2022年8月7日更新会社・事業を売る

株式交換のスケジュール・法務手続き!かかる期間も解説

株式譲渡などのM&A手法と違い株式交換を実施する場合は、完了するまでの間にさまざまなスケジュールを経て手続きが進みます。本記事では、株式交換が効力を発生する日を見越した株式交換のスケジュール管理や法務手続き、かかる期間などを解説します。

目次
  1. 株式交換とは
  2. 株式交換のスケジュール・期間
  3. 株式交換のスケジュール・法務手続きの流れ
  4. 株式交換のスケジュール・法務手続きにおける注意点
  5. 株式交換のスケジュール・法務手続きまとめ

株式交換とは

株式交換とは

M&A手法の中には、組織再編行為と呼ばれるものがいくつもあり、その1つが株式交換です。株式交換が使われるのは、100%の親子会社関係を構築する場面です。

具体的には、子会社化する企業の全株式取得にあたり、その対価支払いを親会社の株式交付によって行います。対価支払いの形態から、株式交換と呼ばれるようになりました。

類似する組織再編行為に株式移転がありますが、株式移転の場合は親会社となる企業の新たな設立が行われます。これが、株式交換と株式移転の相違点です。

子会社の株式取得にあたって、親会社の株式交付は絶対条件ではなく、対価の一部を現金での支払いとすることも了承されています。

実施する背景

株式交換を実施する背景は、すべての株主から承認を得なくても完全子会社化できる点です。

公開取引市場で株式を買い集めるケース、TOBで株式を買い集めるケースなど、例外的な方法を除いてほとんどすべての株主から同意を得て株式を得なければなりませんが、株式交換では、株主総会で3分の2以上における同意を得られるとすべての株式を得られます。

株式交換は、子会社の完全子会社化などグループ企業再編のときによく用いられる手法です。子会社の株式を得た対価に、親会社の株式を交付できるので、買収資金を用意する必要もありません。

会社合併や会社分割、事業譲渡などのスキームと比べると、株式交換で生じる完全子会社は会社として独立した存在です。組織変更などの経営統合は実施されないため、今までの事業運営に障害も生じません。

実施時の留意点

株式交換は、手続きが煩雑なので、ミスを誘発されやすいでしょう。債権者保護手続きや株主総会の招集・特別決議など、たくさんの手続きを、会社法の規定に沿って間違いなく進める必要があります。

完全子会社となる会社の株主が、株式交換によって新しく完全親会社の株主に加わるので、完全親会社の株主構成に変化が生じることにも留意しましょう。

完全親会社が上場企業であれば、対価の株式交付で1株あたりの利益が減ります。それを嫌がる株式市場で、株価が下がるリスクもあるのです。

株式移転との相違点

株式交換は既存の会社が子会社となり、親会社は子会社が有するすべての株式を得て、完全親子会社の関係になり、経営統合やグループ再編で効果を生じます。

株式移転は、子会社となる既存会社の発行済株式を新設する会社に取得させ、完全子会社化するので、ホールディングスなど持株会社を設けるときの組織再編で用いられることが多いです。

株式交換と株式移転の取り組みや目的は大きく違い、特に親会社が新設されるかどうかが異なります。株式交換の親会社はすでに設立された会社で、株式移転では親会社が新設されます。

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株式交換のスケジュール・期間

株式交換のスケジュール・期間

株式交換は企業の組織再編行為であるため、一般的なM&A手法である株式譲渡や事業譲渡とは類似点はあるものの、絶対的に違うものです。

通常のM&A(合併と買収)と組織再編という目的の違いは無論ですが、手続きの進め方にも大きな違いがあります。株式交換の方が、実現させるまでの手続きが複雑で大変な面が多いです。スケジュール的にも約2ヶ月程度の時間を要します。

一般的なケースにおける株式交換の手続きプロセスは、以下のとおりです。

  1. 取締役会での決議
  2. 株式交換契約締結
  3. 事前開示書類備置
  4. 株主総会招集通知の発送
  5. 株主総会での株式交換契約承認特別決議
  6. 債権者保護手続き
  7. 反対株主からの株式買取請求対応、株券などの提供公告
  8. 金融商品取引法手続き
  9. 株券・新株予約権の証券提出(*株主の手続き)
  10. 株式交換の効力発生
  11. 新株発行・設立・変更の登記申請
  12. 事後開示書類備置
  13. 公正取引委員会への手続き
  14. 株式交換無効訴え(*株主、債権者、取締役の権利)

債権者保護が必要のない場合は、上記より短期間で完了します。株主総会を省くケースは、会社法で定められており、そのケースでもスケジュールが短縮できます。

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株式交換のスケジュール・法務手続きの流れ

株式交換のスケジュール・法務手続きの流れ

この章では、株式交換のスケジュール・法務手続きの流れについて見ていきましょう。

①契約の決議と締結

株式交換のスケジュールを実行する際は、2社間での話となるので、まずは株式交換契約の締結が必要です。その前段階として、それぞれの会社で株式交換の実施にむけた取締役会決議を経なければなりません。

