やメリット・デメリット、M&A手法、買収防衛策も解説
買収には、友好的買収と敵対的買収とがあります。また、買収に用いられるM&Aスキーム(手法)は実にさまざまです。本記事では、買収の意味や行われる目的、メリット・デメリット、買収のプロセスや...
現在価値とは?計算方法や割引率、キャッシュフローとの関係をわかりやすく解説
M&Aや投資の意思決定するうえでは、今後得られる利益の現時点での価値を表す指標「現在価値」についての理解が必要です。今の記事では、現在価値とはどのようなものか、計算方法や割引率、キャッシ...
株価算定方法とは?非上場企業の活用場面、必要費用、手続きの流れを解説
株価算定方法は多くの種類があり、それぞれ活用する場面や特徴が異なります。この記事では、マーケットアプローチ、インカムアプローチ、コストアプローチといった株価算定方法の種類、株価算定のプロセス、株...
赤字になったら会社はつぶれる?赤字経営のメリット・デメリット、赤字決算について解説
法人税を節税するために、赤字経営をわざと行う会社も存在します。しかし、会社は赤字だからといって、必ず倒産する訳ではありません。逆に黒字でも倒産するリスクがあります。赤字経営のメリット・デメリット...
関連する記事
会社分割すると従業員の契約はどうなる?労働契約承継法や保護制度を徹底解説!
多くの企業が会社分割を検討しておりますが、トラブルに発展しないように従業員への対応に配慮する必要があります。今回は会社分割を検討している企業に向けて、会社分割における従業員の契約や手続きの流れな...
M&AにおけるITデューデリジェンス(ITDD)を解説!目的や調査項目は?
ITデューデリジェンス(ITDD)はM&Aにおいて欠かせず、明確な目的を踏まえた対応が求められます。今回はM&Aを検討している企業に向けて、ITデューデリジェンス(ITDD)につ...
人事デューデリジェンス(人事DD)とは?目的から調査項目まで徹底解説!
M&Aを実施する際に人事デューデリジェンス(人事DD)は重要です。丁寧に手続きを進めないとM&Aで高い効果は得られません。今回はM&Aを検討している企業に向けて、人事デュ...
二段階買収の手続き方法を徹底チェック!目的やメリット・注意点は?
二段階買収(Two-Tier Takeover Strategy)は、買収側が売却側の少数株主から株式を買い集める際に有益な手法です。当記事では、実施目的や手法、メリットやデメリット、過去事例や...
事業承継の相談先はどこがいい?選び方から注意点まで徹底チェック!
近年は中小企業の経営者の高齢化に伴い、積極的に事業承継を行って生き残りを図る企業が増えています。 事業承継には複雑な手続きが多いため、信頼できる相談先の選択が重要です。そこで本記事では事業...
M&A後の退職金や給与はどうなる?節税方法や注意点まで徹底チェック!
M&Aで退職金を活用すると、節税効果が得られます。当記事では、退職金を利用したM&Aの節税方法やメリット、注意点を交えながら、退職金の扱い方や税務について解説します。従業員や役員...
M&Aにおける人事DDの目的や調査範囲を徹底チェック!費用・注意点は?
人事DD(デューデリジェンス)は、買収側がM&Aの実施後に受ける損失を最小限に抑えるために必要な調査です。当記事では、調査が行われる目的や調査範囲、かかる費用や注意点を踏まえながら、人事...
100日プランとは?PMIの概要・重要性・策定のポイントまで徹底解説!
M&Aを実施する際にはPMIの工程が重要となり、100日プランはPMIの成功に大きな役割を果たします。今回はM&Aを検討している企業に向けて、100日プランの概要・重要性・策定の...
管工事会社の事業承継の動向や事例を徹底解説!メリットや費用相場・注意点は?
管工事会社業界は将来的な需要増加が見込める半面、人材不足や後継者不在といった問題が深刻です。当記事では、過去の事例を取り上げながら、管工事会社(管工事業界)の事業承継について解説します。事業承継...
株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。