株式交換に対する取締役会決議を得たら、該当企業との間で株式交換契約を締結します。株式交換契約書内には、下記の内容を記載しましょう。

  • 親会社・子会社の商号と住所
  • 株式交換の効力発生日
  • 株式交換の対価に関する事項

株式交換の対価は、株式交換比率によって表現します。株式交換比率とは、子会社株主に割り当てる親会社の株式比率です。株式交換比率は、該当会社間の企業価値などを参考に決定します。

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②事前開示

契約締結後に行う株式交換スケジュールは、事前開示書類の備置手続きです。この手続きは法令で定められ、実行しなくてはいけません。M&Aの実務上では、「書面の備え置き」とも呼びます。

株式交換を行う双方の会社において、株式交換に関する一定事項を記した書類を準備し、それを開示し備え置くのです。日程も定められており、下記のうち最も早い日が期限になりますが、大半の株式交換では、株主総会の2週間前が期限となっています。

【子会社側】
  • 株主総会の2週間前
  • 株主や新株予約権者に対する通知日または公告日のうち早い方
  • 債権者保護手続きにかかる公告日または催告日のうち早い方
  • 株式交換契約の締結日から2週間を経過した日(上記いずれにも該当しない場合)
【親会社側】
  • 株主総会の2週間前
  • 株主に対する通知日または公告日のうち早い方
  • 債権者保護手続きにかかる公告日または催告日のうち早い方

この手続きは、当事会社の株主を保護する目的です。当事会社の株主や新株予約券所持者は、会社の営業時間内はいつでも書面を閲覧できます。

開示書類には、下記の内容を記載、添付しましょう。

  • 株式交換契約の概要
  • 株式交換の対価に関する事項
  • 債務の取り扱いに関する事項
  • 計算書類など

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③株主総会

事前開示までスケジュールが進行したら、次は株主総会の開催に向けて進みます。株主総会では株式交換実施を承認する特別決議を得なければなりません。そこまでの段取りを見てみましょう。

株主総会の開催通知

株主総会を開催する際は、各株主に対して株主総会を開催する旨を通知する必要があります。

非公開会社で株式譲渡制限会社の場合は、原則として株主総会の1週間前までが通知期限です。公開会社は、2週間前までに招集通知手続きを実行しなくてはいけません。書面投票もしくは電子投票を行う場合は、株式譲渡制限会社の場合でも2週間前までが期限です。

株式交換のスケジュールを立てる際は、株主総会の通知期限が企業一律ではないことに注意してください。

特別決議

株式交換の実施には、株主総会での特別決議が必要です。特別決議とは、会社の根幹にかかわる内容を決定することを意味します。そのため、全議決権の過半数を保有する株主が株主総会に出席し、その場で3分の2以上の賛成がなければ、特別決議は成立しません。

特殊なケース

株式交換実施に向けて、特別決議が不要となる特殊なケースがあります。それは、実施しようとしている株式交換が「簡易組織再編」または「略式組織再編」のどちらかに該当する場合です。

簡易組織再編とは、対価額が親会社の純資産額における5分の1以下である株式交換をさします。略式組織再編は、特別支配会社間で実施する株式交換です。特別支配会社とは、親会社側が子会社の総株主における議決権の90%以上を所持していることをいいます。

1社で所有していなくても、グループ企業合わせての所有でもかまいません。

さらに特殊なケースとして、総株主の同意が必要となる株式交換もあります。それは、対価として持分会社(合名会社、合資会社または合同会社)の持分が交付される場合です。

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④債権者保護手続きと株主への対応

株主総会で無事特別決議が得られたら、株式交換スケジュールは債権者や株主個々に対する諸手続きへ移行します。債権者と株主に対して実施する具体的な対応内容を確認しましょう。

債権者保護手続き

株主が変わるだけの株式交換では、原則的に債権者保護手続きは生じません。

例外的なケースとして、新株予約権付き社債を親会社側が引き継ぐときと、株式以外を対価する場合において債権者保護手続きが必要となります。

債権者保護手続きとは、官報公告と個別の催告によって、債権者に対し異議を申立てられる権利があることを伝えることです。具体的には、以下の内容を官報公告や個別催告に記載します。

  • 株式交換を実行する旨
  • 株式交換の相手企業の商号と住所
  • 一定期間、異議を述べられる旨

特に重要なのが、異議申し立ての期間です。債権者には最低でも1ヶ月の異議申し立て期間が保証されています。債権者保護が必要な株式交換の場合、完了する1ヶ月以上前に手続きを済ませなければなりません。

株主への対応

株式交換スケジュールで、このタイミングで株主に対して行わなければいけないことは2つです。

1つ目は、株券発行会社である場合の手続きですが、株主に対して、株式交換の効力が発生する日がくるまでに、株券を提供するよう公告および個別通知しなければなりません。公告および個別通知は、効力発生日の1ヶ月以上前に手続きすることが必須です。

2つ目は、どのケースでも共通の必須手続きとして、株式交換に反対する株主からの株式買取請求に対応しなければなりません。

株主総会で反対株主が現れ、株式買取請求があった場合、会社はその株主が保有する株式を買い取る義務が生じます。株式の買取(金銭の支払い)は、特別決議日から60日以内に実行しなければなりません。

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⑤金商法対応

金融商品取引法(略称:金商法)の規定により、公開会社の場合、以下の書類提出が義務付けられています

  • 有価証券届出書
  • 有価証券通知書
  • 臨時報告書

有価証券届出書とは、親会社が非公開会社で子会社が公開会社であるときに、株式発行価額1億円以上で株主50名以上となる株式交換の場合に提出する書類です。有価証券通知書の場合は、株式発行価額1,000万円以上1億円未満のケースが該当します。

臨時報告書は、株式交換などの組織再編行為を実施した場合に、その内容を開示するために公開される書類です。

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⑥効力発生・登記

前項までで事前手続きは完了しました。ここからは、株式交換の実施=効力発生と、それに伴う事後手続きのフェイズに移行します。

株式交換の効力発生

冒頭での株式交換スケジュールであった株式交換契約書内に、株式交換の効力が始まる日が定められています。ここまでの手続きは、その逆算でスケジュールを立て、行ったものです。

登記手続き

基本的には、株式交換で登記は不要です。レアケースとして、親会社が対価として交付する株式や新株予約権を新規発行する場合、子会社にて発行していた新株予約権を処分する場合は、登記手続きを行う必要が生じます。

この場合、株式交換の登記には期限があり、株式交換の効力が発生となったときから2週間以内です。親会社と子会社が同時に変更登記を実行する必要もあります。登記手続きが生じる場合は、スケジュール設定に注意しましょう。

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⑦事後開示

株式交換スケジュールの手続きは、登記手続きが完了してもまだ残っています。株式交換実施前の開示書類備置と同様に、株式交換実施後も開示書類を備え置かなくてはなりません。

親会社・子会社の双方は、株式交換の効力発生日から6ヶ月間にわたり、事後開示書類を本店に備え置く義務があります。事後開示書類には、下記の内容を盛り込まなくてはいけません。

  • 株式交換の効力発生日
  • 親会社に移動した子会社の株式数
  • 債権者保護手続きの経過
  • 株主における買取請求の経過
  • その他株式交換に関係する重要事項

⑧公正取引委員会への手続き

基本的に通常の株式交換であれば、前項までの手続きで株式交換スケジュールは完遂です。しかし、場合によっては、公正取引委員会への届け出が必要な株式交換もあります。それは、以下の場合です。
 

  • 親会社となった企業に対して、そのグループ企業が持つ議決権保有割合が20%または50%以上
  • 親会社となった企業およびそのグループ企業における国内売上高合計額が200億円以上
  • 親子会社の国内連結売上高が50億円以上

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株式交換のスケジュール・法務手続きにおける注意点

株式交換のスケジュール・法務手続きにおける注意点

この章では、株式交換のスケジュール・法務手続きにおける注意点について見ていきましょう。

株式交換を行えるのは株式会社のみ

株式交換を行えるのは、完全親会社は株式会社か合同会社、完全子会社は株式会社だけと決まっています。これは、会社法で定められているのです。

株式交換比率次第で株主が単元未満株式を保有する

株式交換では、完全親会社と完全子会社における1株当たりの価値から、株式交換比率を決定します。株式交換比率次第で、完全子会社の株主は単元未満株を有するでしょう。

この場合は、会社法や定款の定めに沿って、完全親会社に買い取ってもらう、あるいは単元株に不足する分を買い増す必要があります。

子会社が発行する転換社債の取扱い

完全子会社が転換社債を発行している場合、転換社債は任意のタイミングで株式に転換できます。これは、完全子会社化するときの障壁となるでしょう。

2002(平成14)年の商法改正後に発行されたものは、処分可能ですが、それ以前に発行されたものは償還期日まで処分できない点に留意してください。

ストックオプションの処理

完全子会社となる会社の従業員が、福利厚生の一環としてストックオプションを有するケースがあります。株式交換の後に、ストックオプションが行使されると、新たに完全子会社株主が生まれるため、完全子会社化が行えません

株式交換を実施する前に、確認しましょう。

自己株式や種類株式は処理する必要

「完全子会社となる会社が完全親会社の株式を有する」「完全子会社が自己株式を有する」といったケースでは、株式の処理を実施します。

種類株式を発行している完全子会社であれば、完全親会社となる会社が種類株式を持つ株主へ交付する株式の種類と数は、当事会社が交渉したうえで株主総会で決まります。交渉や承認により、完全親会社は普通株式の交付もできるでしょう。

上場廃止に関する注意点

上場企業同士が株式交換を実施する際、完全子会社となる会社は上場廃止基準に該当します。

完全子会社は株式交換の効力が生じる前に、上場廃止となるでしょう。効力発生日には、株主へ完全親会社の株式が交付されます。この間、株主は株式の売買ができません。

株式交換のスケジュール・法務手続きまとめ

株式交換のスケジュール・法務手続きまとめ

株式交換実施のために必要なさまざまな手続きを説明しました。どれか1つでも滞ると、スケジュールに狂いが生じるかもしれません。効力発生日を円滑に迎えられるよう、2ヶ月間は気が抜けませんが、慎重に手続きを進めてください。

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